お灸をすえる回数(壮数)の決め方
すえるお灸の数の決め方

お灸は「どれくらいお灸をするのか?」「どこにお灸をするのか?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
お灸は、体を温めるだけでなく、体内の気血の巡りを整え、自然治癒力を引き出す東洋医学の知恵です。
しかし、お灸がどれくらい必要なのか、どのくらいの頻度で、何カ所に行えば良いのかは患者さんごとに異なります。
この記事では、施灸回数や何回すえるか(壮数)の考え方と、個人差をどのように評価し、治療に反映させているのかを解説します。
※「お灸」とは「点灸(据えるタイプのお灸)」について書いています。
皮膚(ツボ)に灸点紙を置き、その紙の上から艾(もぐさ)を燃やすため、最も刺激が強く、効果も出やすいタイプのお灸の方法。
昔ながらのお灸のスタイルですが、火傷にはなりづらいようにしています。
【お灸の動画】
施灸回数・灸点数・壮数を決める上で重視するポイント

患者様にとって最適な施灸プランを決定します。
症状は急性症状か慢性症状か
■急性症状(例:ぎっくり腰、寝違え)
早期の改善を目指すため1回の治療で各灸点5~10壮程度とやや多めに集中的にお灸を据え、場合によっては数日間続けてご来院いただくことをお勧めすることもあります。
(患者さまの体質や感受性によっては、逆にツラい局所は少ない刺激にすることもあります。)
■慢性症状(例:長引く肩こり、冷え性)
体質改善を目標とするため、各灸点3~5壮程度の比較的穏やかな刺激で、週に1~2回のペースで継続的に治療を行います。
徐々に体質が変化していくことで、症状の根本改善を目指します。
(こちらも状況によっては、局所にしっかりたっぷりの刺激を与えることもあります。)
熱証(ねっしょう)か寒証(かんしょう)か
■熱証(炎症や熱感を伴う症状)
お灸の熱刺激が強すぎると逆効果になる可能性があるため、壮数を1~3壮程度に抑える。
■寒証(冷えや血行不良を伴う症状)
お体をしっかり温めることを目的として、艾の量を増やしたり、各灸点5~10壮、場合によってはそれ以上の多壮灸を行うこともあります。
虚証(きょしょう)か実証(じっしょう)か
■虚証(体力や抵抗力が低下している状態)
お体に負担がかからないよう、ごく少ない壮数(1~3壮程度)から始め、体調の変化を慎重に確認しながら進めます。
■実証(気や血の滞りが強く、比較的体力がある状態)
症状に応じて、やや多めの壮数(5~7壮程度)で治療効果を高める。
患者様の体質と感受性(ここが最も重要です)
お灸の感じ方は、まさに十人十色。同じ刺激でも、熱く感じる方もいれば、心地よく感じる方もいらっしゃいます。
■皮膚の感受性
皮膚の熱さへの敏感さは人それぞれです。
初めてお灸を受ける方や皮膚の薄い方、敏感な方には、まずごく少量の艾(例えば米粒の1/3ほどの大きさ)で1~3壮程度から始め、患者様の「熱い」「気持ち良い」といった反応を丁寧に確認します。
熱さの感じ方は日によっても変わるため、毎回お声がけし、調整を行います。
■体力と抵抗力
高齢の方や虚弱体質の方、疲労が蓄積している方には、少ない壮数(1~3壮)で温和な刺激を心がけます。
体力が充実している方には、必要に応じてやや多めの壮数(5~7壮)も可能です。
■お灸の経験
お灸に慣れている方と初めての方では、刺激に対する反応が異なります。
初めての方には慎重に進めます。
治療部位
■皮膚が薄く敏感な部位(顔面や関節の動きの多い部位など)
壮数を極力少なく(1~3壮程度)します。
■筋肉が厚い部位や冷えが強い部位
やや多めの壮数(5~10壮以上)や熱量の強いお灸を用いることもあります。
具体的な決め方と調整
当院では、以下のステップで患者様のお体に合わせた施灸プランを立て、常に最適化を図っています。
1. 初回治療時
・時間をかけ、患者様の体質、感受性、症状の全貌を把握します。
・初めてお灸を受ける患者様には、必ずごく少量の艾(例:米粒の1/3程度)で1~3壮程度から始め、熱さの感じ方や刺激に対する反応を丁寧に確認します。
・「熱くないですか?」「気持ち良いですか?」と常に患者様にお声がけし、我慢させるような熱さではないか、心地よい温かさであるかを確認しながら、艾の量や壮数を徐々に調整していきます。
・主訴に直接関連する経穴(例:肩こりなら肩井、天宗など)だけでなく、お体の全身調整に必要な経穴(例:足三里、合谷など)をバランスよく組み合わせます。
初回は欲張らず、厳選された数穴から始め、お体の反応を見極めます。
2. 治療後の評価と継続的な調整
・治療後、症状がどのように変化したか、体調に変化はあったか、お灸の痕の状態はどうか(赤くなりすぎていないか、水泡になっていないかなど)、だるさや疲労感はないか、といった点を詳しくお伺いします。
・治療後の反応を基に、次回の施灸回数や灸点数、壮数を調整します。
・効果が不十分な場合は、各灸点の壮数を増やす(例:3壮から5壮へ)、または灸点数を増やすことを検討します。
・刺激が強すぎたと感じた場合は、壮数を減らす(例:5壮から3壮へ)、艾の量を減らす、間接灸に変更するなど、刺激を弱めます。
まとめ

当院では、「施灸回数や灸点数はどのように決めていますか?個人差は考慮していますか?」という問いには、「画一的な治療はせず、常に個人差を最重視しています」とお答えしています。
お灸を受ける間隔(頻度)については下記にまとめます。
■急性症状(寝違え・ぎっくり腰・腹痛など)
→ 1~数回の施灸で大きな効果が出やすい。
■慢性症状(冷え性・肩こり・腰痛・自律神経失調症など)
→ 定期的な施灸が必要。週1~2回を目安にスタートし、徐々に間隔をあけていく。
■体質改善や予防目的
→ 月1~2回のメンテナンス施灸が効果的。
■継続の目安
→ 初回~数回:集中的に週1~2回
■症状が落ち着いたら
→ 2~3週間に1回
■体調維持目的
→ 月1回
以上が、一般的なおススメの頻度になります。
しかし実際には、体の反応を見ながら柔軟に調整することが大切です。
お灸をすえる数(壮数)は、上記で説明したとおり状態や感受性により様々ですので、施術者にお任せいただければと思います。
熱いのを無理強いするようなことは致しませんのでご安心を。ただければと思います。

