円形脱毛症への鍼灸症例|鎌ケ谷市在住40代女性
円形脱毛症への鍼灸症例

円形脱毛症は、ある日突然、髪の毛が円形に抜け落ちる疾患です。
皮膚科では自己免疫反応やストレスとの関連が指摘されており、実際に「強いストレスを感じた後に発症した」という声は少なくありません。
一方で、
「薬を使ってもなかなか改善しない」
「経過観察と言われ、不安だけが残っている」
こうした相談が、鍼灸院には多く寄せられます。
今回は、当院で実際に施術を行った症例をもとに、東洋医学の視点から円形脱毛症をどう捉え、どのように改善していったのかを解説します。
「なぜ私だけが?」「本当にまた生えてくるの?」そんな不安を抱えながら、ひとりで悩んでいる方は少なくありません。
とくに40代、ライフステージが変化する時期の女性にとって、髪の悩みは心の安定に直結します。
この記事が、今まさに不安の中にいるあなたの希望になれば幸いです。
患者さまについて
年齢・性別:
40代女性・鎌ケ谷市在住
数年前から、疲れがピークに達した際にメンテナンスとして当院を利用されていた患者さまです。
今回は、お子さまの小学校入学という大きな環境変化がありました。
新しい生活リズムへの適応、朝の慌ただしさ、そして立ち仕事の忙しさ。
心身ともに「自分のことは後回し」にせざるを得ない日々が数ヶ月続いたある日、円形脱毛症を見つけてしまいました。
「体調を根本から整えないと、これは治らないかもしれない」と感じられ、定期的・継続的な施術をするつもりでご来院くださいました。
この時点での主な症状は以下の通りです。
・円形脱毛症
・体が重い、疲れ感が抜けない。
・首、肩から背中にかけてのコリ。
・慢性的な頭痛
・立ち仕事による腰痛と足の張り。
東洋医学的考察
東洋医学では、人間の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」という3つの要素が、互いに連携し合い、バランスを取りながら生命活動を営んでいると考えます。
「気」は生命エネルギーや活動力、「血」は全身を巡る血液とその働き、「水」は体液全般を指します。
これらのどれか一つでも不足したり、滞ったり、偏ったりすると、体のバランスが崩れ、様々な不調として表面化すると考えます。
円形脱毛症に関係する「髪の毛」について、東洋医学には「髪は血(けつ)の余り(髪乃血余)」という言葉があります。
髪の毛は、全身に栄養を運ぶ「血」が十分に満たされ、余った分で作られると考えられています。
今回の患者さまの状態を、東洋医学の視点で紐解くと3つのポイントが見えてきました。
■瘀血(おけつ)
血の巡りの滞りストレスや過労、長時間の同じ姿勢(立ち仕事)により、血の流れが滞っていました。
栄養が頭皮の隅々まで行き渡らず、毛根が「栄養失調」に陥っている状態です。
■気滞(きたい)
日々の精神的なストレスや過労が、「気(エネルギー)」の流れを滞らせています。
これが首肩のコリや頭痛の正体であり、さらに血の巡りを悪化させる原因となっていました。
■腎虚(じんきょ)
東洋医学で「腎」は生命エネルギーの貯蔵庫であり、髪の成長と深い関わりがあります。
育児と仕事の両立による過労が、この「腎」の力を消耗させていました。
治療方針
今回の目的は、単に「毛を生やす」ことではありません。
「髪を育めるだけの元気な身体を取り戻すこと」に主眼を置きました。
■「気血」の循環改善
全身のツボを使い、血液循環を阻害している「コリ」や「滞り」を解消します。
■自律神経の調整
棒灸や点灸(温熱刺激)を用い、過緊張状態にある神経をリラックスさせ、自己治癒力を高めます。
■局所へのアプローチ
脱毛部周辺の血流を直接活性化させるため、繊細な鍼と温熱を加えます。

【脱毛部分に鍼をしているところ】
治療経過
1回目:
仰向けで、「足三里」「陽陵泉」「太衝」「側頭部のコリの部分」に置鍼(鍼を刺した状態でしばらく置いておく方法)。
「合谷」と「内関」には点灸をしたのちに円皮鍼(貼るタイプの鍼で施術後にも鍼刺激を継続できる)を貼る。
「中脘」「関元」には棒灸で温める。
うつ伏せで、「天柱」「風池」「完骨」「心兪」「膈兪」「肝兪」に置鍼。
「神道」「至陽」は棒温灸で温める。
鍼を抜いた後に、心兪、膈兪、肝兪、神道、至陽には点灸も追加。
円形脱毛症の局所には髪の毛の生え際を丸くなぞるように点灸1壮をおこない、最後に中心部に1壮。

【初回時の写真】
2~3回目(週1回ペース):
最初の施術後、肩こりが減り、身体の軽さを実感され始めます。
脱毛部については、お灸から「浅く刺す鍼」に切り替え、より微細な血流改善を促しました。

【1週間後】

【2週間後】
4~6回目(4週1回ペース):
体調が安定してきたため、施術間隔をあけました。

【6週間後】

【9週間後】
この頃には、脱毛部にしっかりと産毛が生え揃っているのが確認できました。
鏡を見るのが苦痛ではなくなり、患者さまの表情も非常に明るくなったのが印象的です。
3ヶ月半後にはどこに脱毛があったのか分からないほどに回復しました。

【15週後】
「もう大丈夫ですね」と笑顔で共有し、コンスタントな治療を終了。
現在は、疲れが溜まった時のメンテナンスとして、数ヶ月に一度のご利用に移行しています。
使用した主なツボとその代表的な効果
今回の治療で使用した代表的なツボをご紹介します。
これらは、円形脱毛症だけでなく、現代人のストレスケアにも非常に有効です。
足三里(あしさんり)
すねの外側胃腸の働きを整え、栄養の吸収を助ける「万能のツボ」。
太衝(たいしょう)
足の甲ストレスによる「気の昂ぶり」を抑え、血流を改善する。
膈兪(かくゆ)
背中(肩甲骨の下)「血の会」と呼ばれ、血液の質と巡りを整える最重要ポイント。
関元(かんげん)
下腹部(へそ下)「元気の源」が蓄まる場所。
腎の力を補い、活力を与える。
風池(ふうち)
首と頭が接する場所にあり、自律神経を整え、頭部への血行を促進する。
まとめ
円形脱毛症は、身体からの「少し休んで」という切実なメッセージです。
今回、40代の女性患者さまが早期に改善された最大の理由は、「局所の症状だけを見ず、身体全体のバランスを整えたこと」にあります。
当院では、東洋医学の知見に基づき、あなたに合わせたオーダーメイドの施術を行います。
「薬を塗っているけれど、なかなか変化がない」「ストレスが原因と言われたけれど、どう対処していいか分からない」
もし、あなたがそんな風に立ち止まっているのなら、ぜひ一度ご相談ください。
あなたの髪が再び健やかに育つよう、私たちがその「土台作り」を全力でお手伝いします。
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