自然治癒力を引き出す「鍼灸×ホルミシス効果」

ホルシミス効果と鍼灸

鍼灸とホルミシス効果・写真1

鍼灸(東洋医学)が大切にしている考えのひとつが、「体を根本からみて、鍼とお灸という少ない刺激で自己治癒力を引き出すこと」です。

今回は、最近注目されている「ホルミシス効果」という考え方から、鍼灸がなぜ体の不調に効果的なのかを解説します

ホルミシス効果とは?

鍼灸とホルミシス効果・写真2

「ホルミシス」とは、体にとって害となる毒やストレス因子が、「ごく少ない量」だと逆の効果(体に有益な効果)を示す現象です
生物学・毒物学の分野での概念です。

運動・断食・低線量の化学物質や放射線など、身近な例にも当てはまります。
たとえば、低線量による放射線治療をすると、免疫力改善と強力な抗酸化作用が得られます。

たとえば秋田県にある玉川温泉はラジウムを含有していて、低放射線ホルミシス効果で自然治癒力を促進させると、多くの病気の方が湯治に訪れます。

これだけ聞くと少し戸惑うかもしれません。

しかし、私たちの日常には、このホルミシス効果の例がたくさんあります。

■適度な運動
激しい運動は体を疲弊させ、怪我のリスクを高めますが、ウォーキングやジョギングといった適度な運動は、心肺機能を高め、筋肉を強くし、生活習慣病の予防にもつながります。

■日光浴
過度な日光浴は、皮膚がんの原因となる可能性がありますが、適度な日光浴は、体内でビタミンDを生成し、骨を丈夫に保つ上で欠かせません。

■ワサビやショウガ
大量に摂取すると刺激が強すぎますが、少量であれば、抗酸化作用や抗菌作用を発揮し、食欲を増進させる効果もあります。

これらの例からわかるように、ホルミシス効果のポイントは「適度な刺激」です。

この「適度な刺激」が、私たちの体の持つ「ホメオスタシス(生体恒常性)」や「自然治癒力」を刺激し、体の防衛機能や修復機能が活性化され、結果として健康な状態へと導かれるのです。

鍼灸の効果をホルミシス効果で説明する

次に、ホルミシス効果を鍼灸の施術に当てはめて考えていきます。

鍼灸はよく「その人本来の力を引き出す」と言われます。
鍼やお灸が生体に与える刺激は、外見的には微小でも(鍼は髪の毛ほどの太さ、お灸は局所的な温刺激)、局所的な炎症反応・血流変化・神経・免疫系の活性化といった一連の反応を引き起こします。

こうした“軽い刺激”が生体側の防御プログラム(抗酸化系、DNA修復、タンパク質修復、免疫の再調整など)をスイッチオンさせ、体質改善につながるという見方は、ホルミシスの枠組みと非常に親和性があります。

鍼やお灸という「適度な刺激」は、まさに体が自ら元気を取り戻すための「スイッチを押す」行為だと捉えています。

鍼灸は以下のような形で私たちの体に良い影響をもたらします。

痛くない鍼が引き出す自己修復能力

鍼灸とホルミシス効果・写真3

鍼灸に初めていらっしゃる方が最も不安に思うのが、「鍼は痛いのではないか」ということです。
当院では、一般的な鍼よりもさらに細い、0.16mmの鍼を使用しています。
これは髪の毛ほどの太さで、刺入時の痛みはほとんどありません。
この「痛くない刺激」こそが、ホルミシス効果を最大限に引き出すための重要な要素です。

鍼がツボ(経穴)に入ると、私たちの体はこれを「異物」と認識します。
すると、その部分の血流量を増やしたり、免疫細胞(白血球など)を動員したりして、体を元の状態に戻そうとします。

この一連の反応は、細胞レベルでの修復機能や再生能力を高めることにつながります。
この働きによって、長年の不調で滞っていた体の巡りが改善し、様々な症状の緩和へと繋がっていくのです。

たとえば、不妊鍼灸では、この自己修復能力を応用して、子宮や卵巣の血流を改善し、ホルモンバランスを整えることで、妊娠しやすい体質を目指します。
もちろん、病院での治療(体外受精や顕微授精など)と併用することで、より高い相乗効果が期待できます。

温熱効果が促す免疫機能の向上

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お灸は、艾(もぐさ)を燃やしてツボに温熱刺激を与える施術です。

当院では、熱すぎない心地よい温度の棒灸、点灸、台座灸などを患者様の状態に合わせて使い分けています。

この温熱刺激は、皮膚の表面から深部へと伝わり、自律神経に働きかけ、体の隅々まで血流を促進します。

血流が改善されると、体温が上昇し、体内の免疫細胞が活性化します。
体温が1℃上がると免疫力が30%以上向上すると言われているように、お灸による温熱は、まさに体の中から免疫力を高める「ホルミシス効果」と言えます。

また、お灸による心地よい温かさは、心身のリラックス効果も高く、自律神経のバランスを整える上でも非常に有効です。

まとめ

「鍼灸はなぜ効くの?」と聞かれたら、私は自信を持ってこう答えます。
「鍼灸は、ごく微量な刺激(ホルミシス効果)を通じて、その人が持つ自己治癒力を最大限に引き出すからです。」

長い歴史の積み重ねでも、鍼灸の“少しの刺激で体を変える”という経験的事実は確かめられています。
それを、ホルミシスという生物学的枠組みで説明できる側面が多くあります。

ただし、「何でも少し与えれば良い」という単純化は危険です。
刺激への体の反応は多様であり、あくまでその患者さんにとっての「適切な“量”」が肝心です。

刺激の“適正量”を見極めることが治療効果と安全性を両立させる鍵であり、個々の患者さんに合わせた施術を心がけていくべきなのは言うまでもありません。

不妊治療、婦人科系疾患、自律神経失調症、冷え、ストレスなど、西洋医学では解決が難しいと感じているお悩みも、東洋医学の視点から見つめ直すことで、新たな改善の道が開けるかもしれません。
まずは、なんでもお気軽にご相談ください。
あなたのお悩みに寄り添い、一緒に健康への道を探るお手伝いができれば幸いです。