片頭痛には漢方か鍼灸か?

「片頭痛」には漢方薬と鍼灸どちらを選ぶ?

片頭痛の漢方と鍼灸・写真1
片頭痛でおツラい日々をお過ごしのこととお察しします。
長年の経験から、片頭痛は単なる頭痛ではなく、日常生活に大きな支障をきたす深刻な症状であることを深く理解しております。

「また頭痛が…」という不安、ズキズキと脈打つような痛み、吐き気や光・音への過敏さ…。
言葉では言い尽くせないほどの苦痛を抱えていらっしゃることでしょう。

無理をして仕事や家事をこなし、あとでぐったりと疲れてしまう、という経験をお持ちの方も少なくないと思います。

本当によく頑張っていらっしゃいますね。

東洋医学の観点から見ると、片頭痛は「気」や「血」の巡りの滞り、またはアンバランスによって引き起こされると考えられます。
ストレスや疲労、睡眠不足、食生活の乱れなどがその要因となることが多いです。

西洋医学的な鎮痛薬も有効な場合がありますが、漢方薬や鍼灸治療は、根本的な体質改善を目指し、痛みを和らげるだけでなく、片頭痛が起こりにくい体へと導く手助けをすることができます。

大切なのは、ご自身の状態をしっかりと把握し、適切な治療法を選択することです。
西洋医学、東洋医学それぞれの利点を理解し、必要に応じて組み合わせることで、より効果的な治療を行うことができる場合もあります。

どうか一人で悩まず、私たち東洋医学の治療家も頼ってください。
私たちは、あなたの痛みを和らげ、より快適な日々を送れるよう、全力でサポートさせていただきます。

片頭痛で悩まれるあなたに、最初に「結論」です
それはズバリ『漢方薬も鍼灸も両方使うのが最善』です

それだけだと身も蓋もないので、それぞれの良さを解説していきますね。

片頭痛と東洋医学

片頭痛の漢方と鍼灸・写真2

東洋医学では、片頭痛は単なる頭痛ではなく、体全体のバランスの乱れが頭部に現れたものと考えます。
体質によってその原因も異なると考えますので、以下に体質別に分けて説明します。

気滞(きたい)タイプ

ストレスや精神的な緊張によって気の巡りが滞り、頭部に気が鬱積することで起こるタイプです。

精神的なストレスを感じると頭痛が起こりやすい、締め付けられるような痛み、イライラしやすい、ため息が多い、首や肩のこり、女性の場合は月経不順などを伴うことがあります。

痛みは側頭部に現れやすく、精神的な緊張が和らぐと楽になる傾向があります。

東洋医学的解釈では、
「気」は体のエネルギーであり、全身を巡ることで各器官の機能を維持しています。
ストレスや緊張によって気の流れが滞ると、頭部に気が鬱積し、痛みとして現れます。

血瘀(けつお)タイプ

血の巡りが滞り、瘀血(おけつ)と呼ばれる血の滞りが生じることで起こるタイプです。

刺すような痛み、ズキズキと脈打つような激しい痛み、痛む場所が一定している、肩こりや首のこりが慢性化している、顔色が暗い、シミやくすみが出やすい、舌の色が暗いなどの特徴があります。
過去に頭部外傷の既往がある場合もこのタイプに分類されることがあります。

東洋医学的解釈では、
「血」は体を栄養する液体であり、全身を巡ることで各器官に栄養を供給しています。
血の巡りが滞ると、老廃物が蓄積し、痛みや不調を引き起こします。
瘀血は、血の流れが滞ってドロドロになった状態を指し、頭部の血流が悪化することで片頭痛を引き起こします。

痰湿(たんしつ)タイプ

体内の水分代謝がうまく行われず、余分な水分が停滞することで起こるタイプです。

頭が重い、頭がぼーっとする、めまいや吐き気を伴うことがある、雨の日や湿気の多い日に悪化しやすい、胃腸が弱い、むくみやすい、舌苔が白いなどの特徴があります。

東洋医学的解釈では、
「痰湿」は、余分な水分が体内に停滞し、粘り気のある状態になったものを指します。
痰湿が頭部に影響すると、頭が重く感じたり、めまいや吐き気を引き起こしたりします。

肝陽上亢(かんようじょうこう)タイプ

東洋医学の内臓系のひとつ「肝」の機能が亢進し、熱が頭部に上昇することで起こるタイプです。

のぼせやすい、顔が赤くなりやすい、イライラしやすい、怒りっぽい、目が充血しやすい、高血圧傾向があるなどの特徴があります。
痛みは頭頂部や側頭部に現れやすく、ストレスや興奮によって悪化することがあります。

東洋医学的解釈では、
「肝」は、血を貯蔵し、気の巡りを調整する役割を担っています。
肝の機能が亢進すると、熱が上昇し、頭部に影響を与え、片頭痛を引き起こします。

腎虚(じんきょ)タイプ

加齢や慢性的な病気などで腎の機能が低下することで起こるタイプです。

めまい、耳鳴り、腰痛、足腰の冷え、頻尿、白髪、抜け毛などの加齢に伴う症状と共に頭痛が現れることがあります。
痛みは後頭部に現れやすく、疲労によって悪化することがあります。

東洋医学的解釈では、
内臓系のひとつ「腎」は、成長、発育、生殖を司る重要な臓器であり、生命の根本的なエネルギーを貯蔵しています。
腎の機能が低下すると、体の全般が低下し、頭痛を含む様々な不調が現れます。

以上、
これらのタイプは複合的に現れることもあります。
例えば、気滞と血瘀が合併している場合や、痰湿と腎虚が合併している場合などです。
東洋医学では、これらの体質をしっかりと見極め、根本原因にアプローチすることで、片頭痛の改善を目指します。

片頭痛に効く漢方薬の代表例

片頭痛の漢方と鍼灸・写真3
東洋医学では、片頭痛は体質によって原因が異なると考えますので、以下に体質別に効果が期待できる漢方薬を説明します。
ただし、漢方薬は個人の体質や症状に合わせて選ぶことが重要です。
必ず専門家(医師、薬剤師、漢方専門家)に相談の上、服用するようにしてください。

気滞(きたい)タイプ

おすすめの漢方薬;
・加味逍遙散(かみしょうようさん)
気の巡りを改善し、精神的な安定をもたらす効果があります。
とくに、女性の月経不順や更年期障害に伴う片頭痛に用いられることが多いです。
ストレスによるイライラや不安感、のぼせ、肩こりなどにも効果が期待できます。

・抑肝散(よくかんさん)
神経の高ぶりを鎮め、精神的な緊張を緩和する効果があります。
イライラや怒りっぽさ、不眠などを伴う片頭痛に適しています。

血瘀(けつお)タイプ

おすすめの漢方薬:
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
血の巡りを改善し、瘀血を取り除く効果があります。
とくに、女性の月経不順や生理痛、更年期障害に伴う片頭痛に用いられることが多いです。

・通導散(つうどうさん)
便秘傾向のある方の血の巡りを改善する効果があります。
便秘に伴う頭痛にも効果が期待できます。

痰湿(たんしつ)タイプ

おすすめの漢方薬:
・五苓散(ごれいさん)
水分代謝を改善し、体内の余分な水分を取り除く効果があります。
めまいや吐き気を伴う片頭痛に適しています。

肝陽上亢(かんようじょうこう)タイプ

おすすめの漢方薬:
・釣藤散(ちょうとうさん)
肝の高ぶりを鎮め、熱を冷ます効果があります。
高血圧傾向のある方の片頭痛にも用いられます。

腎虚(じんきょ)タイプ

おすすめの漢方薬:
・八味地黄丸(はちみじおうがん)
腎の機能を補い、体を温める効果があります。
加齢に伴う様々な症状に用いられます。
八味地黄丸は、腎の機能を補うことで、頭痛だけでなく、めまいや腰痛、冷えなどの症状も緩和します。

以上、
上記はあくまで一般的な例であり、個々の体質や症状に合わせて漢方薬を選ぶ必要があります。

また、「片頭痛にはこの薬」のような病名からの処方ではなく、「その人の体質・状態にはこの薬」という体質からの処方が勧められます
ですので、同じ病名に悩む人にも異なる漢方薬が出ることも少なくありません。
こういう治療の組み立てをするのが東洋医学です。

片頭痛に効く鍼灸のツボ

片頭痛の漢方と鍼灸・写真4
鍼灸も漢方薬と同じく東洋医学の一角ですので、考え方は同様です。
その人の体質・状態から適したツボを選択していきます。

片頭痛でお悩みの方向けに、体質別に効果が期待できるツボ(経穴)を解説します。

気滞(きたい)タイプ

症状:
精神的なストレスを感じると頭痛が起こりやすい、締め付けられるような痛み、イライラしやすい、ため息が多い、首や肩のこりなどを伴う。

おすすめのツボ:
・合谷(ごうこく)
気の巡りを改善する代表的なツボで、ストレスによる頭痛や肩こりに効果があります。

・太衝(たいしょう)
肝の気を巡らせ、精神的な緊張を和らげる効果があります。イライラや怒りっぽい時に効果的です。

・百会(ひゃくえ)
全身の気を集めるツボで、気の流れを整え、頭痛を緩和する効果があります。

血瘀(けつお)タイプ

症状:
刺すような痛み、ズキズキと脈打つような激しい痛み、痛む場所が一定している、肩こりや首のこりが慢性化しているなどの特徴がある。

おすすめのツボ:
・膈兪(かくゆ)
血の巡りを改善し、瘀血を取り除く効果があります。

・血海(けっかい)
血の巡りを整え、婦人科系の疾患にも効果があるとされています。

・太衝(たいしょう)
気を動かすことで血の巡りを改善する効果があります。

痰湿(たんしつ)タイプ

症状:
頭が重い、頭がぼーっとする、めまいや吐き気を伴うことがある、雨の日や湿気の多い日に悪化しやすいなどの特徴がある。

おすすめのツボ:
・豊隆(ほうりゅう)
水分代謝を改善し、体内の余分な水分を取り除く効果があります。

・陰陵泉(いんりょうせん)
水分代謝を調整し、むくみなどを改善する効果があります。

・中脘(ちゅうかん)
胃腸の働きを整え、水分代謝を改善する効果があります。

肝陽上亢(かんようじょうこう)タイプ

症状:
のぼせやすい、顔が赤くなりやすい、イライラしやすい、怒りっぽい、目が充血しやすいなどの特徴がある。

おすすめのツボ:
・行間(こうかん)
肝の気を鎮め、のぼった熱を引き下げる効果があります。

・風池(ふうち)
頭部の熱を冷ます効果があります。

腎虚(じんきょ)タイプ

症状:
めまい、耳鳴り、腰痛、足腰の冷えなどを伴うことがある。

おすすめのツボ:
・太谿(たいけい)
腎の機能を高める効果があります。

・腎兪(じんゆ)
腎の機能を補う効果があります。

・足三里(あしさんり)
胃腸の働きを整え、全身の機能を高める効果があります。

以上、
「片頭痛に良いツボ」も全身のあちこちにあります。
それは「片頭痛=頭」という考えでなく「体質の異常=全身の問題」と捉えるためで、それを改善するツボは全身にあります

漢方薬と鍼灸のどちらかしか選べないなら…

片頭痛でお悩みのあなたが漢方薬と鍼灸で迷っているとします。
どちらも自費で費用が気になるのも分かります。
どちらも効果的な治療法なのでどちらが良いか迷うのは当然です。

もし私でしたら、まずはどちらでも「自分が気になった方・効きそうと感じた方」から始めてみてはいかがでしょうか

漢方薬と鍼灸のメリットデメリットをいくつか比較してみます。

漢方薬は費用負担が少ない可能性

漢方薬も漢方薬局などの場合は自費になりますが、保険がきくクリニックなどでの処方は比較的安価(保険適応なので)で、ある程度の期間服用できるため、初期費用を抑えながら様子を見ることができます。
経済的な負担を考慮すると、まずは「病院の漢方薬」を試してみるのもお勧めです。

他にどんな悩みがあるか?で決める

「片頭痛」は様々な原因が考えられますし、「片頭痛」のみという方も少ないです。
それ以外の体の悩みの傾向で決めていくのも考え方としてはアリです。

漢方薬は内臓系が得意ですので、更年期などホルモンバランスの変化や胃腸症状などが強ければまずは漢方薬から始めるのも良いでしょう。
鍼灸は神経系やコリ痛み系が得意ですので、肩こり・腰痛・しびれ・自律神経の乱れなどが強ければ鍼灸から始めるのも良いでしょう。

通院の負担と服用の負担から考える

たとえば鍼灸は治療院に週1回程度通う必要がありますが、漢方薬は2週間に1回程度の通院が多いです。
通院の手間は鍼灸院の方が多いですが、施術日以外はとくに何もしないで済みます。
一方、漢方薬は自宅での服用が必要です。
1日3回、食事と食事の間(食前2時間くらい)に飲むのも手間です。
忙しい患者さんにとって、どちらの方が時間の節約になるでしょうか。

どちらかを選択して、ある程度の期間(1~3ヶ月間ほど)試しても効果が実感できない場合は、もうひとつに切り替えるといいでしょう
ご自身の症状や経済状況に合わせて、最適な治療法を選択する参考になさってください。

まとめ

最初の結論にもう一度書きます。

「片頭痛には漢方薬と鍼灸を併用するのがベスト」です。

漢方薬と鍼灸を同時に使うメリットを以下に挙げます。

1)相乗効果の発揮
漢方薬は体の内側から、鍼灸は体の外側から治療を行い、それぞれの効果を高め合います。

2)全身のバランス調整
漢方薬は全身のエネルギーや血流を調整し、鍼灸は経絡を刺激して気の流れを整えるため、体全体のバランスがより良くなります。

3)症状の緩和と根本治療の両立
鍼灸は自律神経系に即効性があり、漢方薬は内臓系を改善するため、両方の効果を同時に期待できます。

4)個別のニーズに対応可能
漢方薬と鍼灸の組み合わせで、患者さんの体質や症状に応じた柔軟な治療プランを作成できます。
「片頭痛」だけではなく、肩コリ・胃もたれ・イライラ・冷えのぼせ・腰痛など、メインのお悩み以外の症状も併せ持つ人が少なくありません。
それらには鍼灸の得意分野・漢方薬の得意分野がありますので、併用が最大の効果となります。

5)自然治癒力の最大化
鍼灸の刺激が体の自然治癒力を引き出し、漢方薬がその力を補完することで、治癒力を最大限に引き出せます。
両者を適切に組み合わせることで、東洋医学の全体的な効果をより引き出すことができます。

以上、
一言で言えば『鍼灸と漢方薬は併せて東洋医学』ということですね。

ぜひ西洋医学だけでなく、
東洋医学(漢方薬・鍼灸)も病気治癒や健康増進のために活用することをお勧めいたします。

ちなみに、
漢方薬と鍼灸の違いについてはこちらに書きました。

『漢方薬と鍼灸の違いってなに?』

漢方薬と鍼灸の違いってなに?

また、当院は鍼灸院なので鍼灸推しです。
詳細は下記リンクをどうぞ。

片頭痛(偏頭痛)