冷えのぼせには漢方か鍼灸か?

「冷えのぼせ」には漢方薬と鍼灸どちらを選ぶ?

冷えのぼせは漢方か鍼灸か・写真1

冷えのぼせ、本当につらいですね。
体が温かいのか寒いのか分からず、イライラしたり、落ち込んだり、体調も優れない日々が続いていることと思います。

冷えのぼせは、東洋医学では「上熱下寒」という状態と考えられています。
上半身に熱がこもり、下半身が冷えている状態を指します。

原因は様々ですが、ストレスや不規則な生活、食生活の乱れ、運動不足などが考えられます。

冷えのぼせの症状は代表的なものとしては、顔や頭のほてり、のぼせ、発汗、イライラ、動悸、頭痛、めまい、手足の冷え、腰痛、むくみ、頻尿などが挙げられます

これらの症状が複合的に現れるため、日常生活にも支障をきたしてしまうこともあるかと思います。

しかし、諦めないでください。
冷えのぼせは、適切な治療と生活習慣の改善によって、必ず良くなります。

漢方薬は、体質や症状に合わせて、様々な種類があります。
例えば、上半身の熱を冷ますもの、下半身を温めるもの、気の巡りを良くするもの、血を補うものなどがあります。
鍼灸治療も、ツボを刺激することで、気の流れを整え、血行を改善する効果が期待できます。

つらい症状が続く場合は、漢方薬や鍼灸治療、生活習慣の改善など、様々な方法で症状を緩和することができます。

冷えのぼせで悩まれるあなたが漢方薬か鍼灸かで迷っているなら、最初に「結論」です
それはズバリ『両方使うのが最善』です

それだけだと身も蓋もないので、それぞれの良さを解説していきますね。

冷えのぼせの原因:生活習慣から

食生活の乱れ:
冷たいものや甘いものの摂り過ぎは、体を冷やし、気の巡りを悪くします。
過食や偏食は、消化不良を引き起こし、体内の熱を生み出す原因になります。

睡眠不足:
睡眠不足は、自律神経のバランスを乱し、気の巡りを悪くします。
また、睡眠中に体を修復する力が低下し、冷えを招きやすくなります。

運動不足:
運動不足は、血行を悪くし、体を温める力を低下させます。
また、筋肉量が減ると、基礎代謝が下がり、冷えやすくなります。

ストレス:
ストレスは、自律神経のバランスを乱し、気の巡りを悪くします。
また、ストレスによって血管が収縮し、血行が悪くなることもあります。

冷えのぼせと東洋医学

冷えのぼせは、東洋医学では「上熱下寒(じょうねつげかん)」という状態と考えられています。
これは、上半身に熱がこもり、下半身が冷えている状態を指します。

様々な原因によって気の流れが乱れると、熱が上半身に滞り、冷えが下半身に生じます。

冷えのぼせの原因は、体質や生活習慣によって異なりますが、主なものとしては以下の点が挙げられます。

陰虚火旺(いんきょかおう)

体内の潤いである「陰(いん)」が不足し、相対的に熱である「陽(よう)」が過剰になっている状態です。

【現れやすいです症状】
顔や頭のほてり、のぼせ、発汗
口渇、喉の渇き
寝汗、手足の裏のほてり
イライラ、怒りやすい
便秘

気虚下陥(ききょげかん)

エネルギーである「気」が不足し、下半身を温めることができない状態です。

【現れやすい症状】
手足の冷え
疲労感、無気力
めまい、立ちくらみ
食欲不振、消化不良
頻尿

肝鬱気滞(かんうつきたい)

ストレスや感情の乱れにより、気の巡りが滞っている状態です。
イライラ、怒りやすい、憂鬱などの精神症状や、胸苦しさ、腹部膨満感などが現れやすいです。

【現れやすい症状】
顔のほてり、のぼせ
イライラ、怒りやすい
憂鬱、不安
胸苦しさ、腹部膨満感
生理不順

寒湿困脾(かんしつこんぴ)

体内に余分な水分(湿)が溜まり、脾(消化器系)の働きが低下している状態です。

【現れやすい症状】
上半身のほてり、のぼせ
吐き気、食欲不振
むくみ、体が重だるい
下痢しやすい

タイプも重なって持つこともあるため、これらの症状は、複合的に現れることもあります。

冷えのぼせに効果が期待できる漢方薬

動悸の漢方と鍼灸・写真3

東洋医学では、動悸は体質によって原因が異なると考えますので、それぞれの体質に合わせた漢方薬を選ぶことが重要です。

以下に、代表的な体質別に効果が期待できる漢方薬を、選んだ理由と合わせてご紹介します。

陰虚火旺(いんきょかおう)タイプ

特徴:
体内の潤いである「陰」が不足し、相対的に熱である「陽」が過剰になっている状態。
ほてり、のぼせ、口渇、寝汗などが現れやすい。

おすすめの漢方薬:
六味地黄丸(ろくみじおうがん):
陰を補い、火(熱)を鎮める効果があります。

知柏地黄丸(ちばくじおうがん):
六味地黄丸に、熱を冷ます効果のある知母(ちも)と黄柏(おうばく)を加えたものです。

選んだ理由:
陰虚火旺の体質には、不足した陰を補い、過剰な熱を冷ます漢方薬が適しています。

気虚下陥(ききょげかん)タイプ

特徴:
エネルギーである「気」が不足し、下半身を温めることができない状態。
手足の冷え、疲労感、無気力などが現れやすい。

おすすめの漢方薬:
補中益気湯(ほちゅうえっきとう):
気を補い、胃腸の働きを高める効果があります。

人参湯(にんじんとう):
体を温め、胃腸の機能を回復させる効果があります。

選んだ理由:
気虚下陥の体質には、不足した気を補い、体を温める漢方薬が適しています。

肝鬱気滞(かんうつきたい)タイプ

特徴:
ストレスや感情の乱れにより、気の巡りが滞っている状態。
イライラ、怒りやすい、憂鬱などの精神症状や、胸苦しさ、腹部膨満感などが現れやすい。

おすすめの漢方薬:
加味逍遥散(かみしょうようさん):
気の巡りを良くし、精神安定作用もあります。

抑肝散(よくかんさん):
イライラや怒りなどの精神症状を緩和する効果があります。

選んだ理由:
肝鬱気滞の体質には、気の巡りを良くし、精神状態を安定させる漢方薬が適しています。

寒湿困脾(かんしつこんぴ)タイプ

特徴:
体内に余分な水分(湿)が溜まり、脾(消化器系)の働きが低下している状態。
手足の冷え、むくみ、食欲不振などが現れやすい。

おすすめの漢方薬:
茯苓飲(ぶくりょういん):
余分な水分を取り除き、胃腸の働きを整える効果があります。

五苓散(ごれいさん):
体内の水分代謝を改善する効果があります。

選んだ理由:
寒湿困脾の体質には、余分な水分を取り除き、脾の働きを助ける漢方薬が適しています。

上記の漢方薬は、あくまで一般的な体質別の例です。
実際には、個人の体質や症状に合わせて、漢方薬を専門家(医師や薬剤師)に選んでもらうことが大切です。

冷えのぼせに効く鍼灸のツボ

動悸の漢方と鍼灸・写真4

それぞれの体質に合わせたツボを選ぶことが大切です。

以下に、代表的な体質別に効果が期待できるツボを2つずつ、選んだ理由と合わせてご紹介します。

冷えのぼせに悩む方の体質別に効果が期待できるツボ(経穴)を2つずつ、選んだ理由とともにご紹介します。

陰虚火旺(いんきょかおう)タイプ

特徴:
体内の潤いである「陰」が不足し、相対的に熱である「陽」が過剰になっている状態。
ほてり、のぼせ、口渇、寝汗などが現れやすい。

おすすめのツボ:
復溜(ふくりゅう):
陰を補い、腎機能を高める効果があります。

三陰交(さんいんこう):
脾経、肝経、腎経の3つの経絡が交わるツボであり、陰を補い、血行を促進する効果があります。

選んだ理由:
陰虚火旺の体質には、不足した陰を補い、熱を冷ますツボが適しています。

気虚下陥(ききょかかん)タイプ

特徴:
エネルギーである「気」が不足し、下半身を温めることができない状態。
手足の冷え、疲労感、無気力などが現れやすい。

おすすめのツボ:
気海(きかい):
任脈上のツボであり、気を補い、体を温める効果があります。

足三里(あしさんり):
胃経のツボであり、胃腸の働きを高め、気を生み出す力を助ける効果があります。

選んだ理由:
気虚下陥の体質には、不足した気を補い、体を温めるツボが適しています。

肝鬱気滞(かんうつきたい)タイプ

特徴:
ストレスや感情の乱れにより、気の巡りが滞っている状態。
イライラ、怒りやすい、憂鬱などの精神症状や、胸苦しさ、腹部膨満感などが現れやすい。

おすすめのツボ:
合谷(ごうこく):
大腸経のツボであり、気の巡りを良くし、ストレスを緩和する効果があります。

内関(ないかん):
心包経のツボであり、精神安定作用があり、イライラや不安を和らげる効果があります。

選んだ理由:
肝鬱気滞の体質には、気の巡りを良くし、精神状態を安定させるツボが適しています。

寒湿困脾(かんしつこんぴ)タイプ

特徴:
体内に余分な水分(湿)が溜まり、脾(消化器系)の働きが低下している状態。
手足の冷え、むくみ、食欲不振などが現れやすい。

おすすめのツボ:
陰陵泉(いんりょうせん):
脾経のツボであり、余分な水分を取り除き、脾の働きを助ける効果があります。

豊隆(ほうりゅう):
胃経のツボであり、痰湿を取り除き、むくみを改善する効果があります。

選んだ理由:
寒湿困脾の体質には、余分な水分を取り除き、脾の働きを助けるツボが適しています。

以上、
「冷えのぼせに良いツボ」も全身のあちこちにあります。
それは「体質の異常=全身の問題」と捉えるためで、それを改善するツボは全身にあります。

漢方薬と鍼灸のどちらかしか選べないなら…

冷えのぼせでお悩みのあなたが漢方薬と鍼灸で迷っているとします。
どちらも自費で費用が気になるのも分かります。
どちらも効果的な治療法なのでどちらが良いか迷うのは当然です。

もし私でしたら、まずはどちらでも「自分が気になった方・効きそうと感じた方」から始めてみてはいかがでしょうか

漢方薬と鍼灸のメリットデメリットをいくつか比較してみます。

漢方薬は費用負担が少ない可能性

漢方薬も漢方薬局などの場合は自費になりますが、保険がきくクリニックなどでの処方は比較的安価(保険適応なので)で、ある程度の期間服用できるため、初期費用を抑えながら様子を見ることができます。
経済的な負担を考慮すると、まずは「病院の漢方薬」を試してみるのもお勧めです。

他にどんな悩みがあるか?で決める

「冷えのぼせ」は様々な原因が考えられますし、「冷えのぼせ」のみという方も少ないです。
それ以外の体の悩みの傾向で決めていくのも考え方としてはアリです。

漢方薬は内臓系が得意ですので、更年期などホルモンバランスの変化や胃腸症状などが強ければまずは漢方薬から始めるのも良いでしょう。
鍼灸は神経系やコリ痛み系が得意ですので、肩こり・腰痛・頭痛・しびれ・自律神経の乱れなどが強ければ鍼灸から始めるのも良いでしょう。

通院の負担と服用の負担から考える

たとえば鍼灸は治療院に週1回程度通う必要がありますが、漢方薬は2週間に1回程度の通院が多いです。
通院の手間は鍼灸院の方が多いですが、施術日以外はとくに何もしないで済みます。
一方、漢方薬は自宅での服用が必要です。
1日3回、食事と食事の間(食前2時間くらい)に飲むのも手間です。
忙しい患者さんにとって、どちらの方が時間の節約になるでしょうか。

どちらかを選択して、ある程度の期間(1~3ヶ月間ほど)試しても効果が実感できない場合は、もうひとつに切り替えるといいでしょう
ご自身の症状や経済状況に合わせて、最適な治療法を選択する参考になさってください。

まとめ

最初の結論にもう一度書きます。

「冷えのぼせには漢方薬と鍼灸を併用するのがベスト」です。

漢方薬と鍼灸を同時に使うメリットを以下に挙げます。

1)相乗効果の発揮
漢方薬は体の内側から、鍼灸は体の外側から治療を行い、それぞれの効果を高め合います。

2)全身のバランス調整
漢方薬は全身のエネルギーや血流を調整し、鍼灸は経絡を刺激して気の流れを整えるため、体全体のバランスがより良くなります。

3)症状の緩和と根本治療の両立
鍼灸は自律神経系に即効性があり、漢方薬は内臓系を改善するため、両方の効果を同時に期待できます。

4)個別のニーズに対応可能
漢方薬と鍼灸の組み合わせで、患者さんの体質や症状に応じた柔軟な治療プランを作成できます。
「冷えのぼせ」だけではなく、肩コリ・胃もたれ・イライラ・冷えのぼせ・腰痛など、メインのお悩み以外の症状も併せ持つ人が少なくありません。
それらには鍼灸の得意分野・漢方薬の得意分野がありますので、併用が最大の効果となります。

5)自然治癒力の最大化
鍼灸の刺激が体の自然治癒力を引き出し、漢方薬がその力を補完することで、治癒力を最大限に引き出せます。
両者を適切に組み合わせることで、東洋医学の全体的な効果をより引き出すことができます。

以上、
一言で言えば『鍼灸と漢方薬は併せて東洋医学』ということですね。

ぜひ西洋医学だけでなく、
東洋医学(漢方薬・鍼灸)も病気治癒や健康増進のために活用することをお勧めいたします。

ちなみに、
漢方薬と鍼灸の違いについてはこちらに書きました。

『漢方薬と鍼灸の違いってなに?』

漢方薬と鍼灸の違いってなに?

また、当院は鍼灸院なので鍼灸推しです。
詳細は下記リンクをどうぞ。

ホットフラッシュ

冷え性

自律神経失調症