不感症(女性性機能障害)に効くツボ
不感症(女性性機能障害)に効くツボ
不感症のお悩みはデリケートな問題ですが、決してあなただけのものではありません。
ご自身の心と体に向き合うことは、回復への大切な一歩です。
焦らず、ご自身のペースで、少しずつでも前に進んでいきましょう。
今回は、不感症にセルフケアのツボでアプローチしていく方法についてお話しします。
西洋医学からみた不感症
西洋医学において、不感症は「女性性機能障害(Female Sexual Dysfunction: FSD)」の一部として捉えられます。
FSDは、性的欲求、興奮、オーガズム、性交痛などの問題を含む幅広い概念です。
不感症、とくにオーガズム障害や性的興奮障害は、性的刺激に対する感覚が乏しい、興奮しにくい、あるいはオーガズムに至らない状態を指します。
原因は多岐にわたり、ホルモンバランスの乱れ(とくにエストロゲンの低下)、糖尿病や心血管疾患などの全身疾患、抗うつ薬や血圧の薬などの薬剤の副作用、過去の性的なトラウマ、心理的なストレス、不安、うつ病、パートナーとの関係性の問題、加齢などが考えられます。
これらの要因が複合的に絡み合っていることも少なくありません。
西洋医学的な治療法
西洋医学における不感症の治療は、その根本原因にアプローチすることが中心となります。
原因が特定できれば、それに対する治療を行います。
心理的な要因が強い場合は、カウンセリングや性セラピーが行われます。
パートナーとの関係性の問題が影響している場合は、カップルセラピーも有効です。
ホルモンバランスの異常が原因であれば、ホルモン補充療法が検討されることもあります。
使用している薬剤が原因である可能性があれば、医師と相談の上、代替薬への変更や減薬が考慮されます。
また、骨盤底筋のトレーニングや、医療機器を用いた治療などが試みられる場合もあります。
東洋医学からみた不感症
東洋医学では、体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」という生命エネルギーと物質がバランスを取りながら巡っていると考えます。
このバランスが崩れたり、巡りが滞ったりすることで様々な不調が現れます。
不感症も例外ではなく、単に特定の局所の問題としてではなく、全身のバランスの乱れが骨盤内や生殖器周辺の機能低下として現れたものと捉えます。
不感症と関連が深いのは、「腎(じん)」「肝(かん)」「脾(ひ)」「心(しん)」といった五臓の働き、そして「気」や「血」の巡りです。
個々の体質や症状の現れ方によって、以下のようなパターンが考えられます。
■腎虚(じんきょ)
腎は生殖能力、成長、老化、水分代謝などを司る、生命力の源と考えられます。
腎の機能が低下すると、精(せい:生命の根源物質)や水(すい:体液)が不足し、体の潤いや温かさが失われやすくなります。
このタイプの 不感症は、加齢や過労、先天的な要因などが関係することが多く、腰や膝のだるさ・冷え、頻尿、乾燥感(膣の乾燥など)、性欲の低下、といった症状を伴うことがあります。
腎の陰陽どちらの虚(不足)かによって、さらに細かく分類されますが、根本的な生殖機能やホルモンバランスの低下と関連が深いと考えられます。
■肝鬱気滞(かんうつきたい)
肝は気の巡りをスムーズにする働きや、血を貯蔵する働きを司ります。
ストレスや精神的な緊張が続くと、肝の働きが滞り、気の巡りが悪くなります(気滞)。
気が滞ると血の巡りも滞りやすくなります(血瘀)。
このタイプの不感症は、精神的なストレスや感情の抑圧が主な原因となることが多く、イライラ、胸や脇の張りや痛み、生理不順や生理痛、手足の冷えやしびれ、といった症状を伴うことがあります。
感情的なブロックが、性的な刺激に対する体の反応を妨げている状態と考えられます。
■心脾両虚(しんぴりょうきょ)
心は精神活動や血脈を司り、脾は飲食物から気血を作り出し、全身に運搬する働きをします。
過度の思考や心配、不規則な食事などが続くと、心と脾の働きが共に弱まります。
心脾両虚の不感症は、過労や心配事、心労などが原因となることが多く、疲れやすい、食欲不振、不眠、動悸、めまい、顔色が優れない、といった全身的な衰弱症状を伴います。
心(精神)と脾(気血生成)の両方が弱ることで、性的なエネルギーや活力が不足し、また精神的な不安定さも불감증に関与すると考えられます。
■血瘀(けつお)
上記のいずれかの状態が長引いたり、外傷などによって、体内の気血の巡りがひどく滞った状態です。
とくに血が滞ると、痛みやしこりとして現れることが多く、不感症の場合は、骨盤内の血行不良や、性器周辺の血の巡りの悪さ、痛みを伴う性交などが考えられます。
顔色や唇、舌の色が暗かったり、手足の冷えが強いといった症状を伴うこともあります。
気血の滞りは、性的な刺激がスムーズに伝わらない、あるいは体の反応が鈍くなる原因となります。
不感症に効くツボ
東洋医学的な診断に基づき、個々の体質や症状に合わせてツボを選び施術を行います。
不感症に効く共通のツボ
どの体質の方にも共通して、不感症の改善に効果が期待できるツボがあります。
これらは、骨盤内の血行を促進したり、女性ホルモンのバランスを整えたり、精神的な安定をもたらしたりする効果が期待できるツボです。
■三陰交(さんいんこう)
内くるぶしのいちばん高いところに小指をおき、指幅4本そろえて、人さし指があたっているところが三陰交です。
脾・腎・肝の三つの陰の経絡が交わる重要なツボで、婦人科疾患全般に広く用いられます。
気・血・水の巡りを整え、特に骨盤内の血行を促進し、冷えや生理不順、更年期症状、そして性機能の改善に効果が期待できます。
また、精神的な安定にも作用します。
■関元(かんげん)
指幅4本をそろえて人さし指をおへそにおき、小指があたっているところ。
下腹部の要穴で、生命力の源である「気」や「精」を補い、体を温め、生殖機能を高める効果があります。
とくに冷えや体力の低下に有効です。
■伏兎(ふくと)とその上下の3穴
膝蓋骨(膝のお皿)の上から指4本分上に1穴。さらに4本分上に1穴(これが伏兎)、そのさらに指4本分上に1穴の合計3穴。
不感症の特効穴です。お灸が効きます。
体質別に効果的なツボ
共通のツボだけでなく、自分の体質に合わせたツボを加えることでより効果が出ます。
腎虚(じんきょ)タイプ
■太谿(たいけい)
内くるぶしとアキレス腱のほぼ中央のくぼみにあります。
腎の原気(根本のエネルギー)を補う重要なツボです。
腎の働きを直接的に高め、体液や精の不足を改善します。
肝鬱気滞(かんうつきたい)タイプ
■肝兪(かんゆ)
肩甲骨の下角(下の角▽)を結んだ線の高さが第7胸椎棘突起と同じ高さになりますので、そこから約3cm下がったところがツボの位置になります。
肝の働きを調整する作用が強いです。
気の巡りを整え、張りや痛みを和らげます。
■太衝(たいしょう)
足の甲にあります。足の親指と人差し指の骨が交わる所です。
肝の経絡上のツボで、肝の気の滞りを鎮める働きがあります。
イライラや怒り、精神的な緊張が強い場合に用いられます。
心脾両虚(しんぴりょうきょ)タイプ
■内関(ないかん)
手首の曲がりジワに薬指をおき指幅3本そろえて人さし指があたっているところ、腕の幅の真ん中が内関です。
心の働きを整え、精神的な安定をもたらし、動悸や不眠、不安などを和らげます。
胃の不調にも効果があります。
■足三里(あしさんり)
膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみに人差し指を置き、指幅4本揃えて小指が当たっているところにあります。
脾胃の働きを強くし、気血の生成を促進する全身の強壮作用を持つツボです。
体力や気力が低下している場合に、全身の状態を底上げします。
血瘀(けつお)タイプ
■血海(けっかい)
膝の内側、膝のお皿より指3本分上にあります。
血の滞りを改善し、血行を促進する代表的なツボです。
生理痛や生理不順、血行不良による冷えなどに効果があります。
■膈兪(かくゆ)
肩甲骨の下端と同じ高さで、背骨から外側へ指幅2本よこが膈兪です。
血の病に効果があるとされるツボで、「血の会(けつのえ)」と呼ばれます。
全身の血行を促進する働きがあります。
これらのツボは、あくまで東洋医学的な診断に基づいたアプローチの一部です。
鍼灸師は、患者様一人ひとりの体の状態を丁寧に診察し、その日の体調や反応を見ながら、最適なツボを組み合わせて施術を行います。
ツボを自分で探す時のコツ
より効果的なツボをご自身で探す際は、以下の点を意識してみてください。
ツボの基本位置を確認
鍼灸院での指導や書籍、ウェブサイトなどでツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴の場合、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりに位置します。
押して探す
だいたいの目安の場所の近辺を指で軽く押しながら、周囲を探ります。
「イタ気持ちいい」感覚や、ズーンと響くような感覚がある場所が、ツボの可能性が高いです。
合谷であれば、骨の交わる部分からやや人差し指側を探ると、凹みがあり、圧痛を感じる場所が見つかるはずです。
体の反応をみる
ツボを押すと、血行が良くなったり、体が温まったりする感覚がある場合があります。
ただし、ツボの位置は個人差がありますので、あくまで目安として捉え、無理に強い力で押さないように注意しましょう。
もし不安な場合は、鍼灸師などの専門家にご相談ください。
せんねん灸(台座灸)の使い方と注意点
ご自宅で手軽にできるセルフお灸として、「せんねん灸」の使い方と注意点について解説します。
「せんねん灸」は、ドラッグストアなどで手軽に購入できるお灸の製品名です。
せんねん灸タイプのお灸は「台座灸」と呼びます。
せんねん灸と似たような形の他の商品も多数あり、使用方法などは基本的には同様です。
せんねん灸の使い方
種類を選ぶ
「せんねん灸」には様々な種類があります。
「ソフト(弱)」「レギュラー(中間)」「あつめ(強)」の3つの種類があります。
初めての方は、熱さが「マイルドなタイプ」から試してみることをお勧めします。
ツボの場所を決める
どのツボを使うかはあらかじめ決めておき、ツボの目安を指でさぐりながらより効き目の高いポイントを決めて、ペンなどで印をつけます。
準備
お灸を据える場所を清潔にし、皮膚に異常がないか確認します。
台座の裏紙を剥がす
「せんねん灸」の台座裏についている薄い紙を剥がします。
もぐさに点火
巻きもぐさの先端に線香などで火をつけます。
皮膚に据える
火がついた「せんねん灸」を、ツボに据えます。
熱さを感じたら、無理せずすぐに取り外してください。我慢は禁物です。
取り外す
使用後、完全に火が消えていることを確認してからとりあえずして、捨ててください。
お灸をする上での注意事項
・熱さを我慢しない
熱すぎると感じたら、すぐに取り外してください。無理に我慢すると、やけどの原因になります。
・同じ場所に続けて据えない
皮膚に負担がかかるため、同じ場所に続けてお灸を据えるのは避けましょう。
・顔面、粘膜、傷口、炎症部位への使用は避ける
これらの部位は皮膚がデリケートなため、お灸の使用は避けてください。
・発熱時、飲酒時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける
体調が優れない時は、お灸を控えるようにしましょう。
・皮膚の弱い方、アレルギー体質の方は注意
使用前に必ずパッチテストを行うか、医師や薬剤師に相談してください。
・使用中に異常を感じたら、直ちに使用を中止し、医師に相談
万が一、皮膚に異常が現れた場合は、すぐに使用を中止し、医師の診察を受けてください。
・乳幼児への使用は避ける
小さなお子様への使用はお控えください。
・火の取り扱いに注意
火を使うため、火災には十分に注意してください。
周囲に燃えやすいものがないことを確認し、換気をしながら行いましょう。
上記に注意して、安全にせんねん灸をご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。
セルフケアのツボ押しの方法と注意点
ご自宅で簡単にできるセルフケアとして、ツボ押し(マッサージ)について解説いたします。
ツボ押しは、体の不調を和らげたり、リラックス効果を高めたりするのに役立ちます。
ツボ押しの方法
リラックスできる環境を整える
静かな場所で、楽な姿勢で行いましょう。
ツボの位置を確認
書籍やウェブサイトなどで、目的のツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴は、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりです。
指の腹で押す
親指や人差し指の腹を使い、ツボを垂直に押します。爪を立てないように注意しましょう。
適度な力で押す
「イタ気持ちいい」と感じる程度の力で、ゆっくりと押します。
強く押しすぎると、痛みを感じたり、皮膚を傷めたりする可能性があります。
時間をかけて押す
1つのツボにつき、5秒から10秒程度、ゆっくりと押したり離したりを繰り返します。数回繰り返すと効果的です。
呼吸を意識する
力を入れる時に息を吐き、力を抜く時に息を吸うと、よりリラックスできます。
温めてから行うと効果的
入浴後など、体が温まっている状態で行うと、血行が促進され、より効果を感じやすくなります。
ツボ押しをする上での注意事項
・食直後、飲酒時、発熱時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける:
体調が優れない時は、ツボ押しを控えましょう。
・皮膚に炎症や傷がある場合は避ける:
患部を刺激することで、症状が悪化する可能性があります。
・強く押しすぎない:
強い力で押すと、筋肉や血管を傷つける可能性があります。あくまで「イタ気持ちいい」程度の力で行いましょう。
・長時間同じ場所を押さない:
皮膚に負担がかかるため、長時間同じ場所を押すのは避けましょう。
・力を抜くことを意識する:
力を入れっぱなしにすると、筋肉が緊張してしまい、効果が得られにくくなります。
・体調に異変を感じたら中止する:
ツボ押し中に体調が悪くなった場合は、直ちに中止し、必要に応じて医師に相談してください。
・乳幼児へは避ける:
小さなお子様へはお控えください。
・持病のある方は医師に相談:
心臓疾患や高血圧など、持病のある方は、ツボ押しを行う前に医師に相談してください。
上記に注意して、安全にツボ押しをご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。
本格的な鍼灸施術のすすめ
不感症に対するセルフケアとしては、共通のツボとしてご紹介した三陰交、関元、伏兎などを、お灸(市販の台座灸など)や指圧で優しく刺激してみてください。
下腹部や足元を温めることは、冷えや血行不良の改善に繋がりやすくおすすめです。
軽い運動(ウォーキングやヨガなど)、ストレスを溜め込まない工夫、十分な睡眠、バランスの取れた食事など、心身全体を健やかに保つ生活習慣も非常に大切です。
パートナーとのコミュニケーションも、精神的な安心感を得る上で重要です。
セルフケアだけで効果が感じられれば一番ですが、より近道は専門家による東洋医学に基づいた全身へのアプローチです。
一人で悩まず、ぜひ一度、東洋医学の専門家にご相談ください。
あなたの体と心の状態に合わせた最適な施術で、改善への道のりをサポートさせていただきます。