新型コロナ予防の漢方薬とツボ
新型コロナ予防の漢方薬とツボ
新型コロナウイルスの第8波に加え、インフルエンザも流行しており、体調管理が難しい時期です。
当院にも、ご家族や身近な方が新型コロナに感染し、濃厚接触者となってしまったというご相談が増えています。
今回は、ご自身はまだ元気だけれど、新型コロナウイルス感染のリスクがある時に、発症予防のためにできるツボ刺激と漢方薬について解説します。
この記事を読んで、少しでも不安を解消し、健やかな毎日を送るためのお手伝いができれば幸いです。
コロナ予防の漢方薬
「この漢方薬を飲めば絶対に感染しない」という特効薬は、残念ながら存在しません。
西洋医学と同様に、東洋医学にも「これを飲めば100%予防できる」という確立された漢方薬はありません。
しかし、東洋医学的な考え方に基づき、体の状態を整え、免疫力を高めることで、感染症に負けない体づくりをサポートする漢方薬は存在します。
ここでは、比較的入手しやすく、東洋医学的に考えて効果が期待できる漢方薬として、【補中益気湯(ホチュウエッキトウ)】と【葛根湯(カッコントウ)】をご紹介します。
補中益気湯
東洋医学では、体の防衛力は「気(正確には衛気)」が担っていると考えます。
「気」は体を巡るエネルギーであり、この「気」が不足すると(これを「気虚(ききょ)」と言います)、体のバリア機能が低下し、感染症にかかりやすくなると考えます。
逆に、「気」をしっかりと補うことで、感染に強い体になると言えるでしょう。
疲れやすい、やる気が出ない、胃腸が弱っている、風邪をひきやすいといった症状は、「気」が不足しているサインかもしれません。
これらはまさに「感染しやすいカラダ」の状態と言えます。
補中益気湯は、「気」を補う作用、つまり体のエネルギーを底上げする作用に優れた漢方薬です。
体力が低下している時、食欲不振、倦怠感、虚弱体質の方などに適しています。
濃厚接触者となった時期や、コロナ感染のリスクが高いと感じる時には、1日1回~2回を目安に服用すると良いでしょう。
ただし、服用に際しては、かかりつけの医師や薬剤師に相談することをお勧めします。
葛根湯
葛根湯は、まだ何も症状がない元気な時に予防的に飲むというよりは、「ゾクっと寒気がする」「風邪をひいたかもしれない」といった初期症状が現れた時に服用します。
熱が出始めたら服用する、という考え方ではなく、体の異変のサインを感じたら早めに服用するのがポイントです。
そういう意味では厳密には「予防」とは言えませんが、症状の悪化を防ぎ、重症化予防に繋がる可能性があります。
葛根湯は、体を温め、発汗を促す作用があります。
初期の風邪症状、肩や首のこり、筋肉の痛みなどに効果を発揮します。
ただし、体力のない方、胃腸の弱い方、発汗過多の方などは、服用に注意が必要です。
こちらも、服用前に医師や薬剤師に相談することをお勧めします。
コロナ予防のツボ
鍼灸治療で使うのがツボ(経穴)です。
ツボ刺激も東洋医学の考え方に基づいています。
発症予防の観点からは、漢方薬と同様に「気を補う」ことが重要になります。
ここでは、ご自身でも簡単に刺激できる、気を補う作用の強いツボをご紹介します。
当院では、患者様一人ひとりの体質や症状に合わせてツボを選定し、鍼やお灸で丁寧に刺激することで、体質改善を促し、根本的な治癒力を高める施術を行っています。
足三里
ひざのお皿のすぐ下、外側のくぼみに人さし指をおき、指幅4本そろえて小指があたっているところが足三里です。
胃腸の働きを整え、免疫力を高める効果が期待できます。
合谷
親指と人さし指の骨がまじわったところから、やや人さし指よりのへこみが合谷です。
体表の邪気を払う効果があるとされ、風邪の初期症状の緩和に役立ちます。
大椎から風門あたり
イラストのあたり。
背中にあるツボで、体を温め、寒邪を追い出す効果が期待できます。ドライヤーやホットパックで温めるのがおすすめです。
おへそ回り
おへその周りは、胃腸をはじめとする消化器系の重要なツボが集まっている場所です。お腹を温めることで、胃腸の働きを活発にし、気の生成を助けることができます。電子レンジで温めるホットパックなどを毎日30分程度当てると良いでしょう。当院では、お腹への優しい鍼やお灸で、内臓機能を整え、体全体のバランスを調整する施術も行っています。
ツボを自分で探す時のコツ
より効果的なツボをご自身で探す際は、以下の点を意識してみてください。
ツボの基本位置を確認
鍼灸院での指導や書籍、ウェブサイトなどでツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴の場合、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりに位置します。
押して探す
だいたいの目安の場所の近辺を指で軽く押しながら、周囲を探ります。
「イタ気持ちいい」感覚や、ズーンと響くような感覚がある場所が、ツボの可能性が高いです。
合谷であれば、骨の交わる部分からやや人差し指側を探ると、凹みがあり、圧痛を感じる場所が見つかるはずです。
体の反応をみる
ツボを押すと、血行が良くなったり、体が温まったりする感覚がある場合があります。
ただし、ツボの位置は個人差がありますので、あくまで目安として捉え、無理に強い力で押さないように注意しましょう。
もし不安な場合は、鍼灸師などの専門家にご相談ください。
せんねん灸(台座灸)の使い方と注意点
ご自宅で手軽にできるセルフお灸として、「せんねん灸」の使い方と注意点について解説します。
「せんねん灸」は、ドラッグストアなどで手軽に購入できるお灸の製品名です。
せんねん灸タイプのお灸は「台座灸」と呼びます。
せんねん灸と似たような形の他の商品も多数あり、使用方法などは基本的には同様です。
せんねん灸の使い方
種類を選ぶ
「せんねん灸」には様々な種類があります。
「ソフト(弱)」「レギュラー(中間)」「あつめ(強)」の3つの種類があります。
初めての方は、熱さが「マイルドなタイプ」から試してみることをお勧めします。
ツボの場所を決める
どのツボを使うかはあらかじめ決めておき、ツボの目安を指でさぐりながらより効き目の高いポイントを決めて、ペンなどで印をつけます。
準備
お灸を据える場所を清潔にし、皮膚に異常がないか確認します。
台座の裏紙を剥がす
「せんねん灸」の台座裏についている薄い紙を剥がします。
もぐさに点火
巻きもぐさの先端に線香などで火をつけます。
皮膚に据える
火がついた「せんねん灸」を、ツボに据えます。
熱さを感じたら、無理せずすぐに取り外してください。我慢は禁物です。
取り外す
使用後、完全に火が消えていることを確認してからとりあえずして、捨ててください。
お灸をする上での注意事項
・熱さを我慢しない
熱すぎると感じたら、すぐに取り外してください。無理に我慢すると、やけどの原因になります。
・同じ場所に続けて据えない
皮膚に負担がかかるため、同じ場所に続けてお灸を据えるのは避けましょう。
・顔面、粘膜、傷口、炎症部位への使用は避ける
これらの部位は皮膚がデリケートなため、お灸の使用は避けてください。
・発熱時、飲酒時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける
体調が優れない時は、お灸を控えるようにしましょう。
・皮膚の弱い方、アレルギー体質の方は注意
使用前に必ずパッチテストを行うか、医師や薬剤師に相談してください。
・使用中に異常を感じたら、直ちに使用を中止し、医師に相談
万が一、皮膚に異常が現れた場合は、すぐに使用を中止し、医師の診察を受けてください。
・乳幼児への使用は避ける
小さなお子様への使用はお控えください。
・火の取り扱いに注意
火を使うため、火災には十分に注意してください。
周囲に燃えやすいものがないことを確認し、換気をしながら行いましょう。
上記に注意して、安全にせんねん灸をご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。
ドライヤーお灸のやり方と注意事項
ドライヤーお灸は、火を使わずにドライヤーの温風を利用してツボを温める、手軽で安全な方法です。
広い範囲を温める場合や、火を使うお灸に抵抗がある方や、初めてお灸を試す方におすすめです。
ドライヤーお灸のやり方
準備
ドライヤーと、もしあればですが、姿見もしくは手鏡を用意します。
手鏡があると、背中など見えにくい部分のツボを温める際に便利です。
温風の当て方
ドライヤーを肌から5~10cmほど離します。
近すぎると熱くなりすぎるため、必ず距離を保ってください。
温風の温度は、低温(50~60度程度)に設定します。
ドライヤーに温度調節機能がない場合は、ドライヤーと肌の距離を調整することで熱さを調節します。
熱く感じたらすぐにドライヤーを離すようにしてください。
温風を当てる時間は、1つのツボにつき、熱いと感じたら離す、を5回程度繰り返します。
連続して長時間当て続けるのは避けましょう。
温める場所
特定のツボを意識する必要はありますが、厳密な位置にこだわる必要はありません。
ドライヤーの温風は比較的広い範囲に当たるため、「面」で温めるイメージで大丈夫です。
ツボの周辺をじんわりと温めることで、効果が期待できます。
行う頻度
朝晩2回程度行うのがおすすめです。
ご自身の体調や生活に合わせて、無理のない範囲で行ってください。
ドライヤーお灸の注意事項
・怪我や炎症、痛みなどで熱を持っている部位には使用しないでください。症状が悪化する可能性があります。
・泥酔時や発熱時など、体調がすぐれない場合は使用を控えましょう。
・他人にドライヤーお灸を行うのは避けてください。
温度の感じ方には個人差があり、火傷をさせてしまう可能性があります。
・使用中に皮膚に異常(赤み、かゆみ、痛みなど)が現れた場合は、直ちに使用を中止し、必要に応じて医師に相談してください。
・同じ部位に長時間当て続けないように注意してください。
低温火傷の原因となることがあります。
まとめ
今回は、新型コロナウイルス感染リスク時の発症予防として、漢方薬とツボ刺激をご紹介しました。
しかし、これらを行えば他に何も気にしなくて良い、というわけではありません。
漢方薬やツボ刺激は、免疫力を高めるための方法の一つです。
そのため、免疫力を低下させる行為は避けるべきです。
睡眠不足、過労、暴飲暴食、過度のストレスなどは、免疫力を低下させる要因となります。
バランスの取れた食事、質の高い睡眠、適度な運動、リラックスできる時間を持つなど、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。
また、西洋医学的な知見(検査・診断・治療などを含む)も非常に重要です。
西洋医学と東洋医学の両方の良い点を活用することで、より効果的に健康を維持し、この時期を乗り越えることができるでしょう。
もし、発症してしまい、急性期を過ぎても倦怠感や味覚・嗅覚異常などの不調(いわゆる「後遺症」)が残ってしまった場合には、当院の鍼灸施術がお役に立てるかもしれません。
鍼灸施術は、自律神経のバランスを整え、血行を促進し、自然治癒力を高める効果が期待できます。
当院では、患者様一人ひとりの症状に合わせて丁寧に施術を行います。
まずは「初回お試し部分鍼灸」からお気軽にお試しください。
もし、この記事を読んでご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ一度当院にご相談ください。
皆様の健康を心より願っております。
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