排卵障害には漢方か鍼灸か？
「排卵障害」には漢方薬と鍼灸どちらを選ぶ？
排卵障害に悩むあなたへ。
毎月の期待と不安、そして時にはツラい現実に諦めそうになる日々、本当にお疲れ様です。
この状況は、心だけでなく体にも大きな負担をかけます。
向き合って頑張っているあなたを大いにねぎらいたいと思います。
排卵障害は、ホルモンのバランスや生活習慣、ストレス、体質など、さまざまな問題が絡み合います。
漢方薬や鍼灸は、自然治癒力を高め、体全体のバランスを整える力があります。
どんどん活用してください。
どうか、一人で悩まないでください。
私たちはあなたの味方です。
あなたの心が不安が軽くなる日が来ることを願っています。
そして、笑顔で過ごせる時間が少しずつ増えていきますように応援します。
排卵障害で悩まれるあなたに、最初に「結論」です。
それはズバリ『漢方薬も鍼灸も両方使うのが最善』です。
それだけだと身も蓋もないので、それぞれの良さを解説していきますね。
排卵障害と東洋医学
排卵障害は、東洋医学において「気」「血」「水」の調和が乱れた状態と考えられます。
それぞれの体質に合わせて排卵機能の不調がどのように現れるかを説明します。
気虚（ききょ）体質
気虚は、体を動かすエネルギーが不足した状態です。
疲れやすく、無気力、声が小さい、食欲が低下しやすいなどの傾向が見られます。
気は、体内の内臓のエネルギーであり、血液循環させるパワーとなります。
気虚の場合、巣卵や子宮への血液供給が滞るため、排卵を促す力が弱まりやすいと考えられます。
ストレスや過労が重なると、さらにエネルギーが不足し、卵細胞の発育に影響を及ぼします。
血虚（けっきょ）体質
血虚は、血液不足や質の低下を示す状態です。
顔色が青白く、めまい、月経量が少ないなどが見られます。
血は、子宮や卵巣を滋養する役割を担っています。
血虚体質では、十分な血液が行かず、卵巣機能が低下し、排卵が滞りやすくなります。
気滞（きたい）体質
気滞は、体内の気の流れが滞った状態です。
イライラ、胸の張り、ため息、ストレスに弱いなどの傾向があります。
気滞は、とくに東洋医学の内臓系のひとつである「肝」の気の滞りと関連します。
肝は、気血の巡りをコントロールし、月経や排卵のリズムを調整する重要な役割を担っています。
気滞体質では、卵巣や子宮の血流が急激に乱れ、ホルモンバランスが乱れる原因になります。
とくに慢性的なストレスが強いとこのタイプの排卵障害を起こしやすいと考えられます。
寒湿（かんしつ）体質
寒湿体質は冷え、代謝水分の滞りが特徴です。
手足が冷える、むくみやすい、体が重いと感じることがあります。
冷えは、子宮や卵巣の機能を低下させたり、卵細胞の成長を鈍らせたりします。
寒湿体質では、とくに冷える環境や冷たい飲食物が多い人に起こりやすいです。
陰虚（いんきょ）体質
陰虚は、陰の成分(水分や潤す作用)の不足状態です。
のぼせ、ほてり、不眠、熱っぽい感覚がある人が多いです。
陰は体を潤し、内臓の働きを支える役割を持ちます。
陰虚体質では卵巣の機能に必要な潤いが不足し、卵細胞の成熟や正常な排卵が行われないことがあります。
痰湿（たんしつ）体質
痰湿は、体内の余計な水や老廃物が停滞した状態です。
体重増加、だるさ、皮膚の脂っぽさなどが見られます。
痰湿体質では、体内の異常代謝のせいで卵細胞の成長を阻害することになります。
また、肥満やホルモンバランスの乱れを伴うことが多い理由、PCOS（多嚢性卵巣症候群）のこのような排卵障害と関連が深く考えられます。
まとめ。
東洋医学では排卵障害を、体質ごとに気・血・水や内臓の不調の結果として理解します。
これらの体質が単独で存在する場合もあれば、複数が重なることもあります。
患者さんの体質や生活習慣に合わせて原因を探り、それに応じたアプローチをすることで、全身のバランスを整え、根本的な改善を目指します。
このような視点で患者さんに寄り添いながら治療を進めていくことが効果的な対応と言えます。
排卵障害に効く漢方薬の代表例
排卵障害で悩む人に対して体質別に効果が期待できる漢方薬を挙げ、その理由を説明します。
ただし、漢方薬は実際の体質や症状に合わせて処方されるべきものですので、参考程度に留め、必ず専門家に相談してください。
気虚（ききょ）体質
おすすめの漢方薬：補中益気湯（ほちゅうえっきとう）
補中益気湯は、気を補い、体全体のエネルギーを高める効果があります。
子宮や卵巣への血流が少なくて排卵がうまくいかない場合にこの薬は、疲労や倦怠感を改善し、気の巡りを促進することで、排卵機能を整えるのに役立ちます。
血虚（けっきょ）体質
おすすめの漢方薬：四物湯（しもつとう）
四物湯は、血を補い、血行を改善する効果がある代表的な漢方薬です。
卵巣や子宮を養うための血液が不足しているため、排卵障害が起こりやすい状態です。
この薬は、特に顔色が悪い、月経量が少ないような症状がある場合に適し、血液の質と量を高めることで排卵機能をサポートします。
気滞（きたい）体質
おすすめの漢方薬:柴胡疎肝湯（さいこそかんとう）
柴胡疎肝湯は、気の巡りを改善し、ストレスによる気滞を解消する効果があります。
ホルモンバランスの乱れで排卵がうまくいかない場合にこの薬は、精神的ストレスの緩和や月経前のイライラ緩和などに役立ち、肝の働きを整えて排卵リズムを正常化します。
寒湿（かんしつ）体質
おすすめの漢方薬:温経湯（うんけいとう）
温経湯は、体を温め、血行を良くする作用があります。
体の冷えが卵巣や子宮の機能を低下させ、排卵が滞る原因となります。
この薬は、とくに手足の冷えや月経不順があり、冷え症の場合に適し、冷えを改善することで子宮の温かい環境を取り戻し、排卵を促します。
陰虚（いんきょ）体質
おすすめの漢方薬：六味地黄丸（ろくみじおうがん）
六味地黄丸は、陰を補い、体を潤す効果があります。
陰虚体質では、水分や栄養の不足が原因で卵細胞の成長が滞ります。
この薬は、ほてり、口乾、不眠といった陰虚の症状を並行して整え、卵巣の働きを支え、排卵を正常化するのにも役立ちます。
痰湿（たんしつ）体質
おすすめの漢方薬:防風通聖散（ぼうふうつうしょうさん）
防風通聖散は、体内に溜まった余計な水や老廃物を排出し、新代謝陳を高める効果があります。
とくに肥満やむくみがあり、体が重いと感じる場合に適しており、代謝の改善中に排卵の正常化を目指しています。
以上のように、
「排卵障害にはこの薬」のような病名からの処方ではなく、「その人の体質・状態にはこの薬」という体質からの処方が勧められます。
ですので、同じ病名に悩む人にも異なる漢方薬が出ることも少なくありません。
こういう治療の組み立てをするのが東洋医学です。
排卵障害に効く鍼灸のツボ
鍼灸も漢方薬と同じく東洋医学の一角ですので、考え方は同様です。
その人の体質・状態から適したツボを選択していきます。
気虚（ききょ）体質
特徴：気が不足した状態。疲れやすく、無気力、声が小さい、生理周期が長くなる。
適したツボ：
・足三里（あしさんり）
理由：足三里は、全身の気を補い、体力を増強する効果があります。
気虚体質ではエネルギーが不足しているため、足三里を刺激するそれで全身の気を補い、卵巣や子宮の働きをサポートします。
適したツボ：
・気海（きかい）
理由：気海は、気を補い、体内のエネルギー循環を活性化する重要なツボです。
気虚体質の人に適しており、体の中心部から気の巡りを整える、排卵機能の改善を訴えます。
血虚（けっきょ）体質
特徴：血不足状態。顔色が青白く、めまい、月経量が少ないなど。
適したツボ：
・血海（けっかい）
理由：血の循環を促進し瘀血を解消する働きが強いです。
血海を刺激することで血流を促し卵巣や子宮への栄養供給を改善します。
・三陰交（さんいんこう）
理由：女性特有の疾患に広く使われるツボで、血を補う作用が期待されます。
また、下腹部の血流を良くします。
気滞（きたい）体質
特徴：ストレスや感情の抑圧が強く、月経前の腹部の張りやイライラ感がある。
適したツボ：
・太衝（たいしょう）
理由：肝の気を巡らせる作用があり、ストレスや気滞による緊張を和らげます。
感情の抑圧やイライラ感が強い場合に有効です。
寒湿（かんしつ）体質
特徴：冷え症で水分代謝が悪い。手足が冷える、むくみやすい、体が重いと感じる。
適したツボ：
・関元（かんげん）
理由：体を温め血行を促進する作用があります。
寒湿体質では冷えが子宮や卵巣の働きを低下させるため、関元を刺激することで冷えを緩和し、排卵機能を高めます。
適したツボ：
・命門（めいもん）
理由：命門は、体の陽気を補い、全身の冷えを改善するツボです。
陰虚（いんきょ）体質
特徴：疲労感とともにほてり・熱っぽさがある。
適したツボ：
・復溜（ふくりゅう）
理由：生殖器系の熱をとる効果があります。
上半身ののぼせにも効果的です。
・三陰交（さんいんこう）
理由：陰液を補い、ホルモンバランスを整えることが重要なツボです。
陰虚による排卵障害やのぼせを緩和します。
痰湿（たんしつ）体質
特徴：むくみやだるさ、体内の余分な湿気が停滞している。
適したツボ：
・水分（すいぶん）
理由：体内の余裕な水分を取り除く効果があります。
消化機能の改善にも役立ちます。
・豊隆（ほうりゅう）
理由：痰湿を解消する主要なツボです。
湿気によるむくみや体の重だるさに効果があります。
・陰陵泉（いんりょうせん）
理由：脾の機能を強化し、水分代謝を改善します。
体内の余分な湿気を取り除くために有効です。
以上、
「排卵障害に良いツボ」も全身のあちこちにあります。
それは「卵巣＝下腹部や腰」という考えでなく「体質の異常＝全身の問題」と捉えるためで、それを改善するツボは全身にあります。
漢方薬と鍼灸のどちらかしか選べないなら…
排卵障害でお悩みのあなたが漢方薬と鍼灸で迷っているとします。
どちらも自費で費用が気になるのも分かります。
どちらも効果的な治療法なのでどちらが良いか迷うのは当然です。
もし私でしたら、まずはどちらでも「自分が気になった方・効きそうと感じた方」から始めてみてはいかがでしょうか。
漢方薬と鍼灸のメリットデメリットをいくつか比較してみます。
漢方薬は費用負担が少ない可能性
漢方薬も漢方薬局などの場合は自費になりますが、保険がきくクリニックなどでの処方は比較的安価(保険適応なので)で、ある程度の期間服用できるため、初期費用を抑えながら様子を見ることができます。
経済的な負担を考慮すると、まずは「病院の漢方薬」を試してみるのもお勧めです。
他にどんな悩みがあるか？で決める
「排卵障害」は様々な原因が考えられますし、「排卵障害」のみという方も少ないです。
それ以外の体の悩みの傾向で決めていくのも考え方としてはアリです。
漢方薬は内臓系が得意ですので、更年期などホルモンバランスの変化や胃腸症状などが強ければまずは漢方薬から始めるのも良いでしょう。
鍼灸は神経系やコリ痛み系が得意ですので、肩こり・腰痛・頭痛・しびれ・自律神経の乱れなどが強ければ鍼灸から始めるのも良いでしょう。
通院の負担と服用の負担から考える
たとえば鍼灸は治療院に週1回程度通う必要がありますが、漢方薬は2週間に1回程度の通院が多いです。
通院の手間は鍼灸院の方が多いですが、施術日以外はとくに何もしないで済みます。
一方、漢方薬は自宅での服用が必要です。
1日3回、食事と食事の間(食前2時間くらい)に飲むのも手間です。
忙しい患者さんにとって、どちらの方が時間の節約になるでしょうか。
どちらかを選択して、ある程度の期間(1～3ヶ月間ほど)試しても効果が実感できない場合は、もうひとつに切り替えるといいでしょう。
ご自身の症状や経済状況に合わせて、最適な治療法を選択する参考になさってください。
まとめ
最初の結論にもう一度書きます。
「排卵障害には漢方薬と鍼灸を併用するのがベスト」です。
漢方薬と鍼灸を同時に使うメリットを以下に挙げます。
１）相乗効果の発揮
漢方薬は体の内側から、鍼灸は体の外側から治療を行い、それぞれの効果を高め合います。
２）全身のバランス調整
漢方薬は全身のエネルギーや血流を調整し、鍼灸は経絡を刺激して気の流れを整えるため、体全体のバランスがより良くなります。
３）症状の緩和と根本治療の両立
鍼灸は自律神経系に即効性があり、漢方薬は内臓系を改善するため、両方の効果を同時に期待できます。
４）個別のニーズに対応可能
漢方薬と鍼灸の組み合わせで、患者さんの体質や症状に応じた柔軟な治療プランを作成できます。
「排卵障害」だけではなく、肩コリ・胃もたれ・イライラ・冷えのぼせ・腰痛など、メインのお悩み以外の症状も併せ持つ人が少なくありません。
それらには鍼灸の得意分野・漢方薬の得意分野がありますので、併用が最大の効果となります。
５）自然治癒力の最大化
鍼灸の刺激が体の自然治癒力を引き出し、漢方薬がその力を補完することで、治癒力を最大限に引き出せます。
両者を適切に組み合わせることで、東洋医学の全体的な効果をより引き出すことができます。
以上、
一言で言えば『鍼灸と漢方薬は併せて東洋医学』ということですね。
ぜひ西洋医学だけでなく、
東洋医学(漢方薬・鍼灸)も病気治癒や健康増進のために活用することをお勧めいたします。
ちなみに、
漢方薬と鍼灸の違いについてはこちらに書きました。
『漢方薬と鍼灸の違いってなに？』
また、当院は鍼灸院なので鍼灸推しです。
詳細は下記リンクをどうぞ。