はり灸の「鍼」と金属アレルギーについて
金属アレルギーがあっても鍼治療は受けられますか?
金属アレルギーをお持ちの方でも基本的に問題ありません。
鍼治療用の鍼の素材は、金属アレルギーを起こしづらい医療用ステンレスを使用しております。
ステンレスは、金属アレルギーの方のアクセサリー素材としても使われております。
また、体と接触している時間も長くて20~30分程度です。
ただし、
絶対にアレルギーが起こらないというものではありません。
金属アレルギーの人でもおおむね問題なく受けていただける(実際にアレルギーになるケースはまれ)ものです。
そもそも金属アレルギーとは
金属アレルギーのメカニズムについてご説明します。
アレルギー反応のひとつで、金属が汗などによって微量に溶け出し金属イオンとなり、それが皮膚のタンパク質と結合し、それを体が「異物」とみなし拒絶反応を起こすことによって起こる現象です。
金属 + 体のたんぱく質 → 異物と判定 → 攻撃という流れです。
またアレルギー全般に言えることですが、今までなかったから大丈夫なわけではなく、ある日突然引き起こされることもあります。
人によってアレルギーを引き起こす物質(今回だと金属)への許容範囲は異なり、許容範囲を越えるとアレルギー症状として発現してくると考えられます。
主な症状は、
痒み・赤み・水膨れ・ブツブツ・湿疹などです。
一般的に『金属アレルギーを引き起こしやすい』と言われている金属は、水銀、ニッケル、コバルト、スズ、パラジウム、クロム、銅などです。
特徴としては「溶け出しやすい金属」になります。
反対に、
金属アレルギーになりづらい金属素材は、チタン・プラチナ・銀・金・亜鉛などがあります。
ステンレスもアレルギーは出づらいと言われます。
たとえばチタンは、手術の際に骨を固定するボルトなどに使われます。
このように体内に何年もそのまま埋め込んでいても害が少ない素材としてて使われています。
鍼治療の鍼の材質
現在日本で使われる鍼治療の鍼の多くは「ステンレス」でできています。
金・銀・鉄の鍼もありますが、高価だったり、軟らかすぎたり、硬すぎたり、さびやすかったりで、特別な場合以外はあまり使いません。
ステンレスとは、鉄にクロムやニッケルを混ぜてさびにくくした素材です。
鍼治療でステレンスが使われる理由は、ステレンスが刺入しやすく折れにくく安価だからです。
安全性と価格の面から、ステンレスのディスポーザブル(使い捨て)鍼が多く使われています。
(※当院でも「使い捨てのステンレス鍼」を使用。)
ステンレスが金属アレルギーを起こしづらいのは、ステンレスが溶け出しづらいためです。
先ほど書いたように、金属が汗などで微量ですが溶けることでアレルギーが始まります。
溶けづらい金属であるほど金属アレルギーにはなりづらいのです。
ただし、
ステンレスを作る元々の素材に金属アレルギーになりやすいクロムなどが使われているので、鍼治療では(なりづらいとは言え)金属アレルギーになる可能性はあり得ます。
実際に鍼灸治療をしていて…
金属アレルギーと鍼にはいろいろな要因が絡みます。
・どの金属のアレルギーが強いのかとその程度。
・鍼の材質(メーカーによってもおそらく使っているステンレスの種類も違うでしょう)。
・鍼治療の方法。
たとえば、
同じ鍼を使うにしても、鍼を刺してすぐ抜く治療スタイルであればアレルギーにならない人も、刺した鍼を10分程度そのままにしておく(置鍼術と言います)スタイルだとアレルギーになるかもしれません。
また、
すぐ抜く治療スタイルでも、鍼メーカーごとに反応するかしないかが異なるかもしれません。
このように複合的な要素が絡むのですが、実際に20年以上鍼灸治療をしてきて「鍼治療での金属アレルギーだな」とハッキリわかったのは数件です。
とくに、鍼を刺した場所が必ずポチっと傷のようになった患者さんがいました。
背中などよりも足にその傾向が強かったです。
しかも毎回同じように出たので、これは確実にアレルギー反応だろうと感じられました。
この場合は、
まずは、使う鍼の本数を減らしたり刺す時間を短くしたりとアレルギーになりづらい工夫をしました。
同時に鍼ではなくお灸を増やし刺激をしました。
このように施術自体は継続可能なのですが、鍼で金属アレルギーが起きないわけではないことは事実です。
ただし、
ここまではっきり出た方は20年で1人でしたので、ほとんどの方には問題なく受けていただけるものだというのが実感です。
ご参考になれば幸いです。