集中力アップのツボ

集中力を高めるツボ

集中力アップに効くツボ・写真1

仕事や家事、育児で毎日忙しく過ごされている中で、「集中力が続かない」「やる気が出ない」といったお悩み、本当におツラいですよね。

今回は、集中力を高めるのに役立つツボをご紹介しますので、セルフケアにお役立てください。

西洋医学からみた集中力アップ

西洋医学では、集中力は主に脳の機能と深く関連していると考えられています。

脳の前頭前野という部分が、思考、判断、計画、記憶、注意力の維持といった高次な認知機能を司っています。
慢性的なストレスや睡眠不足が続くと、この前頭葉の働きが鈍くなるとされています。

集中力が低下する原因としては、以下のような要因が挙げられます。

■睡眠不足
脳が十分に休息できず、機能が低下します。

■ストレス
ストレスホルモンが過剰に分泌され、脳の働きを妨げます。

■栄養不足
脳の神経伝達物質の材料となる栄養素(タンパク質、ビタミンB群、DHAなど)が不足すると、情報伝達がスムーズに行われません。

■運動不足
血行不良により脳への酸素供給が不足し、脳の活性が低下します。

■特定の疾患
うつ病、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、甲状腺機能低下症などが集中力低下の原因となることもあります。

これらの要因が複合的に絡み合い、集中力の低下を引き起こすと考えられています。
西洋医学的なアプローチでは、生活習慣の改善指導や、必要に応じて薬物療法が行われることもあります。

東洋医学からみた集中力アップ

集中力アップに効くツボ・写真2

東洋医学では、集中力は単に脳の機能だけでなく、全身の気・血・水の巡りや五臓六腑のバランスが整っている状態と捉えます。

体質によって集中力が低下する原因が異なるため、それぞれの体質に合わせたアプローチが重要です。

気血両虚(きけつりょきょ)体質

エネルギー不足タイプです。

特徴:
疲れやすい、顔色が悪い、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、不眠、食欲不振など。思考力が低下しやすく、集中力が続かない。

集中力低下の原因:
体全体のエネルギー(気)と栄養(血)が不足しているため、脳への栄養供給が十分でなく、頭がぼんやりして集中できないと考えます。
「脾」の働きが弱く、飲食物から十分な気血を作り出せていない状態です。

東洋医学的アプローチ:
「脾」の働きを強化し、気血の生成を促進することで、全身に栄養を行き渡らせ、集中力を高めます。

肝鬱気滞(かんうつきたい)体質

ストレス過多タイプです。

特徴:
イライラしやすい、気分が落ち込む、ため息が多い、胸や脇腹が張る、生理不順、PMSがひどいなど。感情の起伏が激しく、ストレスが集中力を妨げます。

集中力低下の原因:
ストレスや不満などにより、「肝」の気の巡りが滞っている状態です。
気が滞ると、脳へのスムーズな情報伝達が阻害され、思考がまとまらず、集中力が散漫になります。

東洋医学的アプローチ:
「肝」の気の巡りをスムーズにすることで、ストレスを緩和し、精神的な安定を図り、集中力を向上させます。

痰湿内盛(たんしつないせい)体質

体に余分な水が溜まるタイプです。

特徴:
体が重だるい、むくみやすい、胃もたれ、食欲不振、痰が多い、頭が重い、眠気が強いなど。
思考が鈍くなり、頭に霧がかかったような状態になりやすいです。

集中力低下の原因:
体内に余分な水分や老廃物(痰湿)が滞っているため、脳の働きが妨げられると考えます。
「脾」や「肺」「腎」の機能が低下し、水分代謝が悪くなっている状態です。

東洋医学的アプローチ:
体内の余分な水分や老廃物を排出し、脾の働きを強化して水分代謝を改善することで、頭をすっきりさせ、集中力を高めます。

腎精不足(じんせいぶそく)体質

加齢・消耗タイプです。

特徴:
記憶力低下、物忘れ、足腰のだるさ、頻尿、耳鳴り、白髪、抜け毛など。
30代後半以降で顕著になりやすく、気力や持続力も低下します。

集中力低下の原因:
生体活動の根本を支える「腎精」が不足しているため、脳への滋養が不足し、集中力や記憶力が低下すると考えます。

東洋医学的アプローチ:
「腎」の働きを補い、「精」を充実させることで、脳の機能をサポートし、集中力の持続力を高めます。

集中力アップに効くツボ

東洋医学では、体全体のバランスを整えることで集中力を高めるため、特定の症状だけでなく、その方の体質に合わせたツボを選びます。

集中力アップに効く共通のツボ

どの体質の方にも共通して効果が期待できるツボを挙げます。
これらのツボは、脳の活性化や全身の気の巡りを良くし、精神的な安定をもたらす作用があります。

■百会(ひゃくえ)

耳のいちばん高いとこりに親指をあて中指を頭のてっぺんにあててそこから前げ押しながら移動し、気持ちよく感じるところ。

選ばれた理由: 全身の陽の気が集まる場所とされ、頭をすっきりさせ、脳の覚醒を促します。
精神的な安定にも効果的です。

■神門(しんもん)

手首の曲がりジワを小指側へなでてゆき、骨の出っぱりの手前で指が止まるところが神門です。

選ばれた理由: 心の安定や精神の緊張を和らげる効果があり、集中力を妨げる不安やイライラを鎮めます。

■足三里(あしさんり)

膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみに人差し指を置き、指幅4本揃えて小指が当たっているところにあります。

選ばれた理由: 全身の気を補い、消化器系の働きを助ける「元気のツボ」として知られています。
体全体のエネルギーが満ちることで、集中力も向上します。

体質別のツボ

ご自身の体質に合わせて、上記の共通のツボと併せて刺激することで、より効果が期待できます。

気血両虚体質(エネルギー不足タイプ)

■脾兪(ひゆ)

第11胸椎と第12胸椎の間から指幅2本分外。肩甲骨の下端と同じ高さの背骨のすきまを4つ下がったところ(ここが11胸椎と12胸椎の間)。

選ばれた理由: 「脾」の働きを強化し、気血の生成を助けます。
胃腸の機能を高め、全身のエネルギーを補うことで集中力をサポートします。

■関元(かんげん)

指幅4本をそろえて人さし指をおへそにおき、小指があたっているところ。

選ばれた理由: 下腹部にある元気の源となるツボ。全身の陽気を補い、体力を増進させ、集中力の持続力を高めます。

肝鬱気滞体質(ストレス過多タイプ)

■太衝(たいしょう)

足の甲にあります。足の親指と人差し指の骨が交わる所です。

選ばれた理由: 「肝」の気の巡りをスムーズにし、ストレスやイライラを緩和します。
精神的な緊張を和らげ、集中しやすい状態を促します。

■膻中(だんちゅう)

左右の乳頭を結ぶ線と、体の中央を走る縦の線が交わる部分です。この場所は胸骨の真上にあり、押すと少し痛みがある場所です。

選ばれた理由: 気の巡りを整え、胸のつかえやイライラを解消します。
心の安定を促し、集中力を妨げる感情の乱れを鎮めます。

痰湿内盛体質(体に余分な水が溜まるタイプ)

■豊隆(ほうりゅう)

下腿(すね)の外側、膝と足首の中間あたりに位置しています。筋肉が盛り上がっている部分で、外くるぶしから親指8本分上の場所。

選ばれた理由: 体内の余分な水分や老廃物(痰湿)を排出するのに有効なツボ。
「脾」の働きを助け、むくみや重だるさを解消し、頭をすっきりさせます。

■陰陵泉(いんりょうせん)

膝の内側、太い骨(脛骨)の下にあるくぼみです。

選ばれた理由: 水分代謝を促進し、体内の余分な湿を取り除きます。
頭重感や眠気を解消し、クリアな思考をサポートします。

腎精不足体質(加齢・消耗タイプ)

■太谿(たいけい)

内くるぶしとアキレス腱のほぼ中央のくぼみにあります。

選ばれた理由: 「腎」の機能を高め、体力を補う「腎の原穴」。集中力や記憶力の低下といった「腎精不足」の症状に有効です。

■命門(めいもん)

まずヒジの高さを確認します。ヒジと同じ高さの背骨にあるのが命門です。

選ばれた理由: 生命活動の源である「腎陽」を補い、気力を充実させます。
体全体の活力を高め、集中力の持続をサポートします。

ツボを自分で探す時のコツ

より効果的なツボをご自身で探す際は、以下の点を意識してみてください。

ツボの基本位置を確認

鍼灸院での指導や書籍、ウェブサイトなどでツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴の場合、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりに位置します。

押して探す

だいたいの目安の場所の近辺を指で軽く押しながら、周囲を探ります。
「イタ気持ちいい」感覚や、ズーンと響くような感覚がある場所が、ツボの可能性が高いです。
合谷であれば、骨の交わる部分からやや人差し指側を探ると、凹みがあり、圧痛を感じる場所が見つかるはずです。

体の反応をみる

ツボを押すと、血行が良くなったり、体が温まったりする感覚がある場合があります。

ただし、ツボの位置は個人差がありますので、あくまで目安として捉え、無理に強い力で押さないように注意しましょう。
もし不安な場合は、鍼灸師などの専門家にご相談ください。

せんねん灸(台座灸)の使い方と注意点

ご自宅で手軽にできるセルフお灸として、「せんねん灸」の使い方と注意点について解説します。

「せんねん灸」は、ドラッグストアなどで手軽に購入できるお灸の製品名です。
せんねん灸タイプのお灸は「台座灸」と呼びます。

せんねん灸と似たような形の他の商品も多数あり、使用方法などは基本的には同様です。

せんねん灸の使い方

種類を選ぶ

「せんねん灸」には様々な種類があります。
せんねん灸

「ソフト(弱)」「レギュラー(中間)」「あつめ(強)」の3つの種類があります。
せんねん灸種類
初めての方は、熱さが「マイルドなタイプ」から試してみることをお勧めします。

ツボの場所を決める

どのツボを使うかはあらかじめ決めておき、ツボの目安を指でさぐりながらより効き目の高いポイントを決めて、ペンなどで印をつけます。

準備

お灸を据える場所を清潔にし、皮膚に異常がないか確認します。

台座の裏紙を剥がす

「せんねん灸」の台座裏についている薄い紙を剥がします。

もぐさに点火

巻きもぐさの先端に線香などで火をつけます。

皮膚に据える

火がついた「せんねん灸」を、ツボに据えます。
熱さを感じたら、無理せずすぐに取り外してください。我慢は禁物です。

取り外す

使用後、完全に火が消えていることを確認してからとりあえずして、捨ててください。

お灸をする上での注意事項

・熱さを我慢しない
熱すぎると感じたら、すぐに取り外してください。無理に我慢すると、やけどの原因になります。

・同じ場所に続けて据えない
皮膚に負担がかかるため、同じ場所に続けてお灸を据えるのは避けましょう。

・顔面、粘膜、傷口、炎症部位への使用は避ける
これらの部位は皮膚がデリケートなため、お灸の使用は避けてください。

・発熱時、飲酒時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける
体調が優れない時は、お灸を控えるようにしましょう。

・皮膚の弱い方、アレルギー体質の方は注意
使用前に必ずパッチテストを行うか、医師や薬剤師に相談してください。

・使用中に異常を感じたら、直ちに使用を中止し、医師に相談
万が一、皮膚に異常が現れた場合は、すぐに使用を中止し、医師の診察を受けてください。

・乳幼児への使用は避ける
小さなお子様への使用はお控えください。

・火の取り扱いに注意
火を使うため、火災には十分に注意してください。
周囲に燃えやすいものがないことを確認し、換気をしながら行いましょう。

上記に注意して、安全にせんねん灸をご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。

セルフケアのツボ押しの方法と注意点

ご自宅で簡単にできるセルフケアとして、ツボ押し(マッサージ)について解説いたします。
ツボ押しは、体の不調を和らげたり、リラックス効果を高めたりするのに役立ちます。

ツボ押しの方法

リラックスできる環境を整える

静かな場所で、楽な姿勢で行いましょう。

ツボの位置を確認

書籍やウェブサイトなどで、目的のツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴は、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりです。

指の腹で押す

親指や人差し指の腹を使い、ツボを垂直に押します。爪を立てないように注意しましょう。

適度な力で押す

「イタ気持ちいい」と感じる程度の力で、ゆっくりと押します。
強く押しすぎると、痛みを感じたり、皮膚を傷めたりする可能性があります。

時間をかけて押す

1つのツボにつき、5秒から10秒程度、ゆっくりと押したり離したりを繰り返します。数回繰り返すと効果的です。

呼吸を意識する

力を入れる時に息を吐き、力を抜く時に息を吸うと、よりリラックスできます。

温めてから行うと効果的

入浴後など、体が温まっている状態で行うと、血行が促進され、より効果を感じやすくなります。

ツボ押しをする上での注意事項

・食直後、飲酒時、発熱時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける:
体調が優れない時は、ツボ押しを控えましょう。

・皮膚に炎症や傷がある場合は避ける:
患部を刺激することで、症状が悪化する可能性があります。

・強く押しすぎない:
強い力で押すと、筋肉や血管を傷つける可能性があります。あくまで「イタ気持ちいい」程度の力で行いましょう。

・長時間同じ場所を押さない:
皮膚に負担がかかるため、長時間同じ場所を押すのは避けましょう。

・力を抜くことを意識する:
力を入れっぱなしにすると、筋肉が緊張してしまい、効果が得られにくくなります。

・体調に異変を感じたら中止する:
ツボ押し中に体調が悪くなった場合は、直ちに中止し、必要に応じて医師に相談してください。

・乳幼児へは避ける:
小さなお子様へはお控えください。

・持病のある方は医師に相談:
心臓疾患や高血圧など、持病のある方は、ツボ押しを行う前に医師に相談してください。

上記に注意して、安全にツボ押しをご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。

鍼灸院での本格的な鍼灸のススメ

ご紹介したツボは、ご自身で指圧やお灸(市販のせんねん灸など)で刺激することで、セルフケアとして活用できます。
毎日継続して行うことで、体質の改善を促し、集中力アップに繋がります。

しかし、ご自身の体質を見極め、適切なツボを選ぶのは、東洋医学の専門知識が必要です。
また、セルフケアだけでは改善が難しい慢性的なお悩みや、より深いレベルでの体質改善を目指す場合は、ぜひ当院の本格的な東洋医学鍼灸をお試しください。

当院では、脈・舌・お腹を丁寧に診させていただき、お一人お一人の体質と根本原因を詳しく判別します。
痛くない鍼と熱くない心地よいお灸を使い、全身のツボ(経穴)にアプローチすることで、体全体のバランスを整え、お悩みの集中力低下を改善へと導きます。

「集中力が続かない」「やる気が出ない」といったお悩みを抱えている方は、どうぞお気軽に当院へご相談ください。
東洋医学の力で、あなたの毎日がより輝くよう、全力でサポートさせていただきます。