鍼灸治療が脳内で引き起こす作用|脳内ホルモン

鍼灸と脳内ホルモン

鍼灸の脳内ホルモン分泌・写真1

我々は、鍼やお灸の刺激を体のツボに与えることで、様々な不調を改善できることを知っています。
しかし、なぜ鍼灸が効くのか、その現代医学的なメカニズムはまだ完全に解明されていません。

それでも、科学的な研究によって、鍼灸の刺激が脳内で様々なホルモンを分泌させることがわかってきました
これらのホルモンは、私たちの心身に様々な良い影響をもたらしてくれると考えられています。

鍼灸で分泌される主なホルモン

鍼灸の脳内ホルモン分泌・写真2
鍼灸が脳内でいくつかのホルモンの分泌を促すことが分かってきました。
それらを解説していきますが、その作用は大きく分けると「幸せホルモン」「ストレスホルモンの制御」「自律神経の調節ホルモン」「脳の働きを高めるホルモン」に分けられます。

幸せホルモン

エンドルフィン

エンドルフィンは、「脳内麻薬」と呼ばれ、私たちの体内で作られる天然の鎮痛剤です。
鍼灸の刺激は、このエンドルフィンの分泌を促すことが知られています。
エンドルフィンは、痛みを和らげるだけでなく、幸福感や高揚感をもたらす効果もあります。
例えば、運動した後に気分がスッキリすることもありますよね?
これは、運動によってエンドルフィンが分泌されるからです。

セロトニン

セロトニンは、「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質です。
セロトニンは、心を安定させたり、ストレスを軽減するをもたらし、不安やうつ症状を軽減する効果があります。
このホルモンがしっかり分泌されていると、イライラしにくくなり、気持ちが前向きになります。
逆に、セロトニンが不足すると、ストレスを感じやすくなったり、気分が落ち込んだりすることも。

鍼灸の刺激は、脳内のセロトニンの分泌を引き起こすことがわかっています。
とくに、ストレスを感じている人が鍼灸を受けると、リラックスしやすくなるのはこのためです。

ストレスホルモンの制御

ストレスを感じたときに分泌されるホルモンの代表が「コルチゾール」です。
適度なコルチゾールは、体を守るために必要ですが、過剰に分泌されると、免疫力が落ちたり、疲れやすくなったりすることがあります。

鍼灸の施術によって、このコルチゾールの分泌量が正しく調整されることが研究でわかっています。

自律神経の調節ホルモン

人間の体は「自律神経(じりつしんけい)」によってコントロールされています。
自律神経には、体の活動時に働く「交感神経」と、リラックスするときに働く「副交感神経」があります。
このバランスが崩れると、不眠・頭痛・冷え・胃の不調など、さまざまな不調が出やすくなります。

鍼灸の施術は、副交感神経を優位にし、リラックスを促す効果があります。
その時に分泌されるのが、「オキシトシン」というホルモンです。

オキシトシン

オキシトシンは、「愛情ホルモン」とも呼ばれるホルモンです。
オキシトシンは、人とのつながりを深めたり、安心感や幸福感をもたらす効果があります。
このホルモンが多いと、気持ちが落ち着く、不安が和らぐ効果があります。

鍼灸の施術を受けると、心地よい刺激によってオキシトシンが分泌され、ストレスが軽減され、気持ちが穏やかになるのです。

脳を活性化するホルモン

鍼灸の脳内への作用はリラックス効果だけではありません。
脳の働きを積極的にするホルモンの分泌も促します。
そのひとつが「ドーパミン」です。

ドーパミン

ドーパミンは、「やる気ホルモン」「快感ホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質です。
ドーパミンは、意欲や快感、集中力を高める効果があります。
例えば、好きなことをしているときや、目標を達成したときに分泌されます。

鍼灸の施術を受けることで、このドーパミンの分泌が促進され、やる気がアップしたり、気分が前向きになったりすることが期待できます。

鍼灸がもたらす効果

これらのホルモンがバランスよく分泌されることで、体と心の調子が整い、健康を維持しやすくなるのです。

ホルモンの分泌によって、鍼灸は様々な効果をもたらします。

■痛みの緩和
エンドルフィンが分泌されることで、痛みを感じにくくなります。

■ストレス軽減
セロトニンやオキシトシンが分泌されることで、ストレスや不安が軽減されます。

■気分の向上
ドーパミンやセロトニンが分泌されることで、気分が明るくなり、幸福感が増します。

■免疫力の向上
鍼灸の刺激は、免疫細胞の活性化を促すことが知られています。

■自律神経の調整
鍼灸は、自律神経のバランスを整える効果があります。

まとめ

鍼灸の脳内ホルモン分泌・写真3

鍼灸の刺激は、様々なホルモンの分泌を促し、私たちの心身に良い影響をもたらすと考えられています。
痛みの緩和、ストレス軽減、気分の向上、免疫力向上、自律神経の調整など、その効果は多岐にわたります。

鍼灸は、古代中国から伝わる伝統的な治療法ですが、現代医学の研究によって、その効果が科学的に裏付けられつつあります

鍼灸の刺激は、私たちの脳に働きかけ、ホルモンの分泌を調整する力​​があります。
これによって、痛みが和らいだり、ストレスが軽減したり、やる気が出たりするのです。

「最近、なんだか調子悪いな…」と思ったら、鍼灸を試してみてもよいかもしれません。
ホルモンバランスを整え、体と心を健やかに整えて手を助けてくれるかもしれません。

鍼灸は、現代科学的に解明されてきた作用の数々とまだまだ未解明な効果作用のマッチした、2000年以上続く治療法です。
これからも健康な心身作りに、鍼灸をお役立てください。