【症例】足先の冷え性は鍼灸で改善する?15年以上続く足の冷えに悩んだ40代女性
【冷え性】15年続く氷のような足の冷え・強い生理痛を根本から変えるために必要な「期間」とは?

※本記事は国家資格(はり師・きゅう師)を保有する院長が執筆しています。
※当院の実際の症例に基づきますが、患者様のプライバシー保護のため、個人が特定されないよう一部情報を変更して記載しております。
※効果には個人差があります。
「足先が氷のように冷たい」「どんなに厚着しても足だけは冷える」――。
このような足の冷えに悩まされている方は、想像以上に多くいらっしゃいます。
足先は心臓から遠く、血行の影響を受けやすいため、体の冷えが最も現れやすい部位の一つです。
西洋医学的には明確な病名がつきにくいことも多い「冷え性」ですが、東洋医学では、体のバランスが崩れた状態として捉え、その改善を目指します。
今回の症例は、足首から先のつらい冷えに長年お悩みだった方のケースです。
患者さまの情報と経緯
年齢・性別・お住まい:
40代女性・鎌ケ谷市在住
鍼灸院に来るまでの経緯:
足首より先の強い冷えに悩んでいます。
この冷えは、今に始まったことではなく、約15年前、つまり30代の頃から気になり始めたそうです。
当時は厚手の靴下を履いたり、重ね履きをしたりすることで、なんとかしのぐことができていました。
しかし、ここ2~3年の間に症状は徐々に悪化し、以前のように靴下を履くだけでは全く冷えが取れない状態になってしまったとのこと。
夏場でも足先は冷たく、外出時はもちろん、ご自宅の中でも靴下が手放せない、一年中足の冷えに悩まされている状態でした。
冷えが悪化した具体的な原因については、ご本人も心当たりがなく、「もしかしたら加齢のせいかもしれない」と感じていらっしゃいましたが、それだけではない、より複雑な要因が絡み合っている可能性を考慮する必要がありました。
さらに詳しくお話を伺うと、冷え以外にも複数の体調不良を抱えていらっしゃることが分かりました。
・生理痛が強い
毎月生理の際には強い痛みに悩まされ、鎮痛剤が手放せない状態でした。
・子宮筋腫と子宮腺筋症がある
婦人科の病院には半年に一度通院して、状態をチェックしています。
・卵巣嚢腫の手術歴
20代の頃に卵巣嚢腫の手術を受けているとのこと。
婦人科系の既往歴は、現在の体調にも影響を与えている可能性があります。
・貧血
以前から貧血傾向があり、疲れやすさや顔色の悪さにも繋がっているようでした。
・胃痛
週に1回くらいの頻度で胃の痛みを感じることがあるとのこと。
消化器系の不調も、体全体の気血の流れと無関係ではありません。
・慢性疲労
日常的にだるさや疲れを感じやすく、十分な休息をとっても回復しきらないといった慢性的な疲労感を訴えていらっしゃいました。
これらの症状は、一見すると足の冷えと直接関係ないように思えるかもしれません。
しかし、東洋医学の視点では、これらの症状はすべて「体全体のバランスの乱れ」から生じていると考えます。
この人を東洋医学ではどうみるか?
東洋医学では、人間の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」という3つの要素が、互いに連携し合い、バランスを取りながら生命活動を営んでいると考えます。
「気」は生命エネルギーや活動力、「血」は全身を巡る血液とその働き、「水」は体液全般を指します。
これらのどれか一つでも不足したり、滞ったり、偏ったりすると、体のバランスが崩れ、様々な不調として表面化すると考えます。
今回の患者さまの場合、足の冷えという主訴に加え、強い生理痛、婦人科系の既往、貧血、胃痛、慢性疲労といった複数の症状を併せ持っていることから、体全体の「気」「血」「水」のバランスが大きく乱れていると考察しました。
■瘀血(おけつ)
「血(けつ)」の異常である「瘀血(おけつ)」が強く現れている点です。
「瘀血」とは、血の巡りが滞り、ドロドロとした状態になっていることを指します。
血は全身に酸素や栄養を運び、同時に熱も運ぶ役割を担っています。
血の巡りが滞ると、体の隅々まで熱が届きにくくなり、特に心臓から遠い足先は冷えやすくなります。
今回の患者さまの、足首より先の強い冷えは、まさにこの「瘀血」による血行不良が深く関わっていると考えられます。
また、強い生理痛や子宮筋腫、子宮腺筋症といった婦人科系の疾患は、東洋医学では「瘀血」と非常に密接に関連していると捉えます。
子宮や骨盤内の血の巡りが滞ることで、痛みが生じたり、組織が異常に増殖したりすると考えられるのです。
長年にわたる婦人科系のトラブルが、「瘀血」をさらに悪化させ、結果として足の冷えも年々ひどくなっていった可能性が考えられます。
■気血両虚(きけつりょうきょ)
疲労が蓄積している様子や、貧血傾向があることから、「気(き)」と「血(けつ)」の両方が不足している「気血両虚(きけつりょうきょ)」の状態も見られました。
「気」が不足すると、体を温めたり、血を押し流したりする力が弱まります。
「血」が不足すると、全身に栄養や熱を十分に供給できなくなります。
活動に必要なエネルギーである「気」と、体を養う基本物質である「血」の両方が不足しているため、体全体に力がなく、巡りも悪くなり、慢性的な疲労感や貧血といった症状に加えて、冷えをさらに悪化させている要因となっていると考えられます。
胃痛も、気血の流れの滞りや消化器系の「気」の不足と関連が深いです。
このように、この患者さまの冷えは、単に体が冷えているのではなく、「瘀血」による血行不良が中心的な課題であり、それに加えて「気血の虚」による全身のエネルギー不足と栄養不足が複合的に絡み合って生じている状態であると東洋医学的に考察しました。
冷えだけでなく、生理痛や疲労感といった他の症状も、この根本的な体質の偏りから派生していると捉えることができます。
治療方針
東洋医学的な考察に基づき、今回の患者さまの治療方針を以下の通り定めました。
最も重要なのは、冷えの中心課題である「瘀血」の改善と、全身のエネルギー不足・栄養不足である「気血の虚」を同時にアプローチすることです。
■瘀血の改善(血行促進)
血の巡りを良くし、滞りを解消することで、足先まで温かい血がしっかりと流れるように促します。
特に骨盤内や下腹部の血行を改善し、婦人科系の症状緩和も同時に目指します。
■気血の補充
体のエネルギー(気)と栄養(血)を作り出し、全身に巡らせる力を高めます。
これにより、慢性的な疲労感や貧血の改善、そして体を内側から温める力の強化を目指します。
■全身のバランス調整
冷えやその他の不調は、体全体のバランスの乱れの結果です。
特定の症状だけでなく、内臓の働きや自律神経のバランスなど、全身の調和を取り戻すことで、根本的な体質改善を図ります。
治療内容と実際の経過
1回目:
まず仰向けで、内関、足三里、築賓、三陰交、太谿などに置鍼(鍼を必要な深さまで刺ししばらく固定する方法)。
これらのツボは、消化器系の働きを整え気血を作り出すのを助けたり、全身や下半身の血行を促進したり、体を温めたりする効果が期待できます。
お腹の「関元」の近辺には、棒温灸(艾を固めた棒に火をつけ、皮膚から少し離してかざすお灸)を当てて、じんわりと温めました。
足先には物理的な温かさを与えるためにホットパックを当て、血行改善を促しました。
また、下腹部の冷えや婦人科系の症状に効果的なツボには、点灸(米粒より小さくもんだ艾をツボに乗せて燃やすお灸)も加え、より深部への刺激と温熱効果を狙いました。
うつ伏せで、背中にある全身の調子を反映する重要なツボ(兪穴)にアプローチしました。
心兪、膈兪、肝兪、脾兪、腎兪といったツボに置鍼を行い、心臓、血液、肝臓、消化器、腎臓といった各臓器の働きを整え、気血の巡りや生成、そして体を温める力を高めることを目指しました。
背中の「神道」「命門」といった、体を温め生命力を高めるツボには、棒温灸を当ててしっかりと温熱刺激を加えました。
特に冷えと関連の深い腎臓の働きをサポートするために、「腎兪」には円皮鍼(皮膚に貼る置き鍼)も施し、持続的な効果を狙いました。
2~6回目(2週に1回ペース):
基本的な治療方針は1回目に準じ、全身の気血を補い、巡りを良くし、体を温める方向で治療を継続しました。
使用するツボは、その日の患者さまの体調や症状の変化に応じて調整しましたが、特に「瘀血」や「気血の虚」、そして冷えに対して効果的なツボを中心に選びました。
また、治療の中で、点灸や台座灸(台座に乗った艾に火をつけるお灸)を多めに使用するなど、温熱刺激をより積極的に取り入れました。
これは、患者さまの冷えが長年続いており、体の深部に冷えが蓄積していると考えられたため、お灸の温熱効果で体の内側からしっかりと温め、血行促進と「気」の補充を強力に促すことを目的としていました。
施術期間としては、月2回のペースで約2ヶ月半ほど継続しました。
この期間、季節がだんだんと暖かくなっていったこともあり、患者さまご自身も足の冷えに関しては、初来院の頃に比べると少し改善したという実感を持たれたようです。
しかし、期待されていたほど劇的な改善、例えば「全く冷えを感じなくなった」「真夏に靴下なしで過ごせるようになった」といった変化には至らなかったようです。
また、強い生理痛に関しては、この期間中での大きな変化は見られませんでした。
結果として、患者さまの期待に応えるほどの目に見える変化を感じていただけなかったため、いったんこの段階で鍼灸治療は終了となりました。
長年(10年、20年と)続く冷えや、子宮筋腫・子宮腺筋症といった婦人科疾患など、体の深い部分や複数の要因が絡み合った不調は、数回の施術で劇的に改善することは、正直なところ難しいケースが多いです。
東洋医学的な体質改善には、一般的にある程度の期間が必要とされており、今回の患者さまのように根深い冷えや「瘀血」を抱えている場合は、週に1回程度のペースで、最低でも3ヶ月(15回程度)の施術を継続していただくことで、より根本的な変化に繋がりやすくなります。
その点、患者さまの継続意欲を維持させ、体質改善には時間がかかること、そして継続することの重要性をもっと丁寧にお伝えできなかったことは、施術者として悔やまれる点です。
鍼灸師としての感想とまとめ
今回の症例では、15年以上続く足の冷えに対して鍼灸治療を行いました。
約2か月半の施術で大きな変化には至りませんでしたが、患者様ご自身では「以前より少し冷えが楽になった」と感じていただくことができました。
長年続く冷え性、とくに、
* 生理痛が強い
* 子宮筋腫や子宮腺筋症がある
* 貧血がある
* 慢性的な疲労感がある
このような症状を伴う冷えは、単純な冷えではなく、体質的な問題が複雑に関係しているケースが少なくありません。
東洋医学では、このような冷えを「体全体のバランスの乱れ」と捉え、少しずつ体質を整えていくことを目指します。
一方で、10年以上続く冷えや婦人科系の不調を伴うケースでは、数回の施術だけで大きく変化することは難しく、ある程度の期間をかけて取り組む必要があります。
今回の症例は、私自身にとっても「体質改善には継続的な取り組みが大切であること」を改めて学ばせていただいた症例でした。
もしあなたが、
「冷えは体質だから仕方ない」
「もう何年も足先の冷えに悩んでいる」
「生理痛や疲労感も一緒につらい」
そのようなお悩みを抱えているのであれば、一度ご自身の体を根本から見直してみる機会かもしれません。
当院では、冷えている部分だけを見るのではなく、なぜ冷えが起きているのかを丁寧に考え、お一人おひとりに合わせた施術を行っています。
長年の冷えでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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