頚椎症由来の腕の痛みと手のしびれへの鍼灸症例|鎌ケ谷市在住70代女性

腕から手の痛みしびれへの鍼灸治療

鍼灸症例:肩から腕痛み・写真1
近年、高齢化社会の進展に伴い、頚椎症に悩む方が増加傾向にあります。
頚椎症は、首の骨(頚椎)の変形や椎間板の変性などが原因で、首の痛みや肩こりだけでなく、腕や手に痛みや痺れを引き起こすことがあります。

今回は、70代女性への当院での症例から、頚椎症由来の腕の痛みと手の痺れへの鍼灸の有効性をご紹介いたします

患者さまについて

年齢性別:
70代女性・鎌ケ谷市在住

主訴:
右腕の痛み、肘から手の痺れ

既往歴:
腰部脊柱管狭窄症、高血圧、糖尿病、緑内障、不眠、便秘

現病歴:
3週間前から右腕に痛み、肘から手に痺れを感じるようになった。
3日前に症状が悪化したため整形外科を受診。
レントゲン検査の結果、「頚椎からくる症状」と診断され、痛み止め薬を処方された。
薬を飲み始めて2日間は幾分楽になったものの、他にできることはないかと当院を受診し、鍼灸治療を希望された。

朝の寝起きは比較的良好だが、特定の動作で痛みが出たり、同じ姿勢を続けていると痺れや痛みが増強する状態であった。

東洋医学的考察

東洋医学では、痛みや痺れは「不通即痛(ふつうそくつう)」、つまり気血の流れが滞ることで痛みが生じると考えます。

今回の患者様は、高齢であることに加え、高血圧、糖尿病といった基礎疾患を有しており、もともと血流が滞りやすい体質であると考えられます。
さらに、季節的に冷えが強まってきたことも重なり、首から肩にかけての気血の巡りが著しく阻害された状態と推察しました。

治療方針

上記を踏まえ、以下の治療方針を立てました。

首肩部の気血の流れの改善:
局所への鍼灸治療により、滞った気血の流れを促進し、痛みと痺れの緩和をはかる。

脾腎の補益:
年齢と基礎疾患を考慮し、体の根本的なエネルギーである脾腎の機能を高めることで、気血の生成を促し、症状の根本改善を目指す。

治療経過

1回目
伏臥位(うつ伏せ)で、首・肩と腕のコリが顕著な部位に鍼と点灸(艾を米粒大にひねって直接皮膚の上で燃やすお灸)を施しました。
これは、患部の血行を直接的に促進し、筋肉の緊張を緩和する目的で行いました。

2回目(1週間後)
仰臥位(仰向け)で、お腹のツボである「中脘(ちゅうかん)」と「関元(かんげん)」に棒温灸(艾を棒状に固めたものを使用するお灸)を行いました。
これらは内臓系の機能を高め、全身の気血を養う効果があります。

さらに、右手の「曲池(きょくち)」「外関(がいかん)」、足の「足三里(あしさんり)」「三陰交(さんいんこう)」に鍼を施しました。
「曲池」は肘の痛みや痺れに、「外関」は腕全体の痺れに効果があるとされています。
「足三里」は胃腸の働きを整え、全身の活力を高める重要なツボであり、「三陰交」は婦人科疾患や冷え症に効果を発揮します。
足先にはホットパックを使用し、全身の血行促進を図りました。

伏臥位では、背部の「心兪(しんゆ)」「膈兪(かくゆ)」「肝兪(かんゆ)」に鍼と円皮鍼(短い鍼をテープで固定するもの)を施しました。
これらのツボはそれぞれ心臓、横隔膜、肝臓と関連があり、内臓機能を調整し、気血の巡りを改善する効果があります。

さらに、首から肩にかけての局所に点灸を行いました。

3回目(2週間後)
患者様からは、「少しずつ痛みや痺れが改善している」との報告がありました。前回と同様の治療を行いました。

4回目(1週間後)
しびれはほぼ消失し、無理な動かし方をした時のみ痛みを感じる程度まで改善しました。
前回と同様の施術を行い、腕から手の症状はほぼ改善したため、一旦鍼灸治療を終了としました。

使用した主なツボとその代表的な効果

中脘(ちゅうかん):
胃の不調、消化不良、全身の倦怠感などに効果的。

関元(かんげん):
生殖器系、泌尿器系の不調、冷え症、精力減退などに効果的。

曲池(きょくち):
肘の痛み、痺れ、皮膚疾患などに効果的。

外関(がいかん):
腕の痺れ、肩こり、頭痛などに効果的。

足三里(あしさんり):
胃腸の働きを整え、全身の活力を高める。

三陰交(さんいんこう):
婦人科疾患、冷え症、むくみなどに効果的。

心兪(しんゆ):
心臓の機能調整、精神安定に効果的。

膈兪(かくゆ):
横隔膜の緊張緩和、呼吸器系の不調に効果的。

肝兪(かんゆ):
肝臓の機能調整、眼精疲労、イライラなどに効果的。

まとめ

今回の症例では、頚椎症に起因すると思われる腕の痛みと手の痺れに対し、鍼灸治療が著効を示しました

治療では、局所への鍼灸と全身の気血を補う治療を組み合わせることで、症状の改善と体質改善の両面からアプローチしました。

患者さまは腰部脊柱管狭窄症の治療で整形外科のリハビリを継続されていたため、今回の鍼灸治療は「腕の痛みと手の痺れのみ」を対象としており、症状の改善をもって終了となりました。

しかし、鍼灸治療は本来、他の疾患への対策や健康増進にも大いに役立ちます。
今回の経験を通して、患者さまにも継続的な鍼灸治療の有用性をご理解いただけたのではないかと考えております。

この記事を通して、当院の鍼灸治療にご興味を持っていただけたら幸いです。

頚椎症の詳しいページはこちら。

頚椎症

手足のしびれの詳しくはこちら

手足のしびれ