レジェンド鍼灸師が語る「鍼灸のキモ」
レジェンド鍼灸師のが語る施術のキモ
『鍼灸臨床医典』(間中喜雄・著)です。
間中先生の鍼灸入門といったところでしょうか。
先日読んだ『灸とハリ』が思いのほか面白かったので、引き続き間中先生の本を紹介します。
(前著の記事はこちら)
『灸とハリ』が一般書として一般向けだったのに対し、これは「鍼灸師の初学者向け」のようです。
ただ、初心者向けと上級者向けなどと区別できるのかは疑問です。
そこから何を学べるかが初心者と上級者では異なるだけで、結局書くべき内容はあまり変わらないのではないでしょうか。
そのようなこともあり、鍼灸について一通り概観できる本書は、上級者も興味深い本だと感じます。
(概観を示す本とのことで若干教科書的ではありますが…。)
内容
まず序論からイイ感じです。
『鍼灸とは「どこに、どんな刺激を、どの程度」与えるかが要件である』と。
究極的には「以上!」みたいな感じです。
「どこに」も「どんな」も「どの程度」も非常に多様でありそれぞれ効果的であり難しいのよ、というようなことを述べておられます。
間中先生の本は、この中立的な感じが読んでいて心地良かったりします。
その中立性が教科書調になってしまうデメリットはありますが、その後は、補瀉について・選穴についてなどを概観していき、ここは教科書的です。
片側取穴、両側取穴、上下取穴、局所取穴、遠隔取穴、交会穴、五行穴、母子穴、原穴、絡穴…などです。澤田流や経絡治療、良導絡治療なども簡単に紹介しています。
間中先生の取穴法の特徴は、両側をとるか・患側をとるか・健側をとるか・交差でとるか、などをかなり意識されているようです。
結論としてどれが効果的ということは仰らないですが、【左右(にある経絡からのツボ)】と【中心(任督脈のツボ)】を組み合わせる、ような意識が強いようです。
刺激の与え方としては、「穴の如何を問わず強刺激を与えるということは特別に意味があるようである。」と述べています。
「針灸術を上手に行うということを、なるべく痛くなく、患者に快感を与えながら最大の効果を与えることである、と一般に考えがちである。(中略)しかし、痛い灸の方が痛い病気によりよく効く患者もあることは事実である。」
「打膿灸をすえるのに、麻酔をかけて行っても火傷毒はできる。もし灸が、よくいわれるように火傷毒の治療だったら効果は同じ筈であるが、そうはいかない。」
「小児の過敏症に小児鍼が広く用いられているが、小児が泣くからといって睡眠中にこれを行っても効果がないという。」などとも書かれています。
このように鍼灸は刺激の療法なのだという視点も重要視していますし、患者の過敏さに合わせた治療も必要だと説いています。
たしかに両方大事ですね。
それに続く各論は中医書からとってきたような感じで微妙でした。
今はこの手の書籍は数多いですからね・・・。
(一例:【咳】 外感風寒→大椎・合谷・外関・列欠 みたいな。)
以上、前著に続いて治療体系の「概説」が面白い本でした。