鍼灸の種類 – いろんな流派があるの?|鍼灸の世界・6
鍼灸の流派
このシリーズでは、鍼灸の世界をより身近に感じていただけるよう、様々な情報をお届けしています。
今回は第6回。
今回のテーマは「鍼灸の流派の違い」です。
「鍼灸って、どこで受けても同じなのかな?」
「流派とか、あるの?」
そう思われたことはありませんか?
実は、鍼灸の世界は、皆さんが想像されているよりもずっと奥深く、そして多様なんです。
一口に「鍼灸」と言っても、その考え方や施術のアプローチには、様々な「種類」や「流派」が存在します。
今回は鍼灸の流派について解説します。
伝統鍼灸:歴史と経験が詰まった手法
「伝統的な鍼灸」と呼ばれるアプローチです。
これは、数千年という長い歴史の中で培われてきた、鍼灸の根幹をなす考え方であり、その中でもいくつかの代表的な「考え方」が存在します。
伝統的な鍼灸に共通するのは、東洋医学の思想に基づいて行われるという点です。
東洋医学では、私たちの体は「気(き)」や「血(けつ)」といったエネルギーが滞りなく巡ることで健康が保たれていると考えます。
そして、この巡りが悪くなったり、バランスが崩れたりすると、様々な不調が現れると考えます。
体の不調を単に局所的な問題として捉えるのではなく、体全体のバランスの乱れとして捉え、その根本原因にアプローチすることで、症状の改善だけでなく、体質そのものを整えていくことを目指します。
この伝統的な鍼灸の世界には、主に中国で発展した考え方と、それが日本に伝わって独自に発展した考え方があります。
中国で発展した伝統鍼灸:「中医学(ちゅういがく)」
伝統的な鍼灸の代表格とも言えるのが、中国で体系的に発展した「中医学」に基づいた鍼灸です。
中医学では、体の状態を把握するために「弁証論治(べんしょうろんち)」という考え方を非常に大切にします。
これは、患者さんの訴え(症状)だけでなく、顔色、声の調子、そして特に脈(みゃく)やお腹、舌(した)の状態などを詳しく観察し、集めた情報を総合的に分析することで、その人の体の状態が今どうなっているのか(これを「証(しょう)」と呼びます)を判断し、それに基づいて最適な治療方針を決める、というアプローチです。
体内の「臓腑(ぞうふ)」(例えば、肝、心、脾、肺、腎といった、単なる臓器の名称ではなく、東洋医学的な機能のまとまり)や、「気・血・水(き・けつ・すい)」といった生命エネルギーのバランス、そしてそれらが巡る通り道である「経絡(けいらく)」の状態を重視します。
これらのバランスが崩れることで病気や不調が現れると考え、鍼や灸を使ってこれらのバランスを整えることを目指します。
中医学に基づいた鍼灸では、比較的太めの鍼を使用したり、ツボに対してしっかりと「響き(ひびき)」を感じさせるような、やや強めの刺激を用いる流派もあります。
鍼の刺激には様々な感じ方があり、心地よい響きと感じる方もいれば、ズーンと重く感じる方もいらっしゃいます。
日本での中医鍼灸は、「太い鍼で強刺激」という大陸スタイルではなく、日本人に合わせた「必要最小限の刺激」の施術を行っている鍼灸院がほとんどです。
また、現在の日本の鍼灸学校での東洋医学教育は、中医学がベースとなっています。
日本で独自に発展した伝統鍼灸:「経絡治療(けいらくちりょう)」など
一方、日本にも中国から伝わった鍼灸が、長い歴史の中で独自の発展を遂げた「伝統的な鍼灸」の流派があります。
その中でも代表的なものの一つが「経絡治療(けいらくちりょう)」です。
経絡治療は、その名の通り「経絡」という、体の中を流れる生命エネルギーの通り道を特に重視する考え方です。
私たちの体には、目には見えませんが、全身を巡る経絡があり、この経絡の流れが滞ったり、エネルギーが不足したり過剰になったりすることで、体の様々な場所に不調が現れると考えます。
経絡治療では、施術に入る前に、患者さんの体の状態を丁寧に把握するために、脈(やお腹)の状態を細かく診ることを非常に重視します。
脈の状態は、体内の経絡や臓腑のエネルギー状態を映し出す鏡と考えられており、ここに現れる微妙な変化を読み解くことで、不調の根本原因や、体全体の「虚実(きょじつ)」(エネルギーが不足しているか、あるいは詰まって滞っているか)を見極めます。
この丁寧な診断に基づき、全身に点在するツボの中でも、特に体全体のバランスを整え、滞った経絡の流れをスムーズにしたり、不足したエネルギーを補ったりするのに効果的なツボを選んで施術を行います。
日本の伝統的な鍼灸、とくに経絡治療では、一般的に非常に細い鍼を使用し、皮膚に優しく触れるか、あるいはほとんど痛みを感じない程度に浅く刺すなど、心地よく響かせるような、優しい刺激の施術が多い傾向があります。
これは、体のデリケートなエネルギーである「気」を傷つけないように、また、患者さんがリラックスして施術を受けられるように、といった配慮に基づいています。熱くないお灸を併用することも多いです。
当院の施術は、中医学的な考えをバックボーンに、日本の様々な先人の伝統的鍼灸の考え方も取り入れています。
東洋医学の視点から体の状態を判断し、そして、全身の経絡やツボを使って、皆さんの体質改善をサポートいたします。
現代鍼灸:科学的な根拠に基づいた手法
一方、「現代鍼灸」と呼ばれるアプローチもあります。
これは、比較的新しい鍼灸の考え方で、西洋医学的な視点を取り入れていることが特徴です。
解剖学や生理学といった科学的な知識に基づいて、体の構造や機能、病気のメカニズムを理解し、鍼灸の効果を説明しようと試みます。
現代鍼灸では、特定の筋肉の凝りや、神経の圧迫、血行不良などが症状の原因であると考え、それらの部位に対して集中的に鍼や灸を用いたり、電気刺激を併用したりすることがあります。
例えば、肩こりであれば肩や首周りの筋肉、坐骨神経痛であればお尻や足の神経経路といったように、原因と考えられる局所や関連する部位へのアプローチが中心となることが多いです。
ペインクリニックなどで行われる鍼治療や、スポーツ選手のコンディショニングに使われる鍼なども、この現代鍼灸の考え方に近いと言えるでしょう。
痛みの緩和や筋肉の緊張緩和など、比較的はっきりとした症状に対して、即効性を期待して用いられることもあります。
伝統鍼灸が「体全体のバランスを整える」ことを重視するのに対し、現代鍼灸は「特定の部位や機能を改善する」ことに焦点を当てることが多い、と言えるかもしれません。
どちらのアプローチも、鍼灸の効果を引き出す素晴らしい方法です。
そして、実際には伝統鍼灸と現代鍼灸の考え方を組み合わせて施術を行う鍼灸院も多く存在します。
大切なのは、どちらが優れているか、ではなく、患者さん一人ひとりの状態や目的に対して、どのようなアプローチが最も有効か、ということです。
当院では、東洋医学に基づいた伝統鍼灸を専門としていますが、現代医学的な視点での研究や論文も意識しています。
また、説明も時間をかけて分かりやすく行うことで、科学的な視点からも鍼灸の効果や体の状態を理解していただけるよう努めています。
その他:美容鍼、小児鍼など
伝統鍼灸、現代鍼灸の他にも、特定の目的や対象に特化した鍼灸のアプローチがあります。
例えば、最近ネットや雑誌でもよく見かけるようになった「美容鍼(びようしん)」。
これは、顔や頭部に細い鍼を刺すことで、顔の筋肉のコリをほぐしたり、血行を促進したり、肌のターンオーバーを整えたりすることを目指すものです。
リフトアップやむくみの改善、肌のトーンアップ、しわやたるみの軽減など、見た目の美しさを引き出すことを目的に行われます。
40代になり、「最近、顔のくすみが気になる…」「ほうれい線が深くなってきた…」といったお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
美容鍼は、そんなエイジングのお悩みに寄り添う、嬉しい鍼灸の一つです。
お顔だけでなく、全身のバランスを整える施術と組み合わせることで、内側からの輝きを引き出すことも可能です。
また、小さなお子さん向けの「小児鍼(しょうにしん)」というものもあります。
「子供に鍼なんて!」と驚かれるかもしれませんが、小児鍼で使うのは、大人のように皮膚に刺すタイプの鍼ではありません。
多くの場合、専用の、皮膚を撫でたりさすったりする、刺さないタイプの鍼を使います。
優しく皮膚に刺激を与えることで、お子さんの夜泣きや疳の虫(かんのむし)、便秘、おねしょといった症状の緩和を目指します。
心地よい刺激で、お子さんをリラックスさせてあげる効果も期待できます。
「鍼は痛い!」というイメージをお持ちの方にとっては、小児鍼のように「刺さない鍼」があることを知るだけで、鍼灸へのハードルがぐっと下がるかもしれませんね。
当院では、大人の施術でも「痛くない鍼」「熱くないお灸」を心がけていますので、ご安心ください。
他にも、耳の特定のツボを刺激する「耳鍼(じしん)」や、スポーツ選手のパフォーマンス向上やケガの回復を目的とした「スポーツ鍼灸」、婦人科疾患や不妊治療に特化した鍼灸など、本当に様々な種類のアプローチがあります。
このように、鍼灸は私たちの体の様々な悩みや、多様なニーズに応えられる、とても幅の広い治療法なのです。
結局、どれを選べばいいの?
ここまで、鍼灸には色々な種類があることをお話ししてきました。
では、「自分にはどんな鍼灸が合うのだろう?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。
流派の違いに関わらず、その鍼灸院が自分のお悩みに合い、信頼できそうだと感じられるところが良いですよね。
あとは慢性病の場合、やはり継続することも大事になるので、通いやすい場所であることも重要です。
鍼灸院を選ぶ際には、いくつかのポイントがあります。
■施術者の経験や実績
どのくらいの期間、どれくらいの人数を施術してきたのか。
■施術方針
どのような考え方で施術を行っているのか(古典的なのか、現代的なのか、両方なのか)。
■得意な症状
自分の悩みに対応できる、あるいは得意としている疾患は何か(不妊治療、婦人科系、自律神経など)。
■施術スタイル
痛くないか、熱くないか、など、心地よく受けられるかどうか。
■コミュニケーション
施術前にしっかりと話を聞いてくれるか、分かりやすく説明してくれるか。
■アクセスの良さや雰囲気
通いやすい場所にあるか、院内の雰囲気はどうか。
これらの点を踏まえて、いくつかの鍼灸院の情報を集めたり、実際に問い合わせてみたり、体験施術を受けてみるのも良いかもしれません。
まとめ
今回は、鍼灸にも様々な種類やアプローチがあることをお話ししました。
伝統鍼灸、現代鍼灸、そして美容鍼や小児鍼など、それぞれの特徴を知ることで、鍼灸が持つ可能性や、ご自身の悩みにどのように寄り添ってくれるのか、少しイメージが掴めたのではないでしょうか。
大切なのは、ご自身の体の状態や目的に合わせて、どのような鍼灸が合っているのかを知り、信頼できる鍼灸師、鍼灸院を見つけることです。
当院は、東洋医学に基づいた体質改善を重視し、一人ひとりに寄り添う丁寧なカウンセリングと、心地よい施術で、皆さんの心身の健康をサポートいたします。
次回は… 「鍼灸院の選び方」について話します。
どうぞお楽しみに!り添ってくれるはずです。