子宮内膜を厚くするツボ
子宮内膜を厚くするツボ
今回は不妊治療においてよく話題に上がる「子宮内膜の厚み」について、東洋医学(鍼灸)の視点から役立つセルフケアのツボを解説していきます。
この記事を読んだ後、東洋医学や鍼灸にご興味を持っていただき、セルフケアのお灸や鍼灸院での施術に一歩踏み出していただけたら幸いです。
子宮内膜の厚み
子宮内膜の厚さは、妊娠の成立に重要な役割を果たしていると言われています。
最近では「内膜の厚みは妊娠率に関係ない」という説もありますが、ここでは「子宮環境が良い証しのひとつ」として、厚みと妊娠の関係について考えていきましょう。
不妊でお悩みの方の中には、子宮内膜の薄さに不安を感じている方も少なくありません。
そこで、鍼灸がどのように子宮内膜を妊娠に適した状態に導くことができるのかを詳しく解説していきます。
子宮内膜のメカニズム
月経(生理)によって剥がれた子宮内膜は、約1mmの薄い層(基底層)を残します。
その後、女性ホルモンであるエストロゲンの作用により、再び内膜の増殖が促され、排卵日ごろまでに約8mmまで急速に厚くなります。
排卵後には、プロゲステロンという別の女性ホルモンが分泌され、子宮内膜をさらに厚くし、10mm~15mmの厚さにまで成熟させます。
この状態が、受精卵が着床するのを待つ期間となり、約2週間続きます。
妊娠が成立しなかった場合、子宮内膜は剥がれ落ち、月経となります。
通常、子宮内膜は月経時にすべて剥がれ落ち、新しく再生されます。
しかし、剥がれきれずに一部が残ってしまったり、厚みが増しすぎると、子宮内膜症や着床障害を引き起こす可能性があります。
妊娠のために必要な子宮内膜の厚さは、排卵後8mm以上を維持できれば妊娠の可能性はあると言われています。
とくに、受精卵が着床する頃(排卵後5~7日目)の厚さが13~20mmであると、より妊娠に適した状態と言えるでしょう。
子宮内膜と東洋医学(鍼灸)
東洋医学(鍼灸)では、「骨盤内(婦人科系)に栄養を送ること」と「自律神経を整えること」が、子宮内膜の状態を改善する上で非常に重要な方針となります。
子宮内膜が薄いと、月経血(生理の血)が少なくなります。
これは東洋医学では「血(けつ)の不足」もしくは「血の滞り(瘀血:おけつ)」と捉えます。
内膜が薄いことだけで全てを判断することはできませんが、多くの場合、エネルギー不足と血流の悪さが根本原因として考えられます。
骨盤内の血液量と循環を良くすることで、子宮環境自体を整えることが第一の目標となります。
また、生理周期は複数の女性ホルモンが複雑に作用し合って成り立っています。
これは意識的にコントロールできるものではなく、自律神経系の働きによって無意識的に行われています。
子宮内膜を育てる力が足りないということは、自律神経系の乱れが関与している可能性も示唆しています。
そのため、自律神経を整えることが第二の目標となります。
自宅で子宮環境を良くするツボ
体質改善には時間がかかります。
ご自宅でできるお灸などを使ったセルフケアも効果的です。
ここでは、自分一人でもできる手足のツボでお勧めのツボをご紹介します。
三陰交(さんいんこう)
内くるぶしのいちばん高いところに小指をおき、指幅4本そろえて、人さし指があたっているところが三陰交です。
肝・脾・腎の三つの経絡が交わるツボで、女性にとって特に重要なツボで、3つの経絡が交わる場所にあります。
妊娠力アップに効果が期待でき、子宮内膜を厚くするお灸として最適です。
内関(ないかん)
手首の曲がりジワに薬指をおき指幅3本そろえて人さし指があたっているところ、腕の幅の真ん中が内関です。
精神的な安定をもたらす効果があります。
血海(けっかい)
膝の内側、膝のお皿より指3本分上にあります。
血流を良くする効果が高いツボです。
太衝(たいしょう)
足の甲にあります。足の親指と人差し指の骨が交わる所です。
肝経のツボで、気の巡りを整え、イライラや精神的な緊張を和らげる効果があります。
太谿(たいけい)
内くるぶしとアキレス腱のほぼ中央のくぼみにあります。
婦人科系の機能を活性化し、体を温める効果もあるため、下半身の血行促進に役立ちます。
これらのツボは比較的見つけやすく、ご自身でお灸を行うのに適しています。
市販のお灸を活用し、気持ち良さを感じながら、無理なく続けてみてください。
パートナーの協力があれば、お腹や背中のツボにお灸をするのも効果的ですが、まずは手足のツボから始めることをお勧めします。
ツボを自分で探す時のコツ
より効果的なツボをご自身で探す際は、以下の点を意識してみてください。
ツボの基本位置を確認
鍼灸院での指導や書籍、ウェブサイトなどでツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴の場合、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりに位置します。
押して探す
だいたいの目安の場所の近辺を指で軽く押しながら、周囲を探ります。
「イタ気持ちいい」感覚や、ズーンと響くような感覚がある場所が、ツボの可能性が高いです。
合谷であれば、骨の交わる部分からやや人差し指側を探ると、凹みがあり、圧痛を感じる場所が見つかるはずです。
体の反応をみる
ツボを押すと、血行が良くなったり、体が温まったりする感覚がある場合があります。
ただし、ツボの位置は個人差がありますので、あくまで目安として捉え、無理に強い力で押さないように注意しましょう。
もし不安な場合は、鍼灸師などの専門家にご相談ください。
せんねん灸(台座灸)の使い方と注意点
ご自宅で手軽にできるセルフお灸として、「せんねん灸」の使い方と注意点について解説します。
「せんねん灸」は、ドラッグストアなどで手軽に購入できるお灸の製品名です。
せんねん灸タイプのお灸は「台座灸」と呼びます。
せんねん灸と似たような形の他の商品も多数あり、使用方法などは基本的には同様です。
せんねん灸の使い方
種類を選ぶ
「せんねん灸」には様々な種類があります。
「ソフト(弱)」「レギュラー(中間)」「あつめ(強)」の3つの種類があります。
初めての方は、熱さが「マイルドなタイプ」から試してみることをお勧めします。
ツボの場所を決める
どのツボを使うかはあらかじめ決めておき、ツボの目安を指でさぐりながらより効き目の高いポイントを決めて、ペンなどで印をつけます。
準備
お灸を据える場所を清潔にし、皮膚に異常がないか確認します。
台座の裏紙を剥がす
「せんねん灸」の台座裏についている薄い紙を剥がします。
もぐさに点火
巻きもぐさの先端に線香などで火をつけます。
皮膚に据える
火がついた「せんねん灸」を、ツボに据えます。
熱さを感じたら、無理せずすぐに取り外してください。我慢は禁物です。
取り外す
使用後、完全に火が消えていることを確認してからとりあえずして、捨ててください。
お灸をする上での注意事項
・熱さを我慢しない
熱すぎると感じたら、すぐに取り外してください。無理に我慢すると、やけどの原因になります。
・同じ場所に続けて据えない
皮膚に負担がかかるため、同じ場所に続けてお灸を据えるのは避けましょう。
・顔面、粘膜、傷口、炎症部位への使用は避ける
これらの部位は皮膚がデリケートなため、お灸の使用は避けてください。
・発熱時、飲酒時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける
体調が優れない時は、お灸を控えるようにしましょう。
・皮膚の弱い方、アレルギー体質の方は注意
使用前に必ずパッチテストを行うか、医師や薬剤師に相談してください。
・使用中に異常を感じたら、直ちに使用を中止し、医師に相談
万が一、皮膚に異常が現れた場合は、すぐに使用を中止し、医師の診察を受けてください。
・乳幼児への使用は避ける
小さなお子様への使用はお控えください。
・火の取り扱いに注意
火を使うため、火災には十分に注意してください。
周囲に燃えやすいものがないことを確認し、換気をしながら行いましょう。
上記に注意して、安全にせんねん灸をご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。
セルフケアのツボ押しの方法と注意点
ご自宅で簡単にできるセルフケアとして、ツボ押し(マッサージ)について解説いたします。
ツボ押しは、体の不調を和らげたり、リラックス効果を高めたりするのに役立ちます。
ツボ押しの方法
リラックスできる環境を整える
静かな場所で、楽な姿勢で行いましょう。
ツボの位置を確認
書籍やウェブサイトなどで、目的のツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴は、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりです。
指の腹で押す
親指や人差し指の腹を使い、ツボを垂直に押します。爪を立てないように注意しましょう。
適度な力で押す
「イタ気持ちいい」と感じる程度の力で、ゆっくりと押します。
強く押しすぎると、痛みを感じたり、皮膚を傷めたりする可能性があります。
時間をかけて押す
1つのツボにつき、5秒から10秒程度、ゆっくりと押したり離したりを繰り返します。数回繰り返すと効果的です。
呼吸を意識する
力を入れる時に息を吐き、力を抜く時に息を吸うと、よりリラックスできます。
温めてから行うと効果的
入浴後など、体が温まっている状態で行うと、血行が促進され、より効果を感じやすくなります。
ツボ押しをする上での注意事項
・食直後、飲酒時、発熱時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける:
体調が優れない時は、ツボ押しを控えましょう。
・皮膚に炎症や傷がある場合は避ける:
患部を刺激することで、症状が悪化する可能性があります。
・強く押しすぎない:
強い力で押すと、筋肉や血管を傷つける可能性があります。あくまで「イタ気持ちいい」程度の力で行いましょう。
・長時間同じ場所を押さない:
皮膚に負担がかかるため、長時間同じ場所を押すのは避けましょう。
・力を抜くことを意識する:
力を入れっぱなしにすると、筋肉が緊張してしまい、効果が得られにくくなります。
・体調に異変を感じたら中止する:
ツボ押し中に体調が悪くなった場合は、直ちに中止し、必要に応じて医師に相談してください。
・乳幼児へは避ける:
小さなお子様へはお控えください。
・持病のある方は医師に相談:
心臓疾患や高血圧など、持病のある方は、ツボ押しを行う前に医師に相談してください。
上記に注意して、安全にツボ押しをご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。
鍼灸院で子宮環境を良くする
鍼灸院では、患者様の体の状態に合わせて全身のツボ(経穴)を組み合わせて使用していきます。
東洋医学的な観点から、何が原因で内膜が薄くなっているのかを的確に判断し、根本原因にアプローチしていきます。
当院の鍼は髪の毛ほどの細さで、痛みを感じにくいものを使用しています。
お灸も心地よい温かさで、リラックスして受けていただけます。
以下は、子宮内膜の状態改善に使用するツボの例です。
婦人科系の機能が低下している場合:
三陰交、足三里、太谿、気海、腎兪、脾兪など
血(けつ)の量が不足している場合:
太衝、三陰交、足三里、気海、肝兪、腎兪など
女性ホルモンのバランスが乱れている場合:
太谿、太衝、合谷、内関、膈兪、肝兪、腎兪など
ストレス、不安、イライラなどが強い場合:
内関、大陵、太衝、行間、心兪、厥陰兪、肝兪など
これらのツボの中から、患者様の状態に最適なものを組み合わせて、全身で10箇所程度に施術を行います。
当院の不妊鍼灸のご案内
当院では、東洋医学に基づいた丁寧な問診と検査で、お一人おひとりの体質や症状に合わせたオーダーメイドの不妊鍼灸施術を行っています。
鍼灸施術に加え、必要に応じて生活習慣のアドバイスやセルフケアの方法などもお伝えし、妊娠しやすい体づくりをトータルでサポートいたします。
不妊でお悩みの方、子宮内膜の厚さが気になる方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
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