肩こりがひどく頭痛にも。最近めまいも出た鍼灸症例
肩こり・頭痛・めまいへの鍼灸治療
肩こり、頭痛、めまいは多くの人々を悩ませる不快な症状です。
とくにデスクワーク中心の生活を送る方々にとって、これらの症状は慢性化しやすく、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
今回は、長年これらの症状に苦しんでいた50代の患者さまの症例です。
心身の不調に悩む彼女が、当院の鍼灸治療を通して心身のバランスを取り戻していく過程をご紹介いたします。
この記事を通して、肩こりやめまいなど自律神経の乱れにお悩みの方々に、鍼灸治療という選択肢を知っていただくとともに、当院の治療に対する理解を深めていただければ幸いです。
患者さまについて
年齢・性別:
50代女性
鍼灸院に来るまでの経緯:
15年ほど前からデスクワーク(PC作業)による肩こりに悩まされていました。
肩こりがひどくなると頭痛も引き起こし、月に3~4回程度は頭痛薬を服用する日々を送っていました。
さらに、来院の2週間ほど前から「心がしんどく」なり、めまいを感じるようになったと言います。
不安を感じ心療内科を受診したところ、「予期不安」と診断され抗不安薬を処方されましたが、服用しても症状に変化が見られませんでした。
病院と違う方法での改善を期待して、鍼灸治療を試すために当院を受診されました。
彼女は仕事と体調不良の板挟みになり、心身ともに疲弊している状態でした。
東洋医学的考察
東洋医学では、身体の不調は「気・血・水(き・けつ・すい)」の 量の過不足と巡り(めぐり)の乱れによって引き起こされると考えます。
今回の患者様の場合、長年のデスクワークによる姿勢の悪さや精神的なストレスが、気の巡りを滞らせる「気滞(きたい)」と血の巡りを悪くする「瘀血(おけつ)」の状態を引き起こしていると考えられました。
また、「心がしんどい」という訴えから、精神活動を司る「心(しん)」の機能低下、すなわち「心気虚(しんききょ)」の状態も併発していると判断しました。
さらに、めまいは「肝(かん)」の機能失調とも関連が深く、「肝陽上亢(かんようじょうこう)」と呼ばれる状態も考慮する必要がありました。
これらの状態は相互に影響し合い、症状を複雑化させていると考えられます。
治療方針
上記の東洋医学的考察に基づき、今回の治療では以下の点を重視しました。
気血の巡りの改善:
全身の気の巡りを整え、とくに首肩周辺の血行を促進することで、肩こりや頭痛の緩和を目指します。
心(しん)の安定:
心の働きを整え、精神的な不安や緊張を和らげることで、めまいの改善と心の安定を図ります。
肝(かん)の調整:
肝の機能を整え、気の巡りをスムーズにすることで、めまいの改善を目指します。
根本原因へのアプローチ: 単に症状を抑えるだけでなく、根本的な原因である生活習慣や精神的なストレスにも着目し、体質改善を促します。
これらの治療方針に基づき、鍼とお灸を組み合わせた施術を行うこととしました。
治療経過
1回目:
仰向けで、「合谷」「三陰交」「太衝」に置鍼をしました。「中脘」「関元」には棒温灸をしました。足先にホットパックを当て温めました。
うつ伏せで、「百会」「風池」「天柱」「肩井」「心兪」「肝兪」「脾兪」に鍼と円皮鍼をしました。
全身の気の巡りを整えることを目的としたツボ(合谷、三陰交、太衝など)に鍼を施し、体を温めるお灸とホットパックを使用。
また、首肩のコリ、精神安定に効果のあるツボ(百会、風池、天柱、肩井、心兪、肝兪、脾兪など)に鍼と円皮鍼を使用しました。
2回目(1週間後):
施術後、肩こりは一時的に楽になったものの、数日後に元の状態に戻ってしまったとのことでした。
これは、長年のデスクワークによる影響が大きいと考えられました。
前回同様の施術に加え、肩こりの局所にはパルス鍼を追加し、足三里にはせんねん灸を追加しました。
パルス鍼は、電気刺激を流すことで筋肉の緊張をより効果的に緩和する治療法です。
3・4回目(1週間に1回ペース):
施術を重ねるごとに、めまいはほぼ消失し、「心のしんどさ感」も大幅に軽減しました。
これは、鍼灸治療が心身のバランスを整え、自律神経の働きを正常化した結果であると考えられます。
肩こりに関しては、慢性化しているため、改善には時間がかかることを伝え、施術を継続しました。
5回目以降(10日~2週間に1回ペース):
症状が安定してきたため、施術間隔を徐々に延ばしていきました。
当初は週1回のペースでしたが、10日に1回、そして2週間に1回と間隔を空けても症状が安定しているため、現在は2週間に1回のペースで治療を継続しています。
使用した主なツボとその代表的な効果
合谷(ごうこく):
手の甲にあるツボで、鎮痛作用や血行促進作用があり、頭痛、肩こり、目の疲れなどに効果があります。
三陰交(さんいんこう):
足の内くるぶしの上にあるツボで、婦人科系の疾患や冷え性、むくみなどに効果があります。
太衝(たいしょう):
足の甲にあるツボで、精神安定作用や肝機能の調整作用があり、イライラ、不眠、めまいなどに効果があります。
中脘(ちゅうかん):
お腹にあるツボで、胃腸の働きを整え、消化不良、食欲不振などに効果があります。
関元(かんげん):
お腹にあるツボで、全身のエネルギーを高め、冷え性、疲労倦怠感などに効果があります。
百会(ひゃくえ):
頭のてっぺんにあるツボで、精神安定作用や頭痛、めまいなどに効果があります。
風池(ふうち):
首の後ろにあるツボで、頭痛、肩こり、目の疲れなどに効果があります。
天柱(てんちゅう):
首の後ろにあるツボで、首肩のコリ、頭痛などに効果があります。
肩井(けんせい):
肩にあるツボで、肩こり、首の痛みなどに効果があります。
心兪(しんゆ):
背中にあるツボで、精神安定作用、動悸、不眠などに効果があります。
肝兪(かんゆ):
背中にあるツボで、肝機能の調整、目の疲れ、イライラなどに効果があります。
脾兪(ひゆ):
背中にあるツボで、胃腸の働きを整え、食欲不振、消化不良などに効果があります。
足三里(あしさんり):
膝の下にあるツボで、胃腸の働きを整え、全身の倦怠感、足のむくみなどに効果があります。
まとめ
今回の症例を通して、鍼灸治療が肩こり、頭痛、めまいといった慢性的な症状だけでなく、「心のしんどさ」といった精神的な不調にも効果を発揮することがお分かりいただけたかと思います。
当院では、単に症状を和らげるだけでなく、東洋医学に基づいた丁寧な診察を通して、患者様一人ひとりの体質や状態に合わせたオーダーメイドの治療を提供しています。
「どこに行っても良くならない」「薬を飲んでも効果がない」とお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
心身のバランスを取り戻し、より健やかな生活を送るためのお手伝いをさせていただきます。
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