40代の体外受精における鍼灸症例

40代の体外受精への鍼灸治療

不妊

近年、晩婚化や晩産化が進み、不妊に悩むご夫婦が増加傾向にあります。
とくに40代での妊娠は、卵子の質の低下など様々な要因から、自然妊娠が難しくなるケースが多く、体外受精などの高度生殖医療を選択される方も少なくありません。

しかし、体外受精においても、卵子の状態や子宮内膜の状態など、様々な要因が成功に影響を与えます。

当院では、西洋医学の高度生殖医療と並行し、東洋医学の鍼灸治療を取り入れることで、母体本来の力を高め、妊娠しやすい体づくりをサポートしております。

今回は、40代女性の体外受精において、鍼灸治療が奏功し、無事妊娠に至った症例をご紹介いたします

この症例を通して、鍼灸治療が不妊に悩む方々にとって、鍼灸の可能性を示せれば幸いです。

患者さまについて

年齢・性別:
40代女性

鍼灸院に来るまでの経緯:
3年前から妊活を開始され、当初は自己タイミング法を試みるも結果が出ませんでした。
その後、婦人科のクリニックを受診されました。
検査の結果、片方の卵管のつまりが指摘され、タイミング療法を6回、人工授精を6回行いましたが、残念ながら妊娠には至りませんでした。

その後、体外受精へのステップアップを決意し、転院されました。

2回の採卵を行うも、1回目は受精卵が育たず、2回目は1個の凍結卵を得ましたが、移植は不成功に終わりました。

3回目の採卵を控え、病院でできる以外のことも積極的に試したいと鍼灸を希望され、当院にご来院されました。

患者様は、「体は元気」とおっしゃっていましたが、詳細な問診と東洋医学的な診察を行った結果、下腹部(腎の部分)に「虚(きょ)」、つまりエネルギーの不足が見られました。

婦人科系の疾患以外には、肩こりを自覚されていました。

東洋医学的考察

東洋医学では、妊娠は女性の「腎(じん)」、「脾(ひ)」、「肝(かん)」という臓腑の働きと密接に関わっていると考えます。
「腎」は生命の根源的なエネルギーを蓄える場所であり、生殖機能や成長、発育を司ります。
「脾」は飲食物からエネルギーを生成し、全身に栄養を運びます。
「肝」は血を貯蔵し、全身の気の巡りをスムーズにする役割を担います。

この患者様の場合、「腎虚」が見られたことから、生殖機能の低下が根本的な原因であると考えました。
また、「脾」の機能が低下すると、卵子を育てるための栄養が不足し、「肝」の機能が低下すると、気の巡りが悪くなり、子宮への血流が滞る可能性があります。

肩こりは、「肝」の気の巡りが滞っていることによって引き起こされていると考えられました。

年齢的な要因も考慮すると、患者様は自覚症状以上に、生殖器系のエネルギーが低下している状態でした。

日常生活を送る上では問題なくとも、採卵、卵子の成長、着床といった妊娠に必要なプロセスを円滑に進めるためには、これらのエネルギーを補う必要があると判断しました。

治療方針

上記の東洋医学的考察に基づき、治療方針は「補腎健脾(ほじんけんぴ)」、「疏肝理気(そかんりき)」、「活血化瘀(かっけつかお)」を柱としました。

補腎健脾:
「腎」と「脾」の機能を高め、生殖機能と卵子を育てるためのエネルギーを補います。

疏肝理気:
「肝」の気の巡りをスムーズにし、肩こりの改善と子宮への血流改善を図ります。

活血化瘀:
血の巡りを良くし、子宮内の環境を整え、着床しやすい状態を作ります。

これらの治療方針に基づき、鍼灸治療と温灸を組み合わせて施術を行いました。

治療経過

1回目:
仰向けで、「中脘(ちゅうかん)」、「関元(かんげん)」へ棒温灸をしました。「肓兪(こうゆ)」、「合谷(ごうこく)」、「三陰交(さんいんこう)」、「太谿(たいけい)」への置鍼、足先へのホットパックを行いました。
うつ伏せで、肩甲骨周辺の凝り、「膏肓(こうこう)」、「隔兪(かくゆ)」、「肝兪(かんゆ)」、「腎兪(じんゆ)」、「次髎(じりょう)」への置鍼、腰への灸を追加しました。

2回目以降:
患者様の体調や凝りの状態に合わせて、使用するツボを若干変更しながら、同様の施術を継続しました。
円皮鍼やパルス鍼を用いることもありました。

当初予定していた凍結卵の移植は残念ながら不成功に終わり、その後2回の採卵でも凍結卵を得ることはできませんでした。

鍼灸治療開始から9ヶ月後:
3回目の採卵で、なんと5個の凍結卵を得ることができたのです。
患者様ご自身も大変驚かれていました。

その後、5個の凍結卵のうち1個を移植したところ、陽性判定が出ました。

妊娠判定後も、つわりなどの症状に合わせて鍼灸治療を継続し、安定期に入ってからは施術間隔をあけながら、出産までサポートさせていただきました。

現在は妊娠22週を迎え、母子ともに健康に過ごされています。

使用した主なツボとその代表的な効果

中脘(ちゅうかん):
胃の不調を整え、消化機能を高めます。

関元(かんげん):
生殖機能を高め、冷えを改善します。

肓兪(こうゆ):
脾の機能を高め、消化吸収を促進します。

合谷(ごうこく):
気血の巡りを改善し、痛みを緩和します。

三陰交(さんいんこう):
女性特有の症状に効果があり、血行を促進します。

太谿(たいけい):
腎の機能を高め、生殖機能をサポートします。

膏肓(こうこう):
全身の機能を高め、免疫力を向上させます。

隔兪(かくゆ):
血行を促進し、血液の状態を改善します。

肝兪(かんゆ):
肝の機能を整え、気の巡りをスムーズにします。

腎兪(じんゆ):
腎の機能を高め、生殖機能をサポートします。

次髎(じりょう):
腰痛や婦人科系の疾患に効果があります。

まとめ

この症例を通して、鍼灸治療が40代の体外受精において、母体本来の力を引き出し、妊娠をサポートする可能性が示されました

年齢的な要因により、自覚症状以上に生殖器系のエネルギーが低下している場合でも、鍼灸治療によってその状態を改善し、採卵、卵子の成長、着床といった妊娠に必要なプロセスを円滑に進めることができるのです。

当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた丁寧なカウンセリングと施術を心掛けております。

これをお読みの方で、不妊でお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。

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