二人目不妊(PMSツラい)への鍼灸症例|鎌ヶ谷市在住30代女性

二人目不妊(PMSツラい)への鍼灸症例

二人目不妊への鍼灸症例・写真1

今回は、二人目不妊と重いPMSに悩まれ、当院での治療を経て無事に妊娠・出産へと至った30代女性の症例をご紹介します

患者さまについて

年齢・性別:
30代 女性・鎌ヶ谷市

鍼灸院に来られるまでの経緯:
若い頃から生理痛が重く、日常生活にも支障が出るほどでした。
婦人科では「月経困難症」と診断され、低用量ピルを服用していた時期もありました。

仕事のストレスから食欲不振に陥り、「適応障害」と診断され、心療内科で処方された薬を服用していたご経験もおありです。

第一子はお二人でタイミングを計る中で、比較的スムーズに(4~5ヶ月で)自然妊娠されました。
しかし、妊娠中はつわりが重く、出産は帝王切開。
そして産後には、「産後うつ」を発症し、心身ともに辛い時期を過ごされました。
心療内科での治療を受け、少しずつ回復されましたが、ご本人にとっては非常に大きな負担だったと推察されます。

産後半年で生理が再開したものの、以前同様に生理痛が重く、再び婦人科でピルを処方されていました。

そして、第一子の出産から約3年半が経過し、二人目の妊活を開始。
ご自身たちでタイミングを試しながら、同時に「根本的な体質改善もしたい」という想いから、当院の鍼灸治療を選ばれました。

強い生理痛とPMSによる心身の不調がありました。
慢性的な疲労感や首肩のコリも、日々の生活の質を低下させる一因となっていました。

東洋医学的考察

東洋医学では、私たちの身体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」という3つの要素がバランス良く巡ることで健康が保たれると考えます。
「気」は生命エネルギー、「血」は血液とその働き、「水」は血液以外の体液全般を指します。

これらのいずれかが不足したり、滞ったりすることで、様々な不調が現れるのです。

この患者さまは東洋医学的な観点から、主に以下の二つの状態が複合的に見られると判断しました。

■気滞血瘀(きたいけつお)

「気」の流れが滞る「気滞」の状態がベースにあり、それが「血」の流れも悪くする「血瘀」を引き起こしている状態です。

長年のストレス、精神的な緊張、生活習慣などが考えられます。
重い生理痛(特に刺すような痛みや塊状の経血)、PMSの強いイライラ、気分の波、首肩のコリなどは、気血の流れがスムーズでないことの典型的な現れです。

■気血両虚(きけつりょうきょ)

生命エネルギーである「気」と、身体を栄養する「血」の両方が不足している状態です。
もともとの体質に加え、出産による消耗、育児による疲労、精神的なストレス、食生活の乱れなどが考えられます。
産後のうつ症状も、この気血の消耗が大きく関わっていると考えられます。

慢性的な疲労感、倦怠感、気力の低下、顔色の悪さなどは、気血が不足しているサインです。

さらに、これらの不調は、東洋医学で重視する「五臓」のうち、「心(しん)」「肝(かん)」「腎(じん)」の機能低下(虚)と深く関わっていると考えられました。

【心】
精神活動や血脈を主ります。
「心」の機能が低下すると、不安感、不眠、動悸などが現れやすくなります。
産後うつや適応障害の既往は、「心」の弱りも示唆します。

【肝】
気血の流れをスムーズにし、情緒を安定させる働きがあります。
「肝」の機能が乱れると、イライラ、怒りっぽさ、PMSの悪化、生理不順、肩こりなどが起こりやすくなります。

【腎】
生命力の源であり、生殖や成長発育を主ります。
「腎」の機能が低下すると、不妊、生理不順、足腰のだるさ、疲労感などが現れやすくなります。

これらの状態を踏まえ、患者さまの身体が本来持っている力を引き出し、妊娠しやすい健やかな状態へと導くための治療方針を立てました。

治療方針

以下の点を重視したオーダーメイドの治療方針を立てました。

■疏肝理気(そかんりき)と活血化瘀(かっけつかお)
滞った「気」の流れをスムーズにし(疏肝理気)、停滞した「血」の巡りを改善する(活血化瘀)ことを最優先としました。
これにより、PMSのイライラや生理痛の緩和、肩こりの改善を目指します。

■補気養血(ほきようけつ)
不足している「気」と「血」を補い、身体全体のエネルギーレベルを高めます。
これにより、慢性的な疲労感を軽減し、妊娠・出産に必要な体力を養います。

■補腎(ほじん)・調心安神(ちょうしんあんしん)
生命力の源である「腎」の機能を高め、生殖能力をサポートします。
また、精神的な安定を図るために「心」の機能を整え(調心安神)、ストレスや不安感を和らげます。

治療は、身体の変化を見ながら、患者さまのご希望や体調に合わせて、その都度最適な方法を選択していきます。
単に症状を抑えるだけでなく、不調の根本原因にアプローチし、心身ともに健やかな状態へと導くことを目指しました。

治療経過

1回目~8回目(2週に1回ペース):

仰向けで、主に手足のツボ(曲池、内関、陰陵泉、足三里、太谿など)に置鍼をしました。
これらは気血の巡りを改善したり、消化器系や婦人科系の働きを整えたりする効果が期待できます。
お腹には、身体の中心を温め、エネルギーを高める「中脘(ちゅうかん)」や「関元(かんげん)」に、じんわりと温かい棒灸を行った後、さらに効果を高めるために点灸(直接お灸を据える方法)を施しました。
冷えやすい足先にはホットパックを使用し、心地よさを感じていただきながら全身の血行を促しました。

座位やうつ伏せでは、ツラさを訴えられていた首肩のコリに対して、関連する背中のツボ(心兪、膈兪、肝兪、腎兪、次髎など)への置鍼や、肩の凝っている部分への点灸、円皮鍼(小さな鍼がついたシール)などを集中的に行いました。
また、背骨に沿った「命門(めいもん)」や「至陽(しよう)」といったツボにも棒灸で温め、身体の陽気を補いました。

9回目~14回目(妊娠判明後~安定期:2週に1回ペース)

9回目の施術日、患者さまから「妊娠しました!」という大変嬉しいご報告をいただきました。
8回目の施術後、ご自身で妊娠検査薬を試したところ陽性反応があり、その後、病院で確定診断を受けられたとのことでした。
治療開始から約3ヶ月半での妊娠成立でした。

妊娠初期は非常にデリケートな時期であるため、鍼灸の刺激量をソフトに調整しました。
流産予防や、つわりの軽減、妊娠継続をサポートすることを目的とした施術内容に変更しました。

仰向けでは、安胎(あんたい:胎児を安定させる)や婦人科系の要穴である「三陰交(さんいんこう)」や、腎の働きを助ける「太谿(たいけい)」に浅く置鍼。
つわり対策として「内関(ないかん)」や、胃腸の調子を整える「足三里(あしさんり)」に点灸を行いました。
お腹への施術はよりソフトにし、「中脘」周辺への点灸と棒灸で優しく温めました。
足先のホットパックは継続しました。

うつ伏せで、背中の反応が出ている箇所(心兪、膈兪、肝兪、腎兪の周辺)に点灸を施し、棒灸で「命門」「至陽」を温める程度に留めました。

妊娠初期には、つわりの症状が見られましたが、鍼灸治療を継続することで、比較的穏やかに経過しました。

妊娠16週頃には、つわりの症状も落ち着きつつあり、安定期に入られたため、ご本人と相談の上、鍼灸治療は一旦終了となりました。

半年ほど後、患者さまより「無事に出産された」とのご報告をいただきました。

使用した主なツボとその代表的な効果

関元(かんげん)
おへその下にあるツボ。
生命エネルギー(元気)が集まる場所とされ、「丹田(たんでん)」とも呼ばれます。
身体を温め、腎の機能を高め、婦人科系の不調(生理痛、不妊など)や泌尿器系の問題、全身の疲労感、冷え性などに効果が期待できます。
患者さまの場合、気血と腎の虚を補い、妊娠しやすい身体を作るための中心的なツボでした。

三陰交(さんいんこう)
内くるぶしの上にあるツボ。
「肝」「脾」「腎」という3つの重要な経絡が交わる場所で、特に婦人科系の症状に広く用いられます。
生理痛、生理不順、PMS、不妊、冷え性、むくみなどに効果的です。
妊娠中は安胎のツボとしても知られます。
生理痛やPMS、そして妊娠後のサポートに重要な役割を果たしました。

内関(ないかん)
手首の内側にあるツボ。
精神的な緊張やストレスを和らげ、心を落ち着かせる効果が高いとされています。
また、消化器系の働きを整える作用もあり、吐き気や乗り物酔い、つわりの軽減にも用いられます。
PMSのイライラや、妊娠初期のつわり緩和に役立ちました。

足三里(あしさんり)
膝の下、外側にあるツボ。
胃腸の働きを高め、消化吸収を助け、全身のエネルギー(気)を補う代表的なツボです。
「元気のツボ」とも言われ、慢性的な疲労感、体力低下、食欲不振などに効果があります。
気血を補い、体力をつけるために用いました。

肝兪(かんゆ)・腎兪(じんゆ)
背中にあるツボで、それぞれ「肝」と「腎」の働きを整える作用があります。
肝兪は気の流れをスムーズにし、イライラやストレス、目の疲れなどに。
腎兪は生命力を高め、腰痛、耳鳴り、不妊、老化防止などに効果が期待できます。
気滞血瘀や腎虚の状態を改善するために使用しました。

次髎(じりょう)
骨盤(仙骨)にあるツボ。
骨盤内の血行を促進し、婦人科系(生理痛、生理不順、不妊など)や泌尿器系の症状、腰痛、坐骨神経痛などに効果的です。
重い生理痛や骨盤周りの循環改善に用いました。

これらは使用したツボの一部です。
当院では、お一人おひとりのその日の体調や脈、お腹の状態などを丁寧に診察し、最も効果的と考えられるツボを選んで施術を行っています。

まとめ

長年の生理痛やPMS、さらには二人目不妊という複合的なお悩みを抱えながらも、鍼灸治療を通じて心身のバランスを取り戻し、無事に妊娠・出産へと至ったケースでした。

患者さまの治療で重要だったのは、単に不妊やPMSといった症状だけを追うのではなく、その背景にある「気滞血瘀」や「気血両虚」といった東洋医学的な体質を見極め、ストレスや過去の心身の不調も含めて、全体的にアプローチしたことです。

鍼灸治療は、薬のように強制的に身体を変化させるのではなく、ご自身が本来持っている自然治癒力を引き出し、バランスの崩れを整えていくことを得意としています。

そのため、今回の患者様同様、体質改善を根本から行いたい方、薬に頼らず自然な形で妊娠を望む方、ストレスや疲労感など、様々な不調を同時に抱えている方に、特におすすめできる治療法です。

もしあなたが、二人目不妊で悩んでいる・生理痛やPMSがツラい・慢性的な疲労感やストレスを感じている…とお考えでしたら、ぜひ一度、当院にご相談ください。

まずはお気軽にお問い合わせいただき、あなたのお悩みをお聞かせください。

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