お灸と弘法大師|鍼灸の世界・9

お灸と弘法大師

お灸と弘法大師・写真1

「お灸」と聞いて、何を思い浮かべますか?
熱そう、痕(あと)が残りそう、…などでしょうか。

しかし、じつは日本に古くから伝わるお灸には、驚くほどの健康効果と奥深い歴史があるのです。

今回は、鍼灸師である私が、お灸と弘法大師(仏教)の関係と、それがどのように現代の私たちの健康につながるのかをお伝えします

鍼灸にも関りが深い弘法大師・空海

お灸と弘法大師・写真2

日本でお灸といえば、歴史の中で「弘法大師(空海)」の名がしばしば登場します。
弘法大師は真言宗の開祖であり、平安時代の僧侶として広く知られています。

じつは、彼は仏教の布教だけでなく、中国で学んだ医療や薬草学、養生法なども日本に伝えたとされます。
その中のひとつがお灸です。

空海は、東洋医学の智慧が詰まった鍼灸の奥深さに感銘を受け、日本に帰国後、その普及に尽力したとされています。

もちろんこれは伝説的な話ですが、東洋医学と仏教は、自然との調和や体と心のつながりを重視するという点で、共通する哲学を持っています

弘法大師が中国・唐で学んだ知識をもとに、お灸の方法を広めたことで、日本各地に「弘法大師がこの地でお灸を教えた」「弘法大師ゆかりの湯治場」などの伝承が残っているのです。

日本各地には「弘法大師が旅の途中で病人に灸を据えて治した」という伝承が残っています。

たとえば、足の痛みで歩けなかった人に灸を据えたら元気になり、道中を共に歩けたという話や、村人に灸のやり方を教えて病を防いだという伝説です。

こうした逸話は、弘法大師が「人々を救うために医療やお灸を広めた聖人」として尊敬を集めた証といえるでしょう。

お遍路さんとお灸

お灸と弘法大師・写真3

お遍路さんで知られる「四国八十八ヶ所霊場巡り」は徳島県の霊山寺を起点に、弘法大師・空海ゆかりのお寺をめぐる道です。

このお大師さんの道をたどる人を地元では、古くからお遍路さんと呼び、宿や食事などでもてなす「お接待」という風習が今もつづけられています。

食事や宿だけでなく、お遍路さんへの「お灸接待」もあるのです。

これもまた、弘法大師とお灸のつながりを示すものであり、実際にお灸のチカラがあったがゆえでしょう。

現代まで残る「ほうろく灸」の習慣

お灸と弘法大師・写真4

現代でもお寺で行われるお灸があります。
「ほうろく灸」です。

「ほうろく灸(炮烙灸)」とは、素焼きの皿「ほうろく」を頭に乗せ、その上にもぐさを置いて火をつけるお灸の療法で、頭痛封じ、暑気払い、夏バテ防止、肩こり改善などの効果が期待できます。

頭頂部の万能のツボである「百会」に刺激を与えることで、自律神経を整えたり、脳の活性化を促したりすると言われています。
江戸時代から続く、お寺で行う夏の土用の丑の日に行われる伝統行事として知られています。

※ほうろく灸の画像は以下サイトより引用させて頂きました。
https://ameblo.jp/kobe-olive/entry-12769894225.html

お灸はなぜ広まったのか?

お灸と弘法大師・写真5

平安以降近代までの日本では、現代のような医療制度はなく、人々は身近にできる養生法を必要としていました。

お灸は、身近な「よもぎ(艾)」を使って誰でも実践できる家庭の医療でした。

弘法大師が「お灸は体を整えるために役立つもの」として伝えたことで、庶民にも受け入れられ、江戸時代には「一家に一人は灸師がいる」といわれるほど普及していきました。

お灸が持つ力 ― 昔も今も変わらない効果

お灸と弘法大師・写真6

弘法大師の時代から現代に至るまで、お灸が続いてきた理由は、その効果の確かさにあります。

お灸とは体のツボに熱刺激を与えて、血流を促し、自己治癒力を引き出す方法です。

肩こりや腰痛などの身近な症状から、冷えや自律神経の乱れ、不妊や婦人科系のトラブルまで幅広く対応できます。

現代医学でも「温熱刺激が血流や免疫機能に作用する」ことが分かっており、古来の知恵が科学的に裏づけられつつあります。

科学的に認められたお灸の効果

まとめ ― 弘法大師が残したお灸の智慧

「灸は身を焼くものにあらず。心に灯りをともすものなり。」という言葉があります。
弘法大師の言葉とされます。

お灸は、体をいたずらに焼くわけではなく、心身の不調を改善し、人の心に希望や活力を灯す(ともす)という意味です。

素晴らしいです。
鍼灸師として、心が清められます(*´ω`)

弘法大師は、日本にお灸を伝え、庶民の健康に役立てた人物としても語り継がれています。
お灸は「昔の民間療法」ではなく、今もなお私たちの体と心を支えてくれる力を持っています。

「弘法大師とお灸」という歴史を知ることで、お灸が単なる治療法ではなく、日本文化の一部であり、お灸の智慧は、現代の私たちにも十分に役立つものだと、改めて感じさせられます。