小満|鍼灸師が教える二十四節気の健康法
小満の今できる健康法について
今回は、二十四節気の8番目「小満(しょうまん)」について解説し、この時期を健やかに過ごすための養生法をご紹介します。
「小満」は、例年5月20日頃から6月5日頃までの期間を指します。
2025年が5月21日です。
陽気が高まり、万物が次第に成長して満ち足りてくる時期であることから「小満」と名付けられました。
農作物がすくすくと育ち、穂がつき始める季節ですが、梅雨の入り口にさしかかる時期でもあり、湿気が増してきます。
日本では、麦が黄金色に色づき始める頃であり、稲作の準備も進みます。
気温の上昇とともに、湿度が高くなり、身体にも影響を及ぼしやすい時期です。
陽気が増し、過ごしやすい日が多くなる一方で、日中は汗ばむこともあり、夏の足音が近づく季節。
自然界の活気に呼応するように、私たちの心身も活動的になる時期ですが、気温の変化や湿度の高まりには注意が必要です。
小満の頃に起こりうる心身の不調
小満の時期は、春から夏への移行期にあたり、気温や湿度の変化が大きく、身体にさまざまな影響を及ぼします。
とくに影響を受けるのが、「湿邪(しつじゃ)」です。
湿気が多くなることで、体内に余分な水分が溜まりやすくなり、消化機能や循環機能が低下することがあります。
まず、消化器系の不調が起こりやすくなります。
湿気が体にこもると、東洋医学で「脾(ひ)」と呼ばれる消化器系の働きが低下し、食欲不振や胃もたれ、下痢、むくみなどの症状が現れます。
また、湿気による影響で体内の水分代謝が滞りやすくなり、むくみや関節の痛み、体の重だるさを感じることがあります。
次に、気温の上昇と湿度の増加による自律神経の乱れが生じることがあります。
湿気が多いと体温調節がうまくいかず、だるさや疲労感が抜けにくくなるほか、寝つきが悪くなったり、日中に眠気を感じたりすることもあります。とくに梅雨に入ると日照時間が短くなり、気分が沈みがちになったり、やる気が出にくくなったりすることもあるでしょう。
さらに、皮膚トラブルも増えやすい時期です。
湿度が高くなると汗をかきやすくなり、あせもや湿疹、かゆみなどの症状が出ることがあります。
皮脂の分泌も活発になるため、ニキビができやすくなることもあります。
これらをもう少し詳しく見ていきます。
身体の不調
■倦怠感・疲労感
気温の上昇とともに、身体は徐々に暑さに慣れようとエネルギーを消費します。
また、日照時間が長くなることで活動量が増え、気づかないうちに疲労が蓄積しやすい時期です。
朝起きても疲れが取れない、体が重く感じるなどの症状が出やすくなります。
■消化器系の不調
気温や湿度の変化によって、消化機能が低下しやすくなります。
食欲不振、胃もたれ、下痢や便秘といった消化器系のトラブルが起こりやすくなります。
冷たい飲み物や食べ物を摂り過ぎると、さらに消化不良を招くことがあります。
■むくみ
梅雨入り前のこの時期は、湿度が高くなる日が増えます。
体内の水分代謝が滞りやすくなり、手足や顔のむくみを感じることがあります。
とくに、座りっぱなしや立ちっぱなしの仕事をしている方は注意が必要です。
■肌のトラブル
汗をかきやすくなるため、あせもやかぶれなどの皮膚トラブルが起こりやすくなります。
紫外線も強くなるため、日焼けによる肌の乾燥や炎症にも注意が必要です。
■頭痛・めまい
気温や気圧の変化に体がついていけず、自律神経が乱れることで頭痛やめまいを感じることがあります。
とくに、低気圧が近づいている時や、急な気温の変化があった場合に起こりやすくなります。
心の不調
■イライラ・焦燥感
自然界のエネルギーが活発になるにつれて、心も活動的になりやすい反面、些細なことでイライラしたり、理由もなく焦燥感を感じたりすることがあります。
■集中力の低下
気温の上昇や気圧の変化によって、集中力が低下しやすくなります。
仕事や勉強に集中できず、ミスが増えることもあります。
■気分の落ち込み
梅雨入り前の不安定な天候や、日照時間の変化などが影響して、気分が落ち込みやすくなることがあります。
とくに、季節の変わり目に体調を崩しやすい方は注意が必要です。
■睡眠の質の低下
気温の上昇によって寝苦しくなったり、日照時間が長くなることで体内時計が乱れたりして、睡眠の質が低下することがあります。
寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めやすくなったりします。
これらの不調は、私たちの身体が変化する季節に対応しようとする自然な反応でもあります。
しかし、放置すると慢性的な不調につながる可能性もあるため、適切な養生を心がけることが大切です。
小満の不調を避けるための健康法
小満の頃の不調を避けるためには、日々の生活の中でいくつかの点に注意して過ごすことが大切です。
食養生
■消化の良い食事を心がける
胃腸に負担をかけない、消化の良い食事を心がけましょう。
温かいスープや煮込み料理、柔らかく煮た野菜などを積極的に摂り入れると良いでしょう。
■旬の食材を取り入れる
新じゃがいも、そら豆、グリーンピース、アスパラガスなど、旬の野菜は栄養価が高く、身体に必要なエネルギーを補給してくれます。
これらの食材を積極的に食事に取り入れましょう。
■適度な水分補給
汗をかきやすくなるため、こまめな水分補給を心がけましょう。
常温の水やお茶、麦茶などがおすすめです。冷たい飲み物は摂り過ぎると胃腸を冷やしてしまうため、注意が必要です。
■油っこいものや甘いものを控える
消化に時間がかかる油っこいものや、血糖値を急激に上げる甘いものは、体調を崩しやすくなる原因となります。
なるべく控えめにしましょう。
■香りの良い食材を活用する
生姜、ミョウガ、ネギなどの香りの良い食材は、食欲を増進させ、消化を助ける効果があります。
積極的に料理に取り入れてみましょう。
生活養生
■適度な運動を心がける
軽いウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で適度な運動を取り入れましょう。
適度な運動は、血行を促進し、新陳代謝を高める効果があります。
ただし、暑い時間帯の激しい運動は避けましょう。
■質の良い睡眠を確保する
寝室の温度や湿度を適切に保ち、リラックスできる環境を整えましょう。
就寝前にスマートフォンやパソコンなどの画面を見るのは避け、ぬるめのお風呂に入るなどして心身をリラックスさせるのも効果的です。
■十分な休息を取る
疲労を感じたら無理せず休息を取りましょう。
とくに、日中は活動的に過ごし、夜はしっかりと睡眠時間を確保することが大切です。
■衣類で温度調節をする
一日の寒暖差に対応できるよう、脱ぎ着しやすい服装を心がけましょう。
吸湿性や通気性の良い素材の衣類を選ぶのもポイントです。
■室内の換気をこまめに行う
湿度が高くなる時期なので、室内の換気をこまめに行い、風通しを良くしましょう。
エアコンや除湿機などを活用するのも有効です。
■リラックスできる時間を作る
音楽を聴いたり、読書をしたり、アロマを焚いたりなど、自分にとって心地よいリラックスできる時間を作りましょう。
■紫外線対策をしっかり行う
外出時は、日焼け止めクリームを塗ったり、帽子やサングラスを着用したりするなど、紫外線対策をしっかり行いましょう。
心の養生
■意識的にリフレッシュする
自然の中で過ごしたり、趣味に没頭したりするなど、意識的にリフレッシュする時間を作りましょう。
■悩みや不安を溜め込まない
誰かに相談したり、日記に書き出したりするなどして、悩みや不安を溜め込まないようにしましょう。
■ポジティブな思考を心がける
物事を前向きに捉え、感謝の気持ちを持つように心がけましょう。
これらの健康法を実践することで、小満の頃に起こりやすい心身の不調を予防し、健やかに過ごすことができるでしょう。
小満の不調に効果的なツボ(経穴)と理由
最後に、小満の頃に起こりやすい不調に効果的なツボ(経穴)を3つご紹介します。
足三里(あしさんり)
膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみに人差し指を置き、指幅4本揃えて小指が当たっているところにあります。
万能のツボと言われ、胃腸の働きを整え、全身の機能を高める効果があります。
小満の頃に起こりやすい消化器系の不調や倦怠感の改善に役立ちます。
また、免疫力を高める効果も期待できます。
内関(ないかん)
手首の曲がりジワに薬指をおき指幅3本そろえて人さし指があたっているところ、腕の幅の真ん中が内関です。
精神安定作用があり、イライラや不安を鎮める効果が期待できます。
また、吐き気や胃の不快感を和らげる効果もあるため、小満の頃に起こりやすい気分の落ち込みや消化器系の不調に効果的です。
陰陵泉(いんりょうせん)
膝の内側、太い骨(脛骨)の下にあるくぼみです。
体内の余分な水分を排出し、むくみを改善する効果があります。
また、消化機能を整える働きもあるため、小満の頃に起こりやすいむくみや消化不良に効果が期待できます。
これらのツボは、指の腹で優しく、少し痛みを感じる程度に押したり、お灸で温めたりするのも良いでしょう。
さいごに
今回は、二十四節気「小満」について解説し、この時期を健やかに過ごすための養生法と効果的なツボをご紹介しました。
季節の変わり目は、私たちの心身に様々な影響を与えることがあります。
日々の生活の中でご紹介した健康法を実践し、心身のバランスを整えることで、小満の時期を快適に過ごしていただければ幸いです。
もし、体調に不安を感じることがありましたら、お気軽に当院にご相談ください。
皆様の健康をサポートできるよう、心を込めて施術させていただきます。
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