風邪予防に効くツボ
東洋医学での風邪予防に効くツボ
今回は、多くの方が経験する「風邪(カゼ)」について、東洋医学の視点から解説し、予防と対策についてご紹介します。
この記事を通して、東洋医学(鍼灸)がどのように皆様のお役に立てるのかを知っていただければ幸いです。
西洋医学での風邪とは
風邪の多くはウイルス感染によって引き起こされます。
インフルエンザウイルスやその他の呼吸器系ウイルスの流行は毎年起こります。
これらも広義には「風邪」の一種と言えます。
ウイルスは種類が多く、変異を繰り返すため、根本的な治療薬は限られています。
インフルエンザには抗インフルエンザ薬がありますが、一般的な風邪に対して処方される西洋薬は、喉の痛み、鼻水、発熱といった症状を緩和することを目的としています。
最終的にウイルスを退治するのは、私たち自身の体が持つ「免疫力」であり、西洋薬はその免疫力を側面からサポートする役割を果たします。
東洋医学での風邪とは
東洋医学では、風邪は冬の乾燥した寒い時期に罹りやすいと考えます。
2千年以上前から存在する東洋医学では、ウイルスや細菌の存在は知られていませんでしたが、「風邪(ふうじゃ)」や「寒邪(かんじゃ)」といった独自の「邪気」の概念を持っていました。
例えば、薄着で外を歩いていて背筋がゾクゾクし、風邪をひいた経験はありませんか?
東洋医学では、このような状態は外から邪気が体内に侵入し、風邪の症状を引き起こしたと考えます。
邪気には、寒、風、湿、熱、燥などがあり、「ゾクゾク型」の風邪は、寒と風の邪気が背中から侵入したと考えます。
もちろん、邪気がやってきても、私たちの「元気(生命力)」が強ければ、邪気に侵されることはありません。
つまり、疲れやストレスなどで心身が弱っている時に邪気に当たり、風邪をひきやすくなると考えます。
このような独自の解釈モデルに基づき、東洋医学には独自の治療モデルがあります。
邪気を払い、元気を補うことで、病気と闘う力(=免疫力)を活性化しようという考え方です。
ご家族やお子様が風邪をひいてしまった場合、西洋薬だけでなく、東洋医学を併用することで、より効果的な症状の緩和や早期回復が期待できます。
東洋医学の強みは「予防」
東洋医学では、「自分の持つ治癒力(=病気と闘う力)を高い状態に保っておけば、病気にかかりにくい」という考え方を重視しています。
そのため、東洋医学の知恵は主に「予防」に活用することが効果的です。
もちろん、罹ってしまった後にも活用できますが、罹る前から、あるいは罹り始めに効果を発揮しやすいと言えるでしょう。
風邪予防に効くツボ
東洋医学の柱は漢方薬と鍼灸ですが、今回はとくに鍼灸による風邪予防のツボをご紹介します。
先述の通り、身体の元気を維持しつつ風邪を払うのに適したツボを、セルフケアで継続しやすいように厳選してご紹介します。
足三里
ひざのお皿のすぐ下、外側のくぼみに人さし指をおき、指幅4本そろえて小指があたっているところが足三里です。
胃腸の働きを整え、免疫力を高める効果が期待できます。お灸がおすすめです。
合谷
親指と人さし指の骨がまじわったところから、やや人さし指よりのへこみが合谷です。
体表の邪気を払う効果があるとされ、風邪の初期症状の緩和に役立ちます。こちらも、お灸がおすすめです。
大椎から風門あたり
イラストのあたり。
背中にあるツボで、体を温め、寒邪を追い出す効果が期待できます。ドライヤーやホットパックで温めるのがおすすめです。
ツボを自分で探す時のコツ
より効果的なツボをご自身で探す際は、以下の点を意識してみてください。
ツボの基本位置を確認
鍼灸院での指導や書籍、ウェブサイトなどでツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴の場合、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりに位置します。
押して探す
だいたいの目安の場所の近辺を指で軽く押しながら、周囲を探ります。
「イタ気持ちいい」感覚や、ズーンと響くような感覚がある場所が、ツボの可能性が高いです。
合谷であれば、骨の交わる部分からやや人差し指側を探ると、凹みがあり、圧痛を感じる場所が見つかるはずです。
体の反応をみる
ツボを押すと、血行が良くなったり、体が温まったりする感覚がある場合があります。
ただし、ツボの位置は個人差がありますので、あくまで目安として捉え、無理に強い力で押さないように注意しましょう。
もし不安な場合は、鍼灸師などの専門家にご相談ください。
せんねん灸(台座灸)の使い方と注意点
ご自宅で手軽にできるセルフお灸として、「せんねん灸」の使い方と注意点について解説します。
「せんねん灸」は、ドラッグストアなどで手軽に購入できるお灸の製品名です。
せんねん灸タイプのお灸は「台座灸」と呼びます。
せんねん灸と似たような形の他の商品も多数あり、使用方法などは基本的には同様です。
せんねん灸の使い方
種類を選ぶ
「せんねん灸」には様々な種類があります。
「ソフト(弱)」「レギュラー(中間)」「あつめ(強)」の3つの種類があります。
初めての方は、熱さが「マイルドなタイプ」から試してみることをお勧めします。
ツボの場所を決める
どのツボを使うかはあらかじめ決めておき、ツボの目安を指でさぐりながらより効き目の高いポイントを決めて、ペンなどで印をつけます。
準備
お灸を据える場所を清潔にし、皮膚に異常がないか確認します。
台座の裏紙を剥がす
「せんねん灸」の台座裏についている薄い紙を剥がします。
もぐさに点火
巻きもぐさの先端に線香などで火をつけます。
皮膚に据える
火がついた「せんねん灸」を、ツボに据えます。
熱さを感じたら、無理せずすぐに取り外してください。我慢は禁物です。
取り外す
使用後、完全に火が消えていることを確認してからとりあえずして、捨ててください。
お灸をする上での注意事項
・熱さを我慢しない
熱すぎると感じたら、すぐに取り外してください。無理に我慢すると、やけどの原因になります。
・同じ場所に続けて据えない
皮膚に負担がかかるため、同じ場所に続けてお灸を据えるのは避けましょう。
・顔面、粘膜、傷口、炎症部位への使用は避ける
これらの部位は皮膚がデリケートなため、お灸の使用は避けてください。
・発熱時、飲酒時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける
体調が優れない時は、お灸を控えるようにしましょう。
・皮膚の弱い方、アレルギー体質の方は注意
使用前に必ずパッチテストを行うか、医師や薬剤師に相談してください。
・使用中に異常を感じたら、直ちに使用を中止し、医師に相談
万が一、皮膚に異常が現れた場合は、すぐに使用を中止し、医師の診察を受けてください。
・乳幼児への使用は避ける
小さなお子様への使用はお控えください。
・火の取り扱いに注意
火を使うため、火災には十分に注意してください。
周囲に燃えやすいものがないことを確認し、換気をしながら行いましょう。
上記に注意して、安全にせんねん灸をご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。
ドライヤーお灸のやり方と注意事項
ドライヤーお灸は、火を使わずにドライヤーの温風を利用してツボを温める、手軽で安全な方法です。
広い範囲を温める場合や、火を使うお灸に抵抗がある方や、初めてお灸を試す方におすすめです。
ドライヤーお灸のやり方
準備
ドライヤーと、もしあればですが、姿見もしくは手鏡を用意します。
手鏡があると、背中など見えにくい部分のツボを温める際に便利です。
温風の当て方
ドライヤーを肌から5~10cmほど離します。
近すぎると熱くなりすぎるため、必ず距離を保ってください。
温風の温度は、低温(50~60度程度)に設定します。
ドライヤーに温度調節機能がない場合は、ドライヤーと肌の距離を調整することで熱さを調節します。
熱く感じたらすぐにドライヤーを離すようにしてください。
温風を当てる時間は、1つのツボにつき、熱いと感じたら離す、を5回程度繰り返します。
連続して長時間当て続けるのは避けましょう。
温める場所
特定のツボを意識する必要はありますが、厳密な位置にこだわる必要はありません。
ドライヤーの温風は比較的広い範囲に当たるため、「面」で温めるイメージで大丈夫です。
ツボの周辺をじんわりと温めることで、効果が期待できます。
行う頻度
朝晩2回程度行うのがおすすめです。
ご自身の体調や生活に合わせて、無理のない範囲で行ってください。
ドライヤーお灸の注意事項
・怪我や炎症、痛みなどで熱を持っている部位には使用しないでください。症状が悪化する可能性があります。
・泥酔時や発熱時など、体調がすぐれない場合は使用を控えましょう。
・他人にドライヤーお灸を行うのは避けてください。
温度の感じ方には個人差があり、火傷をさせてしまう可能性があります。
・使用中に皮膚に異常(赤み、かゆみ、痛みなど)が現れた場合は、直ちに使用を中止し、必要に応じて医師に相談してください。
・同じ部位に長時間当て続けないように注意してください。
低温火傷の原因となることがあります。
風邪予防のための生活習慣
毎年冬には様々な感染症に関する報道がされます。
私たちにできることは、感染しないように努めること、そして感染した場合になるべく早く治るように努めることです。
たとえば新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスなどと同様に、基本的な予防対策は共通しています。
最後に、基本的な備えについて改めてまとめておきます。
健康管理:
ストレスの発散、十分な睡眠、バランスの取れた食事、規則正しい排便などで抵抗力を高める。
人混みを避ける:
人が多く集まる場所はなるべく避ける。
手洗い:
こまめな石鹸を使った手洗い。
手指消毒:
アルコール消毒液で手を消毒するのも効果的。
咳エチケット:
咳やくしゃみをする際は、ティッシュや袖で口鼻を覆う。
湿度管理:
部屋の湿度を適切に保つ。
これらの対策に加えて、東洋医学の知恵、特に鍼灸を取り入れることで、より効果的な風邪予防、そして体質改善が期待できます。
鍼灸院での本格鍼灸のススメ
当院では、東洋医学に基づいた丁寧な問診と脈診、舌診、腹診などの検査を行い、患者様一人ひとりの体質や症状に合わせたオーダーメイドの施術を提供しています。
鍼は痛くなく、お灸は熱すぎない、心地よい施術を心がけておりますので、鍼灸が初めての方でも安心して受けていただけます。
風邪をひきやすい、体質を改善したい、免疫力を高めたい、東洋医学のケアも取り入れたい、などのご希望がある方は、セルフケアに鍼灸院での本格的な施術がおススメです。
風邪の予防、体質改善、健康維持にご興味をお持ちの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。