寒露|鍼灸師が教える二十四節気の健康法

寒露の今できる健康法について

寒露の健康法・写真1

寒露(かんろ)は、二十四節気の17番目で、例年10月8日頃から10月22日頃までの期間を指します。
2025年は10月8日です。

この時期は、夏の陽気が完全に姿をひそめ、秋の深まりを感じさせる頃です。
朝晩の冷え込みが一段と厳しくなり、露が冷気によって凍る寸前まで冷たくなることから「寒露」と名付けられました。

秋が深まると同時に、冬の気配が忍び寄ってくる季節です。
空気は澄み、紅葉が始まり、自然界の動植物も次第に冬支度を始めます。
人間もまた、身体と心を「冬に備える準備期間」として、この時期を大切に過ごすことが求められます。

今回は「寒露(かんろ)」の時期を健やかに過ごすためのヒントをお届けしますので、ぜひ最後までお読みください

寒露の頃に起こりうる心身の不調

寒露の時期は、東洋医学でいう「燥邪(そうじゃ)」と「寒邪(かんじゃ)」の影響を受けやすい季節です。
具体的には、以下のような心身の不調が現れやすくなります。

乾燥の影響

まず、乾燥による不調が顕著になります。
空気中の湿度が低下することで、東洋医学で言う「水(すい)」と呼ばれる体内の潤いが不足しやすくなります。

これにより、肌の乾燥やかゆみ、髪のパサつきといった表面的な症状だけでなく、喉の痛み、空咳、鼻の乾燥、目の乾きといった呼吸器系や粘膜の不調も現れやすくなります。

肺は乾燥に弱い臓腑とされており、肺の機能が低下すると、免疫力の低下にも繋がり、風邪を引きやすくなるなど、感染症への抵抗力も落ちやすくなります。

冷えの影響

次に、寒さによる不調です。
朝晩の冷え込みが厳しくなることで、体が冷えやすくなります。

冷え込み(=寒邪)は身体に入り込みやすく、肩こりや関節痛、腰の冷え、足元のだるさにもつながります。

東洋医学では「脾(ひ)」の臓腑が冷えに弱いとされており、消化機能の低下に繋がりやすくなります。
その結果、食欲不振、胃もたれ、下痢や便秘といった消化器系の不調が現れることがあります。

また、冷えと乾燥が同時に起こることで、自律神経が乱れ、不眠やイライラ、落ち込みなど、メンタル面への影響も見られます。

自律神経への影響

さらに、この時期は自律神経のバランスが乱れやすい時期でもあります。

日照時間が短くなり、気圧の変化も大きくなるため、精神的なストレスを感じやすくなります。

季節の変わり目に弱い方は、不眠、イライラ、気分の落ち込み、倦屈感、めまい、動悸といった自律神経失調症の症状が悪化しやすい傾向にあります。

これらは、東洋医学では「肝(かん)」の気の巡りが滞る「肝鬱(かんうつ)」の状態や、「腎(じん)」の機能が低下する「腎虚(じんきょ)」の状態と関連があると考えられています。

当院に来院される30代から50代の女性に多い婦人科系疾患でお悩みの方には、寒露の時期は注意が必要です。
冷えは、子宮や卵巣の血流を悪化させ、生理不順、生理痛の悪化、子宮筋腫や子宮内膜症の症状の増悪に繋がりやすくなります。

不妊治療中の方にとっても、体の冷えは妊娠しにくい体質に繋がりかねません。
また、ストレスや乾燥は「血(けつ)」の不足を招き、生理周期の乱れや生理量の減少を引き起こすこともあります。

緑内障や眼精疲労など目のお悩みをお持ちの方も、乾燥と冷えには注意が必要です。
目の乾燥は、目の疲れを悪化させ、視力低下や目の奥の痛みに繋がることがあります。
また、冷えによる血行不良は、目の栄養供給を妨げ、緑内障の症状を悪化させる可能性も考えられます。

このように、寒露の時期は、心身ともに様々な不調が現れやすいデリケートな季節と言えるでしょう。

不調を避けるための東洋医学的な健康法

寒露の時期の不調を避けるためには、東洋医学の知恵を取り入れた日々の養生が非常に重要です。

潤いを補う食養生

まず、「潤い」を補う養生が不可欠です。
乾燥は肺を傷つけ、様々な不調を引き起こします。

積極的に水分を補給することはもちろんですが、単なる水だけでなく、体を潤す食材を意識して摂りましょう。
例えば、梨、柿、ぶどう、蓮根、山芋、白きくらげ、豆腐、牛乳、豚肉、鴨肉などは、体の津液を補うとされています。
梨や蓮根は肺を潤す効果が期待できます。

調理法としては、煮物や蒸し料理など、水分を豊富に含んだものがおすすめです。

冷え対策

次に、体を「冷やさない」養生です。
朝晩の冷え込みが厳しくなるこの時期は、保温を徹底しましょう。

首、手首、足首の「三首」を温めることが重要です。
外出時にはストールや手袋、厚手の靴下などを着用し、寝る時も首元を冷やさないように工夫しましょう。

温かい飲み物や食べ物を摂ることも大切です。
生姜、ネギ、シナモンなど体を温める食材を積極的に料理に取り入れると良いでしょう。

シャワーだけで済ませず、ゆっくりと湯船に浸かり、体の芯から温まることもおすすめです。
ただし、熱すぎるお風呂は逆に体を乾燥させることもあるので、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるのが理想的です。

メンタルケア

そして、「心のケア」も忘れずに行いましょう。
寒露の時期は、日照時間の減少や気圧の変化が自律神経に影響を与え、気分が落ち込みやすくなることがあります。

質の良い睡眠を確保し、十分な休息を取ることが大切です。
寝る前には、スマートフォンやパソコンの使用を控え、リラックスできる環境を整えましょう。

アロマテラピーや瞑想、軽いストレッチなども、心の緊張をほぐし、質の良い睡眠に繋がります。

また、気分転換に自然の中に身を置くこともおすすめです。
紅葉狩りなど、美しい景色を眺めることで、心のリフレッシュに繋がります。

旬のものを食べる

食事の面では、旬の食材を取り入れることが東洋医学の養生では重要視されます。

旬の食材はその時期の体のニーズに合致していると考えられています。
寒露の時期は、前述の潤いを補う食材に加え、消化の良いものを意識し、暴飲暴食は避けましょう。

胃腸に負担をかけないことで、体の機能を正常に保ちやすくなります。

適度な運動

さらに、適度な運動も体調維持には欠かせません。
激しい運動よりも、ウォーキングやヨガ、太極拳など、ゆったりとした動きで血行を促進し、気の巡りを良くする運動がおすすめです。
外での運動が難しい場合は、室内でできる簡単なストレッチや体操でも効果があります。

これらの養生法は、日々の生活の中で無理なく取り入れられるものばかりです。
継続することで、寒露の時期を健やかに過ごし、心身のバランスを整えることに繋がるでしょう。

寒露の頃におススメのツボ(経穴)

寒露の時期の不調を乗り越えるために、先ほどの東洋医学的な健康法に加えて、ご自宅で簡単にできるツボ刺激も効果的です。
以下に挙げる3つのツボは、この時期の体の状態を整えるのに役立ちます。

■太淵(たいえん)

手のひらを上にして手首の曲がりじわ親指側で動脈の拍動を感じるところが太淵です。

効果: 太淵は「肺経(はいけい)」という経絡の重要なツボで、肺の機能を整える作用があります。
寒露の時期は乾燥により肺がダメージを受けやすいため、ここを刺激することで、喉の乾燥、空咳、鼻の乾燥といった呼吸器系の不調を和らげる効果が期待できます。
また、肺は「気」を司る臓腑でもあるため、全身の気の巡りを良くし、だるさや疲労感を軽減する効果も期待できます。

■三陰交(さんいんこう)

内くるぶしのいちばん高いところに小指をおき、指幅4本そろえて、人さし指があたっているところが三陰交です。

効果: 三陰交は、脾、肝、腎の3つの陰の経絡が交わる重要なツボです。
このツボを刺激することで、血行促進、冷えの改善、婦人科系の不調(生理不順、生理痛)の緩和に効果が期待できます。
寒露の時期の冷えによる消化器系の不調や、女性特有の悩みにアプローチできるため、当院に来院される女性患者さんにも特におすすめできるツボです。
また、自律神経のバランスを整える作用もあり、不眠やイライラの緩和にも役立ちます。

■太衝(たいしょう)

足の甲にあります。足の親指と人差し指の骨が交わる所です。

効果: 太衝は「肝経(かんけい)」のツボで、肝の気の流れをスムーズにする作用があります。
寒露の時期に起こりやすいストレス、イライラ、不眠、めまいといった自律神経失調症の症状の緩和に効果的です。

また、肝は「血(けつ)」の貯蔵と巡りに関わるため、血行促進にも繋がり、冷えや筋肉の緊張による肩こりや腰痛の改善にも役立ちます。
目に良いツボとしても知られており、眼精疲労の緩和にもおすすめです。

これらのツボは、指の腹で優しく、または少し強めに気持ち良いと感じる程度に押したり、お灸で温めたりしてみてください。
継続的に実践することで、より効果を実感できるでしょう。

まとめ

寒露の時期は、秋の深まりとともに乾燥と冷えが進み、体調を崩しやすいデリケートな季節です。
肌や喉の乾燥、冷えによる消化器系の不調、そして自律神経の乱れによる精神的な不調など、様々な症状が現れる可能性があります。

しかし、東洋医学の知恵を取り入れた養生と、適切な鍼灸治療を受けることで、これらの不調を未然に防ぎ、健やかに過ごすことができます。
体を潤す食材を積極的に摂り、体を冷やさない工夫を徹底し、心のケアも忘れずに行いましょう。
今回ご紹介したツボ刺激も、日々のセルフケアとしてぜひ取り入れてみてください。

セルフケアだけではどうにもならないようなお悩みがありましたら、一度ご相談ください。
私たちは、鍼灸を通して、あなたの心と体を整え、健康で明るい毎日を過ごせるよう全力でサポートいたします。

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