「Battlefield Acupuncture（戦場鍼）」を知っていますか？
アメリカで行われている鍼灸のひとつのようです。
戦場鍼についての記事を紹介しがてら、耳鍼の事を書きます。

『臨床医のための戦場鍼治療（Battlefield Acupuncture for the Clinical Practitioner）』
https://www.acupuncturetoday.com/mpacms/at/article.php?id=31917

戦場鍼（Battlefield Acupuncture）とは

「Battlefield Acupuncture（戦場鍼）」という用語は、空軍の外科医の補完代替医療コンサルタントとして働いてるRichard Niemtzow医師が、2001年に初めて使用しました。
ようは耳鍼です。
我々鍼灸師であれば、日々わりと当たり前に使っています。
ただし、「Battlefield Acupuncture（戦場鍼）」という流派のようなものになっているみたいです。

耳鍼ですので、耳の皮膚の特定の場所（ツボ）に小さな鍼を貼り、数日以上持続しておきます。

【使用する5つの耳ツボ】

・Wonderful Point (Point Zero)
・神門（Shen Men）
・Omega 2
・Thalamus
・the Cingulate Gyrus.

患者の約15％が鍼治療に反応しないと報告されています。
ですが、平均して約75％に疼痛の軽減があると報告されているようです。
治療頻度は患者ごとに異なり、週に2回程度から1ヶ月に1回以上という間隔で行われるようです。

痛みの軽減が見込めるので、西洋医学的な鎮痛剤を減らすことができると考えられます。
非常に簡単に学ぶことができ、ほぼ合併症はなく、患者はほとんど不快感を感じることはありません。

痛みにもの凄く効くような記事でしたが、その辺に関しての感想は最後に書きます。
アメリカではオピオイド（麻薬系鎮痛剤）の過剰使用が問題になっていますので、耳鍼でオピオイド使用量が軽減できることを期待されているようです。

一般的な「耳鍼」について

耳鍼は「耳つぼ」とも言われています。
鍼灸と関係をしているので中国起源かと思いきや、フランス人のノジェ（Paul Nogier）が1956年に発表したことで有名になりました。
当初は「耳の反射区」というような考え方でした。
それが海外（日本・中国・アメリカなど）にも伝わり、中国で盛んに研究された結果「耳には全身のツボがある＝耳ツボ」というものができました。

治療のスタイルは、該当する複数の耳ツボ（片側の耳だけ）に「小さな粒」「小さな鍼」を貼ることが多いです。
貼った状態で数日過ごして、はがすときに今度は反対側の耳ツボに貼る、を交互に繰り返します。
いつでも耳ツボ刺激がカラダに伝わっているように、ということです。

眼病・肩こり・腰痛・内臓疾患と、全ての病気に耳ツボは併用してよいものです。
通常の鍼灸（手足・背中など全身にあるツボを使うオーソドックスな鍼灸）と併せて耳鍼も行うことが多いです。

ただし、このようなスタイルの耳ツボよりも日本では「耳つぼダイエット」で有名ですよね。
耳鍼・耳ツボと言えば「ダイエットでしょ」みたいな。

耳つぼダイエット（耳ツボ痩身）は効果があるのか？

効果はあります。
病気治療に有効という意味からも、極度の肥満（＝病状が重いと言えます）であれば耳ツボ単独でも結構効果が出せます。
ただし、一般的な「もう少し痩せたい！！」と言っている程度の人ですと「耳鍼単独でドンドン痩せる」なんてことはありません！

やはりダイエットの基本は「食事」「運動」ですから、この辺を疎かにして耳ツボだけに頼っても上手くはいきません。
ある程度の普遍的なダイエット手法（食事コントロールや運動など）によって、痩せるための土台を作る必要はあります。
そのうえで耳鍼を行うことで、「より健康的に」「より効果的に」痩せることはできます。

戦場鍼について私見

耳ツボ痩身の話からも分かるように、耳鍼は病状が激しいものほど効果が際立ちますが、程度が軽いものは効果は出づらい印象です。
ですので、
「急性・慢性の痛みに戦場鍼」とは言っても、薬の効きが悪いような他に方法がないような痛みについて著効（すごく効く）というのが本当のところだと思います。

耳鍼に関しては、日本ではダイエット目的でアメリカでは痛み目的で注目されているという違いも興味深いです。
ただし日米で盛んに活用されていることからも、耳鍼には色々なお悩み事に対して一定の効果が見込めることを教えてくれています。

また当たり前の話ですが、
耳ツボが効果を出すような人は、通常の鍼灸だって十分に効果が出せますので、治療環境が「戦場」でないなら、「鍼灸院」でオーソドックスな鍼灸（と併せて耳鍼）を受けるスタイルが最適だと考えます。
いかがでしょうか！？