秋分|鍼灸師が教える二十四節気の健康法

秋分の今できる健康法について

秋分の健康法・写真1

秋分(しゅうぶん)は、二十四節気の第16番目で、毎年9月23日頃にあたります。
2025年の秋分は9月23日です。

秋分は、太陽が真東から昇り真西に沈み、昼と夜の長さがほぼ同じになる日です。
この日を境に、日ごとに夜が長くなり、本格的な秋の訪れを感じさせます。
暑さが落ち着き、空気は澄み、虫の声が耳に心地よい季節となります。

しかし、日照時間の減少や気温差の影響で、心身のバランスが崩れやすくなる時期でもあります。

東洋医学では「陰」と「陽」のバランスの転換点とされており、季節の変化に合わせたケアが重要です。

今回は「秋分(しゅうぶん)」の時期を健やかに過ごすためのヒントをお届けしますので、ぜひ最後までお読みください

秋分の頃に起こりうる心身の不調

秋分の頃は、昼夜が等しくなり気温も穏やかに感じられる一方で、実は身体にとっては「陰陽の転換点」。
夏の「陽」から秋冬の「陰」へと向かう大きな切り替え時期です。

自然の変化に敏感な人は、心身ともに不調を感じやすくなります。

呼吸器系の不調

まず、呼吸器系の不調が挙げられます。
乾燥した空気は、喉や鼻の粘膜を刺激し、風邪や咳、鼻炎などを引き起こしやすくなります。
アレルギーをお持ちの方にとっては、花粉やハウスダストの影響で症状が悪化することもあります。

鍼灸の観点では、「肺」は乾燥に弱い臓器とされており、秋の乾燥は「肺」の働きを低下させ、免疫力の低下にも繋がりかねません。

自律神経系の乱れ

次に、自律神経の乱れによる不調も増えてきます。
日照時間の減少は、セロトニンという精神安定に関わるホルモンの分泌を抑制し、気分が落ち込みやすくなったり、憂鬱な気持ちになったりすることがあります。

また、夏の疲れが蓄積している時期でもあり、それが自律神経のバランスを崩し、不眠、めまい、動悸、倦怠感といった症状を引き起こすことがあります。

当院は自律神経失調症の治療に力を入れておるため、めまいや動悸、倦怠感でお悩みの方がこの時期に多くいらっしゃいます。

消化器系の不調

消化器系の不調も無視できません。
夏の間に冷たい飲食物を摂りすぎたことや、季節の変わり目の気温差によって、胃腸の働きが低下し、下痢や便秘、食欲不振などを起こすことがあります。

乾燥トラブル

さらに、秋は「燥邪(そうじゃ)」という、乾燥をもたらす邪気が体に侵入しやすい時期とされています。
燥邪は、皮膚の乾燥やかゆみ、髪のパサつきなどの皮膚トラブルを引き起こすだけでなく、体内の水分を奪い、便秘や尿量の減少にもつながることがあります。

メンタル面への影響

また、季節の変わり目は、精神的なストレスも感じやすい時期です。
夏の終わりの寂しさや、冬への準備の焦りなどから、精神的な不安定さを訴える方もいらっしゃいます。
仕事や家事、育児で忙しい30代から50代の女性は、心身のバランスを崩しやすい傾向にあります。

以上、秋は「肺」と関わりが深く、肌トラブルや風邪を引きやすくなったり、気分の落ち込みにもつながります。

また、秋分の前後は朝晩と昼間の気温差が大きく、身体がその変化に対応しきれず、自律神経に負担がかかります。
冷えやすくなったり、身体が重だるく感じたり、女性では月経の乱れを訴える方も少なくありません。

心の面では、秋は「収穫の季節」であり、「寂しさ」が出やすい時期とも言われます。
夏の活動的な流れから、少しずつ「内に向かう」性質が強まり、「なんとなくやる気が出ない」と感じる方が増えてきます。

このように秋分は、外的には穏やかな印象がありながら、実際には心と体の内側にじわじわと変化が生じているデリケートな時期なのです。

秋分の頃の東洋医学的な健康法

秋分の頃の不調を避けるためには、体の内側から整える東洋医学的な健康法が非常に有効です。
ここでは、日常生活で実践できる健康法をご紹介します。

潤いを意識した食事

まず、「潤いを補う飲食」が重要です。
秋は乾燥の季節であるため、体の内側から潤いを補給することが大切です。
梨、柿、ぶどうなどの旬の果物や、白きくらげ、蓮根、山芋、大根、豆腐、牛乳、豆乳などは、肺を潤し、乾燥から体を守る食材として知られています。
梨は咳止めや喉の潤い補給に効果的です。

温かい飲食をとる

また、温かい飲み物を意識的に摂るようにしましょう。
ハーブティーや生姜湯、はちみつを加えた白湯などもおすすめです。
冷たい飲食物は胃腸に負担をかけるだけでなく、体を冷やしてしまうので、できるだけ避けるようにしてください。

乾燥と冷え対策

次に、「適切な保湿と保温」です。
外からの乾燥対策も忘れてはいけません。
乾燥しやすい首元、手首、足首などを冷やさないよう、スカーフやレッグウォーマーなどを活用しましょう。
入浴後にはボディクリームなどで全身を保湿し、皮膚の乾燥を防ぎます。
湿度計を活用し、室内が乾燥しすぎないように加湿器を使用することも有効です。
寝室の加湿は、睡眠中の呼吸器系の不調を防ぐことにも繋がります。

規則正しい生活

そして、「規則正しい生活習慣」が心身のバランスを保つ上で不可欠です。

東洋医学では、夜は「陰」の時間であり、体を休ませ、エネルギーを蓄える時間と考えられています。
秋分以降は夜が長くなるため、早めに就寝し、十分な睡眠時間を確保することが大切です。

質の良い睡眠は、自律神経のバランスを整え、免疫力の向上にも繋がります。

また、日中の適度な運動も重要です。
軽いウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすことで、血行が促進され、気の巡りが良くなります。
ただし、激しい運動は、かえって体を疲れさせてしまう可能性があるので注意が必要です。

リラックスの重要性

さらに、「精神的な安定を保つ」ことも大切です。
秋は感情が内側に向かいやすい時期でもあります。

趣味に没頭する時間を作ったり、瞑想やヨガなど、心を落ち着かせる習慣を取り入れたりするのも良いでしょう。

忙しい日々の中でも、意識的にリラックスする時間を作ることで、ストレスを軽減し、自律神経の乱れを防ぐことができます。

秋分の頃におススメのツボ(経穴)

秋分の不調に効果的なツボはいくつかありますが、ここでは特にこの時期の体調管理に役立つ3つのツボをご紹介します。

■太淵(たいえん)

手のひらを上にして手首の曲がりじわ親指側で動脈の拍動を感じるところが太淵です。

効果:肺経の原穴(重要なツボ)に当たります。
東洋医学では、肺は呼吸器系を司り、また皮膚や粘膜とも密接な関係があると考えられています。
秋の乾燥による喉の痛み、咳、鼻炎などの呼吸器系の不調や、皮膚の乾燥に効果的です。
肺の機能を高め、乾燥から体を守る手助けをします。

■神門(しんもん)

手首の曲がりジワを小指側へなでてゆき、骨の出っぱりの手前で指が止まるところが神門です。

効果:心経の原穴(重要なツボ)です。
心は精神活動を司る臓器とされており、神門は自律神経のバランスを整え、精神的な安定をもたらすのに非常に効果的なツボです。
秋の憂鬱な気分、不眠、動悸、めまいなど、自律神経失調症の症状緩和に役立ちます。

■三陰交(さんいんこう)

内くるぶしのいちばん高いところに小指をおき、指幅4本そろえて、人さし指があたっているところが三陰交です。

効果:肝・脾・腎の三つの陰経が交わる重要なツボです。
女性にとって非常に重要なツボであり、婦人科系の不調(生理不順、子宮筋腫、子宮内膜症など)の改善に効果的です。
また、冷えの改善にも繋がり、全身の血行促進にも役立ちます。
秋の冷えによって悪化しやすい婦人科系の症状や、全身の倦怠感に対して、このツボへのアプローチは非常に有効です。

これらのツボを、ご自身で優しく押したり、温めたりして活用してください。

まとめ

秋分は昼夜の長さがほぼ同じになり、本格的な秋の訪れを感じさせる時期です。

この時期には、乾燥による呼吸器系の不調、日照時間減少や夏の疲れによる自律神経の乱れ、冷えや気温差による消化器系の不調などが起こりやすくなります。
また、心身のバランスを崩しやすい傾向にあるため注意も必要です。

これらの不調を避けるためには、東洋医学的な健康法として、潤いを補う飲食(梨、柿、白きくらげなど)、適切な保湿と保温(首元や足首の冷え対策、加湿)、規則正しい生活習慣(十分な睡眠、適度な運動)、そして精神的な安定を保つ(趣味、瞑想)が重要です。

また、セルフケアに役立つツボもご紹介しました。

ぜひ、秋の心地よい季節を、健康な心身でお過ごしください。

なお、セルフケアだけでは効果が不十分なお悩みがありましたら、鍼灸院での本格的な施術も試してください。

当院では、東洋医学に基づいた本格的な鍼灸専門施術で、患者さん一人ひとりの体質に合わせたアプローチを行っています。

お体の不調や、東洋医学に関心をお持ちでしたら、ぜひ一度ご相談ください。
東洋医学の考えに基づき、皆さまの健康な毎日をサポートできるよう、全力で取り組んでまいります。