血液サラサラの薬を服用中で鍼治療は問題ないか?

血液サラサラの薬(ワルファリンなど)と鍼治療

血液サラサラの薬と鍼・写真1

「血液サラサラの薬を飲んでいるけど、鍼治療を受けても大丈夫なの?」

血液をサラサラにするお薬(抗凝固薬や抗血小板薬)を服用中の方にとっては、鍼施術による出血のリスクが気になるかもしれません。

そこで今回は、血液サラサラの薬を服用している方の鍼治療の安全性について、最新の研究データをもとにご説明します。

最初に結論を書きます。

血液サラサラの薬(抗凝固薬や抗血小板薬)を服用している患者さんへの鍼治療の安全性については、普通の刺激量の手技であれば過度に恐れる必要はないことが示唆されています

血液サラサラの薬とは

血液サラサラの薬は、血管の中で血液が固まってしまうのを防ぐ薬のことで、大きく分けて2種類あります。

■抗凝固薬(こうぎょうこやく)
血液が固まるのを遅くする薬です。
心房細動など心臓の弁や動脈の病気を持つ方に使わることが多いです。
代表的な薬にはワルファリンなどがあります。

■抗血小板薬(こうけっしょうばんやく)
血液の中にある「血小板」という成分が集まって固まるのを防ぐ薬です。
狭心症や脳梗塞の再発予防や、ステント手術の痕に使われることが多いです。
代表的な薬にはバイアスピリンなどがあります。

どちらも血栓(血管を詰まらせる血の塊)ができるのを防ぐ目的で使われます。
このように、血液が固まりやすい状態や、血栓ができてしまうと命に関わるような病気の予防や治療に使われることが多いです。

抗凝固薬・抗血小板薬服用患者への鍼治療の安全性

『抗凝固薬・抗血小板薬服用患者への鍼治療の安全性について』
https://mumsaic.jp/info/index.php?c=topics2_view&pk=1423483676

上記の論文を抜粋してご紹介します。

『韓国の研究では、ワルファリン投与群、抗血小板薬投与群、非投与群の間で、鍼治療による皮下出血の発生頻度に統計的な有意差は見られませんでした。

米国のシステマティック・レビューでは、いくつかの出血や血腫の症例報告がありましたが、多くは軽微なものか、あるいは不適切な深刺が原因と分析されています。

ドイツや日本の大規模調査(薬剤服用者に限定しない)と比較しても、抗凝固薬・抗血小板薬を服用している患者さんで出血・血腫のリスクが際立って高いというデータはありません。

結論として、現時点では、これらの薬剤を服用していることが、有資格者による標準的で慎重な鍼治療の禁忌となる明確なエビデンスはありません。
もちろん、粗暴な手技や不必要な深刺は避けるべきであり、常に注意深い施術が求められます。』

『抗凝固薬を投与されている患者に対する鍼治療の出血リスク』
https://mumsaic.jp/info/index.php?c=topics2_view&pk=1684310949

『台湾の研究者による研究で、抗凝固薬を服用している患者に対する鍼治療後の出血リスクが検討されました。
約82万人の鍼治療を受けた患者の約1340万回の施術を分析した結果、軽微な出血は1万回あたり8.31回、大規模な出血は10万回あたり4.26回発生しました。

抗凝固薬は軽微な出血リスクを有意に増加させましたが、大規模な出血リスクとの関連は認められませんでした。

特にワルファリン、直接経口抗凝固薬、ヘパリンなどの特定の抗凝固薬が出血リスクを高めました。

一方、抗血小板薬との有意な関連は見られませんでした。

著者らは、鍼治療前に患者の病歴と投薬状況を詳しく確認すべきであると結論付けています。』

まとめ

以上の研究をまとめると、「過度な心配は不要」「ただし、注意は必要」となります

これらの研究結果から、現時点では、血液サラサラの薬を服用していることが、有資格者による適切で慎重な鍼治療の絶対的な禁忌となるわけではないと言えるでしょう。

もちろん、粗暴な手技や不必要な深刺は避けるべきであり、常に患者さんの状態に合わせた丁寧な施術が求められます。

当院では、血液サラサラの薬を服用されている患者様への鍼治療を行う際に、以下の点に特に注意を払っています。

・服用されている薬の種類や量、既往歴などを詳しくお伺いしています。

・服薬内容によって刺激量を控えめにした、安全な施術を心がけます。

鍼灸治療は、肩こりや腰痛といった慢性的な痛みだけでなく、自律神経の乱れによる不調、冷え性、むくみなど、様々な症状の緩和に効果が期待できます。
細い鍼で体のツボを刺激することで、血行促進、筋肉の緩和、自然治癒力の向上などが促され、心身のバランスを整える手助けをします。

血液サラサラの薬を服用中の方でも、適切な施術を受けることで、鍼灸の恩恵を十分に受けることができる可能性があります。

血液サラサラの薬を服用しているからといって、鍼治療を諦める必要はありません。
大切なのは、患者様の状態を正確に把握し、安全に配慮した施術を行うことです。

もしあなたが鍼治療に興味をお持ちで、血液サラサラの薬を服用している場合は、まずはかかりつけ医にご相談の上、鍼灸院にご連絡ください。

当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた丁寧な施術を心がけておりますので、安心してご相談いただければと思います。