【当帰芍薬散】不妊治療のその漢方薬はあなたに合っている?【桂枝茯苓丸】

不妊治療でよく出る漢方薬

不妊治療の当帰芍薬散

不妊治療では、鍼灸の他に東洋医学のもうひとつの柱である「漢方薬」もよく使われます。
鍼灸とは異なり、保険がきくので不妊の病院で処方されるケースもあります。

よく使われる漢方薬は「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」「加味逍遙散(かみしょうようさん)」あたりです
他にも「温経湯」だったりと違った漢方薬が出たという人もいるでしょうが、ここでは上記3つを代表例として挙げておきます。

鍼灸師は漢方薬の専門家ではありませんが、同じ東洋医学の土台を共有しています。
その目線で、それら漢方薬はこういう人に向いています、というハナシを書いていきます。

漢方薬は東洋医学の視点で見るのが重要

まずは、適した漢方薬を見つける一般的な方法から書いていきます。

漢方薬は東洋医学のひとつです。
東洋医学という切り口でカラダをみて、その不具合を調整する方法として漢方薬を選ぶわけです。

では「東洋医学の基本的なカラダの見方とは何か?」と言えば「気(き)・血(けつ)・水(すい)」です。
カラダの中には「気」「血」「水(津液とも言います)」という物質があり、それぞれが量的に過不足なく、かつキレイに巡っていることが健康なカラダなのだとしています

語弊を恐れずすごく簡略化して言えば「気とは温かみ」「血とは栄養」「水とは潤い」です。
これらが足りなかったり過剰だったりするのは、体に良くなさそうですよね!?

次に漢方薬の事も少し話します。
漢方薬は、生薬(しょうやく)という単品の物質をいくつかブレンドすることで出来ています。
例えば、生薬の桂枝(けいし)、芍薬(しゃくやく)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)をブレンドすると「桂枝湯(けいしとう)」という漢方薬になります。

そして、それぞれの生薬が先ほどの気血水の調整に役立つ効能を持っています。
例えば「桂枝」は「停滞している気の力を強めて発散させ、結果、汗を外に出すようにする」作用があります。

このように、気血水に何らかの影響を及ぼす複数の生薬を配合して出来たものが漢方薬ですので、漢方薬を選ぶときは「その人の体の中の気血水がどうなっているのか?」から薬を選択していく必要があります
つまり、東洋医学の視点で選択しないと本当に良い漢方薬は選べない、ということです。

それをふまえて以下に、ぞれぞれの漢方薬がどのようなもので、どういう人に相応しいのかを書いてみます。

当帰芍薬散に合う人

【概要】
ツムラのエキス剤では「23番」です。
「気」「血」の量が少ないので栄養素や熱が行き届かない状態の人向け。
結果的に、疲れ・冷え・生理が遅れるなどの症状が現れます。
また、大切な「気・血」がうまく体中をめぐらなくなると、水分代謝も悪くなり、体の余分なところに水分がたまり、その水分が体を冷やして冷えを引き起こします。

【全身的に出る症状】
疲れやすさ・手足の冷え・めまい・胃腸が弱い・重だるい

【婦人科に出る症状】
・生理周期は遅れがち(不順になる事も)
基礎体温も低い(高温期が短い)
月経血の量は少ない(徐々に減ってきている)
・生理痛は鈍い痛み

以上のような症状や状態の人に当帰芍薬散があっている可能性が強いです。

加味逍遙散に合う人

【概要】
ツムラのエキス剤では「24番」です。
「気」が滞る人向け。
交感神経の過剰反応によるイライラ、不眠症などの神経症状が出やすいです。
また、自律神経を調整し、イライラやのぼせを鎮めて、血行も促進します。

【全身的に出る症状】
あちこち冷えたりのぼせたり・便秘しやすい・体力はないが虚弱ではない・
イライラ強い・寝つき悪い(眠りが浅い)

【婦人科に出る症状】
生理周期が不安定
月経前症候群(PMS)として気分不調・便秘悪化

以上のような症状や状態の人に加味逍遙散は合っている可能性が強いです。

桂枝茯苓丸に合う人

【概要】
ツムラのエキス剤では「25番」です。
「血」の流れが滞った人向け。
結果、上半身はのぼせ、下半身は冷えるという、いわゆる「冷えのぼせ」の状態になりやすい。
また、「血」の流れが滞っているため、生理痛が重い、月経不順、月経異常などが起きやすいです。

【全身】
冷えのぼせ(暑がりの寒がり)コリや痛みが強い・目の下にくま・体力に自信。

【婦人科】
PMSで胸の張りや腹痛・頭痛など
・生理痛が強い
月経血はドロッとした塊りで量は多め、色は暗い赤黒い
・子宮筋腫や内膜症などにもなりやすい

以上のような症状や状態の人に桂枝茯苓丸は合っている可能性が強いです。

まとめ

漢方薬は東洋医学的な見立てで出すのが本来の使い方です。
本来的には、生薬ごとにあなた用に微妙な「さじ加減」で調合して出されたものを飲むのが最良です。
(何をどの程度ブレンドするかという基本は決まっていますが、それを患者のカラダに合わせて微妙に変えていくのが漢方医のウデ。)

…とは言え、現代では通常よく見かけるのはエキス剤です(※ページ上部の写真参照)。
エキス剤も現実的な選択肢として価値はあります。
あまり神経質にならずに、まずは漢方薬の最初として入ってみて欲しいです。

漢方薬は西洋医学的な病名から処方されるものではありませんが、現実的に不妊の病院などでは「不妊症は○○湯」みたいな一律的な処方もあるかもしれません。
(これが西洋医学的な処方スタイルですから…。)

ですので、飲みながら実際の変化を確認するとことになります。

1ヶ月ほど飲んでみた結果、いま飲んでいる漢方薬で調子が良いならOKです
何かしらの体調の改善があればそれは効いている証しと言えます。
その漢方薬は合っているのでしょう。

逆に変化が乏しいようなら漢方薬があっていないのかもしれません
変化が出ない場合は、東洋医学的な見立てで提案してくれる薬局などを頼るのもありです。
そこでも同じ処方であれば、もう少し継続してみて確認しても良いかもしれません。

一応念のため。
実際に飲んでみて、マイナスの変化(=調子が悪いなど)が出たらいったん中断してみて次回にドクターに聞いてみて下さい。

漢方薬と鍼灸は同じ東洋医学の仲間ですので、うまく取り入れていってほしいと考えます。