芒種|鍼灸師が教える二十四節気の健康法

芒種の今できる健康法について

芒種の健康法・写真1

芒種(ぼうしゅ)は、二十四節気の第9番目にあたり、例年6月6日頃から小暑(7月7日頃)までの期間を指します。
2025年は6月5日が芒種の日。

「芒(のぎ)」とは、稲や麦などの穂先にある棘のような部分を指し、「種」は種まきを意味します。
字のごとく、稲などの穀物の種をまく大切な時期であり、農作業が本格化します。
昔から「種まきの最適期」とされてきました。

同時に、梅雨入りを迎える地域も多く、じめじめとした湿気と、日中の蒸し暑さが特徴です。
湿度が高くなると、体調にも影響を与えます。

自然界では、蛍が光り始め、梅雨の雨にカタツムリが見られるなど、生命の息吹を感じさせる情景が広がります。
しかし、この時期は気候の変化が大きく、私たちの心身にも様々な影響が出やすい時期でもあります。
体調を崩しやすい時期だからこそ、日々の養生を意識して過ごすことが大切です。

今回は「芒種(ぼうしゅ)」の時期を健やかに過ごすためのヒントをお届けしますので、ぜひ最後までお読みください

芒種の頃に起こりうる心身の不調

芒種の時期は、気温の上昇と梅雨の湿気という二つの大きな変化が重なるため、私たちの心身に様々な不調が現れやすくなります。

まず、湿気による影響が挙げられます。東洋医学では、湿気は「湿邪(しつじゃ)」と呼ばれ、体に停滞しやすく、様々な不調を引き起こすとされています。具体的には、以下のような症状が現れやすくなります。

■消化器系の不調
湿気が「脾(消化器系を司る臓腑)」の働きを邪魔することで、食欲不振、胃もたれ、お腹の張り、下痢、軟便などの症状が出やすくなります。
また、水分代謝も悪くなり、むくみを感じることもあります。

■関節痛・神経痛
湿気が関節や筋肉に侵入すると、重だるい痛みや痺れを引き起こすことがあります。
とくに、梅雨時期に古傷が痛み出すという方も少なくありません。

■倦怠感・疲労感
体内に余分な水分が溜まることで、体が重く感じられ、なかなか疲れが取れないといった倦怠感や疲労感を感じやすくなります。
頭が重く感じたり、めまいがしたりすることもあります。

次に、気温の上昇による影響も無視できません。
急な暑さや、蒸し暑さによって、以下のような症状が現れることがあります。

■夏バテ・熱中症
まだ体が暑さに慣れていない時期に、急に気温が上昇することで、体温調節機能がうまく働かず、夏バテや熱中症のリスクが高まります。
だるさ、めまい、吐き気、頭痛などの症状が現れることがあります。

■精神的な不安定
気温や湿度の変化は、自律神経のバランスを乱しやすく、イライラしたり、集中力が低下したり、気分が落ち込んだりするなど、精神的に不安定になりやすい時期です。
とくに、梅雨のじめじめとした天候が続くことで、気分が塞ぎ込みやすくなる「梅雨うつ」のような状態になることもあります。

■睡眠の質の低下
暑さや湿気によって寝苦しくなり、睡眠の質が低下しやすくなります。寝不足が続くと、日中の集中力低下や疲労感につながります。

これらの心身の不調は、単独で現れるだけでなく、複合的に起こることもあります。
芒種の時期は、ご自身の体調の変化に注意深く耳を傾け、早めの対策を講じることが大切です。

芒種の時期におすすめの健康法

芒種の時期に体調を整えるためには、まず「湿邪」を取り除くことが重要です。
そのために、以下のような健康法を取り入れるとよいでしょう。

■食事の工夫
この時期は、消化を助ける食材や、体内の余分な水分を排出する食材を積極的に摂ることが大切です。
例えば、ハトムギ、小豆、冬瓜、きゅうり、とうもろこしなどは利尿作用があり、湿気を体外に出すのに役立ちます。
また、生姜やシソ、ネギなどの発汗を促す食材も適量摂るとよいでしょう。
脂っこいものや冷たい飲食物は消化を妨げるため、できるだけ控えます。

■適度な運動
湿気が多いと体が重だるくなり、動くのが億劫になりますが、適度な運動は体内の水分代謝を促し、むくみや疲れを軽減します。
とくに、ストレッチやヨガ、軽いウォーキングなどが効果的です。
朝や夕方の涼しい時間帯に行うのが理想的です。

■お風呂でのケア
湿気が多くても、シャワーだけで済ませるのではなく、ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、発汗を促し、体内の余分な湿気を排出しやすくなります。
入浴剤にショウガやヨモギを使うと、より効果的です。

■室内環境の調整
湿気をためないために、定期的に換気を行い、除湿機やエアコンの除湿機能を活用することが重要です。
畳やカーペットなどの湿気がこもりやすい場所もこまめに掃除し、カビ対策を徹底しましょう。

■十分な睡眠
湿気が多いと寝苦しくなり、睡眠の質が低下しがちです。
快適な睡眠環境を作るために、寝具の通気性を良くし、枕元に除湿剤を置くのも効果的です。
また、寝る前に白湯を飲むと、内臓が温まり、リラックスして眠りやすくなります。

芒種の時期に効果的なツボ

消化吸収を助けることで、疲れやダルさを取る効果の高い代表的なツボをご紹介します。

足三里(あしさんり)

膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみに人差し指を置き、指幅4本揃えて小指が当たっているところにあります。
芒種の時期に弱りやすい「脾・胃」の働きを整えるツボです。
消化を助け、胃腸の不調や疲労感を軽減する効果があります。

三陰交(さんいんこう)

内くるぶしのいちばん高いところに小指をおき、指幅4本そろえて、人さし指があたっているところが三陰交です。
肝・脾・腎の三つの経絡が交わるツボで、女性にとって特に重要なツボで、3つの経絡が交わる場所にあります。
体内の水分代謝を調整し、むくみや冷えを改善するツボです。
女性の体調管理にも役立ち、ホルモンバランスを整える働きがあります。

関元(かんげん)

指幅4本をそろえて人さし指をおへそにおき、小指があたっているところ。
気の巡りを整えるツボです。湿邪によるだるさや冷え、精神的な不調にも効果的です。

さいごに

芒種の時期は湿気が多く、体調管理が難しい季節ですが、食事や生活習慣を工夫し、適度な運動や入浴を取り入れることで快適に過ごせます。
セルフケアのお灸やツボ押しも併用することで、さらに効果的な養生が可能です。

芒種の時期は、心身ともに変化の多い時期ですが、日々の養生を意識することで、健やかに過ごすことができます。

もし、生活習慣を整えたりセルフケアをするだけでは良くならない体調不安がありましたら、我慢せずに当院までお気軽にご相談ください。
皆様の健康をサポートさせていただきます。

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