鍼灸は免疫力を向上させる

鍼灸の刺激で免疫に起こる変化

鍼灸と免疫・写真1

私たちの体には「免疫」という、病気から身を守る仕組みがあります。
これは、細菌やウイルスなどの外敵を撃退したり、体の調子を整えたりする大切な働きです。

じつは、鍼灸(しんきゅう)の刺激が、この免疫の働きを助けることが研究で分かっています。

今回は、鍼灸がどのように免疫に影響を与えるのかを解説します

免疫とは

鍼灸と免疫・写真2

免疫には、大きく分けて「自然免疫」と「獲得免疫」の2つがあります。

自然免疫(先天性免疫)
生まれつき体に備わっている防御システム。ウイルスや細菌が体に入ってきたときに、すぐに攻撃を始める。
例:白血球の一種である「マクロファージ」が細菌を食べて退治する。

獲得免疫(後天性免疫)
一度かかった病気を記憶し、次に同じ病原体が入ってきたときに、素早く対処できるシステム。
例:風疹や水ぼうそうに一度かかると、もう一度かかりにくくなる。

これらの免疫の働きが弱まると、風邪をひきやすくなったり、病気になりやすくなったりします。

鍼灸の刺激が免疫に与える影響

鍼(はり)や灸(きゅう)をすると、体の中ではどのような変化が起こるのでしょうか?

白血球の働きが活発になる

白血球は、免疫の主役ともいえる細胞です。
鍼灸の刺激によって白血球の数が増えたり、活性化したりすることが分かっています。

例えば、風邪をひいたとき、白血球が活発に働けば、ウイルスを素早く退治できるので、症状が軽くなったり、早く回復したりします。
鍼灸はこの白血球の働きを助け、免疫力を高めるのです。

ストレスを減らし、免疫力を高める

私たちの体は、ストレスが多いと免疫力が下がることが分かっています。
ストレスを受けると、「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。
このホルモンは、免疫の働きを弱めてしまうのです。

しかし、鍼灸にはリラックス効果があり、ストレスを和らげることができます。
これによって、コルチゾールの分泌が抑えられ、免疫が正常に働きやすくなるのです。

自律神経を整え、免疫バランスを良くする

免疫の働きは、「自律神経(じりつしんけい)」と深く関わっています。

自律神経には、次の2つがあります。

・交感神経(こうかんしんけい)
体を活動モードにする神経(例:運動時や緊張しているときに働く)

・副交感神経(ふくこうかんしんけい)
体をリラックスモードにする神経(例:睡眠時や休んでいるときに働く)

ストレスが多いと交感神経ばかりが優位になり、免疫の働きが乱れます。
しかし、鍼灸をすると副交感神経がよく働き、免疫バランスが整うことが分かっています。

どんな病気に効果があるの?

鍼灸の免疫への作用は、さまざまな病気の予防や改善に役立ちます。

風邪・インフルエンザの予防

免疫力が高まることで、風邪やインフルエンザにかかりにくくなります。
とくに、季節の変わり目に体調を崩しやすい人には、定期的な鍼灸がおすすめです。

アレルギー症状の軽減(花粉症・アトピーなど)

免疫が過剰に働くと、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状が出やすくなります。
鍼灸は免疫のバランスを整えるので、これらの症状を和らげるのに役立ちます。

自己免疫疾患の改善

免疫が正常に働かないと、自分の体を攻撃してしまう「自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)」が起こることがあります。
例えば、リウマチや潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)などです。

鍼灸は、炎症を抑える作用があり、こうした病気の症状を和らげるのに役立ちます。

免疫を高めるツボ

免疫力アップに効果的なセルフケアのツボをご紹介します。

合谷(ごうこく)

合谷(つぼ)・写真
場所:手の甲の、親指と人さし指の骨が交わる部分の少し上

選んだ理由:
風邪予防に効果的。
風邪の初期症状(のどの痛み、鼻づまり)にも良い。
ストレスを軽減し、自律神経のバランスを整える。
体全体の調子を整える「万能ツボ」として有名。

セルフお灸 やツボ押しで刺激してください。

足三里(あしさんり)

足三里(つぼ)・写真
場所:ひざのお皿の下から指4本分下、すねの外側

選んだ理由:
胃腸を整え栄養の吸収を助け、疲労回復・免疫力向上を期待できる。
血流をよくし、体を温める(冷えは免疫力低下の原因)。
昔から「足三里にお灸をすると長生きする」と言われるほど、健康維持に役立つツボ。

セルフお灸 やツボ押しで刺激してください。

大椎(だいつい)

大椎(つぼ)・写真
場所:背中。首を前に倒したときに、首と背中の境目くらいで、背骨の一番出っ張った部分の下のくぼみ。

選んだ理由:
体を温めることで、ウイルスや細菌に対する抵抗力を上げる。
風邪の予防や、引き始めの症状を緩和。
免疫細胞が集まるリンパの流れをよくする。

セルフお灸やホットタオルで温めてください。

まとめ

鍼灸の刺激は、免疫の働きを助けることが科学的に証明されています。

■白血球の働きを活発にし、病気を防ぐ
■ストレスを減らし、免疫力を高める
■自律神経を整え、免疫バランスを良くする

さらに、風邪や花粉症の予防、自己免疫疾患の症状緩和にも役立ちます。
日頃の健康のため、免疫力向上のため、鍼灸(ツボ刺激)をとりいれてください。