子宮筋腫手術後の不妊、鍼灸で自然妊娠の症例

子宮筋腫手術後の不妊鍼灸の治療

「赤ちゃんを抱きたい」。
それは、多くの女性にとって切実な願いです。

今回は、子宮筋腫の手術後なかなか妊娠に至らず、当院の鍼灸治療を通して自然妊娠に至った症例です
この症例を通して、鍼灸が不妊に悩む方々にとって、希望の光となる可能性を感じていただければ幸いです。

患者さまについて

年齢・性別:
30代の女性。

鍼灸院に来るまでの経緯:
8年前に検診で子宮筋腫を指摘され、経過観察をしていました。
3年半前から妊活を開始し、基礎体温を参考に自分たちでタイミングを試みるも、半年後には下腹部痛が悪化。

病院で子宮筋腫の状態が悪化していると診断され、2年8ヶ月前に腹腔鏡手術を受けられました。

その後、妊活を再開するも、なかなか結果が出ず、2年前からは漢方薬局で漢方薬の服用も開始。

3ヶ月前には近所の婦人科クリニックでご夫婦ともに検査を受けましたが、とくに問題は見当たらず。
「排卵誘発剤を使ったタイミング療法」を勧められ、通院していました。

患者さまの身体的な症状としては、生理痛が非常に強く、鎮痛剤が欠かせない状態でした。

その他、腰痛、目の疲れ、肩こり、冷えよりもほてりを感じる、疲れやすいといった症状も見られました。

これらの症状は、不妊の原因と深く関わっている可能性があり、東洋医学的な観点から詳細に分析する必要がありました。

東洋医学的考察

東洋医学では、妊娠は単に子宮や卵巣だけの問題ではなく、全身のエネルギー(気)や血液(血)の流れ、そして五臓六腑のバランスが深く関わっていると考えます。

この患者様の場合、以下の3つの要素が不妊の要因として考えられました。

瘀血(おけつ):
血の巡りが滞っている状態。
子宮筋腫の手術歴や生理痛の強さから、骨盤内の血流が滞り、子宮や卵巣への栄養供給が不足している可能性が示唆されました。

腎虚(じんきょ):
腎は生命の根源となるエネルギーを蓄える場所と考えられており、生殖機能とも密接な関係があります。
疲れやすさや腰痛などの症状から、腎の機能低下が疑われました。

気滞(きたい):
気の流れが滞っている状態。
ストレスや精神的な緊張などが原因で起こりやすく、気の流れが滞ると血の巡りも悪化し、様々な不調を引き起こします。

これらの東洋医学的な考察を踏まえ、患者様の体質に合わせた治療を行うことが重要となります。

治療方針

当院では、患者様の状態を詳細に把握するために、丁寧な問診と脈診、舌診を行いました。
その結果、上記の東洋医学的な考察に基づき、以下の治療方針を立てました。

瘀血の改善:
血の巡りを促進するために、気の巡りを整えるツボや血行促進作用のあるツボを選び、鍼灸治療を行います。

腎の補強:
腎の機能を高めるツボを選び、身体の根本的なエネルギーを高める治療を行います。

心身のリラックス:
ストレスを緩和し、心身のリラックスを促すツボを併用することで、気の流れをスムーズにし、自然治癒力を高めます。

これらの治療方針に基づき、鍼灸、温灸、灸頭鍼などを組み合わせて治療を行いました。

治療経過

初回:
仰向けで「関元」周辺に棒温灸。「曲池」「足三里」「陰陵泉」「太谿」に置鍼。「三陰交」にせんねん灸。
うつ伏せで「風池」「心兪」「肝兪」「志室」「次髎」に置鍼。「神道」「命門」に温灸を行いました。

その後1週間に1回のペースで4回、その後は1~2週間に1回のペースで治療を継続しました。
施術内容は初回に準じつつ、その都度の患者様の体調や天候などにより、お灸を増やしたり貼る鍼(円皮鍼)を貼ったりなど調整しました。

鍼灸治療開始後の最初の生理で、患者さまは生理痛が楽になったことを実感されました。

その後も生理痛の軽減が見られ、3周期目には病院でのタイミング指導がないにも関わらず、自然なタイミングで妊娠に至りました。

不正出血が見られたものの、病院ではホルモンバランスの乱れと診断された周期での妊娠だったため、患者さまも当院も大変驚きました。

妊娠が分かってからは、つわり対策を中心とした治療に切り替えました。
「中脘」「関元」に温灸、「内関」「足三里」「太谿」に置鍼、「三陰交」にお灸、「膈兪」「肝兪」「脾兪」「腎兪」に置鍼、「至陽」「命門」に温灸を行いました。

その後も、妊娠中のマイナートラブル(足のつり、お腹の張り、片頭痛、貧血、腰痛など)に対応する治療を継続し、妊娠35週まで施術を行い、無事出産を迎えられました。

使用した主なツボとその代表的な効果

関元(かんげん):
気を補い、生殖機能を高める効果があります。

曲池(きょくち):
血行促進、免疫力向上、肩こりや目の疲れの緩和に効果があります。

足三里(あしさんり):
胃腸の働きを整え、全身の気を補う効果があります。

陰陵泉(いんりょうせん):
水分代謝を整え、むくみや冷えの改善に効果があります。

太谿(たいけい):
腎の機能を高め、生殖機能をサポートします。

三陰交(さんいんこう):
婦人科系の疾患に効果があり、血行促進、ホルモンバランスの調整に役立ちます。

風池(ふうち):
肩こり、頭痛、目の疲れの緩和に効果があります。

心兪(しんゆ)、肝兪(かんゆ)、脾兪(ひゆ)、腎兪(じんゆ):
背部に位置し、それぞれ心、肝、脾、腎の機能を調整し、全身のバランスを整えます。

志室(ししつ):
腎の機能を高め、腰痛の緩和に効果があります。

次髎(じりょう):
骨盤内の血行を促進し、婦人科系の疾患に効果があります。

神道(しんどう)、命門(めいもん):
全身のエネルギーを高め、生命力を活性化します。

中脘(ちゅうかん):
胃腸の働きを整え、つわりの緩和に効果があります。

内関(ないかん):
吐き気や嘔吐を抑える効果があり、つわり対策に有効です。

膈兪(かくゆ):
横隔膜の緊張を緩和し、呼吸を楽にします。

至陽(しよう):
全身の気を巡らせ、様々な不調を改善します。

まとめ

この症例は、子宮筋腫の手術後、長年不妊に悩んでいた女性が、当院の鍼灸治療を通して自然妊娠に至ったケースです
排卵誘発剤を使ったタイミング療法と併用することで、鍼灸治療が妊娠を後押しする力強い味方となり得ることが示されました

また、妊娠期間中も鍼灸治療を継続することで、つわりやマイナートラブルを乗り越え、無事出産まで至ることができました。

当院では、東洋医学の深い知識と経験に基づき、患者さま一人ひとりの体質や症状に合わせたオーダーメイドの治療を提供しています。

不妊でお悩みの方はもちろん、様々な体調不良でお困りの方も、ぜひ一度当院にご相談ください。

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