鼻づまりに効くツボ

鼻づまりに効くツボ

鼻づまりに効くツボ・写真1

鼻づまり、本当にツラいですよね。
息苦しさで集中できなかったり、夜眠れなかったり、日常生活に大きな影響を及ぼします。
おツラい状況、お察しいたします。

東洋医学と西洋医学、それぞれの視点から鼻づまりについて解説し、少しでもお役に立てれば幸いです。

西洋医学からみた鼻づまり

鼻づまりとは、鼻の通りが悪くなり、呼吸がしにくくなる状態を指します。
西洋医学的には、主に鼻腔内の粘膜が炎症を起こし、腫れや充血が生じることで起こります。

これにより、鼻腔が狭窄したり、分泌物(鼻水)が増加したりして空気の通り道が塞がれてしまいます。

この炎症の原因としては、ウイルスや細菌による感染(風邪や副鼻腔炎)、アレルギー反応(花粉症、ハウスダストなど)、温度や湿度の変化、タバコの煙や化学物質などの刺激が挙げられます。
また、鼻の構造的な問題(鼻中隔湾曲症など)が原因となることもあります。

鼻づまりは、単なる不快感だけでなく、睡眠障害、集中力の低下、頭痛、嗅覚障害などを引き起こすこともあります。

西洋医学における鼻づまりの治療法は、その原因によって多岐にわたります。

感染が原因の場合は、抗生物質や抗ウイルス薬が処方されることがあります。
アレルギーが原因の場合は、抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬などが用いられます。
鼻腔内の炎症を抑えるために、血管収縮薬の点鼻薬が一時的に使われることもありますが、長期連用はかえって症状を悪化させるリスクがあります。

また、生理食塩水による鼻うがいも、鼻腔内の洗浄や保湿に有効です。

構造的な問題がある場合は、手術が選択されることもあります。

東洋医学からみた鼻づまり

東洋医学では、鼻づまりを単に鼻だけの問題とは捉えません。

体全体のバランスの乱れ、とくに「肺(はい)」、「脾(ひ)」、「腎(じん)」といった臓腑(ぞうふ)の機能低下や、気(き)・血(けつ)・水(すい)の巡りの滞り、あるいは外からの邪気(じゃき:病気の原因となるもの)の侵入が原因で起こると考えます。

一人ひとりの体質や症状の現れ方によって、その根本原因は異なると考え、体質別にアプローチします。

以下に鼻づまりを引き起こす体質(タイプ)を挙げます。

■風寒(ふうかん)タイプ
体質が冷えやすく、外から冷たい風の邪気を受けて鼻づまりが起こるタイプです。

症状:
突然の鼻づまり、サラサラとした透明な鼻水、くしゃみ、悪寒、頭痛、首や肩のこりなどが伴うことが多いです。

原因:
体が冷えやすいところに、エアコンの風に当たったり、寒い場所で薄着をしたりするなど、冷たい環境に晒されることで、邪気が体の表面から肺に侵入して起こります。
肺の機能が冷えによって滞り、鼻の通りが悪くなります。

■風熱(ふうねつ)タイプ
体に熱がこもりやすく、外から熱い風の邪気を受けて鼻づまりが起こるタイプです。

症状:
鼻づまりとともに、粘っこい黄色い鼻水、喉の痛み、口の渇き、顔のほてり、時には発熱などが伴います。

原因:
体内に元々熱を持ちやすかったり、辛いものや脂っこいものの摂りすぎで熱が溜まっているところに、風邪などで熱の邪気を受けて起こります。
熱によって鼻腔の粘膜が炎症を起こし、腫れや粘っこい分泌物が増加します。

■肺気虚(はいききょ)タイプ
肺の「気」が不足しているタイプです。肺は呼吸器だけでなく、体のバリア機能(衛気:えき)も司ります。

症状:
慢性的な鼻づまり、特に疲れやすい時に悪化する、鼻水はサラサラとして量が多い、声が小さい、息切れしやすい、風邪をひきやすいなどが伴います。

原因:
生まれつき体が弱い、過労、長引く病気などにより肺の機能が低下し、体のバリア機能が弱まり、邪気が侵入しやすくなります。
また、肺の気が鼻の通りを良くする力が弱いため、慢性的に鼻づまりが起こります。

■脾虚湿盛(ひきょしつせい)タイプ
脾(消化吸収を司る臓腑)の機能が低下し、体内に余分な水分(湿:しつ)が溜まっているタイプです。

症状:
慢性的な鼻づまり、特に朝方や食後に悪化しやすい、粘り気のある白い鼻水、食欲不振、胃もたれ、体が重だるい、下痢しやすいなどが伴います。

原因:
飲食の不摂生(甘いもの、冷たいもの、脂っこいもの、乳製品の摂りすぎ)や過労により脾の機能が弱り、水分代謝が悪化して体内に湿が溜まります。
この湿が鼻に停滞することで鼻づまりや多量の鼻水を引き起こします。

■瘀血(おけつ)タイプ
血(けつ)の流れが悪く滞っているタイプです。
慢性的な鼻づまりの背景にあることがあります。

症状:長期間治らない鼻づまり、鼻の色が暗い、痛みを伴うことがある、顔色がくすみがちなどが伴います。

原因:冷え、ストレス、気の滞りなどにより血の流れが悪くなることで生じます。
血の滞りが鼻の通り道に影響を与え、頑固な鼻づまりを引き起こします。

このように、東洋医学では鼻づまりの原因を体全体のバランスの乱れとして捉え、どの臓腑の機能が弱っているか、どのような邪気が影響しているかを見極めることで、根本的な改善を目指します。

鼻づまりに効くツボ

東洋医学では、全身に存在する「ツボ(経穴:けいけつ)」を刺激することで症状の改善を図ります。

鼻づまりに対しても、鼻周辺のツボだけでなく、体全体のバランスを整えるツボを組み合わせて使います。
ツボの選び方は、前述の体質によって異なります。

鼻づまりに効く共通のツボ

どの体質の方にも共通して効果が期待できる、鼻の通りを良くするための代表的なツボです。

■迎香(げいこう)

鼻の両側、鼻の付け根の小鼻の横にあります。

効果:
鼻の通りを良くするのに最も代表的なツボです。
「香りを迎える」という名の通り、嗅覚にも良い影響を与えます。
鼻の周りの気血の流れを促進し、鼻づまりや鼻水に直接的に作用します。

■印堂(いんどう)

眉間の中間(少し凹んでいるところ)。

効果:
鼻の通りを良くするだけでなく、心を落ち着かせる効果もあります。
鼻づまりに伴う頭重感やイライラにも有効です。
鼻の根元にあたり、鼻腔への気の流れを整えます。

■合谷(ごうこく)

手の甲側、親指と人差し指の骨が合わさるところからやや人差し指よりにあります。

効果:
頭や顔の疾患に広く使われる万能なツボです。
気血の巡りを良くし、鼻づまりや頭痛、歯痛など、顔や頭部の不調全般に効果を発揮します。
外部の邪気(風邪など)を払う力もあります。

鼻づまりに効果的なツボ(体質別)

体質別の根本原因にアプローチするために、以下のツボが選ばれます。

風寒タイプ

■風池(ふうち)

首の後ろの左右のスジに指をおき、指をすり上げていきます。髪の生え際まできたら、左右外側のくぼみでいちばんへこんでいるところ。

効果:
「風」の邪気を払う代表的なツボで、特に頭部や首筋の風寒を取り除くのに効果的です。
鼻づまりに伴う後頭部の痛みや首のこりにも有効です。

■外関(がいかん)

手の甲を上にして、手首にくすり指をおき、指幅3本そろえて人さし指があたるところが外関です。

効果:
体の表面の邪気(特に風寒)を払う力が強く、寒気や発熱などの風邪の初期症状にもよく用いられます。

風熱タイプ

■大椎(だいつい)

うつむいた時、首のつけ根でいちばんでっぱっている骨のすぐ下のくぼみが大椎です。

効果:
体の熱を冷ますのに非常に効果的なツボです。
風熱による鼻づまりや、それに伴う発熱、喉の痛みなどに用いられます。

■曲池(きょくち)

親指を上にして腕を前に出し、ヒジを曲げてできる曲がりジワの先端。

効果:
全身の熱を冷ます代表的なツボです。
特に皮膚の熱やかゆみ、炎症を抑えるのに効果があり、鼻の炎症や熱っぽい鼻水に有効です。

肺気虚タイプ

■太淵(たいえん)

手のひらを上にして手首の曲がりじわ親指側で動脈の拍動を感じるところが太淵です。

効果:
肺の機能そのものを高める代表的なツボです。
肺の気を補い、鼻の通りを良くする力を強めます。
慢性的な鼻づまりや、息切れしやすいなどの症状に有効です。

■足三里(あしさんり)

膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみに人差し指を置き、指幅4本揃えて小指が当たっているところにあります。

効果:
全身の気を補い、消化吸収を高める万能のツボです。
肺気虚の方の全体的な体力や免疫力を向上させ、鼻づまりを根本から改善するサポートをします。

脾虚湿盛タイプ

■陰陵泉(いんりょうせん)

膝の内側、太い骨(脛骨)の下にあるくぼみです。

効果:
体内の余分な水分(湿)を取り除くのに非常に効果的なツボです。
脾の働きを助け、湿による重だるさや多量の鼻水、鼻づまりに有効です。

■豊隆(ほうりゅう)

下腿(すね)の外側、膝と足首の中間あたりに位置しています。筋肉が盛り上がっている部分で、外くるぶしから親指8本分上の場所。

効果:
体内の痰や湿を取り除く代表的なツボです。
粘り気のある鼻水や、湿が原因の鼻づまりに効果を発揮します。

瘀血タイプ

■血海(けっかい)

膝の内側、膝のお皿より指3本分上にあります。

効果:「血」の巡りを良くし、血行不良を改善。
冷えや生理痛がある人にもおすすめ。

■三陰交(さんいんこう)

内くるぶしのいちばん高いところに小指をおき、指幅4本そろえて、人さし指があたっているところが三陰交です。

効果:
血流を改善し、瘀血による首こりや肩こりを緩和して、鼻への血流を良くするのに有効。

これらのツボは、体質やその時の症状によって組み合わせて使われます。専門家は脈やお腹の状態なども見て、その方に最適なツボを選択します。

ツボを自分で探す時のコツ

より効果的なツボをご自身で探す際は、以下の点を意識してみてください。

ツボの基本位置を確認

鍼灸院での指導や書籍、ウェブサイトなどでツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴の場合、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりに位置します。

押して探す

だいたいの目安の場所の近辺を指で軽く押しながら、周囲を探ります。
「イタ気持ちいい」感覚や、ズーンと響くような感覚がある場所が、ツボの可能性が高いです。
合谷であれば、骨の交わる部分からやや人差し指側を探ると、凹みがあり、圧痛を感じる場所が見つかるはずです。

体の反応をみる

ツボを押すと、血行が良くなったり、体が温まったりする感覚がある場合があります。

ただし、ツボの位置は個人差がありますので、あくまで目安として捉え、無理に強い力で押さないように注意しましょう。
もし不安な場合は、鍼灸師などの専門家にご相談ください。

せんねん灸(台座灸)の使い方と注意点

ご自宅で手軽にできるセルフお灸として、「せんねん灸」の使い方と注意点について解説します。

「せんねん灸」は、ドラッグストアなどで手軽に購入できるお灸の製品名です。
せんねん灸タイプのお灸は「台座灸」と呼びます。

せんねん灸と似たような形の他の商品も多数あり、使用方法などは基本的には同様です。

せんねん灸の使い方

種類を選ぶ

「せんねん灸」には様々な種類があります。
せんねん灸

「ソフト(弱)」「レギュラー(中間)」「あつめ(強)」の3つの種類があります。
せんねん灸種類
初めての方は、熱さが「マイルドなタイプ」から試してみることをお勧めします。

ツボの場所を決める

どのツボを使うかはあらかじめ決めておき、ツボの目安を指でさぐりながらより効き目の高いポイントを決めて、ペンなどで印をつけます。

準備

お灸を据える場所を清潔にし、皮膚に異常がないか確認します。

台座の裏紙を剥がす

「せんねん灸」の台座裏についている薄い紙を剥がします。

もぐさに点火

巻きもぐさの先端に線香などで火をつけます。

皮膚に据える

火がついた「せんねん灸」を、ツボに据えます。
熱さを感じたら、無理せずすぐに取り外してください。我慢は禁物です。

取り外す

使用後、完全に火が消えていることを確認してからとりあえずして、捨ててください。

お灸をする上での注意事項

・熱さを我慢しない
熱すぎると感じたら、すぐに取り外してください。無理に我慢すると、やけどの原因になります。

・同じ場所に続けて据えない
皮膚に負担がかかるため、同じ場所に続けてお灸を据えるのは避けましょう。

・顔面、粘膜、傷口、炎症部位への使用は避ける
これらの部位は皮膚がデリケートなため、お灸の使用は避けてください。

・発熱時、飲酒時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける
体調が優れない時は、お灸を控えるようにしましょう。

・皮膚の弱い方、アレルギー体質の方は注意
使用前に必ずパッチテストを行うか、医師や薬剤師に相談してください。

・使用中に異常を感じたら、直ちに使用を中止し、医師に相談
万が一、皮膚に異常が現れた場合は、すぐに使用を中止し、医師の診察を受けてください。

・乳幼児への使用は避ける
小さなお子様への使用はお控えください。

・火の取り扱いに注意
火を使うため、火災には十分に注意してください。
周囲に燃えやすいものがないことを確認し、換気をしながら行いましょう。

上記に注意して、安全にせんねん灸をご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。

セルフケアのツボ押しの方法と注意点

ご自宅で簡単にできるセルフケアとして、ツボ押し(マッサージ)について解説いたします。
ツボ押しは、体の不調を和らげたり、リラックス効果を高めたりするのに役立ちます。

ツボ押しの方法

リラックスできる環境を整える

静かな場所で、楽な姿勢で行いましょう。

ツボの位置を確認

書籍やウェブサイトなどで、目的のツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴は、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりです。

指の腹で押す

親指や人差し指の腹を使い、ツボを垂直に押します。爪を立てないように注意しましょう。

適度な力で押す

「イタ気持ちいい」と感じる程度の力で、ゆっくりと押します。
強く押しすぎると、痛みを感じたり、皮膚を傷めたりする可能性があります。

時間をかけて押す

1つのツボにつき、5秒から10秒程度、ゆっくりと押したり離したりを繰り返します。数回繰り返すと効果的です。

呼吸を意識する

力を入れる時に息を吐き、力を抜く時に息を吸うと、よりリラックスできます。

温めてから行うと効果的

入浴後など、体が温まっている状態で行うと、血行が促進され、より効果を感じやすくなります。

ツボ押しをする上での注意事項

・食直後、飲酒時、発熱時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける:
体調が優れない時は、ツボ押しを控えましょう。

・皮膚に炎症や傷がある場合は避ける:
患部を刺激することで、症状が悪化する可能性があります。

・強く押しすぎない:
強い力で押すと、筋肉や血管を傷つける可能性があります。あくまで「イタ気持ちいい」程度の力で行いましょう。

・長時間同じ場所を押さない:
皮膚に負担がかかるため、長時間同じ場所を押すのは避けましょう。

・力を抜くことを意識する:
力を入れっぱなしにすると、筋肉が緊張してしまい、効果が得られにくくなります。

・体調に異変を感じたら中止する:
ツボ押し中に体調が悪くなった場合は、直ちに中止し、必要に応じて医師に相談してください。

・乳幼児へは避ける:
小さなお子様へはお控えください。

・持病のある方は医師に相談:
心臓疾患や高血圧など、持病のある方は、ツボ押しを行う前に医師に相談してください。

上記に注意して、安全にツボ押しをご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。

本格的な鍼灸施術のすすめ

鼻づまりのセルフケアとしては、共通のツボである迎香や印堂、合谷を優しく押したり、蒸しタオルなどで温めたりするのが手軽でおすすめです。

また、原因となる可能性のある冷えや湿気を避けるために、体を冷やさない、甘いものや脂っこいものを控えめにするなどの工夫も大切です。

しかし、セルフケアだけではなかなか改善しない、慢性的に繰り返す、体質が複雑でどのケアが良いか分からない、という方もいらっしゃるでしょう。

当院では、時間をたっぷりかけてお話を伺い、おツラい症状だけでなく、お一人お一人の体質や生活習慣、お悩みなどを丁寧に把握いたします。
脈やお腹、舌などを詳しく拝見し、東洋医学の理論に基づいてあなたの体の状態を正確に判別し、鼻づまりの根本原因を見極めます。

そして、西洋医学的な知識も踏まえつつ、東洋医学の考え方に基づいて全身のツボを使い、体全体のバランスを整える本格的な鍼灸施術を行います。

単に鼻の通りを良くするだけでなく、体質そのものを改善することで、鼻づまりが起こりにくい体づくりを目指します。

あなたの鼻づまりが一日も早く解消され、快適な毎日を送れるよう、全力でお手伝いさせていただきます。

慢性的な鼻づまりでお悩みなら、お気軽にご相談ください。