下痢に効くツボ
慢性的な下痢に効くツボ
慢性的な下痢は、体力の消耗や栄養の吸収不良を引き起こし、日常生活にも大きな支障をきたしますね。
「何を食べてもお腹が緩くなる」「外出先でのトイレが心配」など、不安がつきまとっていることでしょう。
まずは西洋医学と東洋医学の両面から原因を考え、セルフケアでできるツボ刺激をご紹介します。
西洋医学からみる慢性的な下痢
西洋医学では、慢性的な下痢の原因は多岐にわたります。
一般的なものには以下のようなものがあります。
過敏性腸症候群(IBS):
ストレスや自律神経の乱れが関与し、下痢と便秘を繰り返すことが多い。
炎症性腸疾患(IBD):
クローン病や潰瘍性大腸炎など、腸の慢性的な炎症が原因。
感染症や腸内細菌の異常:
細菌やウイルス感染による慢性的な腸の炎症。
食物不耐性・アレルギー:
乳糖不耐症やグルテン過敏症など、特定の食品に対する過敏反応。
消化不良・膵臓の機能低下:
脂肪の消化がうまくいかず、脂肪便や下痢を引き起こす。
甲状腺機能亢進症:
甲状腺ホルモンの過剰分泌により代謝が活発になり、下痢が続く。
まずは下痢が長引く場合は、西洋医学の病院を受診して検査などを受けてください。
治療としては、食事療法、ストレス管理、薬物療法(整腸剤・抗炎症薬・抗生剤など)が中心となるかと思います。
西洋医学の治療だけでは十分に改善しない場合に、東洋医学の観点からも体質に合った治療を考えることが重要です。
東洋医学からみる慢性的な下痢(体質別)
東洋医学では、慢性的な下痢は「脾」「腎」「肝」の働きの乱れに関連していると考えます。
以下、代表的な体質別に原因と特徴を説明します。
脾虚(ひきょ)タイプ(消化吸収力の低下)
特徴:
食後すぐにお腹が緩くなる
胃もたれや食欲不振がある
体がだるく、疲れやすい
舌が淡く、歯型がつきやすい
原因:
脾(消化器系)の機能が弱まり、食べたものを十分に消化・吸収できず、未消化のまま排泄されるため。
腎陽虚(じんようきょ)タイプ(冷えによる消化機能の低下)
特徴:
朝や寒い時期に下痢しやすい
手足が冷えやすい
腰や膝がだるい
頻尿や夜間尿が多い
原因:
腎陽(体を温めるエネルギー)が不足し、腸の機能が低下することで水分を十分に吸収できず、下痢になりやすい。
肝気鬱結(かんきうっけつ)タイプ(ストレスによる腸の乱れ)
特徴:
ストレスがかかると下痢になる
便秘と下痢を交互に繰り返す
胸や脇腹が張る
イライラしやすい
原因:
肝(自律神経を調整する働き)がストレスによって乱れ、腸の蠕動運動が異常に活発になるため。
湿熱(しつねつ)タイプ(余分な水分と熱がこもっている)
特徴:
便が泥状または粘着性で臭いが強い
お腹が張る
体が重だるい
むくみやすい
舌苔が黄色くベトベトしている
原因:
湿気の多い環境や過食や脂っこいもの、味の濃いものの摂りすぎ、アルコールの多飲、脾胃の機能低下
下痢に効果的なツボ
脾虚タイプ
中脘(ちゅうかん)
おへそに小指をあてて、親指までの指幅5本。親指があたっているところを目安にして指でやさしくなでるとへこみがあるところ。
胃腸の働きを整え、消化吸収を助ける。
足三里(あしさんり)
膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみに人差し指を置き、指幅4本揃えて小指が当たっているところにあります。
消化機能を高め、胃腸の働きを活発にする。
脾兪(ひゆ)
第11胸椎と第12胸椎の間から指幅2本分外。肩甲骨の下端と同じ高さの背骨のすきまを4つ下がったところ(ここが11胸椎と12胸椎の間)。
脾の機能を強化し、下痢を改善。
腎陽虚タイプ
関元(かんげん)
指幅4本をそろえて人さし指をおへそにおき、小指があたっているところ。
腎陽を高め、温かいエネルギーを補充。
命門(めいもん)
まずヒジの高さを確認します。ヒジと同じ高さの背骨にあるのが命門です。
体全体の冷えを改善。
太谿(たいけい)
内くるぶしとアキレス腱のほぼ中央のくぼみにあります。
体を温める効果もあるため、下半身の血行促進に役立ちます。
肝気鬱結タイプ
太衝(たいしょう)
足の甲にあります。足の親指と人差し指の骨が交わる所です。
肝経のツボで、気の巡りを整え、イライラや精神的な緊張を和らげる効果があります。
内関(ないかん)
手首の曲がりジワに薬指をおき指幅3本そろえて人さし指があたっているところ、腕の幅の真ん中が内関です。
精神的な安定をもたらす効果があります。
合谷(ごうこく)
手の甲で親指と人さし指の間。
ストレスによる緊張を緩和。
湿熱タイプ
陰陵泉(いんりょうせん)
膝の内側、太い骨(脛骨)の下にあるくぼみです。
体内の余分な水分を取り除き、下痢を改善します。
豊隆(ほうりゅう)
下腿(すね)の外側、膝と足首の中間あたりに位置しています。筋肉が盛り上がっている部分で、外くるぶしから親指8本分上の場所。
痰湿を取り除き、胃腸の働きを整えます。
曲池(きょくち)
親指を上にして腕を前に出し、ヒジを曲げてできる曲がりジワの先端。
体の熱を冷まし、炎症を抑えます。
天枢(てんすう)
おへその両わき外側へ指幅3本ずれたところ。
腸の働きを整え、下痢を止めます。
ツボを自分で探す時のコツ
より効果的なツボをご自身で探す際は、以下の点を意識してみてください。
ツボの基本位置を確認
鍼灸院での指導や書籍、ウェブサイトなどでツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴の場合、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりに位置します。
押して探す
だいたいの目安の場所の近辺を指で軽く押しながら、周囲を探ります。
「イタ気持ちいい」感覚や、ズーンと響くような感覚がある場所が、ツボの可能性が高いです。
合谷であれば、骨の交わる部分からやや人差し指側を探ると、凹みがあり、圧痛を感じる場所が見つかるはずです。
体の反応をみる
ツボを押すと、血行が良くなったり、体が温まったりする感覚がある場合があります。
ただし、ツボの位置は個人差がありますので、あくまで目安として捉え、無理に強い力で押さないように注意しましょう。
もし不安な場合は、鍼灸師などの専門家にご相談ください。
せんねん灸(台座灸)の使い方と注意点
ご自宅で手軽にできるセルフお灸として、「せんねん灸」の使い方と注意点について解説します。
「せんねん灸」は、ドラッグストアなどで手軽に購入できるお灸の製品名です。
せんねん灸タイプのお灸は「台座灸」と呼びます。
せんねん灸と似たような形の他の商品も多数あり、使用方法などは基本的には同様です。
せんねん灸の使い方
種類を選ぶ
「せんねん灸」には様々な種類があります。
「ソフト(弱)」「レギュラー(中間)」「あつめ(強)」の3つの種類があります。
初めての方は、熱さが「マイルドなタイプ」から試してみることをお勧めします。
ツボの場所を決める
どのツボを使うかはあらかじめ決めておき、ツボの目安を指でさぐりながらより効き目の高いポイントを決めて、ペンなどで印をつけます。
準備
お灸を据える場所を清潔にし、皮膚に異常がないか確認します。
台座の裏紙を剥がす
「せんねん灸」の台座裏についている薄い紙を剥がします。
もぐさに点火
巻きもぐさの先端に線香などで火をつけます。
皮膚に据える
火がついた「せんねん灸」を、ツボに据えます。
熱さを感じたら、無理せずすぐに取り外してください。我慢は禁物です。
取り外す
使用後、完全に火が消えていることを確認してからとりあえずして、捨ててください。
お灸をする上での注意事項
・熱さを我慢しない
熱すぎると感じたら、すぐに取り外してください。無理に我慢すると、やけどの原因になります。
・同じ場所に続けて据えない
皮膚に負担がかかるため、同じ場所に続けてお灸を据えるのは避けましょう。
・顔面、粘膜、傷口、炎症部位への使用は避ける
これらの部位は皮膚がデリケートなため、お灸の使用は避けてください。
・発熱時、飲酒時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける
体調が優れない時は、お灸を控えるようにしましょう。
・皮膚の弱い方、アレルギー体質の方は注意
使用前に必ずパッチテストを行うか、医師や薬剤師に相談してください。
・使用中に異常を感じたら、直ちに使用を中止し、医師に相談
万が一、皮膚に異常が現れた場合は、すぐに使用を中止し、医師の診察を受けてください。
・乳幼児への使用は避ける
小さなお子様への使用はお控えください。
・火の取り扱いに注意
火を使うため、火災には十分に注意してください。
周囲に燃えやすいものがないことを確認し、換気をしながら行いましょう。
上記に注意して、安全にせんねん灸をご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。
セルフケアのツボ押しの方法と注意点
ご自宅で簡単にできるセルフケアとして、ツボ押し(マッサージ)について解説いたします。
ツボ押しは、体の不調を和らげたり、リラックス効果を高めたりするのに役立ちます。
ツボ押しの方法
リラックスできる環境を整える
静かな場所で、楽な姿勢で行いましょう。
ツボの位置を確認
書籍やウェブサイトなどで、目的のツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴は、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりです。
指の腹で押す
親指や人差し指の腹を使い、ツボを垂直に押します。爪を立てないように注意しましょう。
適度な力で押す
「イタ気持ちいい」と感じる程度の力で、ゆっくりと押します。
強く押しすぎると、痛みを感じたり、皮膚を傷めたりする可能性があります。
時間をかけて押す
1つのツボにつき、5秒から10秒程度、ゆっくりと押したり離したりを繰り返します。数回繰り返すと効果的です。
呼吸を意識する
力を入れる時に息を吐き、力を抜く時に息を吸うと、よりリラックスできます。
温めてから行うと効果的
入浴後など、体が温まっている状態で行うと、血行が促進され、より効果を感じやすくなります。
ツボ押しをする上での注意事項
・食直後、飲酒時、発熱時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける:
体調が優れない時は、ツボ押しを控えましょう。
・皮膚に炎症や傷がある場合は避ける:
患部を刺激することで、症状が悪化する可能性があります。
・強く押しすぎない:
強い力で押すと、筋肉や血管を傷つける可能性があります。あくまで「イタ気持ちいい」程度の力で行いましょう。
・長時間同じ場所を押さない:
皮膚に負担がかかるため、長時間同じ場所を押すのは避けましょう。
・力を抜くことを意識する:
力を入れっぱなしにすると、筋肉が緊張してしまい、効果が得られにくくなります。
・体調に異変を感じたら中止する:
ツボ押し中に体調が悪くなった場合は、直ちに中止し、必要に応じて医師に相談してください。
・乳幼児へは避ける:
小さなお子様へはお控えください。
・持病のある方は医師に相談:
心臓疾患や高血圧など、持病のある方は、ツボ押しを行う前に医師に相談してください。
上記に注意して、安全にツボ押しをご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。
鍼灸院での本格的な施術のすすめ
セルフケアも大切ですが、慢性的な下痢の場合、専門的な施術を受けることでより早く改善が期待できます。
鍼灸院では、以下のような施術を組み合わせて行います。
腹部の調整:
お腹にある「中脘(ちゅうかん)」「天枢(てんすう)」などのツボを使い、消化機能を整えます。
体質改善のための施術:
脾虚・腎陽虚・肝気鬱結など体質に応じた全身からの治療。
鍼とお灸の併用:
冷えによる下痢にはお灸が効果的だし、ストレス発散には鍼が効果的など、最適な方法で施術を組み合わせます。
生活指導:
食養生やストレスケアのアドバイス。
慢性的な下痢は体質や生活習慣と深く関わっています。
セルフケアとともに、定期的な鍼灸施術を受けることで、根本的な体質改善を目指しましょう。