AMH値が悪い人の体外受精と鍼灸

卵巣予備能が低下した方への体外受精に鍼灸が有効

AMH
妊娠のしやすさの指標に「卵巣予備能」があります。
卵巣予備能が低下するとは、卵子の量や質が低下し妊娠しづらくなることです。
一般的には年齢が関係していて、40歳以降は急速に低下します。
卵巣に病気でも予備能は低下します。
FSHの値が高い、E2の値が低いなどで確かめられ、AMHの値で予想することができます。

このような卵巣予備能が低下した患者さんに体外受精をするときに鍼灸が役に立てるという研究がありますのでご紹介します。

『鍼治療が卵巣予備能低下患者への体外受精(IVF-ET)に及ぼす影響』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26946729

【概要】
目的は、卵巣機能低下に及ぼす鍼治療の影響と、卵巣予備能低下患者における体外受精-胚移植(IVF-ET)の妊娠結果を観察すること。
ICSIの治療を受けた卵巣予備能低下の63人の患者を、「鍼治療群」(30例)と「鍼なし群(対照群)」(33例)に無作為に分けた。
鍼治療は、月経周期の段階にあわせて行った。

「使ったツボ」
・生理中は、上仙(EX-B8)と命門(GV4)を選択。
・生理後は、腎兪(BL23)、膈兪(BL17)、三陰交(SP6)、太渓(KI3)を選択。
・排卵期は、気海(CV6)、関元(CV6)、子宮(EX-CA1)、足三里(ST36)を選択。
・生理前は、気海(CV6)、関元(CV6)、陽陵泉(GB34)、太衝(LR14)を選択。
鍼治療は、採卵の周期まで週に2回行った。
平均治療回数は15±2回であった。
鍼治療後、患者をIVF-ETで治療した。

鍼なし群(対照群)の患者は、鍼施術はなしでIVF-ETを行った。

鍼治療あり群となし群で、卵胞刺激ホルモン(FSH)、エストラジオール(E2)、卵胞卵数(AFC)、採卵数、受精数、高品質胚数などの卵巣予備能の指標を比較した。
IVF-ETの結果の差も両群間で比較した。

【結果】
鍼治療前と比較して、E2、AFC、採卵数、質の良い胚の数および受精回数はすべて、「鍼治療群」で増加した。
鍼なし群(対照群)と比較しても、鍼治療群の方が成績が良かった。
また、移植率・臨床妊娠率も改善された。

【結論】
「月経周期にあわせた鍼治療」は、卵巣予備能低下患者の卵巣予備能を効果的に改善させ、IVF-ETの妊娠率改善につながる。

当院の考察

IVFと鍼灸
卵巣予備能が低下している方への鍼灸が、採卵から受精、着床なども含め、妊娠に役立つという結果でした。

鍼灸師にとってはとても嬉しい結果です(笑)
しかも今回の論文では「生理周期に合わせてツボを選らぶ」という、より実践的な方法がとられているのも参考になります。
当院でも、ツボは生理周期やその日の体調によって変化します。
その時その時に相応しいツボがあるので、それを選ぶのは至極当然のことです。

しかし研究などでは、ヒトや状態にかかわらず一律に「○○穴と◇◇穴と□□穴に鍼灸した結果うまくいった・いかなかった」と論じることが多いです。
これは研究のデザイン上仕方ないことですが、本来の鍼灸施術の現場からすると少々粗が目立ちます。

今回は、生理中・低温期・排卵期・高温期と分けているのがいいですね。
生理中はシンプルに婦人科系を補い、低温期には生殖機能を高めるツボを多用し、高温期には気血のめぐりを良くするツボを用いています。
足りないものは補い、滞らないように巡らせる、という鍼灸の基本中の基本がキレイにできています。
一律のツボを使うよりも効果が出たのもそのせいだと思います。

また、週2回の頻度の施術も大事ですね。
やはりある程度の回数を治療することで効果や成果が出ると考えます。

病院の治療のほかに、何かできることはないか、と思っていらっしゃれば鍼灸をぜひ試してみてください。
お待ちしています。

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