体内の潤いと栄養を保つ鍵 「血」と「水」|鍼灸師による東洋医学・3
東洋医学から見る「血(けつ)」と「水(すい)」
東洋医学では、人間の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つの要素によって構成されていると考えます。
これらは単なる物質ではなく、体を構成し、生命活動を維持するための重要なエネルギーや体液、そしてそれらの流れを意味します。
今回は、その中でも「血」と「水」に焦点を当て、それぞれの役割、不調のサイン、そして日常生活でどのように活かせるのかを解説していきます。
「血」と「水」とは?現代医学との比較
まず、「血」と「水」が具体的に何を指すのかを現代医学と比較しながら見ていきましょう。
血(けつ)とは
現代医学でいう血液と似ていますが、単なる血液だけでなく、血液が運ぶ栄養やエネルギー、そして血液が全身を巡ることで得られる滋養作用も含みます。
「血」は以下の役割を担っています。
【栄養・滋養】
全身の組織や臓器に栄養を届け、機能を維持します。
【温煦(おんく)】
体を温めます。
【精神安定】
心を安定させ、精神活動を支えます。
つまり、「血」は栄養と潤いを全身に届け、体を温め、精神を安定させる役割を担っています。
水(すい)とは
現代医学でいう体液(血液以外の水分、リンパ液、細胞間液など)に近い概念です。
全身の潤いを保ち、老廃物を排泄し、各組織がスムーズに機能するように潤滑油のような役割を果たします。
「水」は以下の役割を担っています。
【潤滑・滋潤】
全身を潤し、各組織の機能をスムーズにします。
【運搬】
栄養や老廃物を運びます。
例えるなら、「血」は栄養豊富なスープ、「水」はそのスープのベースとなる水のようなものです。
スープ(血)がなければ体は栄養不足になり、水(水)がなければスープはドロドロになってうまく循環しません。
体を巡る「血」と「水」の役割と不調のサイン
「血」と「水」は、体内を絶えず巡り、それぞれの役割を果たしています。
その流れが滞ったり、不足したりすると、様々な不調が現れます。
「血」の不調サイン
「血」の不調のサインとしては、以下のようなものがあります。
【血虚(けっきょ)】
「血」が不足している状態です。
顔色が悪い、爪の色が薄い、めまい、立ちくらみ、動悸、不眠、手足の冷え、皮膚の乾燥などが現れます。
朝起きるのがつらい、集中力が続かない、髪の毛が抜けやすい、目が疲れやすいなども血虚のサインです。
【瘀血(おけつ)】
「血」の流れが滞っている状態です。
肩こり、頭痛、生理痛、シミ、クマ、舌の裏の血管が太いなどが現れます。
生理痛がひどい、生理の血に塊が混じる、アザがなかなか消えないなども瘀血の特徴です。
「水」の役割と不調のサイン
「水」の不調のサインとしては、以下のようなものがあります。
【水滞(すいたい)】
「水」の流れが滞った状態です。
むくみ、冷え、めまい、吐き気、下痢、尿量減少などが現れます。
雨の日に体調が悪くなりやすい、関節が痛む、体が重だるいなども水滞の可能性があります。
タイプ別の生活習慣の改善点
それぞれのタイプに合わせた食事と生活習慣の改善点を提案します。
血虚タイプ
鉄分やタンパク質を多く含む食品(レバー、ほうれん草、赤身の肉、魚など)を積極的に摂りましょう。
睡眠をしっかりとることも大切です。
瘀血タイプ
血行を促進する食品(玉ねぎ、生姜、青魚など)を摂り、適度な運動を心がけましょう。
体を冷やさないようにすることも重要です。
水滞タイプ
水分代謝を促す食品(ハト麦、あずき、きゅうりなど)を摂り、適度な運動で汗をかくようにしましょう。
塩分の摂りすぎにも注意が必要です。
タイプ別に効く漢方薬とツボ
それぞれのタイプに効果的な漢方薬とツボを紹介します。
血虚タイプ
【漢方薬】
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、四物湯(しもつとう)など。
血を補い、体を温める作用があります。
【ツボ】
・足三里(あしさんり)、三陰交(さんいんこう)など。
血の生成を助けるツボです。
瘀血タイプ
【漢方薬】
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)など。
血行を促進し、瘀血を取り除く作用があります。
【ツボ】
・合谷(ごうこく)、血海(けっかい)など。
血の流れを良くするツボです。
水滞タイプ
【漢方薬】
・五苓散(ごれいさん)、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)など。
水分代謝を改善する作用があります。
【ツボ】
・水分(すいぶん)、陰陵泉(いんりょうせん)など。
水分代謝を調整するツボです。
これらの漢方薬やツボは、あくまで一例です。
※体質や症状に合わせて適切なものを選ぶことが大切なので、専門家(医師、薬剤師、鍼灸師など)に相談することをおすすめします。
まとめ:血と水の知識が一般の人にどう役立つのか?
「血」と「水」の知識を持つことで、自分の体の状態をより深く理解し、体調の変化に早く気づけるようになります。
例えば、顔色が悪いと感じたら血虚の可能性を考え、食事や生活習慣を見直すことができます。
また、むくみが気になったら水滞を疑い、水分摂取や運動に気を配ることができます。
以下に、日常生活で簡単にできる養生法とセルフケアを紹介します。
【血虚タイプ】
鉄分を多く含む食事を意識する、睡眠時間を確保する、軽い運動をする。
【瘀血タイプ】
同じ姿勢を長時間続けない、適度な運動をする、体を温める(入浴、温かい飲み物など)。
【水滞タイプ】
塩分を控える、カリウムを多く含む食品を摂る、適度な運動で汗をかく、下半身を温める。
東洋医学における「血」と「水」は、現代医学の血液や体液と類似する概念でありながら、それ以上の意味を持っています。
それぞれの役割と不調のサインを知ることで、自分の体の状態をより深く理解し、健康維持に役立てることができます。
的な生活を送るための羅針盤となるのです。