むくみ(浮腫)に効くツボ
むくみに効くツボ

足が重だるく感じたり、顔が腫れぼったくなったりすると、気分も沈んでしまいますよね。
日常生活にも影響が出ることがあり、心配になることもあるかと思います。
むくみは多くの人が経験する症状ですが、その原因や背景は様々です。
今回は、むくみの改善に効果的なツボをご紹介しますので、セルフケアにお役立てください。
西洋医学からみたむくみ
西洋医学において「むくみ(浮腫)」とは、血管内の水分が必要以上に血管外の組織(間質)に染み出し、そこに溜まってしまう状態を指します。
私たちの体では、毛細血管から水分や栄養素が組織に供給され、不要になった水分や老廃物は再び毛細血管やリンパ管に回収されるというバランスが保たれています。
このバランスが崩れることでむくみが発生します。
原因としては、長時間同じ姿勢でいることによる血行不良、塩分の摂りすぎによる体内の水分調整の乱れ、立ち仕事や座りっぱなしによる重力の影響などが一般的です。
女性では、ホルモンバランスの変動(生理前や妊娠中)もむくみの原因となることがあります。
また、病気が原因でむくみが生じる場合もあります。
例えば、心臓や腎臓、肝臓の機能が低下すると、体内の水分や塩分をうまく処理できなくなり、全身性のむくみにつながることがあります。
甲状腺機能の異常や、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症などがむくみを引き起こすこともあります。
重度または持続的なむくみがある場合は、まずは医療機関での検査・診察が重要です。
西洋医学的な治療法
西洋医学におけるむくみの治療は、その原因によって異なります。
病気が原因の場合は、まずその疾患(心疾患、腎疾患、肝疾患など)に対する治療が最優先されます。
一般的な、病気が直接の原因ではないむくみ(生理的むくみ)に対しては、以下のような対症療法や生活指導が行われます。
■生活習慣の改善
塩分摂取量の制限、適度な運動による血行促進、長時間の立ち仕事や座りっぱなしを避ける、寝るときに足を高くするなど。
■弾性ストッキングの利用
下肢のむくみに対して、適度な圧迫を加えて血行を助け、むくみを軽減します。
■薬物療法
重度のむくみや、心臓・腎臓などの病気によるむくみに対しては、余分な水分を体外に排出させる利尿薬などが医師の判断で使用されることがあります。
これらの治療法は、むくみの症状を軽減することを目的としています。
東洋医学からみたむくみ
東洋医学では、むくみを単なる水分過多とは捉えず、「水湿(すいしつ)」と呼ばれる病的な水分の停滞と考えます。
この水湿は、体を巡る「気血水」の「水(すい)」のバランスが崩れることで生じます。
水は、主に「脾(ひ)」「肺(はい)」「腎(じん)」という3つの臓の働きによって調節されていると考えられています。
・脾(ひ)
飲食物から栄養を取り込み、全身に運ぶ働き(運化作用)を担います。
この運化作用には、水分の代謝・運搬も含まれます。
脾の働きが弱まると、水分を適切にさばけなくなり、水湿が停滞しやすくなります。
・肺(はい)
呼吸を司り、体の表面(皮毛)や汗腺を調節するほか、水液を全身に散布し、下へ降ろす働き(通調水道)を担います。
肺の機能が低下すると、水分の巡りが悪くなり、むくみにつながることがあります。
・腎(じん)
体内の水分バランスを調節する重要な役割を担っています。
不要な水分を尿として排出したり、必要な水分を再吸収したりします。
腎の機能が衰えると、水分代謝全体に影響が出て、むくみが生じやすくなります。
また、「肝(かん)」の働きである「疏泄(そせつ)」(気や血の巡りをスムーズにする働き)が滞ると、水液の巡りも悪くなり、むくみを引き起こすこともあります。
このように、東洋医学ではむくみの原因をこれらの臓の機能低下や、それに伴う水湿の停滞として捉え、個々の患者さんの「体質」を診断します。
むくみに関連する代表的な体質(証)は以下の通りです。
■脾虚湿盛(ひきょしつせい)
最も一般的なむくみのタイプです。
胃腸の機能である脾の働きが低下しているため、飲食物からの水分代謝がうまくいかず、体内に余分な水湿が溜まります。
むくみは柔らかく、指で押すと跡がつきやすいのが特徴です。
とくに夕方になると下半身のむくみがひどくなりやすい傾向があります。
食欲不振、体がだるい、疲れやすい、お腹が張る、便が軟らかい、舌がぼってりして苔が厚いなどの症状を伴うことが多いです。
■腎陽虚(じんようきょ)
体を温める働きである腎の陽気が不足しているタイプです。
陽気は水液代謝を活発にする原動力でもあるため、これが不足すると水分が冷えて停滞し、むくみとなります。
むくみは下半身に顕著で、朝方にひどくなりやすい傾向があります。
冷え症(とくに手足や腰)、腰や膝のだるさ、頻尿(量が多く透明な尿)、夜間尿、顔色が青白い、舌が大きく色が薄い、脈が深く遅いなどの症状を伴うことが多いです。
■気滞湿阻(きたいしっそ)
ストレスや感情の抑圧などにより、全身の「気(き)」の流れが滞っているタイプです。
気の巡りが悪くなると、水液の巡りも妨げられ、むくみが生じます。
むくむ場所が移動したり、張るような感覚を伴ったりすることがあります。
イライラしやすい、ゆううつ感、お腹の張り、ため息が多い、ゲップやおならが多い、肩こり、胸や脇の張りなどの症状を伴うことが多いです。
脾虚を合併していることもよくあります。
■肺気虚(はいききょ)
呼吸器系である肺の機能が低下しているタイプです。
肺は水液を全身に散布し、下へ降ろす働きがあるため、その機能が弱まると水液が滞留し、むくみとなります。顔や上半身のむくみが出やすい傾向があります。
息切れ、咳、声がかすれる、風邪を引きやすい、汗をかきやすいなどの症状を伴うことが多いです。
むくみに効くツボ
東洋医学の鍼灸施術では、体の状態を整え、むくみの原因となる水液代謝の異常を改善するために「経穴(ツボ)」を使います。
ツボは体内のエネルギーラインである「経絡(けいらく)」上にあり、それぞれのツボには特定の働きがあります。
むくみに対しては、水液代謝に関わる脾、肺、腎などの臓の経絡上のツボや、水湿を取り除く働きのあるツボ、全身の気血の巡りを改善するツボなどを組み合わせて使用します。
むくみに効く共通のツボ
これらのツボは、比較的どのような体質のむくみにも共通して効果が期待できる、水液代謝を整える基本的なツボです。
■足三里(あしさんり)
膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみに人差し指を置き、指幅4本揃えて小指が当たっているところにあります。
胃経のツボで、脾胃の働きを助け、気血の巡りを改善し、水湿を取り除く働きがあります。
全身の調子を整える代表的なツボでもあります。
■陰陵泉(いんりょうせん)
膝の内側、太い骨(脛骨)の下にあるくぼみです。
脾経のツボで、強力に水湿を取り除く働きがあります。特に下半身のむくみに効果的です。
■水分(すいぶん)
おへその上に親指をおき、そこから親指1本上がったところが水分です。
任脈のツボで、名前の通り水分の排出を助ける働きがあります。
むくみに効果的な体質別のツボ
患者さんの東洋医学的な体質に合わせて、上記の共通のツボに加えて、以下のツボを組み合わせて使用します。
脾虚湿盛タイプ
■豊隆(ほうりゅう)
下腿(すね)の外側、膝と足首の中間あたりに位置しています。筋肉が盛り上がっている部分で、外くるぶしから親指8本分上の場所。
胃経のツボで、痰湿(たんしつ:水湿が凝集したものや、病的な分泌物)を取り除く特効穴とされ、むくみの原因となる水湿を強力に排除するのを助けます。
■中脘(ちゅうかん)
おへそに小指をあてて、親指までの指幅5本。親指があたっているところを目安にして指でやさしくなでるとへこみがあるところ。
任脈のツボで、脾胃の働きを整え、水湿の発生源を改善する効果があります。
■脾兪(ひゆ)
第11胸椎と第12胸椎の間から指幅2本分外。肩甲骨の下端と同じ高さの背骨のすきまを4つ下がったところ(ここが11胸椎と12胸椎の間)。
膀胱経のツボで、脾の背部兪穴(はいぶゆけつ:臓腑の気が集まる背中のツボ)であり、脾の機能を直接的に調整する効果があります。
腎陽虚タイプ
■太谿(たいけい)
内くるぶしとアキレス腱のほぼ中央のくぼみにあります。
腎経の原穴であり、腎の気を補い、陽気を高める効果があります。水液代謝の原動力を回復させます。
■命門(めいもん)
まずヒジの高さを確認します。ヒジと同じ高さの背骨にあるのが命門です。
生命力の源であり、全身を温める陽の気を強く補うツボです。
とくに腎陽虚による強い冷えやむくみ改善に効果的です。
体を内側から温め、腎の機能を活性化させます。
■関元(かんげん)
指幅4本をそろえて人さし指をおへそにおき、小指があたっているところ。
任脈のツボで、生命の根源である腎の陽気や元気を強力に補うツボです。
下半身の冷えやむくみに非常に効果的です。
気滞湿阻タイプ
■太衝(たいしょう)
足の甲にあります。足の親指と人差し指の骨が交わる所です。
肝経の原穴であり、肝の疏泄作用を助け、気の滞りを解消する代表的なツボです。
気の巡りが良くなると、水液の巡りもスムーズになります。
■合谷(ごうこく)
手の甲で親指と人さし指の間。
「万能のツボ」とも呼ばれ、全身の気血の巡りを調整します。
太衝と組み合わせて「四関穴(しかんけつ)」として使うと、全身の気血の滞りを強く解消する効果が期待できます。
肺気虚タイプ
■太淵(たいえん)
手のひらを上にして手首の曲がりじわ親指側で動脈の拍動を感じるところが太淵です。
肺経の原穴(げんけつ:臓腑の元気が集まるツボ)であり、肺の気を補う効果が非常に高いツボです。
肺の気が充実することで、水液を全身に巡らせ、下へ降ろす機能が回復し、むくみの改善につながります。
■肺兪(はいゆ)
胸椎の3番目と4番目の間でへこんでいる部分から指幅2本分外側です。
肺の機能を調整し、気の流れをスムーズにする効果があります。
とくに、肺の働きが滞って生じる上半身のむくみや呼吸器系の症状(息切れなど)に対して有効です。
これらのツボはあくまで一例であり、実際の施術では患者さんの全身状態や反応を見ながら、最も効果的なツボを選択し、鍼やお灸を用いて刺激していきます。
ツボを自分で探す時のコツ
より効果的なツボをご自身で探す際は、以下の点を意識してみてください。
ツボの基本位置を確認
鍼灸院での指導や書籍、ウェブサイトなどでツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴の場合、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりに位置します。
押して探す
だいたいの目安の場所の近辺を指で軽く押しながら、周囲を探ります。
「イタ気持ちいい」感覚や、ズーンと響くような感覚がある場所が、ツボの可能性が高いです。
合谷であれば、骨の交わる部分からやや人差し指側を探ると、凹みがあり、圧痛を感じる場所が見つかるはずです。
体の反応をみる
ツボを押すと、血行が良くなったり、体が温まったりする感覚がある場合があります。
ただし、ツボの位置は個人差がありますので、あくまで目安として捉え、無理に強い力で押さないように注意しましょう。
もし不安な場合は、鍼灸師などの専門家にご相談ください。
せんねん灸(台座灸)の使い方と注意点
ご自宅で手軽にできるセルフお灸として、「せんねん灸」の使い方と注意点について解説します。
「せんねん灸」は、ドラッグストアなどで手軽に購入できるお灸の製品名です。
せんねん灸タイプのお灸は「台座灸」と呼びます。
せんねん灸と似たような形の他の商品も多数あり、使用方法などは基本的には同様です。
せんねん灸の使い方
種類を選ぶ
「せんねん灸」には様々な種類があります。

「ソフト(弱)」「レギュラー(中間)」「あつめ(強)」の3つの種類があります。

初めての方は、熱さが「マイルドなタイプ」から試してみることをお勧めします。
ツボの場所を決める
どのツボを使うかはあらかじめ決めておき、ツボの目安を指でさぐりながらより効き目の高いポイントを決めて、ペンなどで印をつけます。
準備
お灸を据える場所を清潔にし、皮膚に異常がないか確認します。
台座の裏紙を剥がす
「せんねん灸」の台座裏についている薄い紙を剥がします。
もぐさに点火
巻きもぐさの先端に線香などで火をつけます。
皮膚に据える
火がついた「せんねん灸」を、ツボに据えます。
熱さを感じたら、無理せずすぐに取り外してください。我慢は禁物です。
取り外す
使用後、完全に火が消えていることを確認してからとりあえずして、捨ててください。
お灸をする上での注意事項
・熱さを我慢しない
熱すぎると感じたら、すぐに取り外してください。無理に我慢すると、やけどの原因になります。
・同じ場所に続けて据えない
皮膚に負担がかかるため、同じ場所に続けてお灸を据えるのは避けましょう。
・顔面、粘膜、傷口、炎症部位への使用は避ける
これらの部位は皮膚がデリケートなため、お灸の使用は避けてください。
・発熱時、飲酒時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける
体調が優れない時は、お灸を控えるようにしましょう。
・皮膚の弱い方、アレルギー体質の方は注意
使用前に必ずパッチテストを行うか、医師や薬剤師に相談してください。
・使用中に異常を感じたら、直ちに使用を中止し、医師に相談
万が一、皮膚に異常が現れた場合は、すぐに使用を中止し、医師の診察を受けてください。
・乳幼児への使用は避ける
小さなお子様への使用はお控えください。
・火の取り扱いに注意
火を使うため、火災には十分に注意してください。
周囲に燃えやすいものがないことを確認し、換気をしながら行いましょう。
上記に注意して、安全にせんねん灸をご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。
セルフケアのツボ押しの方法と注意点
ご自宅で簡単にできるセルフケアとして、ツボ押し(マッサージ)について解説いたします。
ツボ押しは、体の不調を和らげたり、リラックス効果を高めたりするのに役立ちます。
ツボ押しの方法
リラックスできる環境を整える
静かな場所で、楽な姿勢で行いましょう。
ツボの位置を確認
書籍やウェブサイトなどで、目的のツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴は、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりです。
指の腹で押す
親指や人差し指の腹を使い、ツボを垂直に押します。爪を立てないように注意しましょう。
適度な力で押す
「イタ気持ちいい」と感じる程度の力で、ゆっくりと押します。
強く押しすぎると、痛みを感じたり、皮膚を傷めたりする可能性があります。
時間をかけて押す
1つのツボにつき、5秒から10秒程度、ゆっくりと押したり離したりを繰り返します。数回繰り返すと効果的です。
呼吸を意識する
力を入れる時に息を吐き、力を抜く時に息を吸うと、よりリラックスできます。
温めてから行うと効果的
入浴後など、体が温まっている状態で行うと、血行が促進され、より効果を感じやすくなります。
ツボ押しをする上での注意事項
・食直後、飲酒時、発熱時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける:
体調が優れない時は、ツボ押しを控えましょう。
・皮膚に炎症や傷がある場合は避ける:
患部を刺激することで、症状が悪化する可能性があります。
・強く押しすぎない:
強い力で押すと、筋肉や血管を傷つける可能性があります。あくまで「イタ気持ちいい」程度の力で行いましょう。
・長時間同じ場所を押さない:
皮膚に負担がかかるため、長時間同じ場所を押すのは避けましょう。
・力を抜くことを意識する:
力を入れっぱなしにすると、筋肉が緊張してしまい、効果が得られにくくなります。
・体調に異変を感じたら中止する:
ツボ押し中に体調が悪くなった場合は、直ちに中止し、必要に応じて医師に相談してください。
・乳幼児へは避ける:
小さなお子様へはお控えください。
・持病のある方は医師に相談:
心臓疾患や高血圧など、持病のある方は、ツボ押しを行う前に医師に相談してください。
上記に注意して、安全にツボ押しをご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。
鍼灸院での本格的な施術のススメ
セルフケアとして、ご紹介したツボを指でゆっくりと押したり、お灸(市販の台座灸など)で温めたりすることは、むくみの緩和に役立ちます。
しかし、むくみの原因は体質によって異なり、複数の要因が絡み合っていることも少なくありません。
ご自身の体質を正確に把握し、適切なツボを選択するためには、専門的な知識と経験が必要です。
むくみは改善が難しいと感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、体質に合わせた適切なアプローチによって、症状は軽減し、生活の質は向上します。
一人で悩まず、ぜひ一度当院にご相談ください。
一緒に改善を目指しましょう。

