20代の不妊、生理不順への鍼灸症例

20代不妊への鍼灸治療

不妊症例

不妊治療は、身体的・精神的な負担が大きく、長期にわたる場合も少なくありません。
当院では、西洋医学的な不妊治療と並行し、東洋医学の鍼灸治療を取り入れることで、患者様の心身のバランスを整え、妊娠しやすい体づくりをサポートしています。

今回は、20代で多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の傾向と男性不妊に悩まされながらも、鍼灸治療と不妊治療の併用によって妊娠に至った症例です

この症例を通して、鍼灸治療が不妊に悩む方々にお役に立てる可能性についてご理解いただければ幸いです。

患者さまについて

年齢・性別:
20代女性。

鍼灸院に来るまでの経緯:
4年前からご夫婦で子作りを始めましたが、なかなか結果が出ませんでした。
自分たちでのタイミングを1年続けた後、婦人科病院を受診しました。

「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の傾向」があること、そしてご主人に「男性不妊(精子数の減少と運動率の低下)」があることが判明しました。

年齢的に若かったため、当初は経過観察となりましたが、1年後も状況は変わらず、不妊専門病院を受診することになりました。

不妊専門病院では、人工授精(AIH)を試みましたが、精子の問題から困難を極め、顕微授精へとステップアップすることになりました。

5か月前に採卵を行い、2つの凍結卵を得ましたが、2回の移植を経て、2回目の移植で陽性反応が出たものの、5週目で流産というツラい経験をされました。

その後、生理を2周期見送り、再び採卵を考えていた患者さまは、鍼灸での体質改善を目的として当院を受診されました。

生理周期は32~40日と長く、不安定でした。
基礎体温は二相性を示していましたが、首肩のコリ、腰痛、足のむくみなどの症状も訴えていました。

妊活の焦りや、不妊治療に対する不安、そして流産という経験から、心身ともに疲弊している様子が伺えました。

東洋医学的考察

東洋医学では、妊娠は「腎」の働きと密接に関係していると考えます。
「腎」は成長、発育、生殖を司り、生命の根源となるエネルギーを蓄えています。

患者様の場合、生理不順や足のむくみは、「腎」の機能低下(腎虚)が関与していると考えられます。
また、首肩のコリや腰痛は、気の巡りの滞り(気滞)や血の滞り(瘀血)が影響していると考えられます。

さらに、流産の経験は、心身に大きな負担を与え、「肝」の疏泄機能(気の巡りをスムーズにする働き)を阻害している可能性も考慮しました。
ストレスや精神的な不安定さは「肝」の働きを乱し、気の巡りを悪くすることで、血行不良やホルモンバランスの乱れを引き起こし、妊娠を妨げる要因となることがあります。

治療方針

患者様の治療においては、以下の点を重視しました。

補腎強精:
腎の機能を高め、生殖機能を活性化する。

疏肝理気:
気の巡りをスムーズにし、精神的な安定を促す。

活血化瘀:
血行を改善し、子宮や卵巣への血流を促進する。

全身の調整:
首肩のコリ、腰痛、足のむくみなど、全身の不調を改善し、心身のリラックスを促す。

20代という若さを考慮し、全身的な保健・滋養治療を意識し、次回の採卵・移植に備えて、補腎と肝の疏泄に関するツボを重点的に使用することとしました。

治療経過

1回目:
仰向けで、「大巨」に鍼とお灸を施し、「曲池」「陰陵泉」「三陰交」「太谿」に置鍼をしました。
うつ伏せで、「心兪~次髎にかけての反応穴」「首肩コリの局所穴」に鍼を行いました。

2回目以降(週に1回ペース):
その時の体調に合わせて配穴を多少変更しながらも、基本的には同様の治療を継続しました。
仕事で慣れない作業が多く、首肩のコリが強くなることが多かったため、コリ対策は重点的に行いました。

治療開始から2か月後、再び採卵に臨みました。
今回は7個の凍結卵を得ることができました。
これは、初回の採卵時の2個から大幅な増加であり、鍼灸治療の効果を実感していただける結果となりました。

採卵の次の周期で凍結卵を移植したところ、無事に着床し、妊娠反応陽性となりました。
つわりはあったものの、それほどひどくはなく、不妊専門病院を卒業するのと同時期に、当院での鍼灸治療も終了となりました。

使用した主なツボとその代表的な効果

大巨(だいこ):
下腹部の冷えや生理不順、便秘などに効果があります。下腹部を温め、血行を促進する効果があります。

曲池(きょくち):
肩や肘の痛み、皮膚疾患などに効果があります。気の巡りを整え、炎症を抑える作用があります。

陰陵泉(いんりょうせん):
むくみや消化不良、生理不順などに効果があります。水分代謝を改善し、身体の余分な水分を排出する作用があります。

三陰交(さんいんこう):
婦人科疾患全般に効果があります。血行を促進し、ホルモンバランスを整える作用があります。

太谿(たいけい):
腎の機能を高め、生殖機能を活性化する効果があります。

心兪(しんゆ):
精神安定や血行促進に効果があります。

次髎(じりょう):
腰痛や婦人科疾患に効果があります。

まとめ

鍼灸治療と病院での不妊治療の併用によって、無事に妊娠に至ることができました

鍼灸治療は、西洋医学的な治療の副作用やダメージを最小限に抑えながら、身体のバランスを整え、妊娠しやすい状態へと導くことができます。

とくに、鍼と灸を併用することで、身体を温め、滋養作用を高めることができました。
また、コリに対しては鍼でしっかりとほぐすことで、身体の緊張を和らげることができました。

当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた丁寧なカウンセリングと施術を心掛けております。

不妊でお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。

妊活鍼灸の詳しくはこちら

不妊治療・妊活