鍼のシリコン加工
ディスポ鍼とシリコン肉芽腫
私が鍼灸学校に通っていた頃(15~20年ほど前)多くの鍼灸院での使用鍼は、「滅菌しての再利用する鍼」を「使い捨て鍼(ディスポ鍼)」が駆逐目前という時代でした。
「鍼で肝炎やエイズにはなりませんよ、だって使い捨てだから」というポスターを張っているところも少なくありませんでした。
そのような時代を経て、今では感染に対する恐れはあまり聞きません。
それくらいディスポ鍼の使用が当たり前になってきたからでしょう。
そのディスポ鍼は、各社様々な特徴をうたう商品があります。
そのなかでも今回はシリコン加工について。
シリコンコーティング鍼のメリット・デメリット
●メリットは「スムーズな刺鍼」(切皮痛が出づらく、運鍼がなめらかで、抜きやすい)。
●デメリットは「なめらか過ぎて鍼感覚が捉えづらい」ことと「粗雑な運鍼になりやすい」こと。
このように長所短所は表裏関係です。
まぁしかし、シリコンの有無でそんなに使用感に違いが出るのかといえば正直「微妙」です。
「手技」の方が圧倒的に施術に影響を及ぼします。
ですので、シリコンがあってもなくても、どっちでもよいと言えばどっちでもよいのです。
そんなことより手技を磨けって話です(笑)
シリコン肉芽腫
ただシリコンコーティング鍼の場合、シリコンが体内に入る問題があります。
「シリコン肉芽腫」が発生する可能性です。
体内に残留するシリコンの周囲に炎症が起き、そこに肉芽が形成されるというものです。
もちろん、ごく微妙ではありますので人体にほぼ影響はないとは考えられます。
だからこそシリコン加工の鍼が存在するのでしょうし…。
ただ、鍼の使用感はシリコンの有無でさほど影響しないなら、ごく小さくはありますがシリコンの人体への影響を考えて「ノンシリコン」にした方が良いと考えます。
少なくともメインで使う鍼は、ノンシリコンコーティングで。
鍼灸業界で鍼のシリコン有無をあまり疑問視されていないのは、疑問視するレベルの問題でないからかも知れませんが、当院ではメインで使う鍼にはノンシリコンを使用していきます。
(刺しやすさ・なめらかさが欲しい時にシリコン有の鍼を使うこともあります)