動悸に効くツボ

動悸に効くツボ

動悸に効くツボ・写真1

動悸はご不安だしご心配ですよね。

動悸は、ご本人の感じ方によっても様々で、不安を伴うことも多い症状です。

病院での治療が奏功すればいいのですが、そうでない場合は東洋医学的な方法もセルフケアで取り入れてみてください。

西洋医学からみた動悸

動悸とは、心臓の拍動をいつもとは違う形で自覚する状態を指します。
具体的には、「ドキンとする」「ドキドキが止まらない」「脈が飛ぶ」「心臓がバクバクする」など、様々な表現で感じられます。

西洋医学的には、動悸は病気そのものではなく、何らかの原因によって引き起こされる「症状」と捉えられます。

その原因は多岐にわたり、大きく分けて心臓が原因のものと、心臓以外が原因のものがあります。

心臓が原因となるものとしては、不整脈(脈が速すぎる、遅すぎる、不規則になる)、弁膜症、心筋症、狭心症など、心臓自体の病気があります。
これらの場合、心臓のポンプ機能やリズムが正常に働かなくなることで動悸として感じられます。

心臓以外が原因となるものには、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)、貧血、更年期障害などホルモンバランスの乱れ、発熱、低血糖など体の状態によるものがあります。

また、精神的な要因も非常に大きく、強いストレス、不安、緊張、パニック障害などによって自律神経のバランスが乱れ、心臓の拍動に影響を与えることも少なくありません。

カフェインやアルコールの過剰摂取、特定の薬剤の副作用によって動悸が引き起こされることもあります。

このように、動悸は様々な背景によって起こりうるため、まずはその原因を特定することが大切です。

西洋医学的な治療法

西洋医学における動悸の治療は、その根本原因に対して行われます。

もし心臓病が原因であれば、不整脈の種類に応じた薬(抗不整脈薬やβブロッカーなど)が処方されたり、必要に応じてカテーテルアブレーションといった専門的な治療が検討されたりします。

甲状腺機能亢進症が原因であれば、甲状腺の機能を抑える薬が用いられます。貧血には鉄剤の投与など、原因となる疾患に対する治療が中心となります。

精神的な要因やストレスが強い場合には、カウンセリングや精神安定剤、抗不安薬などが処方されることもあります。

また、原因にかかわらず、カフェインやアルコールの制限、禁煙、十分な睡眠、ストレスマネジメントなど、生活習慣の改善も重要な治療の一部となります。

まずは西洋医学(病院)での検査や治療を受け、それと並行する形でセルフケアにツボ刺激を取り入れてみてください。

東洋医学からみた動悸

東洋医学では、動悸は「心悸(しんき)」や、より重篤なものを「怔忡(せいちゅう)」と呼び、体のバランスの乱れ、とくに「心(しん)」の機能失調と深く関わると考えます。

「心」は精神活動や血脈をつかさどる臓腑であり、その機能が乱れると動悸として現れやすいのです。

東洋医学では、個々の体質や症状の現れ方によって、動悸の原因をいくつかのタイプ(体質)に分けて考え、それぞれのタイプに応じた治療を行います。

主な体質タイプは以下の通りです。

■心血虚(しんけっきょ)
「心」の血(けつ)が不足している状態です。
血は心を養う働きがあり、これが不足すると心が栄養されず不安定になります。

特徴的な症状:
動悸(横になったり静かにしているとより感じやすい)、めまい、立ちくらみ、不眠、夢が多い、物忘れ、顔色が蒼白、唇や爪の色が薄い、舌の色が淡い。

考えられる原因:
慢性的な出血、栄養不足、過労、思慮過多などにより血が消耗される。

■心気虚(しんききょ)
「心」の気(き)が不足している状態です。
気は臓腑の活動を支えるエネルギーのようなもので、心が元気に働けなくなります。

特徴的な症状:
動悸(動くと悪化しやすい)、息切れ(特に動いた時)、声に力がない、疲れやすい、汗をかきやすい(自汗)、顔色が白い。

考えられる原因:
過労、慢性疾患、脾気虚(消化吸収機能の低下)が心に及ぶなど。

■心陽虚(しんようきょ)
「心」の陽気(ようき)が不足している状態です。
陽気は体を温め、臓腑を動かす力。これが不足すると心の働きが弱まり、冷えを伴います。

特徴的な症状: 動悸、胸の冷えや痛み、手足の冷え、顔色が暗い、寒がる、尿量が多い、舌の色が暗く湿っている。

考えられる原因:
心気虚が悪化したり、腎陽虚(体の根源的な陽気の不足)が心に及んだりする。

■心陰虚(しんいんきょ)
「心」の陰液(いんえき)が不足している状態です。
陰液は体を潤し、熱を冷ます働き。これが不足すると熱がこもりやすくなり、心が落ち着かなくなります。

特徴的な症状:
動悸(比較的強く感じやすく、安静時にも起こりやすい)、寝汗、口や喉の渇き、顔面紅潮、手のひら・足の裏・胸が熱く感じる(五心煩熱)、イライラ、不眠、舌が紅く乾燥している。

考えられる原因:
過労、寝不足、慢性疾患による陰液の消耗、腎陰虚(体の根源的な陰液の不足)が心に及ぶなど。

■痰火擾心(たんかじょうしん)
体内に余分な水分が変化した「痰(たん)」と、「火(か)」と呼ばれる病的な熱が結びつき、「心」を乱している状態です。

特徴的な症状:
突然の激しい動悸、胸苦しさ、イライラ、落ち着きがない、怒りっぽい、不眠、夢が多い、痰が多い、口が苦い、舌苔が黄色く厚い。

考えられる原因:
暴飲暴食、精神的ストレスなどが原因で湿や熱が停滞し、痰と火を生じる。

■瘀血阻絡(おけつそらく)
血の流れが滞った「瘀血(おけつ)」が、心の経絡(エネルギーの通り道)を塞いでいる状態です。

特徴的な症状:
持続的または発作的な動悸、胸の刺すような痛み、顔色が暗い、唇や舌の色が紫がかっている、舌に紫斑がある。

考えられる原因:
長期にわたる気滞(気の流れの停滞)、寒さ、外傷などにより血の流れが悪くなる。

これらの体質は単独で現れることもありますが、複数組み合わさることも多いです。
東洋医学では、このように個々の体の状態を詳しく見極め、その方に合ったオーダーメイドの治療を行います。

動悸に効くツボ

東洋医学では、動悸の治療には、乱れた心神を落ち着かせたり、心を含めた全身の気血水のバランスを整えたりするためにツボ(経穴)を使います。
体質や原因によって使うツボは異なりますが、動悸に効果的なツボはたくさんあります。

動悸に効く共通のツボ

これらのツボは、どの体質による動悸にも比較的有効で、心神を安定させたり、全身の巡りを良くしたりする作用があります。セルフケアでも使いやすいツボです。

■内関(ないかん)

手首の曲がりジワに薬指をおき指幅3本そろえて人さし指があたっているところ、腕の幅の真ん中が内関です。

効果:
心包経(しんぽうけい)という経絡上のツボで、心を保護し、精神を安定させる効果が高いとされます。
吐き気や乗り物酔いにも使われるように、気の逆流を抑え、胸のつかえを解消する働きもあります。
動悸による胸苦しさや不安感を和らげるのに役立ちます。

■神門(しんもん)

手首の曲がりジワを小指側へなでてゆき、骨の出っぱりの手前で指が止まるところが神門です。

効果:
心経(しんけい)という経絡の原穴(げんけつ)であり、心の機能に直接働きかける重要なツボです。
精神的な動揺、不眠、不安、動悸など、心神の乱れからくる症状に広く用いられます。
心を落ち着かせ、安眠を促す効果が期待できます。

■合谷(ごうこく)

手の甲で親指と人さし指の間。

効果:
万能のツボとも呼ばれ、全身の気の巡りを良くし、痛みを和らげ、自律神経のバランスを整える作用があります。
特に顔面部や頭部の症状、ストレス性の症状にも有効で、動悸に伴う緊張や不安の緩和に役立ちます。

動悸に体質別に効果的なツボ

東洋医学的な診断に基づき、それぞれの体質に合わせて以下のツボなどが選ばれます。

心血虚タイプ

■心兪(しんゆ)

胸椎の5番目と6番目の間でへこんでいる部分から指幅2本分外側です。
心の働きを助け、血を補う働きがあります。

■脾兪(ひゆ)

第11胸椎と第12胸椎の間から指幅2本分外。肩甲骨の下端と同じ高さの背骨のすきまを4つ下がったところ(ここが11胸椎と12胸椎の間)。

脾の働きを助け、飲食物から血を作り出す力を高めます。

■足三里(あしさんり)

膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみに人差し指を置き、指幅4本揃えて小指が当たっているところにあります。

全身の気を補い、消化吸収を助け、血を増やす源を養います。

心気虚タイプ

■心兪(しんゆ)
上記と同じ。心の気を補います。

■膻中(だんちゅう)

胸の中心、左右の乳頭の中間にあるツボ。
気の巡りを良くし、胸苦しさや息切れを和らげます。

■足三里(あしさんり)
上記と同じ。全身の気を高めます。

心陽虚タイプ

■心兪(しんゆ)
上記と同じ。心の陽気を補います。

■関元(かんげん)

指幅4本をそろえて人さし指をおへそにおき、小指があたっているところ。
体の根源的な陽気を養い、下腹部を温めます。

■命門(めいもん)

まずヒジの高さを確認します。ヒジと同じ高さの背骨にあるのが命門です。
体の根源的な陽気を養い、体を温めます。お灸も効果的です。

心陰虚タイプ

■三陰交(さんいんこう)

内くるぶしのいちばん高いところに小指をおき、指幅4本そろえて、人さし指があたっているところが三陰交です。
女性の味方とも呼ばれ、血や陰液を補い、生理不順や更年期症状にも使われます。

■復溜(ふくりゅう)

内くるぶしのいちばん高いところに薬指をおき、指幅3本そろえて人さし指があたっているアキレス腱の前。
体の陰液を補い、熱を冷まします。

痰火擾心タイプ

■豊隆(ほうりゅう)

下腿(すね)の外側、膝と足首の中間あたりに位置しています。筋肉が盛り上がっている部分で、外くるぶしから親指8本分上の場所。
痰を取り除く特効穴とされます。

■行間(こうかん)

足の親指の人差し指のあいだが行間です。
肝の火(熱)を鎮めます。

■労宮(ろうきゅう)

手を軽くにぎり指を折り曲げた時、中指の先が手のひらにあたるところ。
心の熱を冷まします。

瘀血阻絡タイプ

■血海(けっかい)

膝の内側、膝のお皿より指3本分上にあります。
血の滞りを改善します。

■膈兪(かくゆ)

肩甲骨の下端と同じ高さで、背骨から外側へ指幅2本よこが膈兪です。
血に関わる重要なツボで、瘀血の改善に用いられます。

■太衝(たいしょう)

足の甲にあります。足の親指と人差し指の骨が交わる所です。
気の滞りを改善し、血の流れを良くします。

これらのツボはあくまで一例です。実際の施術では、脈やお腹、舌などを詳しく診て、その方のその時の状態に最も適したツボを組み合わせて使用します。

ツボを自分で探す時のコツ

より効果的なツボをご自身で探す際は、以下の点を意識してみてください。

ツボの基本位置を確認

鍼灸院での指導や書籍、ウェブサイトなどでツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴の場合、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりに位置します。

押して探す

だいたいの目安の場所の近辺を指で軽く押しながら、周囲を探ります。
「イタ気持ちいい」感覚や、ズーンと響くような感覚がある場所が、ツボの可能性が高いです。
合谷であれば、骨の交わる部分からやや人差し指側を探ると、凹みがあり、圧痛を感じる場所が見つかるはずです。

体の反応をみる

ツボを押すと、血行が良くなったり、体が温まったりする感覚がある場合があります。

ただし、ツボの位置は個人差がありますので、あくまで目安として捉え、無理に強い力で押さないように注意しましょう。
もし不安な場合は、鍼灸師などの専門家にご相談ください。

せんねん灸(台座灸)の使い方と注意点

ご自宅で手軽にできるセルフお灸として、「せんねん灸」の使い方と注意点について解説します。

「せんねん灸」は、ドラッグストアなどで手軽に購入できるお灸の製品名です。
せんねん灸タイプのお灸は「台座灸」と呼びます。

せんねん灸と似たような形の他の商品も多数あり、使用方法などは基本的には同様です。

せんねん灸の使い方

種類を選ぶ

「せんねん灸」には様々な種類があります。
せんねん灸

「ソフト(弱)」「レギュラー(中間)」「あつめ(強)」の3つの種類があります。
せんねん灸種類
初めての方は、熱さが「マイルドなタイプ」から試してみることをお勧めします。

ツボの場所を決める

どのツボを使うかはあらかじめ決めておき、ツボの目安を指でさぐりながらより効き目の高いポイントを決めて、ペンなどで印をつけます。

準備

お灸を据える場所を清潔にし、皮膚に異常がないか確認します。

台座の裏紙を剥がす

「せんねん灸」の台座裏についている薄い紙を剥がします。

もぐさに点火

巻きもぐさの先端に線香などで火をつけます。

皮膚に据える

火がついた「せんねん灸」を、ツボに据えます。
熱さを感じたら、無理せずすぐに取り外してください。我慢は禁物です。

取り外す

使用後、完全に火が消えていることを確認してからとりあえずして、捨ててください。

お灸をする上での注意事項

・熱さを我慢しない
熱すぎると感じたら、すぐに取り外してください。無理に我慢すると、やけどの原因になります。

・同じ場所に続けて据えない
皮膚に負担がかかるため、同じ場所に続けてお灸を据えるのは避けましょう。

・顔面、粘膜、傷口、炎症部位への使用は避ける
これらの部位は皮膚がデリケートなため、お灸の使用は避けてください。

・発熱時、飲酒時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける
体調が優れない時は、お灸を控えるようにしましょう。

・皮膚の弱い方、アレルギー体質の方は注意
使用前に必ずパッチテストを行うか、医師や薬剤師に相談してください。

・使用中に異常を感じたら、直ちに使用を中止し、医師に相談
万が一、皮膚に異常が現れた場合は、すぐに使用を中止し、医師の診察を受けてください。

・乳幼児への使用は避ける
小さなお子様への使用はお控えください。

・火の取り扱いに注意
火を使うため、火災には十分に注意してください。
周囲に燃えやすいものがないことを確認し、換気をしながら行いましょう。

上記に注意して、安全にせんねん灸をご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。

セルフケアのツボ押しの方法と注意点

ご自宅で簡単にできるセルフケアとして、ツボ押し(マッサージ)について解説いたします。
ツボ押しは、体の不調を和らげたり、リラックス効果を高めたりするのに役立ちます。

ツボ押しの方法

リラックスできる環境を整える

静かな場所で、楽な姿勢で行いましょう。

ツボの位置を確認

書籍やウェブサイトなどで、目的のツボの位置を確認します。
たとえば「合谷(ごうこく)」穴は、手の甲、親指と人差し指の骨が交わるあたりです。

指の腹で押す

親指や人差し指の腹を使い、ツボを垂直に押します。爪を立てないように注意しましょう。

適度な力で押す

「イタ気持ちいい」と感じる程度の力で、ゆっくりと押します。
強く押しすぎると、痛みを感じたり、皮膚を傷めたりする可能性があります。

時間をかけて押す

1つのツボにつき、5秒から10秒程度、ゆっくりと押したり離したりを繰り返します。数回繰り返すと効果的です。

呼吸を意識する

力を入れる時に息を吐き、力を抜く時に息を吸うと、よりリラックスできます。

温めてから行うと効果的

入浴後など、体が温まっている状態で行うと、血行が促進され、より効果を感じやすくなります。

ツボ押しをする上での注意事項

・食直後、飲酒時、発熱時、妊娠中、体力が著しく低下している時は避ける:
体調が優れない時は、ツボ押しを控えましょう。

・皮膚に炎症や傷がある場合は避ける:
患部を刺激することで、症状が悪化する可能性があります。

・強く押しすぎない:
強い力で押すと、筋肉や血管を傷つける可能性があります。あくまで「イタ気持ちいい」程度の力で行いましょう。

・長時間同じ場所を押さない:
皮膚に負担がかかるため、長時間同じ場所を押すのは避けましょう。

・力を抜くことを意識する:
力を入れっぱなしにすると、筋肉が緊張してしまい、効果が得られにくくなります。

・体調に異変を感じたら中止する:
ツボ押し中に体調が悪くなった場合は、直ちに中止し、必要に応じて医師に相談してください。

・乳幼児へは避ける:
小さなお子様へはお控えください。

・持病のある方は医師に相談:
心臓疾患や高血圧など、持病のある方は、ツボ押しを行う前に医師に相談してください。

上記に注意して、安全にツボ押しをご活用ください。
ご不明な点があれば、お近くの鍼灸師にご相談ください。

鍼灸院での本格的な鍼灸のススメ

動悸の症状がある時は、まず無理せず休息をとることが大切です。

ご紹介した「内関」や「神門」、「合谷」といったツボは、ご自宅でも指圧などで刺激していただくことで、一時的な症状の緩和やリラックス効果が期待できます。
ゆっくりと深呼吸をしながら、心地よいと感じる強さで押してみてください。

しかし、動悸の原因は様々であり、とくに心臓に原因がある場合は専門的な治療が必要です。
まずは医療機関で正確な診断を受けてください。

西洋医学的な治療と並行して、東洋医学的なアプローチも有効です。

セルフケアだけではカバーできない全身からのツボを駆使するのが鍼灸院での施術です。
当院は鍼とお灸の専門であり、痛くない鍼、熱くない心地よいお灸で、全身のツボを使い、体質改善を目指します。

動悸でお悩みで、西洋医学の検査や治療を受けている方で、東洋医学(鍼灸)も試したいとお考えの方はお気軽にお問い合わせください。

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