霜降|鍼灸師が教える二十四節気の健康法
霜降の今できる健康法について
霜降(そうこう)は二十四節気の18番目で、例年10月23日頃から11月6日頃にあたります。
2025年は10月23日です。
秋が深まり、朝晩の冷え込みが厳しくなり、文字通り「霜が降り始める頃」を指します。
日中の陽気はまだ残るものの、空気は乾燥し、草木は枯れ、虫たちは土に帰り、自然界は冬支度を始めます。
紅葉が鮮やかさを増し、食べ物が美味しくなる一方で、体は徐々に冷えの影響を受けやすくなります。
この時期は、冷えが本格化する前の準備期間でもあり、体を冷やさず、気血の巡りを保つことが大切とされます。
今回は「霜降(そうこう)」の時期を健やかに過ごすためのヒントをお届けしますので、ぜひ最後までお読みください。
霜降の頃に起こりうる心身の不調
霜降は、秋の終わりから冬への移行期にあたり、心身に様々な変化が現れやすい時期です。
昼夜の寒暖差が大きくなり、気温が一気に下がることで体調を崩しやすくなります。
東洋医学では、この時期は「陰」が強まり、「陽」が弱まる季節と捉えられています。
陰陽のバランスが崩れると、冷えや乾燥による不調が生じやすくなるのです。
この時期は「燥邪(そうじゃ)」という乾燥の邪気が旺盛になり、また、冷え込みが厳しくなることで「寒邪(かんじゃ)」の影響も受けやすくなると考えます。
乾燥の影響
まず、乾燥による不調が顕著になります。
空気が乾燥することで、呼吸器系がダメージを受けやすくなります。
具体的には、喉の痛み、空咳、鼻の乾燥、喘息の悪化などが挙げられます。
皮膚も乾燥し、肌のかさつき、かゆみ、湿疹の悪化などが起こりやすくなります。
肺は「潤いを好む」臓腑とされており、乾燥に弱い性質があります。
肺の機能が低下すると、気や水の巡りが滞り、免疫力の低下にも繋がりかねません。
冷えの影響
次に、冷え込みによる不調です。
朝晩の気温差が大きくなることで、体は冷えに対応しようとします。
これにより、手足の冷え、肩こり、腰痛、関節痛の悪化などが起こりやすくなります。
お腹や腰周りが冷えることで、下痢や便秘といった胃腸の不調も起こりやすくなります。
女性ですと、体が冷えることで血行が悪くなり、生理痛が強くなったり、経血の量が変化したりすることもあります。
自律神経への影響
さらに、この時期は日照時間が短くなり、気温が下がることで、自律神経のバランスが乱れやすくなります。
自律神経失調症でお悩みの方には、めまい、動悸、倦怠感、不眠といった症状が悪化することがあります。
また、気分が落ち込みやすくなったり、些細なことでイライラしやすくなったりと、精神的な不調も現れやすくなります。
これは、東洋医学でいう「肝」の気の巡りが滞ることで起こると考えられます。
仕事や家事、育児で忙しい方々は、ストレスを抱えやすく、それが心身の不調に繋がりやすい傾向にあります。
当院に通われている不妊治療中の方や、婦人科疾患の方も、この時期は注意が必要です。
体の冷えは血の巡りを悪くし、子宮や卵巣への影響も懸念されます。
緑内障や眼精疲労など目のお悩みの方も、乾燥と冷えが目の疲れを悪化させることがあります。
癌の代替療法として抗がん剤の副作用対策に取り組んでいる方も、免疫力の低下や体力の消耗が進みやすい時期なので、より一層のケアが求められます。
このように霜降の時期は、乾燥と冷え、そして日照時間の変化による自律神経の乱れが複合的に作用し、様々な心身の不調を引き起こす可能性があるのです。
日々の生活の中で、早めに養生を心がけることが、冬を健やかに乗り切るカギとなるのです。
霜降の頃の東洋医学的な健康法
霜降の時期の不調を避けるためには、東洋医学の知恵を活かした日々の養生が非常に重要です。
潤い対策
まず、「潤い」を補うことが第一です。
乾燥が強くなるこの時期は、体の内側から潤いを補給することを心がけましょう。
・食事:白い食材、ネバネバした食材、酸味のある食材を積極的に摂りましょう。
・白い食材:梨、白きくらげ、大根、蓮根、豆腐、牛乳、ヨーグルトなどは、肺を潤し、咳や喉の乾燥に効果的です。特に梨は、肺の熱を冷まし、喉の渇きを潤す作用があります。
ネバネバした食材:山芋、オクラ、納豆、モロヘイヤなどは、体の「水(すい:体内の潤いを保つ液体)」を補い、内臓の乾燥を防ぎます。
・酸味のある食材:柑橘類、梅干し、お酢などは、体の潤いを収斂(しゅうれん:引き締める)する働きがあり、過剰な発散を防ぎます。
ただし、摂りすぎは胃腸に負担をかけることもあるので注意が必要です。
・水分補給:こまめに白湯や温かいお茶を飲むことで、体の内側から温め、潤いを保ちます。
冷たい飲み物は体を冷やすため、避けましょう。
ハーブティーでは、カモミールやルイボスティーなどがリラックス効果もありおすすめです。
・加湿:室内の乾燥を防ぐために加湿器を利用したり、濡れたタオルを干したりするのも効果的です。
寝室は乾燥しやすいので、加湿を心がけましょう。
冷え対策
次に、「冷え」から体を守ることです。
・保温:首、手首、足首の「三首」を温めることが重要です。
マフラーやストール、手袋、厚手の靴下などを活用し、冷たい空気が直接肌に触れないようにしましょう。
腹巻やカイロを使ってお腹や腰を温めることは、婦人科系の不調や胃腸の不調改善に繋がります。
当院に来られる女性の患者さんにとって、お腹を温めることは非常に大切です。
・入浴:シャワーだけでなく、湯船にゆっくり浸かることで、体の芯から温まり、血行促進に繋がります。
入浴剤に生姜や柚子、日本酒などを加えるのもおすすめです。
ただし、長時間の熱いお風呂は、かえって体を乾燥させることもあるので、ぬるめのお湯にゆったりと浸かるのが理想的です。
・軽い運動:ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすことで、血行を促進し、冷えを改善します。
足腰を動かす運動は、下半身の冷え対策に有効です。
メタルケア
最後に、「心の養生」です。
日照時間が短くなることで、気分が沈みがちになる方もいらっしゃいます。
・規則正しい生活:早寝早起きを心がけ、十分な睡眠時間を確保することで、自律神経のバランスを整えます。
・ストレス解消:趣味の時間を持ったり、好きな音楽を聴いたり、アロマセラピーを取り入れたりするなど、自分に合った方法でストレスを解消しましょう。
当院では、患者さんの話を丁寧に聞くことを大切にしていますが、ご自身でも日頃からストレスを溜め込まない工夫が必要です。
・リラックス:寝る前に温かいミルクを飲んだり、軽いストレッチを行ったりすることで、心身をリラックスさせ、質の良い睡眠に繋げましょう。
ご自宅での養生で、霜降の時期を健やかに乗り切りましょう。
霜降の頃におススメのツボ(経穴)
生活での養生を補完し、より効果を高めるために、以下のツボへの刺激(指圧やお灸)もおすすめです。
■太谿(たいけい)
内くるぶしとアキレス腱のほぼ中央のくぼみにあります。
効果:腎経の原穴(重要なツボ)であり、腎の働きを高めて全身の「陽気」を補います。
冷え性の改善や体力の底上げに効果的。
■三陰交(さんいんこう)
内くるぶしのいちばん高いところに小指をおき、指幅4本そろえて、人さし指があたっているところが三陰交です。
効果:「脾」「肝」「腎」の三つの陰の経絡が交わるツボで、女性の体調管理に欠かせません。
血の巡りを良くし、冷え性や生理不順、更年期障害などの婦人科系疾患に効果的です。
また、胃腸の働きを整え、むくみの改善にも役立ちます。
■足三里(あしさんり)
膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみに人差し指を置き、指幅4本揃えて小指が当たっているところにあります。
効果:「胃」の経絡に属し、「長寿のツボ」とも言われるほど、全身の健康に寄与するツボです。
消化吸収機能を高め、体全体の「気」を補い、免疫力を向上させる効果があります。
霜降の時期に起こりやすい胃腸の不調や、風邪予防にも役立ちます。
体質改善を重視する当院の施術においても、全身の気を高めるこのツボは重要な役割を果たします。
これらのツボは、指圧や温めることでセルフケアが可能です。
お風呂上りや就寝前など、体が温まっている時にゆっくりと刺激してみてください。
まとめ
「霜降」は、秋の深まりと共に、冬への準備が始まる大切な時期です。
朝晩の冷え込みや空気の乾燥は、私たちの体に様々な不調をもたらす可能性があります。
しかし、東洋医学の知恵を取り入れ、セルフケアにより、体の内側から潤いを補給し、冷えから体を守ることで、健やかにこの時期を過ごすことができます。
ただし、セルフケアだけではどうにもならないようなお悩みがありましたら、一度ご相談ください。
私たちは、鍼灸を通して、あなたの心と体を整え、健康で明るい毎日を過ごせるよう全力でサポートいたします。
何かご不明な点や、ご心配なことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。