頻尿に効くツボ

頻尿に効くツボ

頻尿に効くツボ・写真1

頻尿のお悩みは、日常生活では意外とつらいお悩みです。
夜中に何度も目が覚めたり、外出先でトイレの場所が気になったりと、日常生活に大きな影響が出ているのではないでしょうか。

今回は、頻尿でお悩みの方に、症状緩和に効果的なセルフケアのツボをご紹介します

西洋医学からみた頻尿

頻尿とは、一般的な定義では、日中の排尿回数が8回以上、夜間の排尿回数が1回以上の場合を指すことが多いです。

ただし、飲水量や個人の生活習慣によっても基準は異なるため、ご自身がつらいと感じるかどうか、生活に支障が出ているかどうかが重要になります。

頻尿の原因は多岐にわたります。

泌尿器系の病気としては、膀胱炎や前立腺肥大症、過活動膀胱(OAB)、膀胱結石、間質性膀胱炎などがあります。

これらの病気では、膀胱の炎症や容量の減少、神経の過敏などが原因で頻繁に尿意を感じるようになります。

また、糖尿病や心不全などの全身疾患が原因となることもあります。
糖尿病では多尿になりやすく、心不全では夜間に体の水分が再吸収されて尿量が増えることがあります。

その他、加齢による膀胱機能の変化や骨盤底筋の衰え、精神的なストレスや不安、利尿作用のあるカフェインやアルコールの過剰摂取なども頻尿の原因となり得ます。

原因を特定するためには、まずは病院を受診し、問診や検査(尿検査、超音波検査、必要に応じて膀胱機能検査)などを受けてください。

西洋医学的な治療法

西洋医学における頻尿の治療は、その原因によって異なります。

■薬物療法
過活動膀胱の場合は、膀胱の異常な収縮を抑える抗コリン薬やβ3作動薬などが処方されます。
前立腺肥大症には、尿道を圧迫している前立腺を小さくしたり、尿道の抵抗を減らしたりする薬が用いられます。
膀胱炎であれば抗菌薬で炎症を抑えます。

■行動療法
膀胱訓練(排尿間隔を徐々に延ばす練習)や骨盤底筋体操、生活習慣の見直し(水分摂取量の調整、カフェイン・アルコールの制限など)が行われます。

■手術療法
前立腺肥大症が重度の場合や、膀胱結石など、病気によっては手術が必要となることもあります。

東洋医学からみた頻尿

頻尿に効くツボ・写真2

東洋医学では、頻尿は単に泌尿器系の問題として捉えるのではなく、体全体のバランスの乱れ、特に「腎(じん)」「脾(ひ)」「肺(はい)」「肝(かん)」「膀胱(ぼうこう)」といった臓腑の機能や、「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の過不足、巡りの滞りが原因で起こると考えます。

脈や舌、お腹の状態などを拝見し、その方の根本的な体質を見極め、アプローチしていきます。

頻尿に関係する主な体質は以下の通りです。

■腎気不固(じんきふこ)/ 腎陽虚(じんようきょ)

「腎」は生命活動の源である「精(せい)」を蓄え、成長・発育・生殖に関わるほか、水分代謝や排尿機能とも深く関わっています。
加齢や過労、慢性疾患などによって腎の機能が衰えると(腎虚)、膀胱をしっかりと引き締めておく力が弱まり、頻尿、特に夜間頻尿や尿漏れなどが起こりやすくなります。

とくに腎陽虚は、体を温める陽の気が不足した状態です。
この場合、頻尿に加えて手足の冷え、腰や膝のだるさ、顔色が青白い、体がむくみやすいといった症状を伴うことが多いです。
寒くなると症状が悪化する傾向があります。

■脾気下陥(ひきげかん)/ 脾気虚(ひききょ)

「脾」は飲食物から栄養を取り込み、全身に「気血」を巡らせる働き(運化作用)を担っています。
また、内臓を本来の位置に保つ働き(昇提作用)もあります。

脾の機能が低下する(脾気虚)と、気を全身に巡らせる力が弱まり、膀胱をコントロールする力も低下することがあります。
さらに、脾の昇提作用が弱まると、膀胱が下垂しやすくなり、頻尿や残尿感につながることがあります。

脾気虚の場合、頻尿とともに、疲れやすい、食欲不振、体がだるい、お腹が張りやすい、軟便または下痢といった消化器系の症状を伴うことが多いです。

■湿熱下注(しつねつげちゅう)

体内に余分な水分(湿)と熱が停滞し、それが下半身、特に膀胱や尿道に影響を与えている状態です。
脂っこいものや甘いものの摂りすぎ、アルコールの飲みすぎ、あるいは体の抵抗力の低下などによって湿熱が生じやすくなります。

湿熱下注の場合、頻尿のほかに、排尿時の灼熱感や痛み、尿の色が濃い、濁っている、下腹部の不快感、口の渇きといった炎症を示唆する症状を伴うことが多いです。
急性膀胱炎のような症状で見られます。

■肝鬱気滞(かんうつきたい)

「肝」は気の巡りをスムーズにする働き(疏泄作用)を担っています。
ストレスや精神的な緊張によって肝の疏泄作用が滞る(肝鬱気滞)と、全身の気の巡りが悪くなり、膀胱の働きにも影響を与えることがあります。

気の滞りが膀胱の収縮を不安定にさせ、頻尿や残尿感、排尿困難などを引き起こすことがあります。

肝鬱気滞の場合、頻尿とともに、イライラしやすい、憂鬱感、胸や脇の張り、ゲップやおならが多い、生理不順など、精神的な要因や気の滞りによる症状を伴うことが多いです。
ストレスによって症状が悪化する傾向があります。

これらの体質は単独で現れることもありますが、複合している場合も多くあります。
東洋医学では、これらの体質を総合的に判断し、一人ひとりに合った治療法を選択します。

頻尿に効くツボ

東洋医学におけるツボ(経穴)は、体内の「気血」の通り道である「経絡(けいらく)」の上に点在しています。

頻尿の治療では、膀胱や腎といった泌尿器系に関わる経絡上のツボや、体質改善に必要な臓腑(脾、肝、肺など)に関わるツボ、さらには全身の気の巡りを調整するツボなどを組み合わせて使用します。

体質や症状によって選ぶツボは異なりますが、ここでは頻尿に対して一般的に用いられるツボと、体質別の有効なツボをご紹介します。

頻尿に効く共通のツボ

これらのツボは、頻尿の原因となる様々な体質や病態に対して効果が期待できる、比較的汎用性の高いツボです。

■中極(ちゅうきょく)

指幅5本をそろえて、親指をおへそにおき小指があたっているところが中極です。

膀胱の真上あたりに位置し、膀胱の機能調整に重要なツボです。
頻尿、残尿感、排尿困難、膀胱炎など、泌尿器系の症状に広く用いられます。
下腹部の気の巡りを整え、膀胱の過敏性を鎮める効果があります。

■中渚(ちゅうしょ)

手をにぎった時、小指と薬指の関節にできるくぼみが中渚です。

水分代謝に有効なツボ。様々な原因の頻尿に効果が期待できます。

■湧泉(ゆうせん)

足でグーをした時、足裏でいちばんへこんでいるところが湧泉です。足裏を3等分して約3分の1のところです。

腎経の始まりのツボであり、腎の精を補い、全身の活力を高める効果があります。
特に腎虚による頻尿、足腰のだるさ、冷えなどに有効です。
足元から全身を温め、気を巡らせる効果があります。

頻尿に効果的な体質別のツボ

体質に合わせて、これらのツボを組み合わせることで、より効果的なアプローチが可能です。

腎気不固 / 腎陽虚タイプ

■腎兪(じんゆ)

まずヒジの高さを確認します。ヒジと同じ高さで背骨の両脇を親指で押して気持ちよく感じるところ。

腎の気の巡りを調整し、腎の機能を高める重要なツボです。
腎虚による頻尿、腰痛、足腰のだるさ、冷えなどに直接的に作用します。
腎陽を温め、固摂(こせつ:漏れを防ぐ働き)を高めます。

■命門(めいもん)

まずヒジの高さを確認します。ヒジと同じ高さの背骨にあるのが命門です。

生命力の源であり、全身を温める陽の気を強く補うツボです。
とくに腎陽虚による強い冷えや夜間頻尿、活力低下に効果的です。
体を内側から温め、腎の機能を活性化させます。

■太谿(たいけい)

内くるぶしとアキレス腱のほぼ中央のくぼみにあります。

腎経の原穴(げんけつ)であり、腎の気の根源に直接作用します。
慢性的な腎虚による頻尿や足腰の弱さに効果があります。腎の精を補い、排尿機能を安定させます。

脾気下陥 / 脾気虚タイプ

■脾兪(ひゆ)

第11胸椎と第12胸椎の間から指幅2本分外。肩甲骨の下端と同じ高さの背骨のすきまを4つ下がったところ(ここが11胸椎と12胸椎の間)。

脾の気の巡りを調整し、脾の働きを高めるツボです。
消化吸収機能を改善し、全身の気を養います。疲れや食欲不振を伴う頻尿に効果的です。

■陰陵泉(いんりょうせん)

膝の内側、太い骨(脛骨)の下にあるくぼみです。

脾経のツボであり、体内の余分な水分を排出する働き(健脾利湿)に優れています。
脾気虚によるむくみや重だるさを伴う頻尿に効果的です。

湿熱下注タイプ

■陰陵泉(いんりょうせん)

膝の内側、太い骨(脛骨)の下にあるくぼみです。

体内の余分な水分(湿)を排出し、熱を取り除く働きがあります。

■膀胱兪(ぼうこうゆ)

仙骨の上から2番目のくぼみから指1本半分外側にいったところ。

膀胱に直接作用し、膀胱の炎症や湿熱を取り除く効果があります。
排尿時の痛みや灼熱感を伴う頻尿に有効です。

肝鬱気滞タイプ

■太衝(たいしょう)

足の甲にあります。足の親指と人差し指の骨が交わる所です。

肝経の重要なツボであり、気の巡りをスムーズにする働き(疏肝理気)に優れています。
ストレスや緊張による頻尿や残尿感、排尿困難に効果的です。

■合谷(ごうこく)

手の甲で親指と人さし指の間。

全身の気の巡りを調整し、ストレスや痛みを緩和する働きがあります。
精神的な緊張からくる頻尿や下腹部の張りに効果的です。

ツボを自分で探す時のコツ

より効果的なツボをご自身で探す際は、以下の点を意識してみてください。

ツボの基本位置を確認

鍼灸院での指導や書籍、ウェブサイトなどでツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴の場合、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりに位置します。

押して探す

だいたいの目安の場所の近辺を指で軽く押しながら、周囲を探ります。
「イタ気持ちいい」感覚や、ズーンと響くような感覚がある場所が、ツボの可能性が高いです。
合谷であれば、骨の交わる部分からやや人差し指側を探ると、凹みがあり、圧痛を感じる場所が見つかるはずです。

体の反応をみる

ツボを押すと、血行が良くなったり、体が温まったりする感覚がある場合があります。

ただし、ツボの位置は個人差がありますので、あくまで目安として捉え、無理に強い力で押さないように注意しましょう。
もし不安な場合は、鍼灸師などの専門家にご相談ください。

せんねん灸(台座灸)の使い方と注意点

ご自宅で手軽にできるセルフお灸として、「せんねん灸」の使い方と注意点について解説します。

「せんねん灸」は、ドラッグストアなどで手軽に購入できるお灸の製品名です。
せんねん灸タイプのお灸は「台座灸」と呼びます。

せんねん灸と似たような形の他の商品も多数あり、使用方法などは基本的には同様です。

せんねん灸の使い方

種類を選ぶ

「せんねん灸」には様々な種類があります。
せんねん灸

「ソフト(弱)」「レギュラー(中間)」「あつめ(強)」の3つの種類があります。
せんねん灸種類
初めての方は、熱さが「マイルドなタイプ」から試してみることをお勧めします。

ツボの場所を決める

どのツボを使うかはあらかじめ決めておき、ツボの目安を指でさぐりながらより効き目の高いポイントを決めて、ペンなどで印をつけます。

準備

お灸を据える場所を清潔にし、皮膚に異常がないか確認します。

台座の裏紙を剥がす

「せんねん灸」の台座裏についている薄い紙を剥がします。

もぐさに点火

巻きもぐさの先端に線香などで火をつけます。

皮膚に据える

火がついた「せんねん灸」を、ツボに据えます。
熱さを感じたら、無理せずすぐに取り外してください。我慢は禁物です。

取り外す

使用後、完全に火が消えていることを確認してからとりあえずして、捨ててください。

お灸をする上での注意事項

・熱さを我慢しない
熱すぎると感じたら、すぐに取り外してください。無理に我慢すると、やけどの原因になります。

・同じ場所に続けて据えない
皮膚に負担がかかるため、同じ場所に続けてお灸を据えるのは避けましょう。

・顔面、粘膜、傷口、炎症部位への使用は避ける
これらの部位は皮膚がデリケートなため、お灸の使用は避けてください。

・発熱時、飲酒時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける
体調が優れない時は、お灸を控えるようにしましょう。

・皮膚の弱い方、アレルギー体質の方は注意
使用前に必ずパッチテストを行うか、医師や薬剤師に相談してください。

・使用中に異常を感じたら、直ちに使用を中止し、医師に相談
万が一、皮膚に異常が現れた場合は、すぐに使用を中止し、医師の診察を受けてください。

・乳幼児への使用は避ける
小さなお子様への使用はお控えください。

・火の取り扱いに注意
火を使うため、火災には十分に注意してください。
周囲に燃えやすいものがないことを確認し、換気をしながら行いましょう。

上記に注意して、安全にせんねん灸をご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。

セルフケアのツボ押しの方法と注意点

ご自宅で簡単にできるセルフケアとして、ツボ押し(マッサージ)について解説いたします。
ツボ押しは、体の不調を和らげたり、リラックス効果を高めたりするのに役立ちます。

ツボ押しの方法

リラックスできる環境を整える

静かな場所で、楽な姿勢で行いましょう。

ツボの位置を確認

書籍やウェブサイトなどで、目的のツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴は、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりです。

指の腹で押す

親指や人差し指の腹を使い、ツボを垂直に押します。爪を立てないように注意しましょう。

適度な力で押す

「イタ気持ちいい」と感じる程度の力で、ゆっくりと押します。
強く押しすぎると、痛みを感じたり、皮膚を傷めたりする可能性があります。

時間をかけて押す

1つのツボにつき、5秒から10秒程度、ゆっくりと押したり離したりを繰り返します。数回繰り返すと効果的です。

呼吸を意識する

力を入れる時に息を吐き、力を抜く時に息を吸うと、よりリラックスできます。

温めてから行うと効果的

入浴後など、体が温まっている状態で行うと、血行が促進され、より効果を感じやすくなります。

ツボ押しをする上での注意事項

・食直後、飲酒時、発熱時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける:
体調が優れない時は、ツボ押しを控えましょう。

・皮膚に炎症や傷がある場合は避ける:
患部を刺激することで、症状が悪化する可能性があります。

・強く押しすぎない:
強い力で押すと、筋肉や血管を傷つける可能性があります。あくまで「イタ気持ちいい」程度の力で行いましょう。

・長時間同じ場所を押さない:
皮膚に負担がかかるため、長時間同じ場所を押すのは避けましょう。

・力を抜くことを意識する:
力を入れっぱなしにすると、筋肉が緊張してしまい、効果が得られにくくなります。

・体調に異変を感じたら中止する:
ツボ押し中に体調が悪くなった場合は、直ちに中止し、必要に応じて医師に相談してください。

・乳幼児へは避ける:
小さなお子様へはお控えください。

・持病のある方は医師に相談:
心臓疾患や高血圧など、持病のある方は、ツボ押しを行う前に医師に相談してください。

上記に注意して、安全にツボ押しをご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。

鍼灸院での本格鍼灸のススメ

セルフケアとして、ご紹介したツボを指でゆっくりと押したり、お灸(市販の台座灸など)で温めたりすることは、頻尿の緩和に役立ちます。
とくに下腹部や腰、足元のツボを温めることは、体を温め、血行を促進し、頻尿の改善につながります。

しかし、頻尿の原因は体質によって異なり、複数の要因が絡み合っていることも少なくありません。
ご自身の体質を正確に把握し、適切なツボを選択するためには、専門的な知識と経験が必要です。

頻尿は改善が難しいと感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、体質に合わせた適切なアプローチによって、症状は軽減し、生活の質は向上します。

一人で悩まず、ぜひ一度当院にご相談ください。
一緒に改善を目指しましょう。