モグサの製造の違い(日中韓)
モグサの製造の違い(日中韓)
お灸の燃える材料であるモグサ。
一言でモグサというけれど、じつは製造方法が日本と中国・韓国では違うという事実。
モグサの製造方法に日中韓で違いがあるという報告を紹介します。
鍼灸師向けのネタですね(笑)
製造方法は何が違う?
『日本と中国、 韓国のモグサ製造法の違いについて』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/67/4/67_327/_article/-char/ja
【意訳抜粋】
・中国と韓国ではヨモギを数年間保存してからモグサ製造を行い、日本では夏に採取したヨモギで冬にモグサ製造を開始する。
これは『孟子』の一節「7年の病に3年の艾を求む」という表現の解釈の違いらしい。
中韓では「艾=艾葉(ヨモギ)」とし、古い蓬葉を使う方が良いモグサになるとしている。
一方日本では「艾=モグサ」とし、モグサで長く保管した方が良質のモグサになるとしている。
どちらが良いのかの違いは現在のところよく分かっていない。
・中国と韓国のモグサ製造は、金属の「粉砕機」で乾燥ヨモギを粉砕した後、それを「金属の長通し」にかけて篩う工程を繰り返す方法であったが、日本のモグサ製造は、乾燥ヨモギを加熱乾燥し、石臼でひき、長通しに通し、唐蓑に掛けるという十数工程で行う方法であった。
日本独自の伝統技術を活かしたモグサ製法が、精製度の高いモグサの製造を可能にしていることが確認された。
直接灸(点灸)用のモグサの作り方は日本独自のものであることが分かった。
モグサの製法での使い勝手は違うのか?
『日本産と中国産のモグサの違いに関する研究』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/67/4/67_399/_article/-char/ja/
【要約】
日本では灸治療で使用する透熱灸などの直接灸用のモグサは精製度が高く、独自の製法で製造されてきた。
中国などでは、棒灸など間接灸が主流のため、簡易な製法で低精製モグサが製造されてきた。
近年、中国でも高精製モグサが製造され、日本産モグサとの違いが分かりにくくなってきた。
そこで、日本の臨床家に、製造国が分からないようにし、中国産と日本産の高精製モグサを提示し、違いをどの様に感じるかを評価用紙に記述してもらい比較検討した。
結果、2種類のモグサの違いについて、54.9%の人が総合的に見て「少し違う」と回答したが、「使い勝手がよい」・「使いたい」が多かったのは日本産だった。
施灸した119名中「心地よかった」を選択したのは、日本産が85名(71.4%)であった。
日本の臨床家は、日本式の製造技術で精製したモグサが日本の治療法に適していると感じていた。
当院の考察
日々の治療で患者さんに資するかはともかく、鍼灸師として単純に面白い記事でした(^^)/
作り方が違うというのは面白い。違いを生んだ由来も興味深い。
製品に関しては、製造方法とはまた別の話。
20年近く中国製の棒灸は当院でも使用していますが、品質にムラがあることは実感しています。
(ただし経済発展のせいでしょうか、近年ではその幅が少なくなってきたようには感じています。)
日本製の点灸用モグサは昔から、さほど変わった感はありません。
これは作り手の問題。
お灸製品はメーカーごとに販売されていますが、値段はなぜか各社横並びなので違いがよく分かりません…。
製造方法・製造会社・実際の製品までを含めた情報を提供する、「もぐさマイスター」のような人がいても面白いかもしれませんね。
まあ「お灸」という行為は、モグサの品質だけでなく同時にすえる方の「腕」によっても左右するでしょう。
コーヒー豆がどんなに良くても、淹れ方によってはそのクオリティが活かせないのと似ています。
お灸の良し悪しは総合的に決まるので、モグサの品質だけにフォーカスするのは違うかなと思います。
上手く効果的なお灸がすえられるように頑張ります!