【八千代市】鍼灸症例|PCOS・チョコレート嚢胞による不妊|採卵16個・胚盤胞9個から妊娠判定まで
【PCOS・チョコレート嚢胞】体外受精の成功率を高める不妊鍼灸の症例

※本記事は国家資格(はり師・きゅう師)を保有する院長が執筆しています。
※当院の実際の症例に基づきますが、患者様のプライバシー保護のため、個人が特定されないよう一部情報を変更して記載しております。
※効果には個人差があります。
「生理周期が安定しない」
「排卵誘発剤や人工授精を続けているけれど結果につながらない」
「体外受精を控えているので、少しでも身体の状態を整えたい」
このようなお悩みを抱えている方は少なくありません。
今回ご紹介するのは、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とチョコレート嚢胞があり、生理不順や生理痛にも悩まれていた20代女性の不妊鍼灸症例です。
患者様はタイミング療法や人工授精を経て体外受精へ進むことを決断され、その準備期間から鍼灸治療を開始されました。
この記事では、実際の経過や東洋医学的な考え方、施術中に重視したポイントについて鍼灸師の視点から詳しくご紹介します。
患者さまの情報と経緯
年齢・性別・お住まい:
20代 女性・八千代市
鍼灸院に来るまでの経緯:
10代(学生時代)から生理不順に悩まされ、2~3ヶ月生理が来ないことも珍しくありませんでした。
婦人科を受診し、漢方薬を処方されていましたが、根本的な解決には至っていませんでした。
約1年半前から、ご夫婦で妊活を開始されました。
自分たちでタイミングを見計らっていましたが、元々の生理不順が影響し、なかなか妊娠には至りませんでした。
妊活開始から半年ほど経ち、改めて婦人科で詳しい検査を受けたところ、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」と「卵巣のチョコレートのう胞(子宮内膜症の一種)」があることが判明しました。
PCOSは排卵障害を引き起こしやすく、チョコレートのう胞は卵巣機能の低下や着床環境への影響が懸念される状態です。
医師の指導のもと、まずは排卵誘発剤を使用したタイミング療法を3周期試みましたが、結果には結びつきませんでした。
その後、人工授精(AIH)にも3回挑戦されましたが、残念ながら妊娠には至りませんでした。
次のステップとして体外受精(IVF)に進むことを決意されました。
同時に、「高額な費用と時間をかける体外受精だからこそ、少しでも成功率を高めたい」「西洋医学的な治療だけでなく、自分の体の状態、いわば”妊娠するための土台”を根本から整えたい」という強い想いから、東洋医学、特に鍼灸による体質改善に関心を持ち、当院のホームページなどをご覧になり、ご来院されました。
主な症状:
・PMS(月経前症候群): 生理の2日前頃からイライラ感が非常に強くなる。
・生理痛: 生理痛も重く、毎回鎮痛薬が手放せない状態。
・冷え性: 特に足先が冷えやすく、冬場はもちろん夏場でも冷えを感じることがある。
・肩こり: デスクワークなどの影響もあり、慢性的な肩こりを感じている。
・便秘: 便通が不安定で、便秘がちである。
これらの症状は、単に不快なだけでなく、東洋医学的に見ると体のバランスの乱れを示す重要なサインであり、不妊とも深く関わっていると考えられます。
この人を東洋医学ではどうみるか?
東洋医学では、私たちの体の健康は「気(き)・血(けつ)・水(すい)」という3つの要素がバランス良く体内を巡ることによって保たれていると考えます。
「気」は生命活動のエネルギー、「血」は血液とその働きおよび栄養、「水」は血液以外の体液全般を指します。これらのバランスが崩れると、様々な不調が現れます。
この患者さまの状態を東洋医学的な視点から詳しく診させていただくと、以下の点が特徴的でした。
■瘀血(おけつ)
最も顕著だったのは、「血(けつ)」の流れが滞っている「瘀血」の状態です。
これは、生理不順、重い生理痛(特に塊状の経血が見られる場合)、チョコレートのう胞の存在などから強く推測されます。
瘀血は、子宮や卵巣への栄養供給を阻害し、妊娠しにくい状態を作り出す大きな要因となります。
鎮痛薬が手放せないほどの生理痛は、典型的な瘀血のサインの一つです。
■陽虚(ようきょ)
足先の冷えは、「陽気(ようき)」すなわち体を温めるエネルギーの不足による冷えや、血行不良による冷えを示唆します。これを「陽虚(ようきょ)」と言います。
■気滞(きたい)
生理前の強いイライラや慢性的な肩こりは、「気」の流れがスムーズでなく、滞っている「気滞」の状態を示します。
ストレスや精神的な緊張は気を滞らせやすく、これが血行にも影響を与え(気滞血瘀)、ホルモンバランスの乱れにも繋がることがあります。
■肝(かん)と腎(じん)の変調
東洋医学でいう「肝」は、気の流れをスムーズに調整し、血を貯蔵する働き、そして精神・情緒の安定に関わります。
PMSのイライラは肝の機能失調(肝気鬱結)と関連が深いです。
一方、「腎」は、生命力の根源であり、成長・発育・生殖機能を司ります。
PCOSや生理不順といった生殖能力に関する問題は、「腎」の機能低下(腎虚)が背景にあると考えられます。
これらのことから、この患者さまは「陽虚」と「気滞」を背景に持ち、「瘀血」が主体となり、根本には「肝」と「腎」の機能失調が関与している状態であると判断しました。
これらの複合的な要因が、PCOS、チョコレートのう胞、そして不妊という状態に繋がっていると考えられました。
治療方針
上記の東洋医学的な考察に基づき、以下の点を重視した治療方針を立てました。
■瘀血の改善(活血化瘀かっけつかお)
最も重要と考えられた血の滞りを取り除くことを第一目標としました。
鍼や灸を用いて気血の巡りを促進し、特に骨盤内の血流を改善することで、子宮や卵巣への栄養供給を高め、チョコレートのう胞の状態改善も目指します。
■冷えの改善(温補散寒おんぽさんかん)
下腹部や足先を温めることで、血行を促進し、瘀血や腎の機能低下を改善します。
お灸や温熱器具を効果的に使用します。
■気滞の改善(疏肝理気そかんりき)
滞った気の流れをスムーズにし、ストレスやイライラを緩和します。
これにより、自律神経やホルモンバランスの安定化を図ります。
■肝腎の機能強化(補肝腎ほかんじん)
生殖機能と深く関わる「肝」と「腎」の働きを補い、強化することで、体質的な問題を根本から改善し、妊娠しやすい体づくりを目指します。
これらの目的を達成するために、患者さま一人ひとりのその日の体調や生理周期(特に体外受精のスケジュール)に合わせて、鍼(はり)、灸(きゅう)、場合によっては円皮鍼(えんぴしん:シール状の小さな鍼)などを組み合わせ、最適なツボを選定し、刺激量も調整しながら、オーダーメイドの治療を行っていくこととしました。
治療内容と実際の経過
1回目(生理周期39日目):
次の生理が開始されたら、体外受精のための採卵周期に入る予定とのことでした。
まずは滞っている経血をスムーズに排出し、次の周期に備えることを目標としました。
仰向けで、気血の巡りを整える基本のツボ(合谷、三陰交など)、肝や腎の機能を高めるツボ(太谿、中封など)に鍼をしました(置鍼:鍼を刺したまま一定時間置く)。
冷えと瘀血が顕著な下腹部(関元など硬さがみられる部分)には、棒温灸でじっくりと温めた後、ピンポイントで効果を高める点灸(透熱灸:米粒大のもぐさを直接皮膚に乗せて燃やす)を行いました。
冷えやすい足先にはホットパックを使用し、温めました。
うつ伏せでは、首肩の緊張を和らげるツボ(風池)、そして肝と腎の機能を直接的に高める背中のツボ(肝兪、腎兪)、骨盤内の血流改善に効果的な仙骨部のツボ(次髎)に置鍼しました。
腎の機能を高めるため、「腎兪」には棒灸で温熱刺激を加え、さらに「腎兪」と「次髎」には、持続的な刺激を目的として円皮鍼を貼付しました。
2回目~7回目(週1回ペース):
初回の施術後、比較的すぐに生理が始まったとのご報告があり、予定通り採卵に向けた通院(ホルモン注射など)が開始されました。
この期間は、良質な卵子を育てること、そして採卵に向けて体のコンディションを整えること、次の移植周期に子宮環境を最高潮に持っていくことを目標に、基本的には初回と同様の施術をベースとしました。
ただし、毎回のお体の状態(ホルモン剤の影響、疲労度、冷えの状態など)を丁寧にお伺いし、その時々で最も気になる症状(例えば、肩こりや、気分の変動など)に対応できるよう、お灸の箇所を増やしたり、円皮鍼を追加したりと、微調整を加えながら施術を行いました。
採卵では、16個の卵子が採取でき、そのうち体外受精・培養を経て、9個の胚盤胞(着床直前の状態まで育った受精卵)を凍結保存することができました。
採卵周期から移植周期になり、鍼灸7回目の施術後に凍結した胚盤胞を移植されました。
8回目(移植後 / 週1回ペース):
待ちに待った判定日を迎え、無事に陽性判定を得られたとの嬉しいご報告をいただきました。
ご本人からは、早くも少し胸のむかつき、気持ち悪さを感じ始めているとのことでした。
この段階からは、治療の目的を「妊娠の維持・継続」と「つわりの軽減」に切り替えました。
着床した胚がしっかりと根付き、成長していけるよう、流産予防を意識したツボを選び、刺激量はよりソフトに調整しました。
とくに、妊娠初期に負担がかかりやすい胃腸の働きを整え、つわりを緩和するツボ(足三里、内関など)を重点的に使用しました。
9回目(妊娠5~6週相当 / 週1回ペース):
つわりの気持ち悪い感じが少し増してきたとのこと。
引き続き、妊娠維持とつわり軽減を目的とした、穏やかな施術を行いました。
精神的な安定も重要と考え、リラックス効果の高いツボも取り入れました。
ご本人の当初の目的が「妊娠すること」であったため、安定期に入る前のこの段階で、一旦鍼灸治療は終了となりました。
ご希望があれば、安定期以降のマイナートラブル(腰痛、むくみ、逆子など)や、安産灸なども対応可能であることをお伝えしました。
鍼灸師としての感想とまとめ
今回の症例は、PCOSとチョコレート嚢胞による生理不順・不妊に悩まれていた20代女性が、体外受精と並行して鍼灸治療を受けられたケースです。
当院では不妊を「妊娠しにくい原因そのものを治す」という考え方ではなく、妊娠に向けて身体全体の状態を整えていくサポートとして捉えています。
今回の患者様も、生理不順や強い生理痛、冷え、PMSなど複数の不調を抱えており、それらに対して継続的にアプローチを行いました。
妊活中は検査結果や治療方法だけでなく、体調や精神的な負担へのケアも重要です。
実際の臨床でも、冷えや睡眠の質、ストレス状態、生理周期などを総合的に確認しながら施術を進めています。
PCOSやチョコレート嚢胞による妊活でお悩みの方、体外受精を予定していて身体づくりにも取り組みたい方は、お気軽にご相談ください。
一人ひとりのお身体の状態に合わせた施術をご提案いたします。
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