白露|鍼灸師が教える二十四節気の健康法
白露の今できる健康法について
白露(はくろ)とは、二十四節気の15番目の節気で、毎年9月8日頃から約15日間を指します。
2025年の白露は9月7日です。
野草に朝露が宿り、白くきらめく様子から名付けられました。
この頃になると、夏の暑さが和らぎ、朝晩の冷え込みが感じられるようになります。
日中の残暑はまだ厳しいものの、空は高く澄み渡り、秋の訪れを実感できる季節の変わり目です。
稲穂が実り、虫の音が響き渡るなど、自然界が新たなサイクルへと移行していく様子が感じられます。
今回は「白露」の時期を健やかに過ごすためのヒントをお届けしますので、ぜひ最後までお読みください。
白露の頃に起こりうる心身の不調
白露の頃は、季節が夏から秋へと移り変わる「変化の時期」です。
気温は次第に下がり、朝晩はひんやり感じることが多くなります。
この寒暖差によって、私たちの身体は自律神経のバランスを崩しやすく、さまざまな不調が現れやすくなります。
まず、東洋医学ではこの時期、「燥邪(そうじゃ)」の影響を受けやすいと考えます。
燥邪とは乾燥した邪気のことで、秋の乾燥した気候が体に影響を及ぼし、とくに「肺」を傷つけやすいとされています。
東洋医学的に「肺」は呼吸器系だけでなく、皮膚や粘膜とも密接に関わっており、その機能が低下すると、以下のような症状が現れることがあります。
■呼吸器系の不調
乾いた咳、痰が出にくい、喉の乾燥や痛み、鼻炎、喘息の悪化などが挙げられます。
アレルギー体質の方は症状が出やすくなります。
■皮膚の乾燥
肌のカサつき、かゆみ、湿疹の悪化など、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激に敏感になることがあります。
■便秘
体内の潤いが不足することで、腸の動きが悪くなり、便秘になりやすくなります。
コロコロとした兎糞状の便が多いのも特徴です。
次に、朝晩の気温差が大きくなることで、自律神経のバランスが乱れやすくなります。
夏から秋への移行期は、日中の活動と夜間の休息の切り替えがスムーズにいかなくなり、心身に負担がかかることがあります。
■自律神経失調症の悪化
めまい、動悸、倦怠感、不眠、頭痛、肩こり、冷えなどの症状が強まることがあります。
元々自律神経の乱れを抱えている方は、症状が顕著に出やすい傾向にあります。
■精神的な不安定さ
季節の変わり目は、気分が落ち込みやすくなったり、イライラしやすくなったりと、精神的な不安定さを感じることがあります。
これは、日照時間の減少や気圧の変化も影響していると考えられます。
■免疫力の低下
気温の変化に体が適応しようとすることで、エネルギーを消耗し、免疫力が低下しやすくなります。
風邪を引きやすくなったり、体調を崩しやすくなったりすることがあります。
さらに、夏の間に冷たい飲食物を摂りすぎたことによる「脾胃(ひい)」の弱りも、この時期の不調につながることがあります。
脾胃は消化吸収を司る臓腑であり、その機能が低下すると、
■消化器系の不調
食欲不振、胃もたれ、下痢、膨満感などが現れることがあります。
体が冷えやすい方は注意が必要です。
■倦怠感・むくみ
消化吸収がうまくいかないと、栄養が全身に行き渡らず、体が重だるく感じたり、むくみやすくなったりすることがあります。
当院には、この時期に自律神経失調症でめまいや動悸、不眠に悩む方が多くいらっしゃいます。
これらの症状は、白露の季節の心身の変化と深く関連していることが少なくありません。
白露の頃の東洋医学的な健康法
白露の時期の心身の不調を避けるためには、東洋医学の知恵を活かした養生法が非常に有効です。
ここでは日常生活で取り入れやすい養生法をご紹介します。
潤いを補う食養生
白露の時期は乾燥が進むため、体内の潤いを補うことが非常に重要です。
東洋医学では、白い食材は肺を潤すとされています。
■白い食材を積極的に摂る
大根、れんこん、山芋、梨、白きくらげ、豆腐、牛乳、豆乳などがおすすめです。
これらの食材は、肺を潤し、咳や喉の乾燥、皮膚の乾燥を防ぐ効果が期待できます。
■旬の果物や野菜を摂る
梨、ぶどう、柿、栗などの秋の味覚は、体に必要な栄養素を補給し、体のバランスを整えるのに役立ちます。
梨は、肺を潤し、熱を冷ます作用があると言われています。
■温かく、消化しやすい食事を心がける
夏の冷たい飲食物から、徐々に温かいものへと切り替えていきましょう。
胃腸に負担をかけないよう、消化の良いものを中心に摂ることで、脾胃の機能を高め、体全体の調子を整えることができます。
煮物やスープ、お粥などがおすすめです。
■辛味を控える
辛いものは発散作用が強く、乾燥を助長する可能性があります。
この時期は控えめにすることが望ましいです。
呼吸法を意識する
肺の機能を高めることは、白露の時期の養生において非常に重要です。
■深い呼吸を意識する
意識的に深くゆっくりと呼吸することで、肺に十分な酸素を取り入れ、呼吸器系の機能を高めることができます。
朝晩の涼しい時間帯に外で深呼吸をすることで、新鮮な空気を取り込み、心身をリフレッシュさせることができます。
■腹式呼吸を取り入れる
腹式呼吸は、自律神経を整え、リラックス効果を高めます。
ストレス緩和にもつながり、自律神経失調症の症状緩和にも役立ちます。
適度な運動と休養
季節の変わり目は、体が疲れやすいため、無理のない範囲で体を動かし、十分な休養をとることが大切です。
■ウォーキングやストレッチ
激しい運動よりも、ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、軽い運動で体をほぐし、血行を促進することがおすすめです。
これにより、気の巡りを良くし、心身の滞りを解消します。
■早寝早起きを心がける
日照時間が短くなるにつれて、体のリズムも変化します。
早寝早起きを心がけ、十分な睡眠時間を確保することで、自律神経のバランスを整え、免疫力を高めることができます。
■入浴で体を温める
ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、体を芯から温め、血行を促進し、リラックス効果を高めます。
アロマオイルなどを加えるのも良いでしょう。
冷えは万病の元であり、特に婦人科系疾患や不妊治療中の方には、体を温めることが重要です。
精神的な安定を保つ
季節の変わり目は、精神的な不安定さも現れやすい時期です。
■ストレスをため込まない
仕事や家事、育児などで忙しい毎日を送る方が多いですが、意識的にリラックスする時間を作り、ストレスを解消することが大切です。
趣味の時間を持ったり、好きな音楽を聴いたり、自然に触れたりするなど、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。
■感謝の気持ちを持つ
小さなことにも感謝する気持ちを持つことで、心が満たされ、精神的な安定につながります。
■無理をしない
「疲れたら休む」という当たり前のことを意識することが大切です。
完璧を目指しすぎず、時には休息をとる勇気も必要です。
これらの健康法は、日々の生活の中で少しずつ取り入れることで、白露の時期を健やかに過ごす手助けとなります。
白露の頃におススメのツボ(経穴)
上記で挙げた東洋医学的な健康法(食養生、呼吸法、運動と休養、精神的な安定)の効果をさらに高めるために、当院で特に重要と考える3つの経穴(ツボ)をご紹介します。
これらのツボは、鍼やお灸による刺激だけでなく、ご自身で優しく指圧したり、温めたりすることでも効果が期待できます。
■太淵(たいえん)
手のひらを上にして手首の曲がりじわ親指側で動脈の拍動を感じるところが太淵です。
効果: 太淵は「肺経(はいけい)」という経絡の原穴(げんけつ)であり、肺の気の働きを整える上で非常に重要なツボです。
白露の時期は乾燥により肺が傷つきやすいため、肺の潤いを補い、呼吸器系の不調(乾いた咳、喉の乾燥など)を改善する効果が期待できます。
また、肺は「百脈の会」と呼ばれ、全身の血脈と関連が深いため、全身の気血の巡りを良くし、倦怠感の緩和にも役立ちます。
肺を潤す食養生(白い食材など)と合わせて刺激することで、より効果が高まります。
■足三里(あしさんり)
膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみに人差し指を置き、指幅4本揃えて小指が当たっているところにあります。
効果: 足三里は「胃経(いけい)」のツボであり、「長寿のツボ」とも言われるほど、全身の健康維持に欠かせないツボです。
白露の時期は、夏の間に弱った脾胃の機能を回復させることが大切です。
足三里を刺激することで、消化吸収能力を高め、食欲不振や胃もたれ、便秘などの消化器系の不調を改善する効果が期待できます。
また、気血の生成を促し、全身の活力を高めるため、自律神経の乱れによる倦怠感や免疫力の低下にも有効です。
温かい食事や消化の良い食事を心がける食養生と併用することで、胃腸の働きがより活発になります。
■神門(しんもん)
手首の曲がりジワを小指側へなでてゆき、骨の出っぱりの手前で指が止まるところが神門です。
効果: 神門は「心経(しんけい)」のツボであり、精神の安定に深く関わるツボです。
白露の時期は、季節の変わり目による自律神経の乱れや、日照時間の減少などから、精神的な不安定さや不眠が現れやすくなります。
神門を刺激することで、心の興奮を鎮め、不安やイライラを軽減し、安眠を促す効果が期待できます。
ストレス解消のためのリラックス法や、十分な睡眠を促す休養法と組み合わせることで、心身のバランスを整え、精神的な安定をもたらします。
これらのツボは、ご自身で優しく指圧したり、お灸で温めたりするのも効果的です。
ただし、セルフケアを行う際は、無理のない範囲で、心地よいと感じる程度の刺激に留めてください。
まとめ
風邪やのどの不調、肌の乾燥、気分の落ち込み、胃腸の不調などが起こりやすくなる「白露」の頃は、まさに「季節の変わり目」にあたります。
東洋医学では、こうした季節の影響を「自然の気」ととらえ、身体の内側を整えることで健康を保つことを重視します。
白露の時期には、肺を潤す食養生や、冷え・乾燥対策、規則正しい生活が大切です。
あわせて、太淵・足三里・神門などのツボを活用することで、身体のバランスを整え、不調の予防にもつながります。
季節の移ろいを意識しながら、東洋医学の知恵を日々の生活に取り入れることで、心も体も健やかに秋を迎える準備が整います。
白露の時期こそ、自分の身体に目を向け、丁寧な養生を心がけていきましょう。
ご自身でできるセルフケアも大切ですが、もし不調が続くようでしたら、鍼灸専門院である当院にご相談ください。
当院では、お一人おひとりの体質や症状を東洋医学の観点から丁寧に診察し、鍼やお灸の専門施術で、根本からの体質改善を目指します。
お気軽にご相談ください。