【当帰芍薬散】不妊治療のその漢方薬はあなたに合っている?【桂枝茯苓丸】

不妊治療でよくでる漢方薬

不妊治療の当帰芍薬散

不妊治療において、鍼灸と並び東洋医学の重要な柱となるのが「漢方薬」です。
鍼灸とは異なり、保険が適用される場合もあり、不妊治療を行う医療機関で処方されることも少なくありません。

今回は、不妊治療でよく用いられる代表的な漢方薬である「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」「加味逍遙散(かみしょうようさん)」を中心に、東洋医学の視点から、それぞれの漢方薬がどのような体質の方に適しているのかを詳しく解説していきます

漢方薬は東洋医学の考え方を基に選ぶことが重要です。
この記事を通して、漢方薬に対する理解を深め、ご自身の体質に合った漢方薬選びの参考にしていただければ幸いです。

東洋医学における身体観:気・血・水

漢方薬を選ぶ上で最も重要なのは、東洋医学の身体観に基づいた体質の見極めです。
東洋医学では、人間の身体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」という3つの要素によって構成されていると考えます。
これらは互いに影響し合い、バランスを保つことで健康が維持されるとされています。

気(き):
生命活動の根源となるエネルギーです。
体を温めたり、臓腑の機能を維持したり、血液や水分を循環させたりする働きがあります。
精神活動にも深く関わっており、気が不足すると元気が出ない、疲れやすいなどの症状が現れます。

血(けつ):
血液とその中にある栄養分を指します。
全身に栄養を運搬し、臓腑や組織を滋養する役割を担います。血が不足すると、顔色が悪くなる、皮膚が乾燥する、めまいがするなどの症状が現れます。

水(すい):
体液全般を指し、津液(しんえき)とも呼ばれます。
体を潤したり、老廃物を排泄したり、血液の成分となったりする働きがあります。
水が不足すると、口渇、便秘、皮膚の乾燥などの症状が現れます。また、水の巡りが悪くなると、むくみや冷えなどの原因となります。

これらの「気・血・水」は、それぞれが過不足なく、スムーズに体内を巡っている状態が健康であると考えます。
漢方薬は、これらのバランスを整えることを目的として使用されます。

漢方薬の構成:生薬の組み合わせ

漢方薬は、複数の「生薬(しょうやく)」を組み合わせて作られています。
生薬とは、植物、動物、鉱物などの天然物を薬効を持つ部分を乾燥・加工したものです。

それぞれの生薬は、特定の「気・血・水」に影響を与える作用を持っています。

例えば、桂枝(けいし)は体を温め、気の巡りを良くする作用があり、芍薬(しゃくやく)は血を補い、痛みを和らげる作用があります。
漢方薬は、これらの生薬を組み合わせることで、個々の体質や症状に合わせた効果を発揮するように設計されています。

妊活で使われる代表的な漢方薬

以下に、不妊治療でよく用いられる代表的な漢方薬である「当帰芍薬散」「加味逍遙散」「桂枝茯苓丸」について、東洋医学の視点から詳しく解説していきます。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

概要:
ツムラのエキス剤では「23番」です。
血(けつ)と水(すい)の不足、とくに血虚(けっきょ)による症状に適しています。
血虚とは、血の量が不足し、全身に十分な栄養が行き渡らない状態を指します。

適応するタイプ:
体力が虚弱で、冷えやすく、疲れやすい方。
顔色が青白く、めまいや立ちくらみを起こしやすい方。
生理不順や生理痛、月経血の量が少ないといった症状がある方。

具体的な症状:
冷え性、貧血気味、生理不順(周期が遅れる、量が少ない)、生理痛(鈍い痛み)、めまい、立ちくらみ、むくみ、足腰の冷え、不妊など。

東洋医学的解釈:
血虚により、全身への栄養供給が不足し、冷えや機能低下が生じます。
また、血の巡りが悪くなることで水分の代謝も滞り、むくみやすくなります。
当帰芍薬散は、血を補い、血行を促進することで、これらの症状を改善します。

加味逍遙散(かみしょうようさん)

概要:
ツムラのエキス剤では「24番」です。
気(き)の巡りの滞り、とくに肝気鬱結(かんきうっけつ)による症状に適しています。
肝気鬱結とは、ストレスなどによって気の流れが滞り、精神的な不調や身体的な不調を引き起こす状態を指します。

適応するタイプ:
ストレスを感じやすく、イライラしたり、落ち込んだりしやすい方。
のぼせや冷え、便秘などの症状が交互に現れる方。生理不順やPMS(月経前症候群)の症状が気になる方。

具体的な症状:
イライラ、不安、不眠、のぼせ、冷え、便秘、肩こり、頭痛、生理不順、PMS(乳房の張り、腹痛、精神的な不安定)、更年期障害など。

東洋医学的解釈:
ストレスなどにより気の巡りが滞ると、自律神経のバランスが乱れ、様々な不調が現れます。
加味逍遙散は、気の巡りを改善し、自律神経のバランスを整えることで、これらの症状を緩和します。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

概要:
ツムラのエキス剤では「25番」です。
血(けつ)の滞り(瘀血(おけつ))による症状に適しています。
瘀血とは、血の流れが滞り、血行が悪くなっている状態を指します。

適応するタイプ:
比較的体力があり、顔色が暗く、シミやクマができやすい方。
下腹部痛や生理痛が重い方。生理の血塊が多い方。

具体的な症状:
冷えのぼせ(上半身はのぼせ、下半身は冷える)、肩こり、頭痛、生理痛(強い痛み)、生理不順、月経血の塊が多い、子宮筋腫、子宮内膜症など。

東洋医学的解釈:
血の巡りが滞ると、様々な痛みや腫瘍などの原因となります。
桂枝茯苓丸は、血行を促進し、瘀血を改善することで、これらの症状を緩和します。

漢方薬の服用と注意点

漢方薬は、体質や症状に合わせて適切なものを選ぶことが重要です。
自己判断で服用するのではなく、専門家(医師、薬剤師、鍼灸師など)に相談することをお勧めします。

また、漢方薬は効果が現れるまでに時間がかかる場合もありますので、焦らずに継続して服用することが大切です。
服用中に気になる症状が現れた場合は、すぐに服用を中止し、専門家に相談してください。

まとめ

漢方薬は、東洋医学の考え方を基に、個々の体質や症状に合わせて処方されるものです。

不妊治療においても、体質に合った漢方薬を用いることで、妊娠しやすい体づくりをサポートすることが期待できます。
この記事が、漢方薬に対する理解を深め、ご自身に合った治療法を選択する上で役立つことを願っています。

鍼灸治療と漢方薬は、同じ東洋医学の範疇に属し、相乗効果も期待できます。
必要に応じて、両者をうまく取り入れていくことをお勧めします。

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