体外受精(胚移植)前に効果的なツボ
胚移植前に効果的なツボ
いよいよ胚移植ですね。
ここまで本当によく頑張られました。
期待と不安が入り混じる気持ちで過ごされていることと思います。
体調管理や生活習慣の見直し、通院の負担など、大変な努力をされてきたことでしょう。
鍼灸師として、あなたの心身がリラックスし、温かい気持ちで当日を迎えられますよう、胚移植の前に行うと良いセルフケアのツボを説明させていただきます。
あなたの努力が実を結びますよう、心から応援しています。
胚移植とは
体外受精において、受精卵を子宮に戻すことを「胚移植」といいます。
カテーテルという細い管を用いて、もっとも妊娠しやすい状態の胚を子宮内に優しく戻します。
胚移植の方法には、新鮮胚移植と凍結胚移植の2種類があります。
・新鮮胚移植
採卵後、培養した胚をそのまま子宮に戻します。
・凍結胚移植
採卵後、受精卵を凍結保存し、自然周期またはホルモン補充周期で子宮内膜を整えてから胚を戻します。
どちらの方法を選ぶかは、あなたの状態やクリニックの方針によって異なります。
いずれの場合も、胚移植後はしばらく安静に過ごし、心身ともにリラックスすることが大切です。
いつツボ刺激をすると良いか?
当院ではセルフケアの「お灸」をおススメしています。
お灸は、血行を促進し、体を温める効果があると言われています。
一般的には、以下のタイミングでお灸をすることをおススメします。
移植の数日前から当日:
移植に向けて、子宮や卵巣の血流を良くし、着床しやすい状態にすることを目的とします。
移植後も、着床をサポートし、妊娠を維持することを目的に、引き続きツボ刺激(お灸)を続けてください。
ツボの場所は基本的には以下に解説するタイプ別のツボを使ってもらえればよいです。
しかし、妊娠の状態や体質によって、お灸が適しているかどうか、適切なツボや回数などを鍼灸師に相談する方がより良いセルフケアになります。
胚移植前に効果的なツボ
胚移植を控えた方がセルフケアとして活用できるツボは、体質に応じて選ぶことが重要です。
東洋医学では「腎」「脾」「肝」の内臓系のコンディションと、体中を巡る「気血水」のバランスが妊娠のカギを握るとされており、それぞれの体質に合わせたツボ刺激が効果的です。
気虚タイプ(エネルギー不足)
特徴:
疲れやすい、息切れしやすい、胃腸が弱い、むくみやすい
おすすめのツボ:
気海(きかい)
おへそから指2本分くらい下。
気を補い、血行を促進するツボ。子宮を温める。
足三里(あしさんり)
膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみに人差し指を置き、指幅4本揃えて小指が当たっているところにあります。
消化機能の改善や、全身の倦怠感の緩和にも役立ちます。全身の気を補う。
三陰交(さんいんこう)
内くるぶしのいちばん高いところに小指をおき、指幅4本そろえて、人さし指があたっているところが三陰交です。
肝・脾・腎の三つの経絡が交わるツボで、女性にとって特に重要なツボで、3つの経絡が交わる場所にあります。
妊娠力アップに効果が期待できます。
血虚タイプ(血の不足)
特徴:
肌の乾燥、冷え性、貧血気味、不眠、めまい
おすすめのツボ:
血海(けっかい)
膝の内側、膝のお皿より指3本分上にあります。
血流を良くする効果が高いツボです。
関元(かんげん)
へそから指4本分下の正中線上に位置しています。
婦人科系のエネルギーを高め、血が巡りやすくなります。
三陰交(さんいんこう)
内くるぶしのいちばん高いところに小指をおき、指幅4本そろえて、人さし指があたっているところが三陰交です。
肝・脾・腎の三つの経絡が交わるツボで、女性にとって特に重要なツボで、3つの経絡が交わる場所にあります。
妊娠力アップに効果が期待できます。
陽虚タイプ(冷えが強い)
特徴:
手足の冷え、寒がり、疲れやすい、むくみやすい
おすすめのツボ:
命門(めいもん)
まずヒジの高さを確認します。ヒジと同じ高さの背骨にあるのが命門です。
腎の陽気を補い、子宮を温める。
関元(かんげん)
腎陽を高め、温かいエネルギーを補充。
湧泉(ゆうせん)
足でグーをした時、足裏でいちばんへこんでいるところが湧泉です。足裏を3等分して約3分の1のところです。
腎を補い、全身のエネルギーを巡らせる。
瘀血タイプ(血の巡りが悪い)
特徴:
生理痛が強い、肩こり、くすみやすい、冷えとほてりが混在
おすすめのツボ:
血海(けっかい)
膝の内側、膝のお皿より指3本分上にあります。
血流を良くする効果が高いツボです。
合谷(ごうこく)
手の甲で親指と人さし指の間。
ストレスによる緊張を緩和。
太衝(たいしょう)
足の甲にあります。足の親指と人差し指の骨が交わる所です。
肝経のツボで、気の巡りを整え、イライラや精神的な緊張を和らげる効果があります。
気滞タイプ(ストレスが強い)
特徴:
イライラしやすい、胸が張る、便秘と下痢を繰り返す
おすすめのツボ:
太衝(たいしょう)
足の甲にあります。足の親指と人差し指の骨が交わる所です。
肝経のツボで、気の巡りを整え、イライラや精神的な緊張を和らげる効果があります。
内関(ないかん)
手首の曲がりジワに薬指をおき指幅3本そろえて人さし指があたっているところ、腕の幅の真ん中が内関です。
精神的な安定をもたらす効果があります。
自律神経を整え、リラックスを促す。
合谷(ごうこく)
手の甲で親指と人さし指の間。
ストレスによる緊張を緩和。
ツボを自分で探す時のコツ
より効果的なツボをご自身で探す際は、以下の点を意識してみてください。
ツボの基本位置を確認
鍼灸院での指導や書籍、ウェブサイトなどでツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴の場合、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりに位置します。
押して探す
だいたいの目安の場所の近辺を指で軽く押しながら、周囲を探ります。
「イタ気持ちいい」感覚や、ズーンと響くような感覚がある場所が、ツボの可能性が高いです。
合谷であれば、骨の交わる部分からやや人差し指側を探ると、凹みがあり、圧痛を感じる場所が見つかるはずです。
体の反応をみる
ツボを押すと、血行が良くなったり、体が温まったりする感覚がある場合があります。
ただし、ツボの位置は個人差がありますので、あくまで目安として捉え、無理に強い力で押さないように注意しましょう。
もし不安な場合は、鍼灸師などの専門家にご相談ください。
せんねん灸(台座灸)の使い方と注意点
ご自宅で手軽にできるセルフお灸として、「せんねん灸」の使い方と注意点について解説します。
「せんねん灸」は、ドラッグストアなどで手軽に購入できるお灸の製品名です。
せんねん灸タイプのお灸は「台座灸」と呼びます。
せんねん灸と似たような形の他の商品も多数あり、使用方法などは基本的には同様です。
せんねん灸の使い方
種類を選ぶ
「せんねん灸」には様々な種類があります。
「ソフト(弱)」「レギュラー(中間)」「あつめ(強)」の3つの種類があります。
初めての方は、熱さが「マイルドなタイプ」から試してみることをお勧めします。
ツボの場所を決める
どのツボを使うかはあらかじめ決めておき、ツボの目安を指でさぐりながらより効き目の高いポイントを決めて、ペンなどで印をつけます。
準備
お灸を据える場所を清潔にし、皮膚に異常がないか確認します。
台座の裏紙を剥がす
「せんねん灸」の台座裏についている薄い紙を剥がします。
もぐさに点火
巻きもぐさの先端に線香などで火をつけます。
皮膚に据える
火がついた「せんねん灸」を、ツボに据えます。
熱さを感じたら、無理せずすぐに取り外してください。我慢は禁物です。
取り外す
使用後、完全に火が消えていることを確認してからとりあえずして、捨ててください。
お灸をする上での注意事項
・熱さを我慢しない
熱すぎると感じたら、すぐに取り外してください。無理に我慢すると、やけどの原因になります。
・同じ場所に続けて据えない
皮膚に負担がかかるため、同じ場所に続けてお灸を据えるのは避けましょう。
・顔面、粘膜、傷口、炎症部位への使用は避ける
これらの部位は皮膚がデリケートなため、お灸の使用は避けてください。
・発熱時、飲酒時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける
体調が優れない時は、お灸を控えるようにしましょう。
・皮膚の弱い方、アレルギー体質の方は注意
使用前に必ずパッチテストを行うか、医師や薬剤師に相談してください。
・使用中に異常を感じたら、直ちに使用を中止し、医師に相談
万が一、皮膚に異常が現れた場合は、すぐに使用を中止し、医師の診察を受けてください。
・乳幼児への使用は避ける
小さなお子様への使用はお控えください。
・火の取り扱いに注意
火を使うため、火災には十分に注意してください。
周囲に燃えやすいものがないことを確認し、換気をしながら行いましょう。
上記に注意して、安全にせんねん灸をご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。
セルフケアのツボ押しの方法と注意点
ご自宅で簡単にできるセルフケアとして、ツボ押し(マッサージ)について解説いたします。
ツボ押しは、体の不調を和らげたり、リラックス効果を高めたりするのに役立ちます。
ツボ押しの方法
リラックスできる環境を整える
静かな場所で、楽な姿勢で行いましょう。
ツボの位置を確認
書籍やウェブサイトなどで、目的のツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴は、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりです。
指の腹で押す
親指や人差し指の腹を使い、ツボを垂直に押します。爪を立てないように注意しましょう。
適度な力で押す
「イタ気持ちいい」と感じる程度の力で、ゆっくりと押します。
強く押しすぎると、痛みを感じたり、皮膚を傷めたりする可能性があります。
時間をかけて押す
1つのツボにつき、5秒から10秒程度、ゆっくりと押したり離したりを繰り返します。数回繰り返すと効果的です。
呼吸を意識する
力を入れる時に息を吐き、力を抜く時に息を吸うと、よりリラックスできます。
温めてから行うと効果的
入浴後など、体が温まっている状態で行うと、血行が促進され、より効果を感じやすくなります。
ツボ押しをする上での注意事項
・食直後、飲酒時、発熱時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける:
体調が優れない時は、ツボ押しを控えましょう。
・皮膚に炎症や傷がある場合は避ける:
患部を刺激することで、症状が悪化する可能性があります。
・強く押しすぎない:
強い力で押すと、筋肉や血管を傷つける可能性があります。あくまで「イタ気持ちいい」程度の力で行いましょう。
・長時間同じ場所を押さない:
皮膚に負担がかかるため、長時間同じ場所を押すのは避けましょう。
・力を抜くことを意識する:
力を入れっぱなしにすると、筋肉が緊張してしまい、効果が得られにくくなります。
・体調に異変を感じたら中止する:
ツボ押し中に体調が悪くなった場合は、直ちに中止し、必要に応じて医師に相談してください。
・乳幼児へは避ける:
小さなお子様へはお控えください。
・持病のある方は医師に相談:
心臓疾患や高血圧など、持病のある方は、ツボ押しを行う前に医師に相談してください。
上記に注意して、安全にツボ押しをご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。
鍼灸院での施術
セルフケアのお灸やツボ押しもお勧めしますが、相乗効果を狙う意味では鍼灸院での施術もお勧めいたします。
鍼灸院では、あなたの体質や状態に合わせて、適切なツボを選び、鍼灸施術を行います。
鍼灸施術を受けることで、心身がリラックスし、胚移植に向けてより良い状態を整えることができます。
当院の妊活鍼灸の詳しくはこちら
おまけ:漢方薬
体質によっては、漢方薬も効果的です。
疲れタイプの方には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
冷え性タイプの方には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
ストレスタイプの方には加味逍遙散(かみしょうようさん)
むくみタイプの方には五苓散(ごれいさん)などがおすすめです。
ただし漢方薬については、専門家にご相談ください。
さいごに
最大限の良いコンディションで移植の日を迎えられるように、生活も整えることをお勧めします。
アドバイスは極めて当たり前のことになりますが、この「当たり前」というのが実はとても重要だったりします。
食事:
バランスの取れた食事を心がけ、身体を温める食材を積極的に摂りましょう。
睡眠:
十分な睡眠時間を確保し、心身を休ませましょう。
運動:
軽い運動を取り入れ、血行を促進しましょう。
リラックス:
音楽を聴いたり、アロマを焚いたり、自分に合ったリラックス方法を見つけましょう。
胚移植は、あなたにとって大きな出来事です。
どうぞご自身を大切に、リラックスして当日をお迎えください。
応援しています。
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