鍼灸で穴性すべてを発現させられるか?

穴性について|鎌ヶ谷市(新鎌ヶ谷)の鍼灸院

穴性とは何か?

経穴(ツボ)には効能があります。
効能は「そのツボを刺激することで得られる効果」のことで、これを穴性と呼びます。
鍼灸学校では体系だった穴性学を習うことはありません。
ツボ単位、部分部分で学んでいった結果、最後はツボを活用した鍼灸施術ができるようになっている、のが現状ではないでしょうか。
穴性をまとめたものを穴性学と呼び、穴性は中医学の考え方です。

穴性の種類は?

気血津液の虚実、寒熱、陰陽、動きについての異常を改善するための効能がツボにはあります。
それに臓腑経絡が絡んで、より詳しい作用を呈します。
それらが穴性ということになります。

たとえば、気虚を改善する作用は補気作用。
気を養うのは脾胃。
足三里には「健脾胃」(=脾虚を補う作用)という穴性がある、というような具合です。

気虚・血虚・陰虚・陽虚・気滞・血滞・水滞…。
脾気虚に対するツボ・肝血虚に対するツボ・腎陰虚に対するツボ・膀胱経の滞りに対するツボ…。
こんな感じです。

もちろん、教科書的にこういうことが決められていますが、361穴すべて何等かオリジナリティあふれる作用があるのでしょうか?

そんなこともないでしょう。
「その辺り一帯で大体こんな作用です」というのが正直なところ。
だからこそ、「□□より○○寸上」などの取穴は目安でしかない、と言われているのです。

そこには穴性を発揮させる条件があるという話が加わります。

穴性の使い方

穴性を考える上で大事なのは、「穴性は引き出されて初めて作用する」ということです。

二つの側面があります。

●経穴サイドの話
狙った穴性に合わせた反応をしているかどうか、です。
例えば、補気が必要な人だから、補気作用のあるツボを選ぶわけです。
ただし、実際に補気作用のあるツボは多数あります。
その中から、使うべきツボは気虚の反応を呈している必要があります。
くぼんでいる・皮膚が軟弱である・押されて気持ち良い、などです。
補気の作用を引き出すために気虚反応を呈しているツボを使い、呈していなければ選ばないのです。

●手技サイドの話
補気する目的で、気虚反応のツボを見つけられた、とします。
そこにどういう刺激を与えるかも大事です。
鍼なら優しく響かせる、お灸ならふわっと温かく、などです。
グイグイと強刺激はダメでしょう。

このように、そのツボが反応を示し、なおかつ狙った効果を出すために最適な刺激を送った結果、その穴性が発現するのだと考えます。

すべての穴性を発現できるのか?

たとえば、血虚にたいして「血を補う」働きがある三陰交に鍼をしたとします。
理論上は、70%だった血量が75%になるはず、です(5%増の5は適当です)。

でも実際には、血はその場でポンと増えないですよね。
もしくは、私個人は増えないと考えています。

鍼灸の働きは、気血津液の「動き」と「偏り」に影響させることだと考えます。

鍼灸で、気を動かし・血を動かし・津液を動かす。
動かすことで経絡(経絡を通して臓腑)に量的な偏りがなくなり、弱った部分には必要な量が供給され、余った部分は適度に戻る。

補血作用は、脾胃の働きが活性化されることで造血作用が進み、結果血量が増える、という仕組みだと考えます。
ですので、「結果的にそうなる」というのが穴性だろうと。

補血の件は仕組みを推測しましたが、他のいろいろな穴性の仕組みは正直わかりません。
とにかく、その穴が反応を示していて、それに見合った刺激をすると、それ相応の反応を出す、ってこと。

実際の臨床鍼灸師はそれで充分かな、と思っています。
今書いてきた部分ですら、相当な難易度ですから(^^;)