卵巣嚢腫には漢方か鍼灸か？
「卵巣嚢腫」には漢方薬と鍼灸どちらを選ぶ？
卵巣嚢腫や不妊に悩まれ本当に大変な状況ですね。
生活習慣を整えたり、セルフケアなど出来ることをされていることでしょう。
まずはその日々の努力に体はきっと応えてくれるはずです。
東洋医学でも心と体のバランスを整えて自己治癒力を引き出すことを意識しています。
鍼灸や漢方薬の東洋医学は血流を良くし、体内のエネルギーを調整することで、卵巣や子宮の状態を整えるのに役立ちます。
また、自律神経を整え、ストレスを軽減し、ホルモンバランスをサポートする効果が期待できます。
焦らずに、少しずつ心身の調子を整えていきましょう。
いつでも気になることや不安なことがありましたら遠慮なくお聞かせください。
一緒に、次の一歩を考えていきましょう。
今回は卵巣嚢腫での不妊で悩まれるあなたに、最初に「結論」です。
それはズバリ『両方使うのが最善』です。
それだけだと身も蓋もないので、それぞれの良さを解説していきますね。
卵巣嚢腫と東洋医学
東洋医学では、体の不調を「気（エネルギー）」「血（血液の循環）」「水（体内の水分）」の滞りとして捉えます。
滞りが卵巣嚢腫の原因となり、とくに「瘀血（おけつ）」や「痰湿（たんしつ）」、さらには「気滞（きたい）」が関連していると考えています。
瘀血タイプ
瘀血とは、血の流れが滞り、体内に滞留している状態です。
この体質の方は、冷え性や肩こり、生理痛が強い場合が多いです。
この場合、血流を促進する漢方薬や鍼灸で血の巡りを整え、冷えを改善していきます。
痰湿体質
痰湿とは、水分や老廃物が体内に溜まって、塊やむくみとして現れる状態です。
この体質の方は、体が重いだるい、むくみやすい、胃腸が弱いなどの特徴があります。
体内の余計な水分が嚢腫の形成に関係するため、湿を取るために消化吸収を高め、余分な水分を排出するようサポートする漢方薬や鍼灸を用います。
気滞体質
気滞とは、ストレスや緊張により、体内の気の流れが滞っている状態です。
この体質の方は、イライラしやすい、胸がつかえる気がする、ため息をつきやすいなどの症状がみられます。
ストレスによって気の流れが滞ると、卵巣や子宮周囲の血流も悪くなり、嚢腫ができやすくなります。
治療では、気の巡りを良くする漢方薬やリラックスを変える鍼灸を行います。
心のケアも大切です。
卵巣嚢腫は体の流れやバランスの乱れが原因で起こることが多いです。
それぞれの体質に合った方法で気・血・水の巡りを整えることです。
体を冷やさない、ストレスをためない、栄養バランスの取れた食事を心がけることなど日常生活の改善も大切です。
以上のように、
卵巣嚢腫といっても、その成り立ちによりいろいろなタイプがあるため、これらの状態を正しく判断し、治療を行うことが重要です。
体のバランスを整えることで妊娠の可能性を高めます。
焦らず、自分の体と向き合いながら、少しずつ改善していくことが大切です。
卵巣嚢腫に効く漢方薬
その人の体質に合った代表的な漢方薬は以下の通りです。
瘀血タイプ（血の巡りが悪い状態）
症状：生理痛が強い、経血に塊がある、肩こりや、生理不順
適した漢方薬：桂枝茯苓丸（けいしぶくりょうがん）・桃核承気湯（とうじょうかくきとう）
この体質では血流が滞っているため、血行を改善する漢方薬が使われます。
痰湿タイプ（水分代謝が滞った状態）
症状：むくみ、体重増加、舌に厚い苔がある、疲れやすい
適した漢方薬：防已黄耆湯（ぼういおうぎとう）・六君子湯（りっくんしとう）
この体質では無理な水分や老廃物を取り代謝除去し、漢方薬を高めるのが有効です。
気滞タイプ（ストレスによる気の滞り）
症状：ストレスが多い、気分が沈みがち、イライラしやすい、生理不順や排卵障害に
適した漢方薬：加味逍遙散（かみしょうようさん）・柴胡疎肝湯（さいこそかんとう）
ストレスによる「気滞（きたい）」を改善し、自律神経を整える効果があります。
以上のように、
「不妊症にはこの薬」のような処方ではなく、「その人の体質・状態にはこの薬」という体質からの処方が勧められます。
ですので、同じ不妊に悩む方にも異なる漢方薬が出ることが少なくありません。
こういう治療の組み立てをするのが東洋医学です。
卵巣嚢腫への鍼灸
鍼灸も漢方薬と同じく東洋医学の一角ですので、考え方は同様です。
その人の体質・状態から適したツボを選択していきます。
瘀血タイプ（血の巡りが悪い状態）
症状：生理痛が強い、経血に塊がある、肩こりや、生理不順
適した漢方薬：血海（けっかい）・中極（ちゅうきょく）など
痰湿タイプ（水分代謝が滞った状態）
症状：むくみ、体重増加、舌に厚い苔がある、疲れやすい
適したツボ：陰陵泉（いんりょうせん）・中脘（ちゅうかん）など
気滞タイプ（ストレスによる気の滞り）
症状：ストレスが多い、気分が沈みがち、イライラしやすい、生理不順や排卵障害に
適したツボ：太衝（たいしょう）・肝兪（かんゆ）など
以上、
「卵巣嚢腫に良いツボ」も全身のあちこちにあります。
それは「卵巣＝婦人科系＝下腹部や腰だけ」という考えでなく「卵巣嚢腫＝不妊＝体質の異常＝体質改善が重要」と捉えるためで、それを改善するツボは全身にあると考えるからです。
漢方薬と鍼灸のどちらかしか選べないなら…
「卵巣嚢腫」でお悩みのあなたが漢方薬と鍼灸で迷っているとします。
どちらも自費で費用が気になるのも分かります。
どちらも効果的な治療法なのでどちらが良いか迷うのは当然です。
もし私でしたら、まずはどちらでも「自分が気になった方・効きそうと感じた方」から始めてみてはいかがでしょうか。
漢方薬と鍼灸のメリットデメリットをいくつか比較してみます。
漢方薬は費用負担が少ない可能性
漢方薬も漢方薬局などの場合は自費になりますが、保険がきくクリニックなどでの処方は比較的安価(保険適応なので)で、ある程度の期間服用できるため、初期費用を抑えながら様子を見ることができます。
経済的な負担を考慮すると、まずは「病院の漢方薬」を試してみるのもお勧めです。
ただし、東洋医学的な見立てからの処方ではないのがネックですが…。
他にどんな悩みがあるか？で決める
「卵巣嚢腫」は様々な原因が考えられますし、「卵巣嚢腫」のみが体の悩みという方も少ないです。
それ以外の体の悩みの傾向で決めていくのも考え方としてはアリです。
漢方薬は内臓系が得意ですので、貧血や胃腸症状などが強ければまずは漢方薬から始めるのも良いでしょう。
鍼灸は神経系やコリ痛み系が得意ですので、肩こり・腰痛・頭痛・しびれ・自律神経の乱れなどが強ければ鍼灸から始めるのも良いでしょう。
通院の負担と服用の負担から考える
たとえば鍼灸は治療院に週1回程度通う必要がありますが、漢方薬は2週間に1回程度の通院が多いです。
通院の手間は鍼灸院の方が多いですが、施術日以外はとくに何もしないで済みます。
一方、漢方薬は自宅での服用が必要です。
1日3回、食事と食事の間(食前2時間くらい)に飲むのも手間です。
忙しい患者さんにとって、どちらの方が時間の節約になるでしょうか。
どちらかを選択して、ある程度の期間(1～3ヶ月間ほど)試しても効果が実感できない場合は、もうひとつに切り替えるといいでしょう。
ご自身の症状や経済状況に合わせて、最適な治療法を選択する参考になさってください。
まとめ
最初の結論にもう一度書きます。
「漢方薬と鍼灸を併用するのがベスト」です。
漢方薬と鍼灸を同時に使うメリットを以下に挙げます。
１）相乗効果の発揮
漢方薬は体の内側から、鍼灸は体の外側から治療を行い、それぞれの効果を高め合います。
２）全身のバランス調整
漢方薬は全身のエネルギーや血流を調整し、鍼灸は経絡を刺激して気の流れを整えるため、体全体のバランスがより良くなります。
３）症状の緩和と根本治療の両立
鍼灸は自律神経系に即効性があり、漢方薬は内臓系を改善するため、両方の効果を同時に期待できます。
４）個別のニーズに対応可能
漢方薬と鍼灸の組み合わせで、患者さんの体質や症状に応じた柔軟な治療プランを作成できます。
「卵巣嚢腫」だけではなく、肩コリ・胃もたれ・イライラ・冷えのぼせ・腰痛など、メインのお悩み以外の症状も併せ持つ人が少なくありません。
それらには鍼灸の得意分野・漢方薬の得意分野がありますので、併用が最大の効果となります。
５）自然治癒力の最大化
鍼灸の刺激が体の自然治癒力を引き出し、漢方薬がその力を補完することで、治癒力を最大限に引き出せます。
両者を適切に組み合わせることで、東洋医学の全体的な効果をより引き出すことができます。
以上、
一言で言えば『鍼灸と漢方薬は併せて東洋医学』ということですね。
ぜひ西洋医学だけでなく、
東洋医学(漢方薬・鍼灸)も病気治癒や健康増進のために活用することをお勧めいたします。
ちなみに、
漢方薬と鍼灸の違いについてはこちらに書きました。
『漢方薬と鍼灸の違いってなに？』
また、当院は鍼灸院なので鍼灸推しです。
詳細は下記リンクをどうぞ。